最近はモチベが上がらないのでこのような速度となっている私をお許しください⋯⋯(
さてまぁ、ではこの章最後の話です。今回最後は美鈴さん。
──Hong Meilin──
鮮やかな夕焼けが遥か遠くの地平線に沈んでいく。それと共に辺りが暗く、闇に覆われていく。
その光景を見る度に、また今日もお嬢様達の時間がやって来たんですね、と実感できる。最近は襲撃もなく静かな夜が続いてるから尚更だ。そして、それは私の門番としての仕事が終わり、新たな仕事の始まりを告げる合図でもあった。日が落ちるのを見届けると、手近な妖精メイドにその場を任せて急いで食堂へと向かう。
これはいつものルーティン。日常的な一連の流れ。ただ今日は少し違っていて、食堂へ向かう途中、後ろから足音が聞こえた。そして、振り返ると普段はその時間に見かけないはずの顔を見た。その時のその人は、とても活き活きとして、楽しそうに嬉しそうにスキップしていた。
「メーリンっ! おっはよー!」
「はい、おはようございますっ」
その人物とはこの館の主であるレミリアお嬢様の妹様、ティア様だった。その自然の色をした髪を優雅に靡かせ、何があったのか声も豊かで嬉々としていた。一体どうして、なんて事を考える前にティア様は口を開く。
「メーリン、今日の夕ご飯は何?」
食いしん坊なティア様らしい、普段通りの平凡な質問。ただ私には、その質問の意図はいつもとは違うように感じた。まるで気を引き、何かから話を逸らしたいような。もしくは何かに気付かせたくないような。そんな思惑を感じた。長年仕えてきたからこそ感じる妙な違和感だ。
「今日はティア様の好きな中華料理一色ですよー。焼き飯に餃子、といつものですね」
自分で作ると言ってなんだが、毎日この量を食べてよくもまぁ、太らないなぁ、と常々思う。本人曰く激しく運動してるから太るはずがないとの事だが、それ以外にも色々と訳はありそうだ。もちろん、一介の料理長⋯⋯というかメイドである私が、ティア様本人の口から聞く事はないだろうけど。
「おぉー、楽しみだなぁ。メーリンの料理、いつも美味しいしね」
「ふふっ、ありがとうございますっ。⋯⋯ところで、ティア様。どうしてそんな上機嫌なんです? 何か楽しい事とか⋯⋯あっ、いつもみたいにお嬢様かフラン様と何かあったとか?」
「さっすがメーリンっ! よく分かってるね、正解だよー」
体全体を使って丸を描き、笑顔で答えていた。見てると微笑ましくなる大変なはしゃぎよう。だけど、やはり私には何かを隠してるような気がした。外見だけでは至って平常運転で何も問題無いように見えるけど。
「ん⋯⋯お腹鳴っちゃった。メーリン、お腹空いたから、先に行って待ってるねー!」
「は、はい! すぐお作りしますね!」
そのまま食堂に向かって走っていくティア様の後を追うようにして廊下を駆ける。そして、ふと思い出した。
ティア様は最初、私の
としたら、お嬢様やフラン様と何かあったとすれば、真正面から走ってくるはず。なのに後ろから走ってきたという事は私に話した言葉は嘘になる。それどころか、真っ昼間から外に出ていた事になってしまう。ティア様は吸血鬼だから、絶対に有り得ない事だけど。⋯⋯いや、移動魔法が玄関に張ってるとか聞いた事があるから、それを使っていたとすれば何も矛盾は⋯⋯ない。
でも、どうして私に嘘を⋯⋯。ま、まさか⋯⋯私に言えない何か理由でも? それか⋯⋯面倒臭いと思われて適当にあしらわれたとか⋯⋯。うぅ、有り得る。最近は襲撃がなくて門番としての意義を果たせてないし⋯⋯。そ、それでも料理長としては最低限の仕事はしてるし、いつも料理を食べた後は、とてもよく褒めてくださってるから絶対にない⋯⋯と、信じたい。
「うぅ、一体何が⋯⋯」
「⋯⋯メーリン、どうしたの?」
「あっ! な、なんでもありませんよ!」
走ってたら、いつの間にかティア様が私の顔を覗き込みながら、後ろ向きで飛んでいた。前を見ないで飛べるのは、長年この館で暮らし、熟知してるからこその芸当だろう。それでも、とても器用な事をする人だ。私もここに暮らしている身だが、とても真似できない。そもそも武術が得意でも、空を飛ぶのは苦手だからという理由があるが。
「ふーん、そっか。なら良かったっ!」
心安らぐような純粋無垢で、その種族を全く思わせない満面の笑顔。その顔は正しくその幼い外見に違わず、元気いっぱいな人間の女の子にしか見えない。翼と人間には有り得なさそうなその豊満な胸を除いては、の話だけど。稀に本当に姉妹なのか疑問に思う時があるけど、そこ以外はほぼ瓜二つだから姉妹なのは間違いない。というか、こんな事を考えていてはお嬢様達に失礼になるか。これ以上はやめとこう。バレたら後が怖い。
「さぁ、メーリン! 早く行こっ! いっぱいお腹も空いたしね!」
「え、えぇ。分かりました! 急ぎましょうか!」
ティア様に手を引っ張られ、急かされて、私は食堂へと急いで向かう。いつも通りの、自分の仕事をするために。
その日の夕食後、お嬢様が1人になるのを見計らって後を追い、お嬢様の書斎へやって来た。
「──入っていいわよ。扉の前でずっと待たれるのも困るから」
と同時に、中から声がする。仕事をサボって来てるわけだから、お嬢様を含め誰にもバレないように来たはずがバレていた。隠れるのが苦手というのもあるけど、それでも気付くなんて「流石お嬢様です」と褒めるしかない。
「あ、あはは⋯⋯。気付いてました?」
笑って誤魔化そうと部屋に入ると、お嬢様は既に事務作業に取り組んでいた。私に注意を割いてる様子はなく、書類の方に真っ直ぐ集中してる。
「下手なのよ、貴女。専門外の事で私を欺けるなんて思わない事ね? で、用事は何かしら? 作業中だけど、しながらでいいなら話を聞くわ」
淡々と、まるで書類を処理するのと同じようにお嬢様は話す。常々この作業に飽き飽きしてるからこそ、そのような態度になってしまってるのだろう。
「実は相談したい事がありまして⋯⋯。ティア様の事なんですけど⋯⋯」
「ティア? ええ、何かしら?」
それでも私の話に聞く耳は持ってくれたらしい。恐らくは妹の名前が出たから、だろうけど⋯⋯。
「最近思うんです。ティア様に嫌われてる⋯⋯もしくは、鬱陶しいと思われてるんじゃないかって」
「へ? き、急にどうしたのよ。何かあったの⋯⋯?」
予想だにしていなかった話に、お嬢様も思わず手を止め話を聞いてくれた。ただそれが私の話じゃなくてティア様の話だから、というのは少し残念だ。
「いえ、今日ティア様に会った時、何か嬉しそうだったので話を聞いたのですが、はぐらかされてしまいまして⋯⋯。それで、実は嫌われてるんじゃないか、って⋯⋯」
「ふーん⋯⋯。なんだ、そんな事か」
「えっ」
まさか、お嬢様にまで適当にあしらわれるとは思わなかった。少し心が挫けそうに⋯⋯。いや、しかし。私は一生お嬢様に仕えると約束した身。これくらいの事ではへこたれない⋯⋯!
「ああ、勘違いしないで。興味が無いとか、その程度で悩んでるとか、そういう理由じゃないわ。ただ、それなら大丈夫よ。あの娘も年頃の女の子。だから、言いにくい事じゃなく、言いたくない事があるだけよ。そのうち、もう少し成長すればきっと話してくれるはずよ」
なんとも言えない楽観的な感じがする。だけど、運命という名の未来が見えるお嬢様がそう言うなら間違いないのだ。もちろん、それには未来を見てるという前提が入るわけだけど。
「本当にそう思いますか⋯⋯?」
「ええ、思うわ。貴女は家族なのよ? 私にとっても、ティアにとってもね。そこに何も差はないし、何も違いはないのよ」
「⋯⋯血の繋がった姉妹と、ただの従者でもですか?」
何を取り繕うとも、実際は家族ではない。だって、結局はただの従者なんだから。
「ええ、それでもよ。だって、ティアにそんな違い分かると思う? あの娘、好きか嫌いかの二択しかないのよ? そんな娘に血の繋がった家族と血の繋がらない家族の違いなんて分からないわよ」
「な、なかなか毒舌ですね、珍しい⋯⋯」
「それほど仲が良いって事よ。本人が居たら何かされそうだから言わないけど。最近フランに似てきてる気がするのよねえ。⋯⋯そういうわけだから、あまり気に病まないで。貴女は家族の一員。それだけでいいじゃない」
受け入れてくれるだけでも嬉しいのに、まさか家族の一員とまで言われるとは。あまりの嬉しさに思わず顔に出てしまいそうになる。しかし、それをお嬢様に見られるのも恥ずかしいからと必死に耐える。
「っ⋯⋯ええ、分かりました! わざわざお話を聞いてくださりありがとうございますっ! では、仕事の方に戻りますので⋯⋯!」
「ふふっ、ええ、そうなさい」
そう言い残して部屋を立ち去る。お嬢様に、私の嬉しいという気持ちを、あまりの嬉しさで零れた笑みを悟らせないために────
これより物語は加速する。
そして、最後があれば最初も────
オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)
-
生存ルート
-
死亡ルート