東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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百合百合注意


69話「相愛な姉妹」

 ──Frandre Scarlet──

 

「フラン様ー。私が来ましたよー」

 

 スクリタとともに夕食を食べていた時にやってきたコア。いつも通り元気な姿で、見ているだけで元気が出てきそうだ。ただ、それはスクリタには当てはまらないようだけど。コアを見て、鬱陶しそうに顔を顰めているし。

 

「コア……どうしたの? 今は夕食中なんだから、襲っちゃダメだよ?」

「今は襲いませんよー。先ほどティア様がお帰りになられたので、ご報告を、と思いましてね」

「そっか。……ようやく帰ってきたのね、あの娘。1ヶ月とちょっとぶりかなー。どう? スクリタ、会えそう?」

 

 隣でソファに座り込み、ご飯を食べるスクリタの頭を撫でて、そう問いかける。そっと手を振り払い、彼女は食器を置いて口を開いた。

 

「無理そウ。短時間ならともかク、ここはワタシ達の部屋。いつまで居るか分からないティアと一緒にここに居れバ、いつかボロが出ル」

「そっか。ならここには居られないね。あの娘と私、約束してることがあるから。多分しばらくここに居るのよね。でも会っておかないと、あの娘怪しんで気付いちゃうよ?」

「図書館で本を読んでル。ワタシとは何も約束してないかラ、会話が長引くことはきっと無イ」

 

 短時間なら大丈夫だと。見立てが甘い気もするけど、そこはスクリタ次第。彼女が下手をしなければ、バレることはないはず。……バレたらバレたで、また一騒動ありそうだけど。

 

「ティアにバレたからって、私にあたらないでよ? あと私に助けを求められても困っちゃうから。……ちょっとくらいは頑張るけど」

「……うン。その時はよろしク。フラン」

「ふふ。素直になってきたよね、スクリタ」

「ふん……」

 

 頭を撫でると、今度は抵抗もせず受け入れてくれた。こう素直だと可愛いんだけど。これはティアで満足できるしね。スクリタは今まで通りツンデレが一番可愛い。

 

「……ごほん。いいところで申し訳ないですが、私はそろそろ行きますよ。スクリタ様もご一緒されますか?」

「うン。ティアが来る前に行っておク」

「そっか。じゃあまた後でね。……ティアがここで寝るとか言い出したらどうするの?」

「その時はティアの部屋に誘導して一緒に寝テ。……無理だったラ、一緒に寝るしかなイ。アナタが誤魔化しテ」

「えー……」

 

 なんて投げヤリな……。でも、信頼されてるってことよね。妹のためにも、その気持ちに応えなきゃならない。どちらの妹の要望にも応えなきゃならない、なんて姉は大変ね。お姉様がそこまで苦労してる様子はないけども。そこは隠してるのかな。もしそうなら凄いや。

 

「うちの妹は2人とも私がいないとダメなんだから。いいわ。その時は私に任せなさい」

「無い胸を張られても困──」

「お姉様よりはあるから! ……まったく。とにかく下手に避けて気付かれないようにね」

「うン。じゃあまた後デ」

 

 そう言って一足先に向かうスクリタ。だけどコアの方は、何か思い出したのかその場で足を止める。

 

「あ、と。フラン様。最後に1つだけ」

「何かな? コア」

「あまり除け者にしちゃダメですからね?」

「……分かってる。また今度、ちゃんと話すよ」

 

 方法は分かったんだ。お姉様達を待ってれば、時間が解決してくれる。問題は短気なあの娘が話を聞いて、スクリタの気持ちを優先してくれるかどうか、かな。スクリタのためを思って強行する可能性だって、大いに有り得る。だから、話す時はしっかり準備しないと。心と、ティアを納得させる内容の。

 

「……タイミング、気を付けないとなぁ」

 

 間違えて喧嘩にでもなったら大変だ。……というか、食器持って行ってもらうんだった。

 

 ため息をつきつつ、私はティアが来る前に、食器を持って上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん! ただいまっ」

「ん。おかえり、ティア」

 

 夕食を食べてからしばらく待っていると、ティアが勢いよく扉を開けて入ってきた。懐かしい妹の顔で思わず表情が緩みそうになる。

 

「お姉ちゃんは相変わらずで安心したっ。スクリタ、放置してたせいか、あまり話を聞いてくれないんだよねぇ。素っ気ない? 態度ばっかり取ってくるの……」

「ティア、何かしたんじゃない?」

「んー……どれだろ」

「心当たり多いんだ……」

 

 あわよくばスクリタの不安に繋がることを聞き出そうと思ったんだけど。逆にどう反応すればいいのか分からなくなってしまった。

 

「うん。そーれーよーりっ。お姉ちゃん。ね、大丈夫だったでしょ?」

「ふふ、そうだね。貴女が無事でお姉ちゃんも嬉しいなー」

 

 得意気な顔でそう言い放つティア。なんだか負けた気がしなくもないけど、とにかく無事で良かった。──外見は変わりないけど、中身は何か変わってたりするのかな。

 

「でさ、でさ。お姉ちゃんっ。吸血する、って約束してたよねっ」

「うん? あー……」

 

 そういえばそんな約束もしていた。でも正直なところ、別に吸血くらい、いつでもやってあげるんだけどなー。ティアの血、美味しいし。……お姉様の血、飲んだことないね。また今度、頼んで吸ってみようかな。

 

「ということで! おねーちゃんっ」

 

 自ら服をはだけさせ、目と鼻の先まで近付くティア。ベッドに座る私の両膝に、逃げられないようにするためか手を置く。そんなことしなくても、私は逃げないのに。

 

「食べて……?」

 

 5cmという距離で、蠱惑的に囁く。まだ子どもなのに。私より年下なのに。……いつからこんなにも色っぽくなったんだろう。変な知識、与えすぎたかな。私のせいなら、私が責任取らないとなー。

 

「……それはどっちの意味でかな?」

 

 彼女の真意を知るために、敢えてそう聞いてみる。話の流れは吸血だろうけど、もしも彼女にその気があれば……。私は、それに答えるだけの好意と覚悟を持ってるから。

 

「うん? んーっとね。()()()()()()?」

()()()()()。ティアのしたい方でいいよ」

 

 私がそう答えるとは思ってなかったのか、ティアは驚きを露わにして動きを止める。目をぱちくりさせ、不意に嬉しそうな顔になった。でも、緊張してるのか、ぎこちない笑顔だ。

 

「お姉ちゃんから言ってくれるとは思ってなかった。でも、本当にいいの? 私強欲だから、お姉ちゃんにも。お姉ちゃん以外にも。もっともーっと……求めちゃうかも。それでもいいの……?」

「いいよ。ティアのそれは、今に始まったことじゃないしね。それに、ティアが私を嫌いになるわけじゃないんでしょ?」

「うん、それは絶対にならないって言えるけど……う、うーん……」

 

 話してみた限り、どうやらティアの方にまだ心の準備ができてないらしい。準備、よりは何かしらの不安が消えてないのかな。まだその時ではなかったみたいだ。

 

「じゃあこうしよう。貴女に準備と覚悟ができた時、改めて貴女から話してちょうだい。その時は私も、しっかりと応えてあげるから。ただ……本気じゃないと、後悔するからね?」

 

 膝に置いた手を払い、顎を持ち上げて無理矢理視線を合わす。私と同じ紅い瞳を覗き込むと、彼女は静かに見つめ返していた。無言ながらも、長年一緒に居たからか、なんとなく肯定の意を表していることが分かった。

 

「大丈夫そうね」

「……うん。決まったら、ちゃんとお姉ちゃんに言うね。その時は食べられるだけじゃなく、私のことも食べてね?」

「あれ? それは自分に言ってるの?」

「お姉ちゃん、責められると弱いじゃん」

「ふーん……」

 

 そっくりそのまま返したい気持ちを抑え込み、ティアの頭に手を伸ばして頭を撫でてやる。

 

「ん、えへへー」

 

 するともっと撫でろと言わんばかりに、両手を私の背中に回し、頭を膝の上に乗せてきた。頬擦りまでして、完全に懐かれている。……彼女を見ていると、嗜虐心が湧いてくる。この前話していたお仕置き代わりに、ちょっとだけ意地悪しちゃおっかな。

 

 ふとそう思い、撫でるのをやめてみる。

 

「……ふぇ? お姉ちゃん?」

 

 悲しそうに、上目遣いで視線を送ってくるティア。可愛らしい表情が癖になる。悲しそうな顔も、種類によっては好きかもしれない。

 

「どうしたの?」

「えっ。どうしてやめたの……?」

「んー……ティアの可愛い表情が見たかったから、かな」

「うん? 可愛いの? ならもっとする」

「しなくていいよ。時折見せるから可愛く見えるの」

 

 姉である私が、ずっと悲しい表情をしてほしいわけないし。こういう顔はちょっとだけでいい。そういう意味を込めて再びティアの頭を撫でる。安心したのか、顔を埋めて大人しくなった。

 

「ふふ……あー、ティア。そういえば貴女がいない間に決まったことなんだけど……」

「うん?」

「紅魔館、引っ越すらしいよ。もっとマナが多い場所に」

「そうなの? えっ。この館置いてっちゃうの……?」

 

 ああ、そうなっちゃうよね。でも、確か大丈夫なんだよね、その問題は。

 

「ううん。この館ごと引っ越すらしいから安心して。……で、吸血しなくていいの? 食べるのはともかく、吸血くらいならしていいよ?」

「そっか。うん、吸血はしてー。それを楽しみにしてたんだから!」

「ん。そっか。……じゃあ、いい?」

「……うんっ」

 

 そう言ってティアの肩を掴み、グイッと引き寄せる。その白くて綺麗な首筋に牙を突き立てた。汗のせいかちょっとだけしょっぱくて。ぎゅっと目を瞑るティアが可愛くて。

 

 牙が通ると、真っ赤な血が噴き出した。舌に触れると甘く、とろりとした味わいがする。

 

「ぁ……っ」

「っ……うぅん……」

 

 思わず声が出るほどに、その味は背徳的な。それでいて極上の味。妹の血という、禁断の果実を口にした私は止まらない。僅かに残った理性が止めようとするも、止めれない。止めたくない。この味をずっと味わいたい。

 

 どれだけ堕落しようとも、ティアさえいればいい。そう思わせるような禁忌の飲み物。

 

「も、っと……ぁ……」

 

 何度も何度も、ティアの首筋を舐めあげ、血を吸う。牙が動く度に血が湧き出てくる。流石に傷付け過ぎたと思い、今度は傷口に舌を這わせて血を絡め取る。舐める度に、ティアは身体を震わせていた。

 

「っ……あぁっ……」

 

 ティアの嬌声が、私が捕食者ということを実感させてくれる。捕食者でいられることは気分がいい。だけど、ティアの魂を侵している気がして。もしかしたら、ティアが私を吸血する時も同じ気持ちかもしれない。そう思うと、なんだか突然恥ずかしくなってくる。

 

「あはっ、おねえちゃん……だいすき……」

「……ぷはぁ。ん、私も大好きだよ」

 

 荒い息をつき、弱々しく肩を掴んでいる。その服は零れた血液で、僅かに真っ赤に染まっていた。

 

「あらら、汚れちゃったね。……お風呂入ろっか、ティア」

「う、うん……。ふふっ。お姉ちゃんと久しぶりに入るねっ」

「だねー。……楽しみ?」

「うんっ」

 

 そうして、一緒にお風呂場に向かう私とティア。……結局、私の部屋で寝ることになっちゃったけど、スクリタのことはバレずに、一夜を過ごすことはできた────




百合は健全です(真顔)
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