東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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80話「果断な分担」

 ──Remilia Scarlet──

 

 数百年生きてきた中で、人間よりは遥か多くの歴史を見てきた。500年近くもダラダラ家で過ごしてたわけじゃない。小さな頃は連れられて。大きくなってからは生きるために。知り合いでもない吸血鬼の領地も訪れたし、人間の街にも行った。……何が言いたいかって言うと、そんな私もこんな場所は初めてということ。

 

 我が家から一歩踏み出した先は、私たちにとってはまさに異界だった。深い霧に包まれた湖。木々が生い茂る大地。全貌が見えないほど大きな山。視界に入る全てが興味深いものばかり。状況が状況だからやらないだけで、時間があれば立ち止まってでも観察していただろう。前を飛ぶパチェに付き従いながらもそう思う。

 

「パチュリー……。ティアの何か、見つかったりしてない?」

 

 周囲をサーチするパチェを真ん中に置いて、その前をフランが。その後ろを私が付いていく。本来は私が前に行くべきなんだろうけど、フランが率先して前に行くからこの形に落ち着いた。

 

「見つかったら言ってるわよ。全然掴めないわね」

 

 紅魔館を出て十数分。未だにティアの影も形も見つからない。というのも歩みが遅いからで。ソナー役のパチェが捜索、飛行、防衛などなど。様々な魔法を並行して行使しているからその分速度が落ちている。代わりに捜索には念入りに力を入れてもらっているから、見逃すことはおそらくない。

 

「にしてもここ広すぎない? これじゃあティア探すのも一苦労だよ。……この世界に端とかあるのかな。暗くて先なんて見えないけど」

 

 山とは真逆の方向を見るフラン。つられて向くと、その先には暗く広大な大地。夜目がきく方だと自負してるけど、それでも端らしきものも、文明の利器らしき明かりも見えない。ここにも何かしらは住んでいるはずだから、どこかに住処はあるはずだけど。きっと周囲にないだけで、山の反対側とかにでもあるのだろう。

 

「どうなんでしょうね。今はそれよりティアね」

 

 ティアか魔女か、どちらかの影響で館に居た吸血鬼たちは消えてしまった。生死は……殺す理由はないだろうし生きてるとして。どうなってるか、どこにいるかは全くの不明。ただ別行動を取っていた吸血鬼が無事である可能性はある。その吸血鬼を見つけて協力を仰ぎ、数に物を言わせて探していくという手も……。

 

「ねー。なんか聞こえない?」

「うん?」

 

 辺りをキョロキョロと見渡すフラン。私も立ち止まって耳を澄ます。

 

「私の耳には何も聞こえないわ」

「そう? お姉様は?」

「…………」

 

 どうだろう。……言われてみれば、どこかから何か聞こえてくる音がする。なんの音かはわからないけど、山の方から聞こえてくることだけはわかる。

 

「聞こえたわ。山の方からね。……パチェ。ティアの気配は?」

「ないわね」

「現地人かしら。行ってみましょうか。何かわかるかもしれないわ」

 

 現地人なら私達を見て警戒するだろうか。でも、このままアテもなく探し続けるよりかはずっといい。現地人だろうと、同族だろうと。何かしらの手がかりは掴めるはずだ。

 

「私が先導するわ。フランはパチェを守りながら付いてきて」

「うん。気を付けてよ、お姉様」

 

 音のする方向へ真っ直ぐ向かう。近付けば明確に聞こえてくる騒がしい音。これが戦闘音だと気付くのに時間はかからなかった。

 

「私にも聞こえてきたわね。この音?」

「うん。……お姉様」

「ええ、わかってる。その辺りで戦っているみたいね」

 

 木が生い茂る森の下で、誰かが争っている。もしやと思い地に降り立ち、(グングニル)を手にして茂みから近付いて行く。

 

「──レミリアさん!?」

「えっ……!? な、何やってるの!?」

 

 そこに居たのは、赤みがかかった黒い髪の美少年──ミフネア。その姿は傷だらけで、防戦一方だったことがわかる。

 

 

 そして、もう1人。ミフネアと対峙しているのは、吸血鬼(同族)の少女だった────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──Izayoi Sakuya──

 

「ワタシもお姉様と一緒に行きたかったナー……」

「同じく行きたかったですねー」

「お嬢様からはここを守るように言われてますのでダメですよ」

 

 お嬢様達が出発してから2人を呼んで作戦会議。紅魔館を守るにしても、今後の方針を決めなければ。今しなければならないことは結界の維持とお客様の行方の捜索、それに妖精達の統率……かしら。妖精メイドは役立つ気はしないし、そもそも寝てる子が多いからそのまま放置でもいい気がする。

 

「小悪魔。パチュリー様から結界を頼まれています。任せていいですか?」

「はい! 任せてくださいよー。これでもパチュリー様の小間使いですからねー」

「スクリタ様はご一緒に館内の探索を。もしかしたら誰かお客様の1人くらい残っているかもしれませんので」

「ん。わかっタ」

 

 小悪魔と一旦別れ、スクリタ様と行動を共にする。館内の捜索はなにも吸血鬼が残っているかを調べるだけじゃない。ティア様や吸血鬼が消えた理由やどこへ行ったのかわかる何かが残っている可能性がある。それが見つかればお嬢様の役に立つかもしれない。しかし、どうしてティア様は消えてしまったのかしら。今までの生活に不満があったようには見えなかったし……。

 

「それにしても、どうしてティア様は消えてしまったのでしょう。示し合わせたようにお客様も皆さん消えてしまいましたし」

 

 客室を1つずつ確認していきながら、ふと思ったことを口にした。誰か数人が消えるなら示し合わせたというのは納得できる。ただ全員が一斉に消えるというのは少し違和感がある。あんな大人数が数分のうちに、誰にも気付かれることなく消える。一体どうやったのかしら。

 

「思い付いたからじゃないかナ?」

「思い付いた……ですか?」

 

 スクリタ様は何か知っているのかしら。そう思って聞こうとするより先にスクリタ様が口を開く。

 

「ティアはワガママ。ワタシも同じだけド。そして思い付いたらなんだってすぐやろうとする行動力があル。例えばこの世界に来てやることがあったラ、すぐに行動に移すと思ウ」

「つまり居なくなったのはティア様自身の意思、ということでしょうか?」

「少なくともワタシはそう思ウ」

 

 もし本当にそうなら、ティア様の部屋に何か残っていないかしら。いや、以前掃除した時に気になるようなものはなかったわね。そもそも理由がわかる何かがあるとしたら、持って行っている可能性の方が高いかしら。

 

「……ティア様はお嬢様達を大切になされているように見えましたが、ご相談もなく消えるものでしょうか?」

「みんなにとってそれがいいことになるとカ……あとは……」

「あとは……なんです?」

「みんなに気付かれると邪魔されるかラ」

 

 その時のスクリタ様の顔はどことなく、思い当たる節があるように見えた。スクリタ様の情報が真としたら、誰にも気付かれたくないからティア様は自分の意思で消えた、ということになるのかしら。そうすると、吸血鬼が消えたのもティア様が原因なのかしら。

 

「ティアは自分がいつも正しいと思って行動してル。そんな時は誰の意見にも耳を傾けなイ。だからワタシはティアが怖イ」

「え? それってどういう……」

「咲夜さーん! スクリタ様ー!」

 

 小悪魔の慌てた声。もしかしなくても異常事態ね。そのせいでスクリタ様の話を聞きそびれてしまった。またあとで聞くとしましょう。

 

「結界に異常ですー! 正門前、あと裏側にも何か来てます!」

「数と正体はわかりますか?」

「えーっと……前は2人、後ろは3人だと思いますー! 正体は……多分お嬢様方と同じ吸血鬼かと!」

「……吸血鬼ですって?」

 

 失踪した吸血鬼なのかしら。それとも私達とは別ルートで侵入していた吸血鬼? 

 

「……いや、どちらにせよわざわざ二方向から侵入しようとするのはおかしな話ですね。小悪魔はスクリタ様と一緒に裏側の対処を。敵対するならある程度の抵抗もお嬢様ならお許しくださるでしょう。私は──」

 

 正面に2人。裏側に3人。裏側にスクリタ様が向かってくれるならそちらは安心でしょう。小悪魔もパチュリー様とはいかずとも、パチュリー様に任されるくらいには魔法を使えるようですし。としたら、私が向かうべきは1つ。

 

「──正門に向かいます。美鈴が心配ですので」

 

 わざわざ別けて同時に来たということは、何か明確な意志を感じる。もしもの時、美鈴が1人で2人の吸血鬼を抑えれるかと聞かれると、やはり心配しかない。私も並の吸血鬼よりは強いと思うけど。いや本当に。

 

「スクリタ様。小悪魔をよろしくお願いします」

「うン。ワタシ達も行こう」

「はい、行きましょー!」

 

 時を止め、一目散に私は向かう────

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