東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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最終話「強欲な回想録」☆

 ──Tia──

 

 あの事件が終わったあと、お姉様に全部話して──私はまた怒られた。操った吸血鬼達によって起きた被害とか、吸血鬼を操ったことそのものとか。あの時言ってなかったことを全部怒られて。また泣いて。そして……お姉様達が事件の後始末を手伝ってくれた。

 

 吸血鬼による被害の方は、怪我をした妖怪がいたらしいけど、そっちは不問になった。怠けて腑抜けてる妖怪が悪い、なんて事件のあと来た胡散臭い人が言ってた。

 

 操ってた吸血鬼の記憶は種を埋め込んだ時に酷いものが残らないように、って最初から消えるように仕組んでたから、正気を取り戻した吸血鬼に何か言われることはなかった。だけど、お姉様に言われて謝って。みんな訳が分からないみたいな顔してたけどね。萃香に吸血鬼のことをお願いしたお陰なのか、大半は萃香が居た地底に移り住むことになった。ミフネアがこれからも吸血鬼達の面倒を見てくれるらしいから「お姉様は仕事が減った」って喜んでたっけ。

 

 地底の生活は意外と快適らしくて、地底に住むスィスィアやイレアナちゃんからよく話を聞いてる。イレアナちゃんだけ記憶を消す前に話したから、私のことは覚えてるみたいだけど。それなのに私のことを責めず、よく遊びに来てくれるからよくわかんない。遊び相手が多いから、私としては嬉しいことなんだけどね。

 

 あとは胡散臭い妖怪が来て変化ありきの世界だからなんとかと……なんだっけ。まぁ、なんか色々言われて。

 

 結果、私は権能を除く奪ったものを全部返して、反省と償いの意味が込められた謹慎中。外には人里とか大切なものがあるからって、外に出て騒ぎを起こさないと判断されるまで、私は館の中で暮らすことになった。敷地内は自由に出歩いてもいいから、大した苦じゃないけど。ただ謹慎が明けたらと萃香が遊びに誘ってきたから、それがちょっと嫌なんだけど。萃香、あれ以来苦手意識あるし。恩もあるけど。

 

「真っ赤だなぁ……」

 

 だから私は、お姉様達が異変を起こしてる最中も館で謹慎してる。少しでも景色を見ようと紅魔館の屋上に来たけど、何処を見ても紅色の霧しか見えないから、大した感想なんて出やしない。館の中なら参加したかったのに、私はまだ『スペルカードルール』っていう遊びの方法を聞いてないから。きっと参加しちゃダメってことなんだと思う。加減はそれなりにできるんだけどね。相手が人間らしいし、難しいだろうけど。

 

「あ、美鈴やってるなぁ……」

 

 眼下で色鮮やかで綺麗な弾幕が広がってる。あれは美鈴のスペルカード。あっちは……なんだろ。魔法使いかな。白と黒しかない。ビームみたいの飛ばして……あれ。もう終わったのかな。魔法使い、館に入ったみたいだけど。……美鈴、怪我はないみたいだけど通しちゃって大丈夫なのかな。

 

 にしても、あれを見てると身体中がうずうずする。遊びたいって気持ち。あとはアレも好きになるんだろうなぁ、っていう期待。って思うと、反省はしたし後悔もしてるけど、やっぱり私は何も変わらないんだね。

 

「食べたいなぁ……」

 

 最近はお姉様達が忙しそうにして遊べてない。未だに感じる飢えや渇きは、子どもだから無い物ねだりしてるなんてお姉様に言われちゃった。多分、お姉様の言う通りなんだろうけど。これが消えるのは、一体どれだけの年月が必要なんだろ。そう思うと気が滅入りそう。

 

「変わらないね、ティア」

 

 久しぶりに聞いた声。振り返ると、血のように真っ赤な髪の彼女がそこに居た。

 

「あっ! ウロ!」

 

 久しぶりに見たからって、思わず抱きしめちゃった。このまま吸血したら怒るかな。きっと怒るね。やめとこ。

 

「人肌恋しいの? ……いや、いつも通りかこれ」

「ウロ。今まで何処に居たの? お姉様探してたよ」

「それ見つけたら殺す勢いで探してるでしょ。わたしはレミリアに怒られるの嫌だから隠れてただけ」

 

 よくわかったなぁ、って。お姉様、ウロのこと聞いてとても怒ってたから。自業自得なんだろうけど。ウロ、私に手伝ってくれたから私は怒ってないんだけどね。

 

「そういえば、あのあとどうだった?」

「会えた。ティアのお陰。で、イラ達は先に帰ったよ。わたしはやり残したことがあったから、まだ残ってる」

 

 その言葉を聞いて察した。

 

「そっか。……うん。権能は返すよ。正直、私には強すぎて扱いづらいしね」

「えっ」

「え?」

 

 胡散臭い人にも言われたけど、奪ったものを全部返すって約束はしてるからね。これだけ例外、なんてわけにもいかない。

 

 とか思ってたけど……あれ、違うの? 

 

「あ、うん。ちょっと素直でビックリしただけ。成長したね、ティア」

「約束だからねぇ……」

「そっか。それで本題なんだけど」

「えっ」

 

 権能返却が本題だと思ってたんだけど。違うんだ。でも私、それ以外のウロの用事が思い付かないんだよね。

 

「どうしたの?」

「ウロ、返してほしいから会いに来たんじゃないの?」

 

 だから、私はそう尋ねた。そしたらウロは私から照れてるのか、お姉様と同じ色の目をちょっとだけ逸らして。

 

「……謝りに来た」

「騙したこと?」

「え。……気づいてたの?」

 

 ウロがどれのことを言ってるのかわからない。でも、全部終わったあと、結局できなかったんだ、って気づいたから。

 

「私が不老不死になれてたのって、あれ私が権能に集中できてたからだよね。だから、私の集中が途切れたら……例えば気を失ったり、途方もない時間で精神が壊れたりしたら、不老不死じゃなくなるよね?」

 

 こっちに来たら完全な不老不死になれると思ってた。でも、そうじゃなかった。集中力が保てる範囲、という制限付きの力。ウロの権能じゃ不老不死なんてなれやしない。そもそもウロがある程度成長してる時点で、不変じゃないしね。

 

「……わたしが不老不死になれる権能を持ってるのに転生するのは、その世代のわたしの集中力が長く続かないから。基本正気を失って、壊れる。完全性とか永続性で正気を保つこともできなかった。当たり前だよね。だって、その正気で力が動くんだから。正気じゃなければ権能は使うのも扱うのもできない。だから、永久機関なんてものは自前じゃ作れなかった」

「待ってウロ。もっと簡単に言お?」

 

 なんだか難しそうな言葉が聞こえたから話を遮る。黙って話を聞いて、これ以上難しくなるのも困るから。

 

「わたしの権能を使って不老不死にするって思ってたよね、ティア。わたしの力が、龍神に会うことで強力になるとか。そうじゃないの。わたしじゃ無理なことを龍神ができるから龍神に会う必要があるって言った。会えとだけ言って、わたしはそれを言わなかった。わたしは帰るために、あなたを利用するつもりだったから」

「うん……そうだよねぇ……」

 

 わかりやすく項垂れてみる。わかってたけど、改めて思う。信じてた人に裏切られるのって、こんな気持ちなんだなぁ、って。そりゃぁ、あれだけお姉様が怒るのも納得だなぁ。

 

「だから、謝りに来た。ごめん、ティア。……正直な話、あなたに嫉妬してた。羨ましいと思ってた。わたしはずっと独りだったから。あなたがわたしのことを好きでいてくれたのに、わたしは素直になれなくて、正しく返すことができなかった」

「……告白?」

「うん。……うん? 待って違う。多分ティアが思ってる告白じゃない!」

 

 でもこれ、好きなことに対する返しって。しかも素直になれなくて、とか。

 

「ウロの言い方、告白みたいなのに?」

「ティアのことは妹と思ってるだけでそんな気持ちないから!」

「ふーん。ウロがお姉ちゃんかぁ……」

 

 友達みたいな感覚だったけど、お姉ちゃんもありかも。そうなったら呼び方どうしよう。……んー、やっぱりウロ姉かなぁ。お姉様もお姉ちゃんも、もういるしね。

 

「私、ウロ姉のことだぁいすきっ」

「……ティア、わざとやってる?」

「うん。からかうの楽しいから。でも好きなのはほんとだよっ。……だからね、気にしなくていいよ。知ってたし、私もウロを利用しようとしてたようなものだしね」

 

 だから、お互い様。今まで通り仲良しの方がいいし、そんな終わったこと気にして関係を無かったことにしたくない。私はウロのことも好きだから。

 

「……それでもごめんね、ティア。あなたの夢、叶えられなくて」

「もう。気にしなくていいのに。終わったことだし、お姉ちゃん達は不老不死嫌いみたいだしねー」

 

 やってお姉ちゃん達に嫌われるのは嫌だから。あともう怒られたくないし。

 

「ウロ。嫌われてたとしても、私は好きだよっ」

「嫌ってないよ。嫉妬してただけ」

「あ、私じゃなくてお姉様に」

「うっ……。そ、そうだね……」

 

 好きな人が好きなものはより好きになれるけどね。でも、私が好きなことに変わりはないから。

 

「……ティア」

「なに? あ、ウロ。もう謝っ──」

「ありがとう」

 

 温かい熱が私を包み込む。ウロが小さな身体で、私を抱きしめていた。

 

「もうお別れするの?」

 

 それでもう会えないんだって気づいた。もう会うことがなくなるから、珍しくウロから行動してくれたんだ。

 

「今日のうちに行く。わたしが会うのはこれで最後になるね」

 

 抱擁が終わったあとも、彼女の顔はとっても近くて。少しして離れたけど、まだドキドキは残ってる。

 

「そっか。……今までありがとうね。色々あったけど、楽しかったよっ」

 

 その気持ちに嘘はない。けど、やっぱりお別れは寂しい気持ちになる。間近で見る彼女の顔をもう見れないと思うと、その気持ちはより強くなる。

 

「ん。わたしも。ティア、これ餞別」

「うん?」

 

 手に握らされた小さな瓶。赤い液体が入って……ってこれ。

 

「ウロの血だよね?」

「うん。大怪我した時にでも使うといい。短時間しか効かないけど、一時的なら多分──」

「なるほど、そっか」

 

 私はその瓶を開けて、液体を喉に注ぎ込む。いつもと変わらない甘い液体。持ち主であるウロはというと、ちょっとだけビックリした表情を見せてくれた。

 

「あらら……。必要なかった?」

「うん。私はもういいや。永遠は欲しいけど、もう少し違う欲しいモノを探してみることにするの。お姉ちゃん達も喜んで私も楽しめる何かをねっ」

 

 不老不死以外で永遠の何か。永遠って言葉は魅力的だから、欲しいモノなのは変わらないんだけどね。でも、お姉様が嫌がらずに欲しいモノを手に入れるのが一番だろうし。

 

「餞別は血しか用意してなかったけど……何か欲しいものはある? 用意できるものなら、最後だからね。貴女にあげるよ」

「欲しいもの? うーん……」

 

 欲しいものと言われても、今すぐは思い付かない。だって、色々ありすぎるから。私はまだ色んなものが欲しいし、知らないものも全部欲しい。どれか1つに絞るなんて……。

 

「あっ」

 

 ふと思い出した。ウロと交わした最初の約束のこと。約束は守って、果たした。だけど、冗談で伝えた破った時のことを、今ならやってくれるかも。なんて、小さな期待が頭の中にぽっと出てきた。

 

「何か思い付いた?」

「うん。先に聞くけど、権能はどうやって返すの? キスして渡す?」

「きっ!? しなくていいから! いつもみたいに血でいいから!」

 

 頬を赤くするウロを見てると心の中で感情が沸き立つ。お姉様と同じ色の目をしてるから? ううん。そうじゃない。答えは簡単で、私はウロも好きだから。

 

「そっか。帰るのは今日遅くでもいいんだよね?」

「いいけど……な、なに? 帰らないでとか無理だからね……?」

「それはわかってるよ?」

 

 ウロの思いは尊重したいからね。無茶なことは言えないよ。うん、無茶なことはね。

 

「ウロ……」

「ちょっ、近いんだけど……」

 

 顔を近づけると、ウロの顔はイチゴみたいに真っ赤になって。

 

「約束。破ってないけど、騙してたよね。なら、破ってたのと同じじゃない?」

「うっ……。それは、そう……かも?」

 

 騙してたのは許したけどね。これから頼むことはそう言った方が通りやすいだろうし。

 

「血は嬉しかったよ。だけどね、私はもっと欲しいのあるの」

「な、何かな……?」

「ねぇ、ウロ姉」

 

 逃げられないように腕を掴んで引き寄せる。目と鼻の先に赤い髪がチラつき、朧気な紅色の眼が泳いでるのがよく見える。

 

「私、ウロ姉が食べたいなァ……」

 

 耳元で蠱惑的に囁く。赤髪の彼女は頬を朱色に染めて私を見ないように視線をずらして。だけど、私が許すわけもなくて。空いたもう片方の手で、ウロの頬に触れて顔をこっちに向けさせる。私から目を逸らさせないように。

 

「うぅ。……確かに、嘘ついたし、騙したよ。け、けどほら。お姉さんとかに見つかるとわたし──」

「今日はお姉ちゃん達異変で忙しいから大丈夫。地下までは来ないよ? それに私にルーンを教えてくれたウロなら、吸血鬼を転移させたルーンの故郷(オセル)使ってバレないように逃げれるよね?」

「くっ……。やだなぁ……。これでも貞操は死守してきたんだけどなぁ……」

「へ?」

 

 食べるってそっち想像してるんだ。まぁ、私はどっちでも構わないけど。でもこれが最後だし、そっちの方がいいかな。

 

「え? あ、もしかして物理的な──」

「じゃぁそっちじゃない方で」

「じゃあって何!? やっぱり物理的に食べられようとしてた!?」

 

 全部食べるわけじゃないのに大袈裟な。でも魔女だから美味しいんだろうなぁ。人間と変わらない味だからね。ウロはこう見えて甘いものをよく食べるから。噛み付けば柔らかい肉の感触が私を満たしてくれて、きっとその味も甘いんだろうなぁ。……なんて想像すると、どんどん我慢できなくなるね。

 

「ほら。うだうだ言ってないで。いいかどうかハッキリしてよ」

 

 無理ならそれでもいい。私だってダメもとで頼んでるから。でも、もし大丈夫なら……。私はきっと我慢できないから。

 

「……はぁ。わかった。いいよ! 好きにしていい! ただし。お姉さん達には言わないで。知られたくないから。2人だけの秘密にしてっ」

「ふふん、さっすがウロ姉っ!」

 

 改めて抱きしめる。ウロの身体はお姉様達みたいに小さくて柔らかくて温かくて。

 

 ああ。『これ』を今から食べるんだと思うとゾクゾクする。楽しみが抑えきれなくていつ爆発してもおかしくないや。

 

「ウロ。ありがとうね。……これが最後だとしても、私はウロのこと忘れないよ、きっとっ」

「嬉しいね。わたしもティアのこと忘れない。きっと来世もね」

 

 その言葉でちょっとだけ1つ気になることが生まれて。

 

「そういえばさ」

「うん」

「貴女はこれで最後でも、ウロボロスに会えることはあるの?」

 

 さっき「わたしが会うのはこれで最後」って言ってた。だけど、転生を繰り返すウロボロスなら。

 

「それはわたしにもわからない。わたしは魔女。ちゃんとしたウロボロスじゃないから。全部の記憶を持ってるわけじゃない」

「そっか……」

 

 ウロでもわからないんだ。そう思って項垂れてると、ウロが私の頭を撫でて。

 

「だから、ティア。『待て、しかして希望せよ』だよ」

「希望……うんっ。そうだね! また会おうねっ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「じゃあそういうわけで……はぁ。本当にやるの……?」

「当たり前。早く行こーっ」

 

 ウロの手を引き、私は彼女を部屋へと誘う。彼女との会話も関係もこれで終わり。だからこそ。最後だからこそ、私と彼女の間に涙なんて必要ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──EXTRA STAGE Sister of Scarlet──

 

 

 

 

 

 

 

 館で放浪する紅白の巫女を見て、また欲しいと感じて。そして、私は思う。

 

 私はこれからも変わらないって。

 

「今日はいつにもまして暑いわね。こんなに攻撃が激しいのは、さっきの女の子がおかしくなっちゃったから?」

「暑い? 快適な温度だけど」

 

 全てを欲しがるほど強欲で。

 

「他にもおかしい奴が居るのね?」

「え? うーん……美味しいかどうかで言うと、美味しいかも?」

「やっぱりおかしな奴ね」

 

 力を持てば人より強いと思うほど傲慢で。

 

「貴女がお姉様の言ってた紅白の巫女?」

「お姉様? レプリカとかいう悪魔のこと?」

「レミリア! レミリアお姉様!」

「妹に見えないわね」

 

 自分が持ってないものを持つ人がいれば嫉妬して。

 

「妹君に言いたいけど、お姉様はよく家の神社にやって来て迷惑なの。何とか言ってやってよ」

「言ってるよ。私が止めても行っちゃうんだから」

「もっと頑張って」

 

 食べ尽くしたいと考えるほどの暴食が存在して。

 

「ところでさ」

「うん?」

「私今暇なの。謹慎中でね」

 

 見るもの全てが愛おしく感じるほど色欲があって。

 

「要注意人物なんだね」

「私と遊ぼ?」

「何して遊ぶ?」

 

 自分を否定されると憤りを覚えるくらいの憤怒を持って。

 

「弾幕ごっこ、流行ってるんだよね。私ともやろ?」

「ああ、パターン作りごっこね。私の得意分野だわ」

 

 好きなもの以外には全くと言っていいほど関心がないくらいには怠惰で。

 

「負けたらもっといっぱい……遊ぼうね!」

「勝ってから言って」

 

 だけどそれでいいよね。お姉様達は()を赦してくれたから。罪を重ねても、お姉ちゃん達が正してくれるってわかったから。私は(間違い)を犯しながら大人になる。怒られて赦されてを繰り返して。そうして成長を重ねて。

 

 私が ()じゃなくなった時に、私は初めて大人になるんだろうなぁ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤い髪……珍しいね」

 

 幾年も経ったある日のこと。

 

「……わたしは嫌いだけど。この髪色。親とも違う突然変異でウンザリしてる」

 

 地底の奥底で彼女と同じ赤い髪の吸血鬼と出会った。

 

「私は好きだよ?」

「……急に出てきて褒められても反応に困るんだけど」

 

 彼女に話しかけた理由は、髪色だけじゃなくて雰囲気も似てたから。でも、最後に会ってから長くなるから確かじゃない。それでもこの胸に秘めた感情は『彼女』だと告げていて。

 

「そっか。ごめんね。若いけど、1人でいるの?」

「親がわたしの髪色見て、不倫相手の子なんじゃないかって喧嘩して。……色々あって今は1人。あなた、あのスカーレット家だよね? こんな地底の中でも奥底になんの用?」

「友達に会いに来た帰りだよ。1人で大丈夫? 家は?」

「地底の妖怪に借りてる。遊ぶことはないけど、みんな優しいから……大丈夫」

 

 この娘と話してると、彼女と初めて出会った時を思い出す。独りが嫌で構ってほしそうな目をしてた彼女のことを。彼女は口に出すことはなかったけど、私は最初から心の底では気付いてて。

 

「よかったらうちに来る?」

「いいよ。邪魔しちゃ悪いし」

「いいんだ。じゃあ行こっか」

「そっちのいいじゃないよ!?」

 

 この娘が彼女の前か後かわからない。そもそも彼女の転生体なのかすらもわからない。

 

 ──それでも私は私自身の直感を信じて。

 

「ふふん。でも、独りは寂しいでしょ? おいで。私の館に案内してあげる」

「…………うん」

 

 少し考えたあと、この娘は静かに頷いて。私はあの時みたいにこの娘の手を引っ張った────




ようやくですね。はい、ようやく最終話。ようやく完結です。

全90話+αで約2年半という投稿期間でしたが、なんとかここまで来ることができました。応援してくださった皆様や読んでくださった皆様のお陰です。

まぁここで長ったらしく話すのもなんですし、完結した感想とかは後日活動報告にでも載させていただきます。疑問とかもまぁ、あればそっちとかTwitterとかで聞くと思います多分。

さて、最後となりましたが。

ここまで付き合ってくれて。さらにはここまで読んでくださって。
ありがとうございました。
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