後日譚「幻想的な記録」
──幻想郷縁起──
『北欧の吸血鬼 ハマルティア・スカーレット』
能力 自分を強化し得る力を吸収する程度の能力
危険度 極高
人間友好度 極低
主な活動場所 紅魔館
❁
紅魔館には危険な吸血鬼が多く住むが、その中でも一際危険と言われるのが主人であるレミリア・スカーレットの妹である北欧の吸血鬼*1、ハマルティア・スカーレットだ。
ハマルティアは滅多に紅魔館から出てくる事はなく*2、紅魔館に入った際に高確率で確認する事ができる。
姉と似た翼を持ち、髪は薄い緑色をしていて、背丈や年齢は姉よりも少し高く見える。それでも姉と差程変わらない容姿で、十程度の少女の様な姿をしている。
出会った者に対して興味を抱くと、執拗に追いかけてくる。珍しい物を与えると注意を引くことができるとされ、実際にそれで逃げ切った者もいるとか。行動も性格も子供っぽく、驚異的な身体能力と無尽蔵の好奇心を兼ね備えた、いつ爆発してもおかしくない強欲の悪魔である。
常に紅魔館で行動し、館から外に出ることはない。詳細不明ながら、追われても館の外に出れば追ってこずに、逃げ切れたという報告がある。頑なに館を離れようとしないのは、何かを守ってるからなのかもしれない。
能力の力を吸収する事は、本人が意識することで触れた者の力を吸収する。しかし吸収したことで、能力など本人固有の力は吸収しても吸収された本人に残り、体力や魔力など消費できる物は本人に残らない、と吸収する物によって違いがあるらしい。
吸収する物に限界があるのかは不明で、姉のフランドールの破壊する力と同様に恐ろしい能力である。吸収する物は本人が選べるらしいが、稀に無意識下でも能力を使用する場合があるため、近づかない方が賢明である*3。
❅ 目撃報告例 ❅
・紅魔館に堂々と忍び込むとよく会うんだよなぁ。捕まれば死ぬほど疲れるからいつも全力で逃げてるんだけど、折角忍び込んだんだから出てこないで欲しいぜ(霧雨魔理沙)
恐ろしく自分勝手な報告である。
・怪我をして倒れてたら、紅魔館の人に助けて貰って、何日か泊まった事があったよ。その時妹君が来て、散々話をさせられたんだ。見た目は子供だけど、圧が凄くて下手すれば死ぬんじゃないかって冷や汗かいたよ(匿名)
どうやら外の世界に興味を持っているらしい。
・紅魔館の野外パーティに参加した時、館の中で騒いでる姿が見えたよ。恐ろしい。だけど、姉は参加してるのに妹は参加しないんだな(匿名)
参加できなくて騒いでたんだろうか。
❅ 対策 ❅
滅多に見る事も出会う事も無いだろうから、注意する事はできないが、紅魔館には常に吸血鬼が居ると言う事だけは頭に入れておく必要がある。たとえ姉のレミリアが留守にしている時でも、家の中には確実にまだ吸血鬼が居るので不用意に忍び込んだりしてはいけない。
出会ってしまった場合は大人しく珍しい物を与えるか、全力で館の外まで逃げるしかない。もっとも、人間の身体能力では吸血鬼に適うことはないため、やっぱり珍しい物を差し出す方が賢明である。また彼女は興味を抱かなければその者を追いかけることがないという。気に入られない限り、二度目以降は見逃されるらしい。
彼女の能力は触れ続けるだけで人を簡単に殺してしまう凶悪な能力だ。近づくだけでも危険だが、彼女の方から近づいてくるため厄介である。抵抗しようものなら力を吸収され、自由に動くことができなくなる。それに加えて吸血鬼の持つ超人的な身体能力も当然ながら持っており、間違いなく勝負にならないだろう。
──The Grimoire of Marisa──
憤怒「イラブレス」
・使用者 ハマルティア・スカーレット
・備考 紅魔館にて見た、怒りっぽいタイプ
・憤怒度 ★★
口から炎を吹くスペルカード。
何故炎を吹けるのかは謎。だが、炎が届く範囲は広くて大雑把だし、パチュリーみたいに避けやすいようにムラを作ってるわけじゃないから避けにくい。ただもう少し見た目は気にした方がいいな。
強欲『アワリティアサークル』
・使用者 ハマルティア・スカーレット
・備考 紅魔館にて見た、物欲しそうなタイプ
・強欲度 ★★★★★
魔法使いにとって魔法陣は基本中の基本。しかし、こいつの使う魔法陣は普通じゃない。強制的に中に入れられ、中で使った弾幕はティアに吸われるから、耐久を強いられることになる。弾幕もとち狂ったように全方向に撃ってくるから、勢いでかわすしか方法は無い。
色欲『ルクスリアヴァンパイア』
・使用者 ハマルティア・スカーレット
・備考 紅魔館にて見た、仲良しタイプ
・色欲度 ★★★★
壁を使ったスペルカード。力任せの反射弾だ。こいつもやっぱり姉妹である。レミリアやフランに似たような弾幕があるが、こいつは大雑把が過ぎる。きっと姉妹で合わせて作ってるんだな。
嫉妬『インウィディアスカーレット』
・使用者 ハマルティア・スカーレット
・備考 紅魔館にて見た、羨ましいタイプ
・嫉妬度 ★★★★
私が使うスペルカードを自分流にアレンジして使うスペルカード。アレンジするスペルカードはティアの気分次第だから何が出てくるかわからない。ただ私が相手の場合、よくマスタースパークをアレンジした紅い極太レーザーを出してくる。アレンジが思い付かなかったのかもな。
傲慢『スペルビアシスター』
・使用者 ハマルティア・スカーレット
・備考 紅魔館にて見た、思い上がるタイプ
・傲慢度 ★★★★
槍のように鋭くした弾幕を超高速で投げた後、大きな剣を振り回すスペルカード。どっちも避けるのは簡単だが、武器が通った後に残る弾幕が厄介である。しかも立て続けに投げて来るから、どんどん弾幕が溜まっていって避けにくくなるから大変だ。多分、参考にしてるのは姉のスペルカードだな。
大罪『ハマルティアエリュトロス』
周囲に力任せに弾幕を撃ちまくり、ある程度離れると弾幕がティアへ向かって帰ってくる。不可能弾幕かってほど多い。力技。吸収イメージらしい。
・使用者 ハマルティア・スカーレット
・備考 強引な演劇タイプ
・参考度 ★
超高密度なスペルカード。周囲に力任せに弾幕を撃ちまくって、一定時間経つと弾幕がティアに向かって帰ってくる。そのうち前からも後ろからも弾幕が来るようになる。ティアはあまり深く考えてないみたいで、弾幕が戻ってくる時間はいつもバラバラ。ちなみにエリュトロスはスカーレットと同じような意味らしい。スペルカードに自分の名前付けてるなんて珍しい奴だぜ。
「そういや大罪ってあれだよな。七つの大罪だよな」
館で暇を持て余したティアと参考にするため弾幕ごっこで遊んだ。そのあと気になった私は、休憩する彼女に疑問を投げかけた。
「うん。強欲、色欲、暴食、怠惰、嫉妬、傲慢、憤怒の7つのことだよ」
昔何かの本で読んだ記憶がある。その記憶と全く同じ7つの言葉。だがティアが使ったスペルカードの中に『怠惰』と『暴食』の文字はない。
「お前のスペカ、幾つか足りなくないか?」
もしや作ったけど使わなかったのか。そんな可能性を思い付いて彼女に問いただす。しかし聞いたあとすぐに私はその可能性を頭から消し去った。私は弾幕ごっこを始める前に「全部使ってくれ」と言って、ティアも了承したんだ。悪魔である彼女がそう簡単に約束を反故にするわけないと頭ではわかってる。
「まだ会ってないから。会ったことある人のスペルカードしか作ってないの」
「ふーん。会えるのか?」
七つの大罪にはそれぞれに象徴となる悪魔やら動物がいると聞く。きっとそいつらのことなんだな。彼女は悪魔だから、そういった奴らと縁があったとしても驚きやしない。
「さぁ。待て、しかして希望せよ。だよっ」
「なんだそれ」
雑にはぐらかされたな。だけど、彼女の目はもう別のものに向いている。こいつはこれ以上何か話す気も、自分から探しに行く気も無いらしい。無理して集める気もないんだろうな。それに気付いた私もそれ以上深入りすることはなかった。
──文の取材──
「昔会ったよね、多分。見覚えあるもん」
日課になった紅魔館の散歩中。偶然その人を廊下で見つけた。
「あやややや。まさかティアさんに出会ってしまうとは」
「うん?」
「いえ、なんでもありません。私は毎度お馴染み『文々。新聞』の射命丸文です」
しんぶん……あ、新聞ね。そういえばお姉様がいつも貰ってる新聞と同じ名前。あの新聞、この人のだったんだ。
「そっか。文はなんでここに?」
「ちょっと新聞のネタにならないかなと取材に参りました。今日は先日の異変のことでレミリアさんにお話をと」
「お姉様?」
「はい。神社に行っても居なかったもので、直接伺いに」
今日は外に出てないし、多分自分の部屋にでも居るかな。どうせ暇だったし、案内していっか。危険な感じはしないしね。
「案内してあげようか?」
「お願いします」
意外とすんなりお願いされて。素直な人なのかな、なんて思ってみたり。前見た時と雰囲気違うんだよね、なんだか。
「あ。せっかくですし、ティアさんにも軽く質問していいですか?」
「うん。暇だしいいよ」
お姉様の部屋を目指しつつ答える。どうせ部屋に着くまでだろうし、私は暇が潰せるならなんだっていい。
「ティアさんから見たレミリアさんってどういう方ですか?」
「お姉様? うーん、しっかり者? でもお姉様、羽目を外すと見た目通りになるんだよねぇ」
「見た目通りというと?」
「子どもっぽくなる。ここに来てから余計に酷くなったかな」
私が言えたことじゃないけどね。きっと、平和になって警戒心解けちゃってるんだろうね。
「私から見ればティアさんも充分子どものように見えますが」
「実際今年で490歳だから子どもだよ」
「そうでしたか。レミリアさんは一体お幾つなのです?」
「500歳だね、ちょうどだよ」
「変わらないじゃないですか」
10歳しか違わないからそういう反応が来るとは思ってたけど。でも、私にとって差ほど変わらなくてもお姉様はお姉様だからね。私よりちょっとだけ大人だと思ってるから。
「それではレミリアさんが起こした異変についてどう思われますか?」
「紅霧異変? あれ私参加してなかったからなぁ。太陽が霧で隠れて便利だなぁ、って思ってたくらい」
「やはり吸血鬼は太陽が嫌いなのです?」
「うん。吸血鬼で好きな人はいないと思うよ」
死ぬわけじゃないけど、日光を浴びると大火傷しちゃうからね。それで肌が荒れちゃうから嫌いだ。
「なるほど。太陽以外にも他に弱点はあるのです?」
「銀とか治り遅くなっちゃうから弱点かな。あとは……うーん。なんか他にもあった気がするけど、忘れちゃったや。あ、文。着いたよ。そこの部屋」
「おっと。では質問はここまでですね。案内ありがとうございました」
そう言って頭を下げる文。この人、こんな礼儀正しい人だっけ。なんて思ったり。あの時は敵対してたからなのかな。敵なら態度変える、なんて普通のことだしね。
「じゃあね、文。また会おうね」
「はい。失礼します」
まぁ、別にいいや。そう思って私はその場を後にする。