招カザル来訪シャ~頼れる相棒は世界を喰らう者~   作:あったかお風呂

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ー幕間ー 舞台ノ裏側デ

 1. 始マリハ突然ニ・裏『ゴミ共ノ足掻キ』

 

 ベルフラウが海賊船から投げ出され、島に漂着したその日。

 海岸を仲間と共に移動しているゼリーたちは見たことのない存在を見つける。

 地面からそれほど高くない位置を浮遊する白いそれは自分たちの縄張りを我が物顔で移動していた。

 お世辞にも知能が高いとは言えないゼリーたちだが、その分本能的な感覚についてはなかなか鋭い。

 だから察することが出来た。

 

 ──あれがここに居てはいけない異物だと。

 

 ゼリーたちの獣にも似た本能が警笛を鳴らす。

 アレはいけない。

 自分たちの縄張りにとって……いや、この世界にとっての異物。

 自分たちが現在暮らすこの世界を──それどころか自分たちの故郷までも脅かしかねない。

 

 メイトルパの生命としての本能が故郷の世界を滅ぼしかねない存在を排除しろと叫ぶ。

 ゼリーたちは遥か遠い世界に望郷の念を抱きながらも、故郷を守るために異物の元へと歩みを進める。

 

 ふと隣を見ると仲間たちも故郷を守るべく意志を固めているようだった。

 仲間たちとともに異物を囲んでいく。

 決して逃げられないように追い詰めていく。

 故郷を守るのだ。

 自分たちが、掛け替えのない故郷を……! 

 

「あっちへお行き! 弱いものいじめなんて恥ずかしいとはおもいませんの!?」

 

 突如聞こえた声と共にニンゲンが自分たちと異物の間に立ちふさがる。

 ……ニンゲン。

 自分たちをこの世界に連れ去ったものたち。

 何度想おうと何度願おうと故郷には帰れない。

 ニンゲンを見たゼリーたちが抱いたのは原始的な感情──怒り。

 

 自分たちが今故郷にいないのはニンゲンが原因なのだ。

 当然、ゼリーたちにとってニンゲンは憎い存在だった。

 目の前に現れたなら丁度いい。

 自分たちの怒りをその身に味あわせてやるのだ。

 

「プギャア!?」

 

 仲間たちの内の一体が突然悲鳴を上げる。

 

「あなたたちの相手は私です!」

 

 投石による攻撃を行ったらしい声の主はまた別のニンゲン。

 邪魔をするというのか。

 自分たちを故郷から引き離すだけでは飽き足らず、故郷そのものを消し去ろうというのか。

 怒りはふつふつと煮えたぎり、沸騰する。

 ゼリーたちは咆哮を上げて突撃し──。

 

 ──視界が碧い光で焼かれた。

 

 

 

 

 

 2. 招カザル来訪シャ・裏『我ノ意ノママ』

 

 ベルフラウが結んだ誓約によって出来た繋がり。

 その繋がりから力が引き出されたことに困惑していたイリだったが、今では落着いていた。

 そもそも、魔力が高まること自体はイリにとって有利なのだ。

 過程はともかく、結果だけ見ればイリにとっては利益。

 そしてこれだけの魔力があれば出来ることも増える。

 

 イリはベルフラウと過ごしていた浜辺を離れ、夜の森に入る。

 島の中心部、『遺跡』を目指して。

 

 

 

 動物たちも眠る静かな森を抜けたイリの視界に入ったのは巨大な施設。

 それこそ、この島の住民たちを召喚した『喚起の門』。

 

「ギシシッ!」

 

 イリはそれを見上げて嗤う。

 損傷し、今は制御を受け付けなくなった『喚起の門』。

 その無差別な召喚に指向性を与えるのだ。

 破損した制御ユニット部にイリが糸を吐くと制御ユニットは繭に包まれる。

 繭は内側から胎動するかのように赤く光っていた

 

 

 

 朝を迎えるとパニックになったベルフラウがアティに諭されてイリを喚ぶ。

 ベルフラウによって強制的に呼びだされてしまったが、すでに仕込みは終わっていた。

 

 そしてアティがアルディラに連れられて遺跡へと向かう。

 アティの持つ魔剣の魔力に『喚起の門』が鳴動し──白い異形たちが召喚された。

 

 




1.お願い勝ってゼリー!あなたが負けたらメイトルパはどうなるの?大丈夫、相手は丸腰のニンゲンなんだから!
次回、ゼリー死す。
抜剣スタンバイ!


2.裏話という名の伏線解説回。
イリがいないの!!の間に仕込みが行われていましたよ、という話。
「どうしてイリは帰ってきていないのか?」の答えがこれ。

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