招カザル来訪シャ~頼れる相棒は世界を喰らう者~   作:あったかお風呂

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『特殊ルート』
曖昧な呼び方をしてきました
何が特殊なのか?
今話のタイトルを見ればわかりますよね


微笑ミノ代償

 夕闇の墓標の戦いから撤退して一夜が明けた。

 アティが自室のベットから身を起こすと、ソノラが顔を覗き込んでいた。

 

「先生……大丈夫? 昨日あんなことがあったから心配で……」

 

 目を伏せるソノラを見てアティの脳裏に昨日の光景が蘇る。

 帝国軍と戦ったこと。

 無色の派閥がやってきたこと。

 帝国軍の兵士たちが虐殺されたこと。

 ──そして、アズリアが殺されたこと。

 

「……アズリア」

 

「あたし、アニキたちに先生が起きたって知らせてくるね!」

 

 顔を伏せて呟くアティを見たソノラは気まずそうに言うと、部屋から出て行った。

 それと入れ替わるようにドアがノックされる。

 扉から顔をのぞかせたのはアルディラだった。

 

「……アティ。話があるの……剣のことについてよ」

 

 アルディラはベッドの端に腰を掛けると話始める。

 

「まず最初に言わせてもらうわ。あなたはこれから先の戦いに加わるべきではない」

 

「えっ……どうしてですか!?」

 

「あなたの持つ魔剣……碧の賢帝は持ち主の怒りや憎しみ……そういった感情を糧に力に増すわ。そしてその感情を苗床にして持ち主を侵食していく。昨日殺された帝国軍の隊長と親交があったあなたが無色の派閥との戦いに加わることはリスクが高いのよ」

 

「私は何もせずに待っていろって……みんなに任せて待っていろって……そういうことですか?」

 

「そういうことよ。もしあなたが魔剣に侵食されて取り込まれてしまったら……遺跡で行われた『継承』の続きと同じ結果が齎されるかもしれない」

 

 無色の派閥との戦いに加わるなら、オルドレイクとの対決は避けられない。

 アズリアを殺した張本人を前にして怒りや憎しみを抱かずにいられるだろうか。

 もしも魔剣に取り込まれてしまえば、アティの人格は上書きされてしまうかもしれない。

 そして遺跡は復活を遂げるだろう。

 

「それに……ベルフラウが立ち直って部屋から出てきたときにあなたが居なくなってしまっていたら、どう思うかしら」

 

「それは……」

 

 部屋に篭ったきりの自分の生徒を想って俯く。

 まだ不安定であろうベルフラウのことは心配だった。

 

「後は私たちに任せなさい。あなたはこの船でベルフラウと待っていればいいのよ」

 

 アルディラはそう言うと部屋から出て行ってしまう。

 アティは俯き、自分がどうするべきか葛藤し始めるのだった。

 

 

 

 ベルフラウとアティを除いたメンバーは集いの泉へと集まっていた。

 アティへの説明と説得を行ったアルディラは報告を始める。

 

「説得はしてきたわ。……納得したかは微妙なところだけどね」

 

「少しの間だけじっとしてもらえれば充分です」

 

「そうね。アタシたちが一仕事終えるまでじっとしてもらえれば充分よ」

 

 ヤードとスカーレルの言葉に皆頷く。

 

「行こうぜ。無色の連中と遺跡をぶっ潰しによ!」

 

 カイルは自分に気合を入れるように拳を打ち鳴らす。

 カイルの言葉を合図に一同は遺跡へと向かうのだった。

 

 

 

 自室で俯き悩み続けていたアティだったが、ようやく結論が出たのか顔を上げる。

 

「やっぱり……みんなにだけ任せてじっと待っているなんて出来ません!」

 

 自分が待っている間に無色の派閥との戦いで仲間たちが傷つくかもしれない。

 そんなのはアティには耐えられない。

 仲間が傷つくのよりも自分が傷ついた方がずっといい。

 それがアティの出した結論だった。

 アティは部屋から出ると、遺跡に向かう前にベルフラウの部屋の前に立ち寄る。

 

「ベルフラウさん。あのね、昨日……アズリアが殺されてしまったんです。島にやってきた無色の派閥という集団に襲われて……。私は無色の派閥と戦いに行きます。もうこれ以上、大切な人を傷つけられる訳には……失う訳にはいかないから!」

 

 相変わらず返事のない扉に向かって『だから待っていてくださいね』と付け加えると、アティは遺跡へと駆け出して行った。

 

 

 

 カーテンが閉められた真っ暗な部屋。

 ベットに腰を掛けていたベルフラウは床に足を付けると立ち上がった。

 

「先……生……」

 

 アティの言葉を聞いていたベルフラウは状況を理解した。

 アティの学友であったアズリアが殺されてしまったこと。

 それはこの島を作った集団、無色の派閥によって行われたこと。

 アティが無色の派閥と戦いに行こうとしていること。

 

「行かなきゃ……!」

 

 きっとあの優しい先生は傷ついている。

 きっと無茶をするだろう。

 みんなを守るために自分を犠牲にするだろう。

 だから自分が先生を助けないといけない。

 ベルフラウは閉ざされていた扉に手をかける。

 開いた扉から光が差し込み、真っ暗だった部屋の中とベルフラウを照らす。

 ポケットの中にあるお守り代わりのサモナイト石の感触を確かめ、ベルフラウは部屋の外へと飛び出していった。

 

 

 

 島の中心部、遺跡前。

 遺跡を手に入れるためにこの島にやってきた無色の派閥は既に遺跡の前へと侵攻していた。

 

「それにしても流石は無色の派閥の精鋭……あの化け物たちを追い払っちまうとは」

 

 無色の派閥に混じってイスラの横を歩いていたビジュは昨日の戦いを思い返していた。

 無色の派閥は召喚師の一派、当然多くの召喚師を抱えている。

 暗殺者たちの攻撃は白い異形たちに効いていないようだったが、どうやら召喚術は効くようでダメージを受けた異形たちは早々に撤退していったのだ。

 

「そこ! 無駄口は慎みなさい! 優秀なのは当然です、オルドレイク様の率いる軍勢なのですから」

 

 ビジュはツェリーヌの叱咤が飛んでくると肩を竦めた。

 

「奴らからは生を……気を感じられなかった。まるで生物ではないかのようにな」

 

「ほう、すると何か? 命を持たぬものたちがダメージを受けて逃げたと? 奇妙なことだ」

 

 ウィゼルの言葉を聞いてオルドレイクが小さく笑う。

 オルドレイクの前に赤いマフラーを巻いた暗殺者が跪くと報告を始めた。

 どうやら遺跡内部、入り口近辺の調査が完了したようだった。

 オルドレイクは機嫌が良さそうに口の端を曲げると遺跡内部へ向けて進行を始めた。

 

「もう少しゆっくりしていってくれよ、おっさん!」

 

 それを止めたのは後方から聞こえたカイルの声。

 

 それに振り向いた無色の派閥が見たのはカイル一家に護人四人とミスミを加えた海賊と島民の混合部隊。

 

「先生の姿が見えないみたいだけど、いいの? 来るまで待っててあげようか?」

 

 イスラが煽るようにいうとヤッファが吼える。

 

「あいつがいなくても、俺たちだけで勝ってやるよ!」

 

「今度は俺たちの手であいつを……あいつの笑顔を守るんだ!」

 

 ヤッファに続いて吼えるカイルの叫びを合図にして戦いが始まった。

 

 

 

 遺跡へと向かうアティの耳に届いたのはイスラの笑い声だった。

 

「あははは! 大口を叩いていたわりにはこんなものかい? 何もできていないじゃないか!」

 

 走るアティの視界の遠方に映ったのは膝を付くものや倒れるものたち──仲間たちだった。

 その顔を悔しげに歪め、無力感に打ちひしがれる仲間たち。

 

「戦術の一つも用意していないなんてね。戦力差を理解しているのかしら?」

 

 マフラーの女がカイルたちを見おろし、冷笑する。

 

「雑魚どもが無駄なことをしただけだ。……砂棺の王」

 

 オルドレイクが召喚したサプレスの死霊王はアズリアを殺した時のように錫杖を掲げる。

 

「……さらばだ! 『霊王の裁き』!」

 

 アズリアの命を奪った雷が今度は仲間たちの命を奪わんと降り注ぐ。

 

「させません!!」

 

 その雷を弾き返したのは抜剣したアティだった。

 

「アティ……来てしまったのね」

 

「ごめんなさい、アルディラ。私にはただ待ってるなんて出来なかった」

 

「剣のほうから来てくれるとは、手間が省ける」

 

 クツクツと嗤うオルドレイクは部下たちに指示を出す。

 魔剣の主を殺して、奪えと。

 

「私はもう大切な人を失いたくない……!」

 

 アティは心の中で剣に呼びかける。

 力を貸してほしいと。

 怒りや憎しみがほしいならいくらでも渡すから、大切な人たちを守らせてほしいと。

 魔剣はそれに答えて輝きを増す。

 アティの中で沸いた怒りや憎しみを力と殺意に変え、アティに流し込む。

 

「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 力と殺意を携え、白い髪を揺らしたアティが駆ける。

 

 

 

 アティが無色の派閥へと突撃するその最中、この場にいなかった人物の叫びが響いた。

 

「先生……!」

 

 姿を現したのはイリの裏切り以来、ずっと閉じこもっていたベルフラウ。

 すこし痩せたように見えるその脚で大地に立っていた。

 

「ベルフラウ……出て来れたんだ」

 

 呟いたソノラと同様に倒れた仲間たちもベルフラウの登場に気づくがその内心は複雑だった。

 部屋の外に出てきてくれたのは嬉しい。

 だがここには来てほしくなかった。

 

 

 

 ベルフラウが目にしたのは倒れる仲間たちと殺意に満ちたアティの姿。

 きっとアティは無色の派閥を殺すつもりだろう。

 二度と大切な人たちを失わないようにするために。

 でもきっと人を殺してしまったら、命を奪ってしまったら。

 ベルフラウの大好きな先生はいなくなってしまう。

 優しい先生はいなくなってしまう。

 先生の笑顔は見られなくなってしまう。

 

 ベルフラウにはアティを止められない、その力がない。

 どうすれば止められるのか、その手段に思考を巡らせて……気が付く。

 ポケットの中にある、大事な絆の証に。

 唯一、アティを止めうる存在に。

 

 対面するのは怖い。

 何かの衝動に駆られ、ベルフラウを裏切った大切な存在が自分の知らないナニカに変わってしまっているのではないかと恐れている。

 でも、それでも。

 ベルフラウ自身がアティに言ったことだった。

『そこで迷っていたら大切なモノをなくしてしまうかもしれない』、と。

 ここで躊躇ったらアティまで失うかもしれない。

 これ以上、大切な存在を失わないために、自分から離れさせないために……ポケットの中にある透明のサモナイト石を掴んだ。

 

「お願い……もう一度だけでいいの! 力を貸して! 先生を助けて……!」

 

 ベルフラウを中心に色のない魔力の嵐が吹き荒れる。

 ベルフラウの中にある繋がりから溢れた魔力がその源だった。

 その魔力に倒れた仲間たちが驚愕に目を剥く中、召喚術が発動する。

 

「来て……イリ! 『爆散セヨ』!!」

 

 現れた白い召喚獣を中心として発生した青い魔力の爆発は無色の派閥を包みこんだ。

 弾ける魔力とその轟音に混じり、ベルフラウの耳によく聞いた声が聞こえた。

 

「ギィイイ……ギシッギシギシ! ギシャシャシャシャ!」

 

 




ラスボスは遅れてやってくる


●イリ
元の力へと近づきつつあるベルフラウの相棒。
ベルフラウ専用召喚獣。

・ユニット召喚

・串刺シノ刑ニ処ス 
単体無属性Cランク術。

・破滅セヨ 
直線範囲無属性Bランク術。

・爆散セヨ 
中範囲無属性Aランク術。

{情報開示}
  ・協力召喚 未開放
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