招カザル来訪シャ~頼れる相棒は世界を喰らう者~   作:あったかお風呂

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サモンナイト6がバランスの壊れた世界に変わったのはこいつのせいですよ(メルギトス風)


彼ガ願ッタコト 後

 後方にいるベルフラウ、イリ、スカーレルと単独でイスラを相手取るアティを除いた仲間たちは順調に敵陣への侵攻を進めていた。

 暗殺者たちがベルフラウに集中している分、オルドレイクたちがいる本陣以外は薄い。

 先陣を勢いよく下したカイルたちはその勢いのまま、マフラーの女ヘイゼルのいる左翼を攻める。

 

「てめぇら! このまま暗殺者の頭をとるぞ!」

 

「おー! このままガンガンいっちゃおー!」

 

 カイルのかけ声にソノラが追従する。

 反魔の水晶の効力で威力を減らされるなら、と回復や憑依召喚によるサポートに徹しているヤードたち召喚師組のサポートもあり、その勢いは破竹の如くだ。

 

 その勢いで攻められるヘイゼルは堪ったものではない。

 たった一人の少女の召喚術を警戒したヘイゼルの主人は、暗殺者たちを絶え間なく少女に差し向けるように指示した。

 飼い犬が主人に逆らえるはずもなく、オルドレイクの指示通りに暗殺者たちを動かしたヘイゼルだったが、それが原因で追い詰められつつある。

 人員が攻撃のために割かれたせいで、ヘイゼルの周りを固める戦力が薄いのだ。

 

「くっ……一旦下がって……」

 

「逃がしませんよ、暗殺者!」

 

 倒されていく部下を尻目に後方へと下がろうとするヘイゼルに追いすがる影。

 護人の一人であり、シルターンの忍びでもあるキュウマが暗殺者であるヘイゼルを超える身のこなしで追撃した。

 

「なっ……!? は、はや──」

 

「必殺必中……居合い!」

 

 自身を追うキュウマに気付き、後ろを見たヘイゼルはその速さに目を剥き──。

 研ぎ澄まされた集中力と技から放たれた一閃に切り裂かれ、意識を刈り取られた。

 

「あの人に怒られてしまいますからね、致命傷は避けました。命は奪いませんが、暫く静かにしていてもらいますよ」

 

 金属製の冷たい床に伏せたヘイゼルからは返事がない。

 キュウマの見事な技を見た仲間たちから歓声が上がり、敵はどよめく。

 左翼の崩壊、それはベルフラウが動けるようになることを意味していた。

 

 

 

 暗殺者たちに指示を出していたヘイゼルが倒れたことで、暗殺者たちは混乱し始めた。

 召喚術を使うなら敵の指揮系統が乱れた今しかない。

 だが──。

 

「狼狽えるな! 本命は反魔の水晶だ! これが在る限り奴の召喚術は脅威ではない!」

 

 動揺する配下を叱咤するオルドレイクの言う通り、『爆散セヨ』を使ったとしても以前のような決定打にはならないだろう。

 そして動揺が収まり、オルドレイクたちが動き出してしまえば仲間たちはきっとただでは済まない。

 ベルフラウは目を閉じると、意識をイリとの繋がりの中に埋没させる。

 ただ威力が高いだけの召喚術では反魔の水晶が在る今、効果が期待できない。

 別の何かが必要だった。

 

 ベルフラウの意識が潜ったイリとの繋がり。

 そこはまるで糸の海のようだった。

 絡み合う無数の糸で構成されるその場所では、動こうとする度に糸が絡みついて動きを封じようとする。

 糸に抗いつつ、何処かにある『力』を探さなければならない。

 より強い力を求めるのなら、より深くへ。

 糸を掻き分けて奥へ奥へと進むベルフラウはようやく、輝く力の欠片を見つけ出した。

 それに手を翳そうとして──。

 首を横に振ると手を引く。

 それはきっと強い力だろう、だが現状を変えることが出来ない単純に威力が高いだけの力。

 より奥へと目を向けたベルフラウの目に、糸と糸の隙間から漏れ出す程の強い光が見えた。

 

「きっと……あれなら……!」

 

 その光の強さから、それこそが自分の探している物だと確信したベルフラウはその光に手を伸ばす。

 だが、届かない。

 伸ばした指先が光に触れられずに目前で空を切る。

 ベルフラウにはまだそれを手にする資格がない、力が足りない。

 それを自覚したベルフラウは──。

 

「先生、お願い! 力を貸して! もう少しで、もう少しで届きそうなの!」

 

 助けを求めた。

 自分一人で出来ないなら、頼ればいい。

 みんなとならもっとすごいことが出来る。

 それが、この島に来てアティや仲間たちから学んだことだったから。

 

 

 

 イスラと魔剣を打ち合うアティの耳に、ベルフラウの声が届く。

 だが、ベルフラウの下に行きたくても行けないのが現状だった。

 

「ベルフラウッ! 待っていてください!」

 

「あはは! 行かせるとでも思ってるのかな? 舐めてくれるね!」

 

 当然、アティを行かせる気がないイスラの妨害を受けて防御を余儀無くされる。

 

「くぅっ……!」

 

「ほんと情けない先生だね、君はさ! この前は生徒に助けてもらったのに、自分は生徒を助けられないんだ? あははっ!」

 

 そう嗤うとイスラが魔剣を振り下ろす。

 アティはベルフラウに内心で謝罪しながらもそれを自らの魔剣で受けようとして──。

 

「アクセス! 魔障壁展開!」

 

 イスラの魔剣はアティの魔剣にぶつかる前に、魔障壁によって阻まれた。

 

「何っ!?」

 

 驚愕に顔を歪めるイスラの横から大剣が迫る。

 咄嗟に後ろへ跳んだイスラの視界に入ったのは大剣を振り終えたファリエルの姿。

 そして着地の硬直を狙い、目前に迫るヤッファの姿だった。

 

「うぉぉおおお!」

 

 ヤッファの爪がイスラを切り裂くと、ヤッファがすぐに飛び退く。

 

「召鬼召炎!」

 

「ぐあああ!?」

 

 ヤッファが飛び退いて間髪入れずに発動したキュウマの妖術がイスラの身を焼くとイスラが膝を着いた。

 

「みんな……!」

 

 アティを助けに現れたのは護人たち四人。

 アルディラ、ファリエル、ヤッファ、キュウマがイスラの前に立ちはだかった。

 

「ここは俺たち護人に任せろ!」

 

「あなたはベルフラウの下に行ってあげなさい!」

 

「ぐうっ……護人共め。適格者であるぼくに刃向かう気か!?」

 

「相手が魔剣の適格者でも、時間稼ぎくらいはしてみせます!」

 

「少しの間、お願いします!」

 

 アティは頼もしい仲間とたちにこの場を任せて急ぐ。

 自分の大切な生徒の下へ。

 

 

 

 意識の世界で相変わらず届かない光に手を伸ばすベルフラウだったが、現実世界の手が何か暖かく柔らかい物に包まれたのに気がついた。

 

「先生……!?」

 

 それと共に糸の海にいるベルフラウの隣にアティが現れる。

 アティは周りを見渡して混乱しているようだった。

 

「えっと……それで私は何をすればいいんですか?」

 

「あれよ、あの光に手が届かないの。私と一緒に手を伸ばして。そうすればきっと……」

 

「あの光、ですね。わかりました。ふふふっ、私嬉しいんですよ。あなたがこうやって助けを求めてくれて」

 

 ベルフラウは優秀だ。

 本当に家庭教師が必要なのかとアティが疑問に思ってしまうくらいに。

 きっと家庭教師がいなくても軍学校の試験に合格するだろう。

 アティにはそれが少し寂しくて、こうして頼られたことが嬉しかった。

 

「もう、こんな時に言うことじゃないでしょう? ほら、手を伸ばしますわよ」

 

 少し照れたように言うベルフラウに頷いたアティが同時に光に手を伸ばすと、二人の指先が光に触れた。

 

「行くわよ、イリ! 『抗ウガイイ』!」

「行きますよ、イリ! 『抗ウガイイ』!」

 

 

 

 ヘイゼルが倒れたことで乱れた指揮系統を立て直したオルドレイクは重い腰を上げる。

 不甲斐ない部下たちに苛立ちが頂点に達し、自ら前線に出ようとしているのだ。

 

「ツェリーヌ、ウィゼルよ。出るぞ」

 

「いや、待て。あれは……?」

 

 だがウィゼルに引き止められるとオルドレイクは足を止めてウィゼルの視線の先を追う。

 その視線の先では、オルドレイクにとって要警戒対象であるイリが赤い靄のような物に包まれていた。

 赤い靄はイリを覆うように広がって行き、やがて晴れていく。

 

 まず見えたのは翼だ。

 薄紫の翼膜を広げた白い翼、それが四対。

 そしてイリの頭の左右に現れた砲門のような形状の部位。

 イリの背後には光輪を思わせる輪のような物体が浮かぶ。

 その輪の周りには側面へと向かって棘が生えており、見る者には神々しさよりも禍々しさを感じさせる。

 

「あれは不味い……! あれが動く前に仕留める!」

 

 イリの姿が変わった瞬間にウィゼルの背を走った悪寒、それが正しいのなら──。

 流れる冷や汗と己の中に湧いた恐怖を振り払い、駆ける。

 狙うは一撃必殺、キュウマが使ったものよりも一段上の技。

 居合い切り・絶。

 

「ここで倒れて貰うぞ、化生!」

 

「ギシシ! 無駄! 蛮勇! 『ヴァイア・スレイグ』」

 

 ベルフラウとアティの協力召喚により姿を変えたイリは繭世界の創造主である異識体のもつ力の内、三つの力を解放する。

 一つ目、それは行動阻害。

 刀と呼ばれるシルターンの片刃の剣の柄に手を添え、必殺の一撃を放たんとしたウィゼルの身体は泥のような黒い魔力に包まれて動かなくなる。

 動けなくなった邪魔者を睥睨し、イリは破滅の宴の準備を次の段階へと進める。

 

「見ルガイイ、我ガチカラノ片鱗ヲ! 『トラン・スレイグ』」

 

 二つ目、それによって行われるのは自己強化。

 ツェリーヌは増幅するイリの魔力に震え、悲鳴を漏らす。

 ……それすらも、前座でしかない。

 

「卑小ナゴミ共メ、何モ出来ズニ朽チルガイイ! 『シュペル・スレイグ』」

 

 三つ目、それは高速化。

 クロックラビィのような体感速度だけではない。

 行動速度、反応速度、思考速度、さらには放った攻撃そのものの速度までが高速化される。

 その速度は通常時と比べて──実に六倍。

 

「串刺シノ刑ニ処ス!」

 

 ベルフラウの召喚術としてではなく、イリの持つ能力として発動したそれは、六倍の速度で発生し瞬く間に反魔の水晶を砕いていく。

 

「なっ!? 反魔の水晶が砕かれただと!?」

 

 オルドレイクが用意した策が破られたことに焦るが、遅い。

 無色の派閥に接近したイリの頭部と両脇の砲塔に魔力の光が灯る。

 それはベルフラウが召喚術として使う『破滅セヨ』とよく似たもの。

 違うのは溜めにかかる時間が六分の一であること、そして同時に三発放たれることだ。

 

 無色の派閥の兵士たちはこの後に起こる未来を察してか顔を絶望に染める。

 イリには無色の派閥への慈悲などない。

 当然、躊躇いもなく放たれる。

 

「ギシシッギシギシ! 破滅セヨ!」

 

 三条の暴力が戦く兵士たちを蹂躙した。

 

 

 

 アティと協力して術を使ったベルフラウは身体から力が抜けたようにふらつくと、重力に従って倒れ始める。

 慌ててアティが支えて顔を覗き込むと、顔色は悪く息荒い。

 アティの補助があってもなお術の負荷が大きかったようだった。

 

「ベルフラウ様!? ご無事でしょうか!?」

 

 ベルフラウが倒れたのが見えたのだろう、慌てて前線から戻ってきたクノンが診断を始める。

 

「あの、ベルフラウさんは……」

 

「ベルフラウ様のことは任せて下さい。それよりも、アルディラ様たちと交代を。長くは保たないようですから」

 

 ベルフラウを心配するアティだったが、クノンに言われてイスラと戦う護人たちを見るとどうやら押され始めているようだった。

 アティはクノンに礼を言うと、イスラの下へと戻るべく走る。

 

「みんな、ありがとうございます! ここからは私が!」

 

 駆けつけたアティと交代するように護人たちが下がる。

 

「ははは、なんだよあれ? 反則じゃないか」

 

 イスラの視線の先では魔力のビームを連発するイリに無色の派閥が蹂躙されている。

 それを見て渇いた笑い声を上げていたイスラだったが、アティが目の前に立つとその表情を真剣な物に変えた。

 

「イスラ、待たせましたね。決着を付けましょう」

 

「向こうもそろそろ終わりみたいだしね。いいよ、これで終わらせよう。ここで君が死ぬか、僕が死ぬかだ!」

 

「私は負けませんよ。そして、あなたの命も奪いません」

 

「ほざけぇ! 偽善者が! 夢に溺れて死んでしまえ!」

 

 相変わらず命を奪い合いをする気がないアティに怒りを抑えきれないイスラが吼える。

 イスラの内の怒りと憎しみを殺意と力に変換した紅の暴君は輝きを増していく。

 殺意の衝動のままイスラがアティに切りかかった。

 

 




ラスボスは遅れてやってくる



●イリ
繭世界を創造した恐るべき力を持つベルフラウの相棒。
ベルフラウ専用召喚獣。

・ユニット召喚

・串刺シノ刑ニ処ス
単体無属性Cランク術。

・破滅セヨ 
直線範囲無属性Bランク術。

・爆散セヨ 
中範囲無属性Aランク術。

協力召喚 
・抗ウガイイ 
1ターン、イリが飛行形態になるSランク術。
発動時ヴァイア・スレイグ、トラン・スレイグ、シュペル・スレイグを使用。
効果中破滅セヨ、串刺シノ刑ニ処ス、爆散セヨ使用可。

・ヴァイア・スレイグ 
対象を行動不能にしダメージ。

・トラン・スレイグ
ATK、MAT、DEF、MDF+40%

・シュペル・スレイグ
行動回数+6高低差無視移動可。

ざっくり言うとイリ版抜剣覚醒。
酷いのはスレイグ三種の効果が大体原作通りなところ。
抜剣とは違って形態変化自体のステータス上昇は無しでトラン・スレイグ分のみ。
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