こちら白血球好中球課!   作:リッティー

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Ep.1 肺炎球菌、侵入。

 

 

朝が来た。

窓の外から差し込む光に、眩しさを覚えて。

 

「やっば!」

 

飛び起きる。

手早く料理を済ませお食事。まあ、この後仕事で散々食べるんだけど。

ぱたぱたと真っ白い制服を着込み、寝床にもなっている辺縁プールを出る。

装備の確認も忘れてはいない。

帽子、OK。

インナー、OK。

電気系の接続、OK。

武器、ばっちし。

そして、通信機の電源を入れる。

 

「こちら2038番。これより定位置に向かう」

 

『今日もお勤めお願いしまーす』

 

ヘルパーT司令の声が聞こえる。

そして「定位置」こと集合場所に向かう。

 

「あ。やっほー2038番(ミツハ)

「みんな!」

 

骨髄球時代からの友人3人組と、新人研修の講師担当になっている先輩の好中球、4989番さん。

 

「じゃあ、休憩場所とか、寝るとことかも分かったところで、今日は肺方面に向かってみようか」

 

「はーーい!」

 

骨髄近くの寮を離れ、血管(みち)を連れ立って歩く。

今日は大変なことになりそうだ。

肺方面。つまり心臓を通る。

人混みで大変なことになるのは嫌でも予想がつく。

 

 

 

ゆっくりのんびり、5人で歩く。

4989番先輩とも、いずれ同僚として肩を並べて戦うことになりそうだ。

新人研修は全部で3日。今日で二日目だから、明後日から4人で――このβ班メンバーで戦うことになる。

そんな事を考えていると、音が鳴った。

 

 

──ピンポーン。

 

 

この少々お間抜けな音の発生源は私の後頭部。

受容体(レセプター)と呼ばれるもので、要は細菌やウイルスを察知するレーダーみたいなもの。

デザインも音も、どっかのクイズ番組みたいでちょっと──いや、だいぶバカっぽいけど、侮るなかれ。

これ、私たちにとっての「スイッチ」のようなもので、この音を合図に私たちは豹変する。

 

 

穏やかな顔した通行人から、狩人へと。

 

「抗原どこだ!」

「ま、前のほう!肺炎球菌が出たらしいぞ!」

親切にも教えてくれる赤血球のひとり。

「さんきゅー!」

「お前たちも頑張れよーーー!俺も酸素配達頑張るからーー!」

免疫細胞に物怖じしない赤血球って、実は結構少ない。

血まみれになっても気にせずに敵を屠り続け、感染とあらば味方のはずの細胞たちも手にかけるから。また、レセプターの音を聞いた後の豹変ぶりも相まって、私たち好中球に話しかけるような人は少ない。

応援ありがとうの意味も込めて、すれ違いざまに帽子に縫い付けられた個体識別番号(シリアルコードナンバー)を確認する。PO1076、か。うん、覚えた。

 

 

しばらく走っていると、敵影が見えた。襲われている赤血球と、白い影も。

「ッ!」

4989番先輩が肩を震わせる。

しかしその目は、希望の光に満ち満ちていた。

 

 

 

頼もしい仲間が、そこにいたから。

 

無言で次々と肺炎球菌を掻っ捌いていく、白。

 

その姿に、居ても立っても居られなかった私は、駆け出した。

 

 

敵を屠りに。

 

 

 

 

 

 

現場近くの肺炎球菌が粗方片付き、貪食処理班と追撃班に一時別れた。

私たちはちゃっちゃと貪食を済ませ、肺へと急ぐ。

雑菌、不味かったけど。

 

「こちら4989番、引き続き侵入した肺炎球菌の捜索を続けています」

 

「こちらβ班代表、2038番。見敵必殺(サーチアンドデストロイ)で捜索中です」

 

各々連絡のために通信機を取り出し音声を吹き込む。

直ぐに、「りょうかーい」だの、「こっちは擦り傷だ!でも何とか対処出来そうだぞ」といった声が返ってくる。

 

「────っち、肺炎球菌のヤロー、どこ行きやがった……!!」

 

未だに狩人の瞳をした4989番先輩は、肺へと繋がる直通遊走路を睨んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

肺炎球菌って言うくらいだし、肺にも何体か入り込んでいるかもしれない。と、私も思っていた。

 

でもさ。

 

肺に行ってもまだ騒ぎになってないってドユコト?

 

どっかの肺胞とかで隠れてるかもしんないよ?とは、β班の参謀0101番の弁。そのため、私達は現在地である左肺の肺胞を虱潰しに探索していた。

 

結果、私は五体もの肺炎球菌を発見。一体見つけたらあれよあれよという間に次々見つかり、4989番先輩の同僚さんが見つけた一体、β班の残り3人も全員で10体見つけ、合わせて16の肺炎球菌をくしゃみ1号に乗せて体外に叩き込んでやった。

 

くしゃみの発射機構(気道粘膜)前で合流した私達は、さて、もう一周、と巡回に出ようとしたが。

 

 

──ピンポーン。

 

 

またかっ!このレセプター!

どうやら喉から細菌どもが攻めてきたようだ。

意識が戦闘モードに切り替わる。

気づけば私は叫んでいた。

 

「このっ、雑菌野郎っ!!!」

 

 

私の背後で、「んじゃあ、お疲れ様です……」という声が聞こえた気がした。

 

 

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