こちら白血球好中球課!   作:リッティー

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花粉症の季節です。
私も体内でこいつらが暴れてます。


スギ花粉が。





Ep.8 雪解けの動乱

 

眼球粘膜と視覚野は、このセカイの外のことを「見て」知ることが出来る場所だ。

インフルエンザの後、大雪と雪解けを経験し。

私が血管内で働き始めて初めての春が来た。

眼球粘膜が、動乱に包まれはじめていた。

 

 

「スギ花粉、10秒後に着弾します!!」

 

 

ヘルパーT細胞の声が響く。

 

ここは神経に接続する司令室。

「着弾」に合わせてまばたきをすることで、異物の侵入を防ぐ機構を司っている。

 

 

しかし彼らの必死の努力にも関わらず、スギ花粉は着弾してしまった。

アレルゲンが体内に侵入する。

 

 


 

 

「平和だなぁーー」

パイプの上で足をぶらつかせながら、眼下の幹線道路=血管を見下ろす。この時間は好きだ。赤がぞろぞろと流れていき、時折交じる白がモザイクを作る道を見る時間が。

 

ふっと遠くを見晴らして──

それに気付いた。

赤と白による秩序が乱れ、黄色が目立つ道に。

 

事件の予感を察知して駆け出す。遅れて鳴ったぴんぽーんという音は制帽に取り付けられたレセプターだ。

 

「ごめんねっ、通して!」

 

それだけでそそくさと赤血球達は道を開ける。

アレが到底太刀打ちできない敵だと本能的に分かっているから、彼らは私たちに道を譲るのだ。

 

「スーーーギーーーーーーーー!」

 

黄色い影が巨大化する。

大きな敵に対して、2本のナイフはあまりにも小さすぎる。それでも一閃で、ヤツは倒れた。

 

 

「なんだ、たいしたことないじゃん。一応食べとくか。いただきまーす」

手を合わせて、一口かぶりつく。青臭さが鼻につく。細菌類特有の苦みは皆無。

今回侵入してきたのは、一般的には『無害』だとされているスギ花粉だ。

……単体なら。

 

 

だけど、今回は、今年は違ったらしい。

 

「スギーーー」

「スギーー?」

 

 

え。待って。なんか、いっぱい居ない?

見えてるだけでもいちにーさんしー……10以上はいる。

 

すぐ近くには排水口があり、そこから彼らはこちら側に侵入を果たしたらしい。

って、また増えた。この増殖ペースおかしくない!?もう30!斬りまくってるけど!

こんな時には、援軍を呼ぶしかない。

と思って、胸ポケットから通信機を取り出した。

 

 

「こちら2038番。右眼の眼球結膜のスギ花粉、視認範囲で50超えました。対処お願いします」

 

 

 

さて、時間稼ぎだ。

 

 

 

 

 

 


Side:ヘルパーT

 

 

あちこちからかかってくる電話に忙殺されている最中。僕の耳はその声をとらえた。

 

 

『こちら2038番。右眼の眼球結膜のスギ花粉、視認範囲で50超えました。対処お願いします』

 

 

2038番ちゃん。通称ミツハ。通り名は《三閃刃》。司令部常勤の僕らでさえも、彼女には助けてもらっている。

場所の伝達が的確だからだ。

 

マイクに声を吹き込む。

 

 

「了解。B細胞を送り込む。安心しろ。何年も前に抗原提示は済んでいるからな」

 

『足止めします。至急お願いします』

 

素早い返答。通信機越しでも、スギ花粉を切り裂く音は鮮明に聞こえる。

声の送り先をとあるB細胞の事務所に設定すると、僕は指令を送った。

 

 

「出番だぞB細胞くん、眼球結膜のスギ花粉を駆逐せよ!」

 

 

 




今回はここまで。
まだどこも騒ぎになってないようだけど……?
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