こちら白血球好中球課!   作:リッティー

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弊体内の現状はこんな感じです。




Ep.9 パニック・イン……

 

「お待たせしましたっス!」

やっとB細胞くんが戦場へとやってきた。

「喰らえIgE抗体!」

と、対抗物資が大量に溶け込んだ薬液が発射される。

 

どばしゃああああ!

と発射されたそれは、スギ花粉を次々に溶かして行った。

 

 

「まずいなぁー。マジでこれはまずい」

 

しばらく資料室に入り浸っていたレイレイがやってきた。一体何がまずいんだろう?

 

「IgEが放出されすぎると、ヒスタミンがどばっしゃーーーーって出てくるみたいなんだよ。記憶さんから聞いたんだけどな」

 

へええええ。

 

 

記憶さん。

B細胞が変化した、免疫記憶を司る細胞(ひと)だ。

オーバーリアクションで細胞達にはかなり人気らしい。

 

「まあ、実際に聞いたのはこんな感じだけどな。

『聖なる霧が地上を包む。されどその時、災厄の幕は上がるのだ』

それと、『霧は大雨となり全てを押し流す』、だったかな。メモとして残されてて、本人は意味を分かってないっぽかったけど。」

 

詩人だった。記憶さん。

 

「いや、先代だけどな!?」

 

別人だった。

 

 

そうして話しているうちにも、B細胞くんは次々に抗体薬液を発射してスギ花粉を駆逐していく。

 

「なあ、もうそろそろ俺らでも殺れそうだし抗体止めね?」

 

「あ、そうッスね。でも大丈夫っス!もうすぐヒスタミンが放出されますから!」

 

レイレイの忠告に答えて射出を止めたB細胞くんは、さっ、と指を上に向けた。

 

頭上のノズルから、ヒスタミンは分泌されるのだ。

 

そしてその職務を請け負っているのは、マスト細胞さん。

 

「マニュアル通り」を信条とする白衣の細胞さん。「肥満細胞」の別名もあるけど、あまり呼ばれたがらない。というかそう呼んだらド怒りする。通り名は《ヒステリー細胞》だとか。

 

 

ういーん、と出てきたノズルが……引っ込んだ。

 

「アレっ?」

虚を付かれる私。

 

「ノズル交換するんスかね?」

上を見続けるB細胞くん。

 

そして、私たちを巨大な影が覆った。

 

 

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」

私、レイレイ、B細胞くんはもとより、往来を行き来する細胞達や赤血球も足を止めて困惑する。

 

身長の何倍もあろうかという太さのノズルが出てきていたからだ。

 

「何よこれ……!?」

「おいおいこのデカさはやべーだろ……」

「やめてやめてまだ酸素配達終わってないからって……」

 

 

 

どばっしゃーーーー!!!

ヒスタミンが滝のように流れ出した。

 

「「「「「「うわあああああああっ!?」」」」」」

 

 

大洪水。正しく大雨。

流されるがままになる。

 

「ごぱっ!ミツハ、大丈夫か?」

「大丈夫だけど、状況がヤバい!」

 

そう。一部の細胞達が、マスト細胞さんの事務所に駆け込んでいく所を、見てしまったのだ。たぶん事務所から出てきて大乱闘になるだろう。

 

 

 

分泌中枢がショートして、発動した緊急免疫システム。

乱発されるくしゃみロケット、溢れ出す涙のダム、地殻変動が起こって地盤が上がってしまい、ボロボロになった鼻腔温泉街。

 

 

 

記憶さん達に伝わる、スギ花粉アレルギーの発動。

 

 

 

毎年春の、動乱だ。

 

 

 

 




本編の体内は涙、くしゃみ、鼻詰まり。
私は鼻水、くしゃみ、目のかゆみ。
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