俺はみほエリが見たかっただけなのに   作:車輪(元新作)

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……エミカスが、ほんの少し賢ければあの2人は結ばれあい、祝福され、一緒に幸せな人生を送っただろう。
でもそうはならなかった、そうはならなかったんだよロック。
だからこの話はこれでおしまいなんだ。

※直訳 エミカスのミジンコ並みの脳みそではどうあがいてもみほエリはなせなかったんだあきらめろ


おまけ Emikas in the LostMihoEli
おまけモード一本目 もしもみぽりんじゃなくてまほさんが助けに行こうとしたまほさん大洗ルートだったら


 ──月──日

 

 おかしい。

 ミスらしいミスはなかったのに、どうして……?

 黒森峰に入学してみぽりんやエリカと仲良くなれたのはよかったが、どう言うわけか俺は今、まほ隊長の駆る戦車にて装填手を務めている。

 

 なんで?

 

 いやまぁ、理由はわかってるのだ。

 俺の装填手としての能力がお目当てなのだろう。

 たしかにアハトアハトの砲弾をひょいひょい持ち上げられるのはおかしいとは俺も思う。

 そして最近気がついたのだが、体重が軽くて移動中車内で振り回されるのならバーベルでもくくりつけて体重を重くすればいいじゃないと思ってやってみたら欠点を克服した、いささかガバガバな理論だったがまぁできたんだからよしとする。

 

 で、そんな能力を見込まれて隊長機にINしてしまったのであった。

 みぽりんにだいぶ渋られていたが、姉妹仲大丈夫?俺ピロシキしたほうがいい?この世から。

 でもみほエリのためにまだ生きるね……

 

 

 

 ──月──日

 

 バーベルだと色々不都合もあるため、鉛の塊を仕込んだポケットを複数取り付けたベルトを作成した。

 重量およそ20キロ、座った時の安定感がダンチだ。

 とりあえずこれをつけた状態でも動けるようにするため、装備したままジョギングをトレーニングに追加する、した。

 そしたらまほ隊長に遭遇した。

 この人こんな朝早くからジョギングしてんのってびっくりだったけど俺も人のことは言えないのであった、であった、であった……

 で、せっかくなので一緒に走りながら軽く会話もしたが、装備中のウェイトベルトの説明をしたら足腰を痛めるからやめろと割と真顔で言われた。

 まほ隊長ったら本当に心配性ねえ。

 

 

 

 ──月──日

 

 練習中、先輩方から嫉妬の視線をいただくことが多い

 いやそんなの我にやられても困るし……

 黙らせるためには実力行使しかないと思い砲弾が6発詰まった箱を持ち上げて運んだ。

 ドン引きされた、どうしろっちゅーんじゃ。

 まほパイセンには怒られた、落としたら大変なことだぞ、そんな小さな足ペチャンコだ!って。

 怒り方かわいいかよ。

 

 

 

 ──月──日

 

 さいきんはパイセンに色々と話を振られたりすることが多い。

 その大半はみぽりんに関することだが、困ってることはないかとか、遠回しに俺の身を心配している。

 こないだの箱持ち上げ事件(規模がしょぼい)も影響してるのだろうが、パイセンなりに俺が上級生たちに嫌がらせを受けてないかなどに気を配ってるのだろう。

 なので嫌がらせを受けた時は艦橋部分からロープで吊るして反省を促させるように決めた。 これなら安心するだろう。

 と思ってそう言ったらめっちゃ焦って止められた。

 いや……冗談ですやん。

 

 

 

 ──月──日

 

 みほやエリカと帰りに茶屋に寄ってお茶をしてると外をパイセンが歩いていたのでみぽりんが呼び止めて一緒にお茶をした。

 その最中なぜ俺がそこまで戦車道にストイックなのかを聞かれた。

 その時は戦車道が好きで仕方がないから、とパチこいたのだが本当は実力不足で蹴落とされてみぽりんとエリカから離れるハメになったらたまらないからである。

 普通に笑われて、全くお前はとんでもない戦車バカだ(意訳)と言われてしまった。

 いや、楽しくはあるけど言うほどでは……騙したようで胸が痛む。

 だがここは引き下がれないのだ。

 騙して悪いが、みほエリのためなんでな、じゃ、ノッて貰おうか。

 

 

 

 ──月──日

 

 飯を食ってる最中パイセンに、どんな信念を持って戦車道をやってるのかと聞かれた。

 マジな目だったので、中途半端な嘘なんてつけるわけもない。

 とりあえず原作みぽりんが見つけた戦車道的な答えを返したら、少し驚かれた。

 そして正直意外だと言われた。

 まぁこんだけアホみたいな訓練をしてはいるが俺そこまで勝つことにこだわってないからなあ、勝てるなら勝つってだけで。

 そもそも戦車道をやる最大の目的がみほエリだからね。

 多分人類史上最も不純な動機で戦車道やってると思う。

 

 

 

 ──月

 

 パイセンの戦車に乗ったまま中等部で二度目の全国制覇を果たしたが、その頃には俺は戦車道履修者たちの中で人の形をしたエイリアンだの骨から内臓に至るまで全部筋肉だの散々な言われ方をされるようになった。

 まあ気持ちはわかるけど。

 自分でもこの小さな体のどこにそんなパワーが宿っているのか不思議でならない、腕とかプニプニなのに。

 

 というわけでパイセンが中等部での活躍の舞台を全て終えて、引き継ぎが行われた。

 みぽりんが隊長、エリカが副隊長という形になった。

 パイセンは高等部で待っているぞと言って俺の肩を叩いた。

 過度な期待は胃が痛くなるからやめてくれ。

 

 そのあとみぽりんとエリカが俺がどっちの車両に乗るかを争ってタイマンのバトルを開始しだした。

 胃が痛い、血を吐いた。

 お願いだから俺のために争わないで(切実

 

 

 

 ──月──日

 

 中等部での戦いは無事三連覇に終わった。

 実に素晴らしい三年間だったと思う。(インタビューのことはどうか闇に葬られてほしい)

 最後にみんなで打ち上げをしたり、みぽりんとエリカに改めて友情を誓い合ったりした。

 ふふふ、これで俺が去った後も2人の絆は断ち切られたりしないだろう。

 

 ただ、高等部に上がるとおそらく俺は高確率でパイセンの戦車に乗せられるだろう。

 そうなるとみぽりんを立たせずに救出に向かうタイミングが測りづらくなる。

 どうにかみぽりんの戦車に乗せてもらえるようお願いしようか、でもエリカが拗ねそうだ。

 頼むから俺のことを重用しないでください。

 

 

 

 ──月──日

 

 ついに高等部一年生となった。

 俺にとって運命の一年となるだろう。

 やる事はたくさんある、レギュラー入りしたりみぽりんのスケープゴートになったり引越したり。

 引越先の候補はまだ決まってないが大洗だけは絶対避けよう、俺がミポリンの代わりに据えられるとか役者不足すぎるからね。

 

 で、懸念していた通り俺はパイセンに歓迎されて隊長車の装填手になった。

 不満は少なかった、なぜなら二年生一年生は俺の異常性を知っているからだ。

 三年連中に詰め寄られたのでとりあえずパイセンを両腕に1人ずつ抱えて怪力を示した。

 怯えられた。

 

 

 

 ──月──日

 

 隊長車のメンツは俺が一年、パイセンが二年、その他が三年だ。

 パイセンはそのカリスマ性でみんなに尊敬されてるが俺はもはやマスコットのような扱いを受けている。

 たまに鬱陶しくて担ぎ上げてからランニングしたりするのだが最近は効果が薄い。

 さすが隊長車に乗るメンツと言うべきか、頭のネジが外れてやがる。

 みぽりんとエリカに文句を言われるこちらの身にもなっていただきたい。

 

 

 

 

 

 ──月──日

 

 いよいよ明日は決勝戦だ。

 なんかあっという間だったな……明日俺はみぽりんの身代わりになる……予定なんだが、なんか上手く行く気がしない。

 めっちゃ不安、大丈夫かなこれ。

 いや、なさねばならぬのだ。

 できるかできないかじゃない、やるんだ。

 失敗は許されない、止まるんじゃねえぞ。

 

 

 

 

 

 

 あいにくの悪天候に見舞われた戦車道全国大会決勝戦、狭い道を行軍する戦車の中の一つに俺は腰掛けていた。

 

(さて、どうなるか……)

 

 転生してから15年と数ヶ月。

 前世を合わせても間違いなく一番のプレッシャーを俺は味わっていた。

 失敗は許されない。

 おそらくここで発生する事故で、みぽりんは滑落した戦車に乗っていた選手たちを助けに行くだろう。

 それを、俺が代わりに為す。

 

 事故が起きなければ、それが最高だ。

 もしかしたら俺と言う存在がバタフライなんちゃらを起こして事故が起きないかもしれない。

 しかし俺なんぞが1人いるだけでそんな歴史改変が起きるのか?

 甘い考えは捨てて、俺はいつ事故が起きてもいいように神経をとがらせていた。

 

「……肩に力が入っているな、エミ」

「仕方ないですよ隊長、十連覇がかかってるんですから」

「は、はい、そうですね……」

 

 内心すまんと謝る、十連覇は俺が台無しにするだろうからだ。

 ……さっきは俺の存在程度で歴史が変わるものかといったが早速前言撤回だ、もう異変は起きている。

 フラッグ車がこの車輌なのだ。

 もう訳が分からねえ。

 

(どう言う事だろう、俺の乗るこのティーガーⅠがフラッグ車な訳だから当然みぽりんの車輛はフラッグ車じゃない……つまりみぽりんが助けに行って車輌を放棄しても致命的な事態には至らないんじゃ? 俺は訝しんだ)

 

 理解できない事態に俺はひどく混乱していた。

 一体、この先どう言う展開になるのかまるで分からない。

 ここから先は原作知識など足枷にしかならないだろう。

 ストレスと不安だ痛みだした胃を抑えながら、俺はそばのキューポラから顔を出す。

 雨がしとしととつむじに刺さる中、いつ事件が起こるのかと、俺は後ろに続く戦車の列に目をやった。

 

 

 

 その直後に、砲弾が斜面に直撃し一輌が巻き込まれ濁流の中に放り出された。

 

「っ!!」

 

 思わず呼吸が止まる。

 起きた、起きてしまった。

 まあ内心いつ起きてもおかしくはないよなと思ってはいたが、目の前で起きた人が死にかねない事故に、緊張が走る。

 

「いっ……一輌が滑落し川に転落しました!」

「なんだと!?」

 

 大声で伝えると真っ先に反応したのはパイセンだった。

 慌てて半身を車内から乗り出したパイセンは、険しい表情で川に沈んでいく戦車を睨みつけている。

 

 ──どうする、動くか?

 

 俺は内心でタイミングを計りかねていた。

 いったいどのタイミングで駆け出せばいいのか分からず困惑していたのだ。

 

 ……いや待て?考える必要はなくないか?

 今こうして悩んでる間にみぽりんがもし先に飛び出してしたらもう全ては台無しだ。

 もうすでにことは起きたんだから俺が行ってもいいじゃん!

 数秒で叩き出した頭の悪い回答に従って俺は腕に力を込めて戦車から飛び出す……

 

「みほ、指揮を頼む!!」

『え、お、お姉ちゃ──』

 

 その前にパイセンが戦車の上に全身を乗り出していた。

 

 

 

 

 

 

 は????????

 

「まってください隊長!! 何をする気ですか!?」

 

 あまりにもイレギュラーな事態に俺は完全に錯乱し、とりあえず止めねばと慌ててパイセンに追いつき腕を掴んだ。

 鬼気迫る表情を浮かべながら振り返るパイセン、怖い。

 

「離してくれ、エミ! 助けに、助けに行かなければ!」

「貴女はフラッグ車の車長です! ここであなたが戦車を離れれば、どうなるかわかるでしょう!!」

 

 本日のおまいう選手権第一位確定の台詞を吐きながら、なんとか押しとどめようとする。

 ていうか、え? なんで? なんでみぽりんじゃなくてパイセンが助けに行こうとするの?

 わけわからない。

 

「エミ、お前が、お前が教えてくれたんだろう。 仲間とともに歩む戦車道の素晴らしさを、お前が、私に! 私もそれが眩しいと、素晴らしいと思ったからこそ、ここで見捨てるわけにはいかない!!」

 

 はい、俺のせいです本当にありがとうございました。

 どうやら中等部の頃パイセンに語った未来のみぽりん譲りの仲間を想う戦車道が思いの外琴線に刺さってたらしい、やっぱ姉妹だわこの2人。

 

 まあ、つまり、パイセンのまさかの行動は俺の責任な訳でして。

 

「……わかりました、まほ隊長」

「なら離してくれ、一刻の猶予も」

 

「私 が 行 き ま す」

 

「……は? なっ!?」

 

 俺はパイセンを引き寄せてがっしり掴んだ後ティーガーⅠの車内に強引に押し込んだ。

 先輩方にパイセンのことを頼んでから、俺はパンツァージャケットを放り投げて濁流の中に身を投げる。

 パイセンが後ろから叫ぶ声が聞こえてくるがガン無視。

 

(ほんともーやだもーこういうifルート!!)

 

 内心叫びながらも、俺は滑落した戦車のキューポラを破壊して乗員を救出したのだった、まる。

 決勝は負けました、はい。

 なんだろう……こういうのを修正力って言うのかな?

 だったらみぽりんが助けに赴く正規ルートにしてくださいよもー。

 

 

 

 ──────

 

 

 

『あのチビのせいだ』

『前から気に食わなかった』

『正義の味方気取り』

『全部台無しだ』

『調子に乗ってる』

『死んじゃえばいいのに』

 

『ねえ?西住隊長?』

 

 

「やめっ──!!」

 

 叫んだところで、目が覚めた。

 部屋の内装、締め切られたカーテン、そばにある時計。それら全ての情報が、ここが自分の部屋だと言うことを伝えてくる

 

 悪夢の中では、いつも不明瞭な場所で人に囲まれている、目がさめると最近はいつもこんな錯乱したザマを晒してしまう。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 不愉快に騒ぎ立てる心臓と、乾ききった喉。

 枕元のペットボトルの中身を一気に飲み干して、少しだけ気分が落ち着いた。

 しかし、胸の奥にこびりついている鈍い痛みまでもを胃の腑に流すことはかなわない。

 

「くそっ……」

 

 後ろめたさや、やり場のない怒り、そう行ったものがごちゃまぜになって頭の中をかき回す。

 もう何日もしっかり眠れていない。

 怒りに任せて振り下ろした拳は、敷布団に情けなく飲み込まれた。

 

 ──────

 

「……」

「西住さん相変わらず元気ないわよね……」

「クマもひどいし、眠れてないんだよ。 やっぱりあれのせいで十連覇逃しちゃったから……」

「あーあ、アイツのせいで……」

 

 教室にいると、そこかしこから好き勝手に自分のことについてヒソヒソと話す声が耳に飛び込んでくる。

 どれもこれも、不愉快だ。

 そしてそれらに対して真実を話すことができない自分がなによりも情けなくて、悍ましい。

 

『あの日のことは、フラッグ車内のメンバーだけの秘密です』

『しかしそれではお前が!』

『貴女が糾弾されるよりも私がそうなった方が、色々都合がいいでしょう? 大丈夫、このくらいへっちゃらですから。 それに、あの時助けに行ったのは貴女にやらされたのではなく、間違いなく私自身の決断でした。 あの件の功罪は全部私のもの、先輩にだって分けてあげません』

『……こんな時に、カッコつけてどうするんだ、おまえは』

『ふふん、どんな時でもへいじょーしんなのが取り柄ですからね』

 

「……」

 

 口では、ああ言っていた。

 だが、今彼女を取り巻く環境は苛烈にすぎる。

 あの日の敗戦の責任のほぼ全てを背負わされ、有らぬ叱責を受け罵倒され、校内で完全に孤立してしまっている。

 

 それらは全て、私が背負わせたと言うのに。

 

(どうすればいいんだ、私は……)

 

 一番辛いのは間違いなくエミだと言うのに、自分はそれを背負わせてしまった責任に押し潰されそうにっている。

 自分がこんなにも脆かったことを初めて自覚した。

 

 戦車道の訓練中も、エミは顔を出さなくなっていた。

 あんなに夢中になっていたのに、今は参加するのすら厳しい状況だ。

 彼女の人生の全てをかけていたものをすら、私は奪ってしまった。

 そう思うたびに足元が崩れたような錯覚に陥る。

 エミは、今何をしているんだろう。

 それが無性に気になって、エミの番号に電話をかけてみる。

 けれど、繋がらない。

 

 嫌な予感がして、私は用事があると偽って練習を抜け出した。

 向かう先は、エミの家だ。

 

 

 

 エミの家は、少し路地に入ったところの小さなマンションの一室にある。

 日当たりが悪くあまり人気がないが、その分、家賃が安い。

 

「あーーーー……どーしよっかなこれ」

「……」

 

 視線の先に、エミはいた。

 自分の部屋に入る扉の前でまた頭をわしゃわしゃと掻いている気楽な姿からは想像がつかないほどひどい惨状になりながら苦笑を浮かべている。

 家のポストにはギッチリと中身が詰まっていて、わずかに露出したそれらはどれもまともな内容とは思えない文体が見える。

 本人もひどい姿だ。

 頭の先からつま先まで濡れそぼっていて、普段持っていたカバンも見当たらない。

 

 イジメが始まっていた、それを今知った自分が情けなくて情けなくて、いつの間にか涙が零れ落ちていた。

 

「うーん……うえ? え?まほ隊長?なんでここに?」

「……ぅ、うう……ごめんなさい、ごめんなさい……」

「や、あ、その、泣かないで泣かないで! ほら隊長、とりあえず部屋入りましょう、ほらコーヒーでも入れますよ!」

 

 

 

「砂糖はいくつ入れますか?」

「……三つ」

「はいはい、ミルクはどうします?」

「欲しい……」

 

 薄暗く無機質な部屋の中に、芳しい香りが満ち始める。

 みほ曰く最初来た時は今よりさらに殺風景な部屋だったと言うエミの部屋は、本人の気質とは裏腹に冷たい鉄のような雰囲気に満ちていた。

 だが、今はこの空間だけが、彼女が何にも恐れずにいられる場所だ。

 

「はいどうぞ、冷めないうちに」

「……すまない」

 

 差し出されたカップの中には、湯気を立てるコーヒーが注がれている。

 真っ黒な中身に口をつけてみると、見た目に反して甘やかなコクがふわりと広がる。

 喫茶店で飲むものよりも美味しい気がして、思わず一口で三分の一も飲んでしまった。

 

「……暖かいな」

「淹れたてですから」

 

 得意そうに笑うエミの姿に、少しだけ気が緩んで……そしてまた、涙がこぼれそうになる。

 

「わぁ泣かないでくださいよ!何があったんですか隊長!」

「ごめん……ごめんな……私のせいで、エミがこんなことに……」

 

 一度言葉に出すと止まらなくて、堰を切ったように懺悔の言葉が口から吐き出された。

 エミに重荷を背負わせてしまったこと、エミの大切な戦車道(人生の目標)を奪ってしまったこと、酷い環境に身を窶させてしまったこと、そして、それらを止めることができないこと。

 もう、どれだけ謝ればいいかもわからないほどに、彼女に不当な苦痛を味わわせてしまっている。

 

「私はもう……どうしたら……」

「いいんですよ、まほ先輩」

 

 情けなく泣きぐずる私の肩を、エミはそっと抱いてきた。

 あやすような優しい声で、そっと語りかけてくる。

 

「前も言いましたが、助けに行ったのは私の判断ですから。 それをこうして心配してもらえてるだけで、私は救われてますよ。 確かに今のままだとちょっとしんどいですが、もうすぐここを離れますから、それも終わりです」

「……はな、れる」

「ええ、私、黒森峰やめます。 今のままここに残るのは流石に厳しいですからね」

 

 その言葉に、雷に打たれたような衝撃を受けた。

 エミが、黒森峰を、やめる。

 

 エミは以前言っていた、自分は頭が良くないから相当な猛勉強をしてようやく入学できたと。

 戦車道のためにそれこそ全身全霊をかけてここに入れたと言うのに。

 ここで学ぶ機会を、失ってしまう。

 

 それだけじゃ、ない。

 

 エミがここから去ると聞いた時、胸の奥に恐ろしいほどの喪失感が生まれた。

 

 これは、なんだ?

 

「そんな……そんなこと……」

「仕方ないんですよ。 ま、オトナのツゴーってやつですね。 別のとこ引っ越したら、しばらく戦車道から離れて自分を見つめ直してみますよ。 頭冷やすにはいい機会かもしれませんからね」

 

 なんでもないように笑うエミの姿に、鼻の奥がツンと熱くなって、また涙が溢れ出してきた。

 エミがまた慌てながら私の背中をさすってくれて、なのに私は、情けなく懺悔を吐き続けるだけで。

 

 

 だめだ。

 

 こんなこと、認めるわけにはいかない!!

 

「ッ、グズ……エミ、エミ」

「はい、どうしましたか?まほさん」

「一緒に、ここを出よう!! 私がお前を支える、守ってみせる!」

 

 

 

「はい?????????」

 

 

 

 

 

 ──月──日

 

 ぼくはいま 大洗にいます

 

 まほさんとるーむしぇあしてます

 

 

 

 なんで???????????????

 

 

 ガールズ&パンツァー if

 鉄血のリベリオン〜ウルトラポンコツ転生者を添えて




※始まらない

このルートではエミカスごと姉がいなくなって隊長に据えられてしまった闇ぽりんと、尊敬してた隊長と日に日にボロボロになっていった友人が突然消えてしまって精神をやられかけたエリカがラスボスとして立ちはだかります

とりあえずおまけルートは大体こんな感じで進めていきます、ご要望等ありましたら活動報告の意見募集してるところに書いてくださいね
とりあえず次回はエミカス失意の受験失敗ルートかゆかエミ書きます。
受験失敗ルートはどの高校に入るかはまだ決めてないのでこれもまた活動報告の頭が悪いタイトルのやつで意見募集してますのでこっちに書いてください。

最後になりますがまほチョビファンの人ほんとすまん

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