俺はみほエリが見たかっただけなのに   作:アーマードコアの新作

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みつきうららさんがまたもやエミカスのイラストを描いてくれました!
あらすじの他、八話内にも挿絵として置かせていただいたので是非是非見てください。
エミカスとは思えないほどキュートに描かれてますよ!
ますます気合を入れてエミカスをボロクズにしてやります!!


おまけルート四本ME エミカスは無事1人で転校したようです

 ──月──日

 

 フィンランドのカモメはでかい。

 丸々太ったカモメが港をのしのし歩く姿を見ていると、小さい頃に飼っていた……ここで猫の名前が挙げられるのだが、どんな名前かは忘れてしまった。

 

 昔見た、好きな映画の冒頭のシーンで、たしかこんなセリフを言っていた気がする。

 おばさん三人が主役の特に山や谷のあるわけではない話だったが、あののんびりとした雰囲気がなんだかとても気に入っていた。

 

 しかし、そんな昔のことを想起したからといって、しんみりとした気分に浸っているわけじゃない。

 寧ろ頭の中身は疑問符で埋め尽くされてるといってもいいだろう。

 

 そう、フィンランドのカモメはでかい。

 ここは日本だ。

 なのになぜか継続高校のカモメは丸々と太っているのである。

 いや確かにフィンランドっぽい国柄の学園艦ではあるけどそこ力入れるところか?

 

 

 

 ──月──日

 

 こちらに引っ越してから早二週間、ここでの生活にもようやく慣れてきた。

 最初こそ航行経路の違いによる気候の変化やあまりにも独特な生活スタイルに困惑していたが慣れればどうということはない。

 

 ことは、全てうまく運んでいる。

 すべての責任を負い黒森峰を去り、みぽりんは黒森峰に残ったまま、そしてみほエリへ……

 うまくいきすぎて怖いくらいだ、そうでないと困るわけだが。

 

 継続高校での生活は基本的には順調だ、住み込みのバイト先を見つけて、少ないながらも収入もある。

 勉強の方も問題はなく、久しぶりに戦車道から離れたために随分と暇ができたので最近は事情により料理の練習を開始した。

 後最近はダミー日記に凝っている。痛々しいことこの上ない黒歴史の凝縮されたような一冊だが、これがなかなか面白い、ルークの日記を書いてる気分だ。

 

 ただ困ったこともある。

 住み込み先の店の主人が唐突に消えたのだ。 わけがわからない。

 近所の人曰く放浪癖があるらしく、宝くじで当てた30億近い資産を使っていきなり世界を旅するのだとか。

 幸い電話はできて、店は開けても閉めても良く給料と生活費は毎月振り込むが開けるからには美味しいものを提供するように、とのことだった、無責任を極めすぎている。

 こういうのもフィンランドカラーってやつなのだろうか、いや、大半の人はそんなことはないだろう。

 

 というわけで今、俺はこの食堂、『Ravintola UMINEKO』の代理店主となってしまったのであった。

 開店日は平日の午後五時から七時まで、休日は土曜日のみ正午から。

 定休日は不定期だが日曜は絶対休み。

 

 ……永久就職したいレベルでぬるい職場である。

 

 

 

 ──月──日

 

 なんとなく責任を感じ、学業を終えた後に店主不在中の札とauki (営業中)の札の二枚を下げておく。

 大半の人は店内でのんびり勉強している俺と札を見て通り過ぎていく。

 実に平穏な時間だったが唐突に来店を知らせるベルがその終わりを告げた。

 客はミカだった。

 心臓が止まるかと思った。

 前触れがなさすぎてひっくり返りそうになり、それを押さえ込んだせいでしばし見つめ合うこととなる。

 再起動してようやく、俺は練習していたフィンランド語のいらっしゃいませ(Tervetuloa )を言えたのであった。

 注文はコーヒー、これに関しては自信があったのでそれなりにしっかりしたものをお出しできたと思う。

 

 それにしても生ミカ、初めて見たが……やっぱりすげぇよミカは。

 なにがすごいかというともう、そりゃ、ね?

 

 

 

 ──月──日

 

 毎日ミカがくる。

 コーヒーをお気に召されたようだ。

 放課後にここにきてはコーヒーを啜りつつポロロンしている。

 やってない時でも平然と入ってくるのはちょっとやめないか。

 なので最近は、ミカと同じ空間でポロロンを聴きながら勉強や料理の練習をする日々である。

 これはミカファンにとっては千金を積んでも得がたい経験だろう。

 こういうとき、転生できてほんとよかったと思うのだ。

 

 しかし、ミカ。

 ミカというとどんなCPがいいだろう。

 ミカみほとかすげー好きだけどこの世界はみほエリである。

 やはりここはとある説から生まれたロマンあるミカありを推しますかね……

 

 こんなことを書いてるとみほとエリカの様子が気になった。

 今日は2人に電話をかけてから寝ることにしよう。

 

 

 

 ──月──日

 

 ミカがアキとミッコを連れて来店した。

 今日は休業の札を下げていたはずだが。

 アキにペコペコと謝られたのは貴重な経験である。

 とりあえずコーヒーをお出ししたあと、店長にオススメされたシナモンロールを練習していたのだが、凄まじい視線に屈して三人に提供することとなった(無料)。

 アキとミッコはおいしいおいしいと頬張ってくれたがミカはいつもの涼やかな表情で無言だった。

 ただ一番たくさん食べたのもミカだった。

 やっぱりすげぇよミカは。

 

 みほとエリカにグループ通話をかけてから今日もお休みすることとする。

 

 

 

 ──月──日

 

 驚いた、すごく驚いた。

 部屋に入ったらミカがいたもんだからひっくり返るほどびっくりした。

 そしてさらに冷蔵庫の中にしまってあった練習品のロールケーキを食べていたからさらに驚いた。

 呆然としているうちに優雅に口元を拭ったミカはごちそうさまと言って窓から出て行った。

 

 これは普通に犯罪では? そう思って店長に警察に言うかと聞いたら笑いながらいつものことだと言われた。

 それでいいのか……

 

 

 

 ──月──日

 

 フィンランドの名産といえば、なにはともかくサーモンだろう。

 ザリガニやニシンもあるが、トナカイ肉は流石になかった……と思いきや冷凍輸入されたものが普通に売られている。

 こだわりがすごすぎる。

 

 まぁともかく、そんなわけでフィンランドリスペクト精神が異様に強いこの艦でも当然サーモンは人気の品だ。

 日本産のサーモンのはずなのにやたらとデカイ、食いでがましましである。

 なので今日はサーモンとほうれん草のクリームパスタを晩御飯にした。

 ミカは当たり前の様にいたので2人分作って一緒に食べた。

 

 ……おかしいよなこれ? 普通にいるの変でしょ絶対。

 

 

 

 ──月──日

 

 サウナ、サウナである。

 おっさんの大好物サウナである。

 近所に大きなサウナ風呂施設があると言うことで、興味を惹かれた俺は行ってみることにした。

 そして中に入ると例の三人組、ミカアキミッコがズラリと並んで汗をかいていた。

 ミカも珍しく驚いた表情をしていたのでこれは本当に偶然なんだろう。

 

 ややぬるめのサウナでじっくり汗をかいていると、ミカに唐突に戦車道のことを尋ねられた。

 どうやら俺のことは知っていたらしい、まぁ継続とは試合をしたこともあったからそのつながりから俺の事故のことも把握していたのだろう。

 

 戦車道はやめるのかと聞かれたので、まだ答えは決まってないと答えておいた。

 ぶっちゃけた話もうやらなくてもいいわけだが、あれはあれで楽しいし将来また再開すればみぽりんとエリカとの話のタネになるかもしれない。

 

 サウナから上がった後は三人ともなぜか俺についてきて、コーヒーを淹れる事となった。

 湯上りの食事は重くてもいけないが少ないのも物足りない、と言う事でサーモンスープとパンで終わらせた。

 

 なんだか最近は彼女ら専属のコックと成り果てている気がする。

 

 

 

 ──月──日

 

 最近はもうミカと飯を食わないことの方が少ない。

 そしてここまでくれば俺も察しがつく、ミカはおそらく誰かに言われて俺の様子を見にきている。

 そんな命令に従うタイプの人間ではないと思うのだが、どう言うわけか素直に従っているらしい。

 おそらく彼女にも都合があるのだろう、ここはオトナのヨユーで知らん振りを決め込んでおこう。

 

 みぽりんと電話したが、とても寂しがっている。

 エリカを、エリカを頼りんしゃい……

 

 

 

 ──月──日

 

 なんで??????????

 

 

 

 

 

 ──月──日

 

 昨日は大変だった。

 部屋に戻るとミカが泣いていてオマケに思いっきり抱きしめられたのだ。

 はい、この世からピロシキ案件です。

 事情は分からなかった、尋ねても口を割らない。

 なのでとりあえずしばらくはそのままにして、落ち着いた頃合いを見計らって脱出し、秘蔵のルアックコーヒーを角砂糖ましましでお出ししてなんとか落ち着かせた。

 それにしても泣き顔のミカとは貴重なものを見た気がする。

 しばらくして落ち着いたミカは取り乱したことを謝罪して今日は帰るといって去って行った。

 

 さて、どんなケジメをすればいいだろう、不可抗力だったとはいえ確実にケジメ案件である。

 とりあえず小指を逆ポキした。

 派手に痛かったが罪が洗い流されるのを感じた。

 

 

 

 ──月──日

 

 おかしい。 ミカがおかしい。

 あのミカが俺の調理の手伝いをするなどと。

 アキもミッコも呆然としていた。

 なんだか俺をみる目が変な光を帯びている。

 一体あの夜になにがあったのだ、真剣に知りたい。

 

 

 

 ──月──日

 

 今日は、お客さんが来なかった。

 と言うか基本あの三人か、あるいは彼女らに連れられた戦車道メンバーくらいしかやってこないのだが、その戦車道チームは模擬戦で試合に出かけているのだ。

 相手はなんと黒森峰。

 古巣との対決なので少し反応に困る、どっちを応援すれば良いのだろう。

 

 晩御飯にはトナカイ肉のステーキ、かーなーりー食べ応えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

『彼女のことを見てあげてほしい』

 

 大恩ある『校長』にそう言われたから、仕方がなくだった。

 誰かに従うのは性に合わず、それも多くの時間を割かねばならない仕事。

 なぜそんなことを私に任せたのかは分からない。

 だが、了承してしまった以上、仕事は仕事。

 なので私は『校長』が店主をつとめる一軒の食堂を訪れた。

 

(ここに例の生徒が、ね)

 

 黒森峰がプラウダに負けた原因とされ、半ば追い出されるように転校してきたと言う、元黒森峰生徒。

 名前には聞き覚えがあった。

 天翔エミ、模擬戦で戦った時一年ながらレギュラーメンバーとして、副隊長車の装填手を務めていたはず。

 

(……様子を見るといっても、何を見ればいいのだろう)

 

 自殺でもしないように見張れと言うのだとしたら、あいにく自分では力不足だろう。

 四六時中見張れるほど時間もないし義理もない。

 できてせいぜい、その様子を校長に伝えることくらいだ。

 そのくらいしかやる気がないとも言う。

 

「まぁなるようになるか」

 

 今更渋っても仕方がないので、さっさと店内に入ることにした。

 ドアベルが奏でる音を聞いたのか件の生徒らしき子がこちらへと視線を向ける。

 

(……小さいな)

 

 高校生とは思えない驚くほど小柄な少女だった。

 艶やかな黒髪を後ろで束ねていて、どことなくスッとした印象を抱かせる。

 自分より頭二つ分近く背の低い彼女は、しばらくこちらを呆然と見つめた後、やや慌てたように立ち上がる。

 

「Tervetuloa」

 

 なぜか綺麗な発音でフィンランド語を話されて少し面食らった。

 てっきり我が身を襲った不幸に打ちひしがれているかと思っていたけれど、慌てて水の入ったグラスを用意する姿からはさほど悲壮感は感じられない。

 とりあえず席につき様子を伺ったのだが、どう見ても店の手伝いをする生真面目な小学生程度の印象しかなかった。

 

「こちら、メニューです。 ただいま店長が不在でしてできない品も多いのですがご了承ください」

「……コーヒーをもらおうか」

 

 味には期待できないがとりあえず注文をして、一息ついた。

 この調子なら心配はなさそうだし、飲み終えたならさっさと帰ろう。

 暇つぶしにカンテレを鳴らしながら外を眺める、空模様は薄曇り、運動をするにはちょうど良さそうだ。

 

「お待たせしました」

 

 ぼうっとしていたらいつの間にかできていたらしい、香ばしい匂いを漂わせるコーヒーがテーブルに置かれていた。

 泥水をすする覚悟だったから、少し驚いた。

 

 まあいい、さっさと飲もう。

 カンテレの手を止めて、カップの淵にそっと口付ける。

 

「……!」

 

 美味しい。

 

 とても、美味しい。

 コーヒー自体を今までさほど多く飲んできたわけでは無いけれど、その中でも一番と言ってもいい味だった。

 香ばしい香りに球の様な舌触り。

 気がつけばカップの中身は空っぽになっていた。

 

 ……なんだか悔しい気がして、私は料金を置いてそこを立ち去った。

 

 夜、その味わいが脳裏の中に想起される……

 

 次の日、私はまたその店を訪ねていた。

 次の日も次の日も、その次の日も。

 気がつけば戦車道メンバーも誘っていた。

 誰もがコーヒーの味を気に入っていた。

 悔しいことに私もその1人だった。

 たまに練習品として出されるシナモンロールにアップルパイ、そしてコーヒー。

 どうやら私は、彼女のコーヒーの中毒になったらしい。

 

 

 

「うぇ、ミカさん!?」

 

 夜中になって、忍び込んでいたのを見つかると、天翔エミは素っ頓狂な声を上げて仰け反っていた。

 まあ、確かに驚くかもしれない。

 だが私とて校長に部屋のものは自由にしていいと言われている。

 小腹が空いていたのだから、仕方がないだろう。

 だが気まずいのも事実だったのでさっさと立ち去ることにする。

 ……そういえばこのロールケーキ、ナマ物だから日持ちはしない。

 つまり冷蔵庫に入ったのは最近だ。

 彼女が食べるものだったとしたら少し悪いことをした。

 次の日にまた訪ねて謝ろう。

 

 ……と思っていたら、部屋で待っていた私を見ると彼女は何も言わずに私の分まで夕食を作って、一緒に食べることになった。

 

 ……おかしいな?絶対そんな流れではなかったと思う。

 

 

 

 

「あ」

「え?」

「わっ」

「お」

 

 休日にサウナを訪れて汗を流していたら、まさかの天翔エミと遭遇した。

 向こうも驚いているので、完全に偶然なのだろう。

 

 ややぬるいサウナの中でしばらくの間、全員無言だった。

 ちらりとみた彼女の体は華奢で、少し力を入れれば折れてしまいそうなほどに細い。

 果たしてなぜあんな体で装填手なんて勤めていたのか。

 

 ……あるいは、装填手以外にはもっと適性がなかったのか。

 

 そうだとすれば、彼女はそんな体躯と才能のハンデを背負いながらも、黒森峰に入れるほどの選手になるまでにどれほどの努力を積んだのだろう。

 

 そして、そしてその努力が

 

 全て無に帰してしまって

 

「エミ、君は戦車道は再開しないのかい?」

「え?」

 

 暑さで頭ゆだっていたからか、つい口が滑った。

 無神経な質問だったと思い撤回しようとしたけど、エミがあっさりと口を開いたのでその隙もなかった。

 

「まだ答えは決まってないです」

「……そうかい」

 

 今、彼女は間に揺れ動いているんだろう。

 自分が追いかけ続けてきた夢への道を再び走り出すか。

 この事故を機に見切りをつけるのか。

 

「戦車道には、人生の大切なすべてのことが詰まってる」

 

 思わず私は、自分が戦車道に感じる思いを打ち明けていた。

 なんとなく、私は彼女に戦車道をやめてほしくないと思っている。

 

 たとえ、たとえ辛い思いをしたとしても、きっとそれを乗り越えるだけの情熱を彼女はまだ秘めていると、信じたい。

 だからそんなことを言っていた。

 

「……ありがとうございます」

「珍しい、ミカがちょっと熱いね!」

「確かに、なかなかみないなーそういうところ」

「……」

 

 三人にかけられた言葉に、思わず顔が熱くなった。

 

 と言うか、これは、のぼせている!!

 

 

 

 それからもしばらく、私は彼女と夕食を共にした。

 日に日に腕を上げていく彼女をみると少し嬉しくて、しかしそれは戦車道という芯を削り取っていく様な苦行にも感じられた。

 彼女は、今不安定だ。

 夢と現実の狭間で打ちのめされて、それを必死に覆い隠してはいるけれど、それがいつ限界になるかもわからない。

 

 校長はこれを、危惧していたのだろうか。

 

 でも、私は彼女に戦車道という夢を諦めてほしくない、失望してほしくないと、思い始めていた。

 

『私だって』やれた。

 だから、彼女もきっと、きっと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰も助けてくれない

 

 みんながわたしのせいにする

 

 

 

 ぜんぶなくなっちゃった

 

 

 

 

 

 

 

「……ぁ、ぁ」

 

 震える体を抑えられない。

 溢れる涙を止められない。

 

 私は、私は何も知らなかった。

 出来心でのぞいてみた、一冊の分厚い本。

 この一冊の日記帳の中にだけ明かされていた、彼女の中の深い闇。

 自己嫌悪が心を淀ませ、澱みが導くさらなる絶望。

 

 私は、私は何も知らないくせに、彼女になんてことを言ってしまったんだ。

 

 人生の全てを賭けていた戦車道を、己自身を完全に否定されて、打ちひしがれて、そして逃げてきた先で。

 そして、少しずつ自分の心を癒していた、弱り切っていた彼女に。

 

 私は、なんで軽々しく、あんなことを言ってしまったんだ。

 

「ミ、ミカさん、どうしたんですか?」

「ごめんね、ごめんね……エミ、ごめんね……」

 

 私を見つけたエミを、思わず抱きしめて、そして謝り続けた。

 くだらない自慰行為にも等しい、自分を許したいがための情けない贖罪行動。

 

 

 

 許せない。

 

 許せない。

 

 許してたまるものか。

 

 自分も許せない、だがそれ以上に彼女をここまで貶めた汚い論理を許せない!!

 

 何も、何も変わっていない!!

『島田』と過去に道を違ったあの時と、汚い大人どもは何も変わっていやしない!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は、よろしく頼む」

「あぁ」

 

 広い草原で顔を合わせる両校の生徒。

 継続高校と黒森峰の戦車道チームによる模擬戦の開催日。

 両校、隊長を務める西住まほと名無し、通称ミカは互いに言葉を交わしていた。

 まほはミカの様子に何か違和感を感じてはいたが、それがなんなのか確信は持てていない。

 

「試合前にすまない、一つ聞きたいことがある」

「……何かな?こちらはもう早く始めたくてウズウズしているんだけどね」

「……? 手間はとらせない。その……天翔エミを知っているか?」

 

 気まずげに尋ねたまほの言葉に、ミカはぴくりと肩を震わせた。

 

「こちらで事故が起こった後、彼女はそちらに転校したと、聞いた。 ……向こうで元気でやっているのか、何をしているが、もし何か心当たりがあれば教えてくれると」

「それを語ることに意味などない」

「っ?」

 

 まほは、過去にここまで強い怒りを込めた言葉を吐くミカを見たことがなかった。

 灼熱の憎悪を瞳に宿した継続の隊長は、まほをギロリと睨みつける。

 

「彼女を見捨ててかばいもしなかった連中に今更心配されたところでエミも迷惑だろうさ、違うかい?」

「それは……」

「な、あんた、何よその言い草は」

「正論を言ったまでだ」

 

 ミカのあまりの言葉に噛み付くエリカにも、ミカはバッサリと切り捨ててしまう。

 両校の選手たちも何が起きているのか理解できていない。 否、理解が追いついていない。

 ただ一つ。

 

 ミカがここまで怒っているところなど、誰も見たことはない。

 

「話すことはもうないよ、さっさと始めよう」

 

 踵を返すミカに慌ててついていく継続生徒たちを見送る黒森峰のメンバーたち、しかし、その士気はあまりにも低い。

 

(覚悟しろ、全てめちゃくちゃにしてやる)

 

 ミカは、そんな彼女たちを一瞥することもなく、心の奥に闇の焔を灯す。

 自分にはやらなければならないことができた。

 そのための第一歩として、今日の試合を、圧勝する。

 

(見ていろよ、戦車道という競技に巣食う地位と見栄に夢中な肥え太った豚どもめ……全員、全員引き摺り下ろして地獄に落としてやる)

 

 一度灯された憤怒の炎は消えやしない。

 

 かつて、島田から出奔した1人の悪魔が、哀れなる同胞の姿を機に覚醒することとなる。

 

 そしてこれこそが

 

 

 

 鬼神西住と名無しの死神の長い因縁を結びつける最初の一戦となったのだ。

 




いわゆる島田ミカ説、わたしは好きです。
とりあえず指折れたから次は絶対腕行くから覚悟してろよエミカス。
それはともかく今回はエミカス三大パワーワード、なんで????この世からピロシキ ぜんぶなくなっちゃった をフル活用できたので久々にエミカスを活躍させたような満足感があります

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