俺はみほエリが見たかっただけなのに   作:車輪(元新作)

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筆がサクッと乗ったので初投稿です
短いのは許して

あと、明言しときますが、このssにおいて主人公が闇方面に向かったりやたらシリアスな方向に向かうことはないです。
だってそんなのみんな望んでないやろ?
俺には学はないが特別な知恵があるんだ…。
周りは知らん、そんなことは俺の管轄外だ


TANK A TANK

 ──月──日

 

 病院で一日過ごして帰宅、大変緊張した。

 夜の病院って意味もなく怖いんだよね。

 

 アンツィオの戦いが終わった後に俺は指に巻いてあった包帯のことをみぽりんや会長に問い詰められた、一安心してうっかりグローブを外してしまったのだ。

 なので個人練習中に爪がバリッと逝ってしまったと嘘ついたらすぐさま病院に連行された。

 そしてそんな手で試合に出ないでと思いっきり泣かれてしまった。

 

 みぽりんを泣かしてしまうとはこれは極刑ものなのでは? 俺は訝しんだ。

 しかしだからと言ってこの状況でセルフ宗教裁判をおこなうほど俺もアホじゃないのでおとなしく謝って1日病院で検査を受けたりして念のためにお泊まりしたのであった。

 爪剥がれた後放置すると感染症とかあるんですね、初めて知りました。

 

 エリカにも一応ツミッターでそんなことがあったと教えたらはちゃめちゃに怒られた。

 本当に申し訳なかったです。

 

 そして秋山殿の俺を見る目がなんか、こう、すごく、すごい。

 これはまずいのでは????

 俺はますます自分を窮地に追いやってしまったのでは?

 これからは迂闊な自罰行為は控えることとする、人生終了間際にまとめて実行しよう、迷惑をかけるのは本意ではない。

 

 ──月──日

 

 いよいよ準決勝まで上り詰めた大洗学園艦はなんとも浮き足立った雰囲気である、初出場の戦車道チームが不足した戦力でここまで戦えてるってのは真面目に奇跡だからね、仕方ないね。

 

 しかしこれから先も五輌で勝ちぬくのはもう絶対に不可能、そこで原作同様カモさんチームの車両、ルノーB1が復活を遂げて戦力に加わったのであった。

 最大乗員数は四人だが、初心者三人で回すことになる大洗の懐事情が非常に寂しい。

 なので俺はカメさんチームからカモさんチームに移ることとなった。

 桃さんに装填技術をがっつり仕込んだ結果なんかもう俺より上手くね?ってシーンが度々ある。

 静止状態では俺は他の追随を許さないが、ずっと止まった状態で延々と打ち続けるよりもガタガタと四方に揺られながら装填するシーンが試合中は当然多く、そして俺は昔からその駆動中の装填作業というのに適性がなかった。

 昔こそどの場面でも最速叩き出してたが今はこのザマである。 かなしい、かなしい……

 仲良くしてもらい、廃校の秘密を共有したカメさんチームからもお別れ、これからはこのカモさんチームで初心者のフォローに勤めることとしよう。

 幸い俺はそどこちゃんからの覚えも良い(麻子ちゃんを背負って登校してくることを除く)ので、拒絶反応もないだろう。

 担当は装填手兼通信手。

 原作でははちゃめちゃな量の役割を兼任していたそどこちゃんの負担を軽減できたら良いな。

 

 あんこう鍋に俺も誘われた。

 うまかった です。

 みぽりんと生徒会チームは未だどこかギスっていたので間を取り持つのに苦労しました。

 そして廃校のことは伝えようとしたら止められた。

 なんでや!もっと早く言ってもええやろ!

 

 ──月──日

 

 今日は買出しに出かけた。

 プラウダ戦でも我が心は不動、しかして体は温めねばならぬ。

 即ちこれ健康維持の秘訣なり。

 

 心配なのは試合に出してもらえるかどうかだったが、反対する会長チームを押し切ってみぽりんが説得してくれた。

 やっぱりみぽりんは天使だ。

 

 それにしても15対6

 うん……

 なんで勝てたんや原作ぅ!?

 

 夜中に電話がかかってきた、しほさんだ。

 アンツィオ戦前くらいに一度電話されて以来度々世間話をする仲である、嘘です。

 実はまほさんに事の真相を伝えられて、娘のせいで迷惑をかけた事、立場上責めざるを得なかったことを謝られ、庇ってくれたことを感謝されたので全て許した、もともと怒ってないけど。

 しかし命綱つけなかったのは真剣に叱られた、ごめんなさい。

 最近はたまにみほはしっかりやってるかとか2人とも困ってることはないかと何かと世話を焼いてくる。

 お母さんか! お母さんだったわ。

 いよいよ明日はプラウダ戦ですね、早めに寝ることとします。

 

 追記:みぽりんが一緒の布団で寝ようとか言い出したので我が心は流動、日記を書くことで平静を保っている

 未来の俺よ、お前にしか俺の胃痛はわからん。

 ぼかぁねえ!エリカとみほが一緒に寝てるところを見たいんです!!

 

 

 


 

 

「うー……ねみぃ」

「大丈夫ですか? 天翔殿」

「わかる……きつい……」

「だよね……倒れそう……」

「2人ともしっかりしてよ!!」

 

 雪という悪天候に苛まれた戦車道全国大会準決勝。

 初出場の弱小チームである大洗の勇姿を一目見ようと多くの観客が集まっているが、野ざらしの観戦席で多くの人が寒さに震えている。

 寒さというのはバッドコンディションの要因となる厳しい状況だ、集中力も切れやすくなる。

 

「でも、天翔ちゃんは暖かそうだよね〜」

「エミちゃんは昔から寒いの苦手ですから……」

「日本が常夏になれば良いのに……」

「そうすると雀蜂が大繁殖してゴキブリも際限なく増える」

「やっぱ冬来て……」

 

 こっくりと船を漕ぎながらもなんとか意識を保っているエミは周りと比べると随分と重武装だった。

 桃色のニット帽に濃赤色のネックウォーマー、足を覆うのは普段よりも随分厚いタイツ。

 寒がりというのが一目でわかる外観である。

 

 手を覆うグローブの片側の下は、いまだに痛々しく包帯に巻かれた指が隠されている。

 生徒会メンバー含めて多くのものは休んだほうがいいと言ったが、本人と何よりみほの説得によりこの試合にも参加することとなった。

 

「エミちゃん、何度もいうけど痛みが悪化してきたらすぐにいうんだよ」

「わかってます。 初心者三人組に迷惑かけるわけにも行きませんしその時はサッサと退散しますよ」

「宜しい」

 

 会長と何度も確認しあったことを再度口酸っぱく注意されて、エミは苦笑しながらもそれに答える。

 その姿を見るみほは確信した、エミは絶対に途中で棄権はしないと。

 

 ならば、自分にできることは彼女への負担をなるべく減らすことだけ。

 

 

 

「アハハハハハハ!!このカチューシャを笑わせるためにそんな戦車を用意したのね!!」

 

 突如として聴きなれぬ笑い声が響き渡る。

 弾かれたように振り向くエミにつられて全員がそちらに視線をやると、大洗のものとは違うパンツァージャケットを纏った二人組がいた。

 1人は長身で大人びた雰囲気、美少女というよりは美女という表現が似つかわしい。

 もう1人は……小さい、本当に高校生なのか疑うほどに背丈の小さい女の子。

 生意気そうな表情に満ちた自信とは裏腹の頼りない外見だ。

 まぁ、大洗チームは一切驚かなかったが。

 

「ふふん、カチューシャの威圧感に怯えて声も出ないかしら。 ま、それがわかるだけ他のチームよりはマシね、人員の質でなんとか勝ち残ってきたのかしら。 ま!プラウダには戦車の質でも人員の質でも負けてるし、そっちに勝ち目は一切……一切……」

 

 調子に乗って自慢話を展開し始めたカチューシャというらしい幼女に、全員が黙っていた。

 しかし、それが唐突に止まる。

 

「カチューシャ?」

「……ノンナ、あれ」

 

 カチューシャがピシリと誰かを指差した。

 その指先にいたのは、重武装の大洗生徒。

 

「……え、なに?」

「ノンナ!」

「Понятно」

「日本語!」

「了解です」

「わ、わ、なにさ!?」

 

 突如として距離を詰めてきたノンナという長身の女性にエミは珍しく慌てふためいた。

 

「ちょ! うちのチームメイトに何を!」

「大丈夫、3秒ですみます」

「わぁぁぁ!!」

「エミちゃん!」

 

 逃げ出そうとしたエミの首元をワシっと掴んだノンナは懐からメジャーを取り出した。

 そして頭の天辺からかかとまでの距離を素早く測り、解放する。

 その間実に2秒っ!

 解放されたエミも周りも呆然とする中、ノンナはぺこりと頭を下げてカチューシャの元に帰還した。

 

「身長124センチ、誤差0.5以内。 体重22キロ、誤差100グラム以内です」

「やったあ!!」

 

 今の一瞬、ずさんな測定でわかったのか!?

 全員が驚愕し、エミを見る。

 エミは引きつった笑いを浮かべていた、みほも驚いた、ノンナの測定結果は極めて正確だったからだ。

 相手チームの奇行と謎ワザマエに全員があっけにとられる仲、カチューシャは満面の笑みを浮かべてエミに近づいてきた。

 

「すごく、すごく気に入ったわあなた! 名前なんていうの?」

「え、天翔エミです……」

「……どっかで聞いたような? まあいいわ! あなたに免じてカチューシャもちょっとは優しくしてあげる。 このカチューシャ様の指揮する部隊と戦えることに胸躍らせながらたっぷり思い出を作ると良いわ! アーーハッハッハ!」

 

 高笑いをしながらカチューシャは踵を返し、大股で立ち去っていく。

 そんな中ノンナは再びエミに歩み寄った。

 びくりと震えるエミにそっとかがんで視線を合わせると、懐からまた別の何かを取り出した。

 

「突然申し訳ありませんでした。 お詫びにこれを」

「え、はぁ」

「では、ピロシキ」

 

 今度こそノンナは去っていった。

 なんというか、蹂躙されたような気分に試合が始まる前から大洗チームは負けたような気分になった。

 エミはノンナに渡されたものを見る。

 紙袋に包まれたそれの封を破り中を見る。

 

 猫耳カチューシャだった。

 

「なんなのなの、なんなのなの……」

 

 頭を抱えてうずくまるエミに全員が同情した。

 

「これは強敵だ……」

 

 会長の色々と含みをもたせた発言が空虚に試合会場に響き渡った。

 

 ……準決勝、試合開始。

 

 




前回焼きかぼちゃプリンは愚かにも更新を怠ったので蟻の餌とし新たにソーダ水が執筆となります
彼ならもっとうまく〆られるでしょう

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