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所々原作の知識が足りない点があるので気になれば指摘をもらえると助かります。
晴れてゲブ様のファミリアの団員第一号になった俺は、ゲブ様の拠点であるボロのアパートに着くやいなや""神の恩恵""を授けてもらうことになった。
しかしアパートに入った瞬間、いきなり「上着を脱げ」と言われたときにはこんなヤベェ神の所からさっさと逃げようと思いはしたが、すぐにゲブ様のフォローが入ったからギリギリのところで踏みとどまることが出来た。
あのまま逃げてたら最悪の場合、寒空の下で野宿になっていただろう。
まあ、過ぎたことについて語るのはこれくらいでいいだろう。
ゲブ様が住んでいるアパートはかなり狭く、机をどかせば二人で眠れなくもないくらいのスペースを確保した四畳間の小部屋である。
家具は小さな箪笥が一つと折りたたみ式の机のみで、一応玄関の手前に小さな調理スペースがあるだけでトイレもシャワールームも何もないこざっぱりとした部屋だった。
ゲブ様曰くかなり切り詰めて生活しているらしく、家賃と食費を賄うだけで厳しい状態なんだとか。
本人は二人分の食費ならギリギリどうにかできると言っていたが明らかに俺が出した条件で受け入れてもらえるとは思えない様な生活状況に少しばかり疑問を持ちながらも、取り敢えずしばらくの間は様子を見ることにした。
ゲブ様は部屋の隅に人一人分が寝転がれるくらいのスペースを作り、布を一枚敷いて俺にうつぶせになるように指示した。
""神の恩恵""は神の血をインクにしてーーインクと言っても一滴で足りるーー神聖文字を背中に刻むことで与えることができ、神聖文字を刻むのにそれなりに時間が掛かるため神様的に相手を俯せにさせた方がやりやすいらしく特に反発する意味もないので俺は指示に従って布の上で俯せになる。
俺が呑気に布越しに床の冷たさを感じているとゲブ様は俺に一言断りを入れると俺の背中の上にまたがり、""神の恩恵""を与える準備を整える。
裁縫に使うような普通の針で自身の指先を傷付けたゲブ様は俺の背中に血を一滴垂らし、ついに神聖文字を刻み始めた。
俯せになっているため背中で何が起きているのか詳細は分からないが、なんか視界の端で光っているのが見えることからスンゴイことをしているのは確かなのだろう。
そのまま数分くらい時が経つと光は収まり、ゲブ様は一枚の紙を俺の背中に一瞬だけ乗せた後に背中から離れた。
背中に感じていた温もりが消えたことに少しばかり肌寒さを覚えていると、ゲブ様から先程俺の背中に乗せていた紙を手渡してきた。
「ヴァン、それが君のステイタスだ。」
そう言われて手渡された紙には神聖文字ではなく普段俺たちが使っている共通言語で俺の名前と各種ステイタスのパラメーターやアビリティが記載されていた。
""神の恩恵""を与えられた段階では力や耐久、器用、敏捷、魔力といった五種の基本アビリティの数値は0であるため当然の如く俺のステイタスでも基本アビリティは全て0である。
さらに基本項目の上に書かれているレベルの項目にはLv.1とあった。
この項目も基本アビリティと同様に最初はLv.1から始まり、経験を積むことでそのレベルを上げることができる。
ただし、レベルの方は基本アビリティに比べて上げにくいらしく、オラリオ内でも最高のレベルを持つ者のレベルはLv.7なのだという。
むしろLv.2でさえもオラリオにいる冒険者の半数以下が辿り着いていないという現状であるため、一回でもレベルを上げられれば万々歳なのである。
そして、レベルや基本アビリティに続いてスキルや魔法の項目が書かれている欄へと目を移す。
すると、スキル欄に一つ、魔法欄に一つずつ何かが記載されていた。
噂によると魔法やスキルは""神の恩恵""を得た本人の性質によって決まるため必ず発現するわけでは無く、スキルに関して言えば冒険を続けていくうちに手に入れる人間はそれなりにいるが、魔法の方は発現せずに人生を終える冒険者の数の方が多いらしい。
つまり、俺はかなり運がいい方なのだが、……その内容は的確に俺のことを示しておりイマイチ喜んでいいのか良く分からなかった。
《魔法》:
【レイズィペスト】
・呪詛。
・超短文詠唱。
・他者に術者の感情を伝染させる。
・発動中、術者の『耐久』を下げる。
《スキル》:
【
・丈夫になる。
・無気力であり続ければ効果持続。
・無気力であればあるほど効果は増幅する。
「あまりこの様なことは言いたくないんだが、……君、本当に怠けるのが好きなのだな。」
我が主神様も苦笑いである。
スキルは内容が大雑把すぎるし、魔法はもはや何がしたいのか分からない。
まあ、今考えなくてもこれから生活していけばスキルについては分かるだろうし、魔法についてもダンジョンで試し打ちすればいいだろう。
んで、""神の恩恵""を無事に得られたわけだが、
「それでヴァンよ。君はこれからどうする?」
「え、何って寝ますが?」
もう夕方だし。ダルイし。てかもう眠い。
「そ、そうか。ならダンジョンにはいつ行くのだ?」
「……そうっすね、明日行きますわ。」
「おお、そうかそうか。なら今日は存分に休むといい。」
「うぃ-ッス。」
明日ダンジョンに向かうことにした俺は手荷物の中から毛皮の毛布を取り出し、包まって部屋の一角で眠りについた。
ちなみにこの日の夕食を取り忘れたことを思い出したのはダンジョンに行った後だった。
◇
翌朝、いつもの俺ならまだ眠っているあろう早い時間帯でありながらも俺は意識が朧気ながらに目を覚ました。
俺の目を覚まさせたモノの正体は先に起きていたゲブ様が作っていた朝食のニオイである。
簡素ながら少ない調味料で作られたジャガイモ炒めは非常にうまそうなニオイをプンプン漂わせていた。
「目覚めたか、ヴァンよ。朝食の時間だ。」
「…ふぁああ、おはようごぜぇます。」
何やら仰々しい目覚めの挨拶を食らったような気がするが、特に反応することなく適当に朝の挨拶を済ませた。
早速、主神様お手製の朝食をごちそうになったのだが期待を裏切ることなくその飯は美味く、若干すきっ腹になっていた俺の腹を十分とは言わずとも満たした。
「ご馳走様です、ゲブ様。」
「ああ、よい食いっぷりだったぞ。」
爽やかな笑顔でそう言ったゲブ様。
主夫が板についている神様ってのもおかしなモノだ、と今更ながら思った。
「それでヴァンよ。君は約束通りこれからダンジョンに行くのだな?」
「……うっす。」
良く分からない圧力を感じて一瞬返事が遅れてしまったが、特に他意はない。
ホントだよ?
「ま、約束したことですしちゃんと守りますよ。稼ぎの方もなるべく頑張ります。」
「ああ、期待して待っているぞ。」
俺はダルそうに立ち上がると手荷物に入っていた装備一式を取り出す。
今頃生きているのかすらもう分からない猟師のおっちゃんから貰いある程度修繕した皮鎧を身に着け、腰のホルスターにちゃんと整備してあるナイフを二本差し込み、その他装備の点検を行う。
そして、全ての準備を終えた俺はドロップアイテムを入れるやや大きめの革袋を肩に担いだ。
「それじゃあ行ってきます。」
「私も途中まで同行するとしよう。なにせ今日は君の初めてのダンジョンだからな。見送っていきたい。」
そう言うことなのでゲブ様も迷宮のあるバベルの近くまで同行することになった。
ゲブ様のアパートを出て大通りに入った頃になってゲブ様は思い出したかのように俺に質問を投げかけた。
「そう言えばヴァンよ。君はポーションは持っていないのか?」
「はぁ。別に要らないかなぁ、と思いまして。」
ぶっちゃけ昔から狩りをする時もポーションがなくてもどうにかなったし今回も必要性を感じなかったから買っていないのだが、如何やらうちの主神様はお気に召さなかったようだ。
「それはいかん。君に万が一何かがあっては困る。丁度そこの店が開いているようだ。早く買ってくるといい。」
面倒ではあったが店内まで付き添われたら買わないわけにもいかず、300ヴァリスで二本の低級ポーションを購入した。
思わぬ出費が出たが、まあダンジョンで稼げばなんとかなるだろう。
こうして寄り道をしつつも俺達はオラリオの中心に位置するバベルへと足を進めていった。
徐々に朝早くからダンジョンへと向かうと思われる勤勉な冒険者達の姿が増え始め、通りの人混みもそれに比例して増え始めた。
人混みが拡大しきる前になんとかバベルの一歩手前にある広場に到着した俺とゲブ様は、それぞれ改めて出発と見送りの挨拶を交わした。
「ほいじゃ、行ってきますわ。」
「おう、ケガには気を付けるのだぞ。治療費は節約したいからな。」
「善処しヤス。」
冗談混じりに俺の身を案じた言葉に対し、俺は軽い口調で返す。
そのままの流れでダンジョンへと向かった俺は振り返ることなく、ダルそうに足を動かし前に進むのであった。
◇
オラリオの中心にてそびえ立つ白亜の塔、バベル。
その下には未だかつて誰も最下層まで辿り着いた者がいないとされる幾つもの階層からなるダンジョンがあり、俺はその上層の三階層にいた。
上層は洞窟になっており、壁の所々に光る鉱石があるため光源を必要とせず、ダンジョンに慣れていない初心者向けの狩場である。
ちなみにこれはギルドのアドバイザーさんから教えてもらった情報である。
一応ダンジョン初心者の俺にはギルドのアドバイザーさんが付いており、一緒にダンジョンには潜ってはくれないものの出発する前にダンジョンに関する知識を必要最低限教えてくれるのだ。
そして、その知識の一つが各階層のモンスターの分布についてである。
一階層から四階層のモンスターは基本的にゴブリンとコボルドの二種で構成されており、ダンジョンでも最弱のモンスター達なのだとか。
時々四階層から下のモンスターが上がってくることがあり、ソロである内は安全第一でなるべく二階層付近を中心に活動することをアドバイザーさんから提案された。
まあ、ダンジョンの知識に関してはアドバイザーさんの方が上なのは確かなので、しばらくの間は言うことを聞くことにした。
もちろん、緊急事態に備えて七階層まで出現するモンスターについても把握済みである。
記憶力にはそれなりに自信があるので、大丈夫だと思いたい。
それで、何で初っ端からアドバイザーさんの助言を無視して三階層まで下りているのかと言うと、単純にモンスターが弱すぎたからだ。
ぶっちゃけチョロ過ぎた。
コボルドは若干鼻が利くが野生の狼やら犬よりかは劣るし、ゴブリンに至っては物陰で静かにしていれば絶対に気付かれないという超甘々な難易度である。
ステイタスの恩恵もあるのだが、嗅覚やら聴覚が発達した野生動物相手に狩りをしていた村での日常を考えると今の戦いは滅茶苦茶楽だった。
というかもはや戦いにすらなっていない。あれは狩りだ。
一階層でたまたま一匹でいたゴブリンをナイフの一刺しで倒せてしまったときは本当に驚いた。
取り敢えず初っ端の戦闘で一対一ならどう戦ってもゴブリンやコボルドくらいなら負けようがないことが分かり、俺は調子に乗って検証を始めた。
道行くゴブリンやコボルド達が三匹以下なら自前のストリングを使って襲撃したり、直接接近して素手で首の骨を折ったり、普通にナイフを使って襲撃し、運よく一匹でいる時を見つけたら荒縄を使って首を絞めてどれくらいで死に至るのか、素手で殴り殺す場合どのくらいの威力、手数で殴れば効率よく殺せるのか調べていった。
結果として、ストリングでの襲撃は元の命中力の問題で確実に殺しにくいことから不採用、素手とナイフでの襲撃は安定性が高いため採用した。
絞め殺す場合は相手もそれなりに抵抗するため殺すのに時間がかかり、声は出せないものの他のモンスターが来てしまう可能性を鑑みて常用としては不採用、緊急時には採用とし、素手で殴り殺す場合は思いっきり急所を殴れば一撃で落とすことも可能であるが、無駄なエネルギーを消費するため襲撃には不向き、武器をロストしたときには有効であると記憶した。
とまあ、こうして倒し方について検証していくうちに周りからモンスターがいなくなってしまい、初日は階層ごとに決められた正規ルートから大きく外れることは避けたかっため、比較的モンスターの多い三階層まで下りてきてしまったというわけだ。
ちなみにまだ魔法については検証していない。
何しろ俺は魔法に関して言えば全くの無知だ。
大体どんなものかはゲブ様やアドバイザーさんから聞いたものの実際に使わないと勝手も分からないだろうし、昔から「習うより慣れろ」の精神で狩りのノウハウも適当に覚えてきたわけで、一先ず最初は魔法を使わずにモンスターとどれだけ戦えるか調べた上で使おうと思ったのだ。
そもそも魔法の内容的に戦闘で役に立つ感じがしないのが検証を後回しにした最大の理由ではある。
俺の感情を周りに伝染させる、という意味がまず訳が分からない。
公式には出回っていないものの大体の冒険者が習得している魔法の解説はどれもアバウトなモノばかりではあるらしいが、俺のは手抜きが過ぎている気がする。
まあ、頭で考えても仕方がない。取り敢えず使おう。
試し打ちに使うモンスターを求めて三階層を歩き回っていると丁度大きめのルームに六体のコボルドの姿を確認し、周囲に伏兵や同業者がいないことを確かめた上で俺は魔法の詠唱に入った。
「【伝染せよ、怠惰の息吹。】」
呪文を唱える面倒の少ない俺好みの超短文詠唱をコボルドに聞こえないように唱えると、俺の右手に薄暗い靄の様なモノが発生し始める。
あとは魔法の名前を唱えれば発射可能である。
よし、撃とう。
「【レイズィペスト】」
初めて魔法を扱う人間にしてはかなりテンション低めに魔法名を口にした俺は薄暗い靄が溜まった右腕をコボルド達に向けて突き出す。
すると、右手に発生していた靄は俺の手を離れその範囲を拡大させながらコボルド達へと迫り、終いにはルームごと靄に覆いつくしてしまった。
しかし、靄は視界を奪う程濃くはなく若干視界がぼやけているが、人やモンスターの姿形を捉える分には問題ない濃さだった。
そして、問題の魔法の効果なのだが予想外の光景が目に入った。
なんと、ルームにいた六体のコボルドが全て眠りについていたのだ。
いや、正確には俺のことが視界に入っているにもかかわらず地べたに体を預け、寝ようとしていると言った方が正しいだろう。
まさかの戦闘放棄である。
確かに俺は常日頃何をするにしてもとんでもなくめんどくさがってはいるが、他人からしてみたらここまで酷いものだったのか。
先天的に人間を襲う習性を持つモンスターですら抑えきれないダルさってどんだけだよ、と思いながらも絶好の機会を逃さぬように念のため警戒はしつつ寝転がるコボルド達の喉元ににナイフを突き立てていく。
一応コボルド達にも抵抗しようとする意志はあるらしく、俺が近づいてきた時点で体を起こそうとするのだが最終的にダルさに負けて身を投げ出していた。
そして、もはや無抵抗に近いコボルド達を全滅させるに数分も要らなかった。
哀れにも俺の手で灰にされたコボルド達の魔石と幸運にも手に入ったドロップアイテムを回収した俺は発動したままの魔法を解除した。
魔法を解除するとルームに広がっていた靄は消え去り、何もない元の空間に元通りになった。
……うん、楽だ。
ただ、いかんせん効率が悪い。
魔法は発動するのに
今回は試し打ちだからこれ以上使う気はないが、一度使った感触から結構この魔法は
恐らく今の俺の限界は、あと大きめのルームを3個分の範囲を覆いつくすくらいで、それ以上使ったら
効果が絶大なのはもう見て分かった。あんまり知りたかなかったけど……。
しかし、使うならばもっと多くのモンスターがいる場所の方が効率が良さそうだ。
と、いった感じで自分の魔法について分析した俺は所々休憩をはさみながらそのまま無理のない範囲でモンスター達を狩り続け、夕暮れ時になる前にダンジョンから帰還した。
バベルに併設された換金所で換金したところ初日の稼ぎは3080ヴァリス。
大体一般的なLv.1の冒険者よりも少ない金額だ。
ゲブ様との契約で1カ月で2万ヴァリス稼げばいいと言われていたので割といい出だしなのでは、と思った俺のダンジョン初日であった。
神:ゲブ
エジプト神話に出てくる男神。
オラリオに来たものの頼れる伝手も金もなく、仕方なく貧乏生活を過ごしていた。
ヴァン以外にも勧誘はしていたが、貧相な生活環境や二話の冒頭と似たようなやり取りをしてしまった所為で悉く振られてしまう。
こんな感じであったためヴァンの様な阿呆でもいいから団員を増やしたかった模様。
下界での生活で貧乏根性が染みついている。
容姿はアジア系の褐色肌に肩より下まで伸びたウェーブのかかった黒の長髪を持ち、瞳は黒目。
身長は180㎝と高く、スラリとしたスレンダー系の超絶イケメンである。