怠け者の迷宮ライフ   作:水上竜華

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人生に疲れ、
パソコンで打ち込む快感を思い出し、
エアコンの偉大さを知った。
そんな夏でした。(ついに頭が逝ったか……。

ウチのネット環境、改善しなきゃッ‼️(

※今回は少な目です。





第二十話 怠け者、男女関係に悩む。

 

 

「団長、今日の所はこれくらいが限界かと思われます。」

 

「……そろそろ戻るか。」

 

 

 

 たった今、目の前で灰になった白い大猿のモンスター、シルバーバックの魔石を拾いながら、他のアイテムの回収を終えて近づいてきたシャラスにそう返したヴァンはそのまま彼女に魔石を手渡す。

 

 

 

 シャラス入団から1ヶ月が経ち、シャラスのスキルによって飛躍的に成長を遂げたヴァンは、思いの外、本当にシャラスが戦闘面でも優秀であったことや、総合ステイタス的にもギルドのアドバイザーからゴーサインが出たことから、サポーターのシャラスを連れて第十一階層まで探索範囲を広げていた。

 十一階層の特徴は概ね十階層と同じで、十階層の霧よりも濃い白霧が階層中に立ち込めており、モンスターは前の階層から出現したオークやインプに加えて、総合的にステイタスの高い大型モンスターであるシルバーバックや、上層でもトップクラスの防御力を誇る固い表皮に包まれたハードアーマードなど、単体でかなり強いモンスターが多く出現するようになっている。

 

 初めてこの階層に足を踏み入れた時は鍛冶仕事の都合でこの場にいないジュリもいたのだが、ヴァンにとっては予想通りと言うべきか、すでに十一階層に足を踏み入れた経験があるシャラスでさえも「これほどの規模での迎撃は滅多にない」と言うほどの手厚い歓迎をモンスター達から受けた。

 今までの経験から自分の運の無さを自覚していたヴァンは、初めて対面することになるモンスターの知識は勿論のことながら、一部の例外も含めて既に頭に叩き込んでおり、慣れない上に大量に迫り来るモンスター達相手に危なげなく渡り合い、シャラスとジュリの協力もあって十一階層初日の死闘をなんとか切り抜けている。

 

 その時の戦いの最中は流石のシャラスも危機感を覚えたのか途中からスキルを解除していた。

 シャラスの願いはあくまでヴァンが英雄のように強くなることであって、ヴァンを殺そうとする意思は彼女にはない。

 実力を発揮させなければならないタイミングで力を押さえていては本末転倒。

 よって、ヴァンを拘束していたスキルを解いたのも、ある意味当然のことだった。

 

 戦闘時、シャラスは主に直接的な戦闘を任せる二人の補助に加えて、ドロップアイテムや魔石の回収に動き回り、ヴァンとジュリが目の前の敵に専念できるように努めている。

 さらに戦況を俯瞰的に見つめ、隙あらば敵の密集地帯に魔法を放ち、前衛が怪我をしていれば治癒魔法を飛ばすなど、肉弾戦闘以外の役割をマルチにこなしていた。

 これでトラウマさえなければ文句無しの戦力ではあるが、そこまで欲しがるのは贅沢だろう。

 

 何はともあれ順調に階層を攻略しつつあるヴァン達の稼ぎは、魔石の質の高さもさることながら、シャラスの加入によって戦闘の効率化が進んだことにより一人頭、二万ヴァリスに届くほどになり、疲労感はあれど着実に結果が出ていることにヴァンは何処か満足げな様子である。

 

 

 

 本日の探索を終え、道すがらモンスターを狩りながら地上へと戻り、ギルドの換金所で山盛りの魔石を硬貨に変えた二人は相変わらず付かず離れずな距離感を保ちながら、帰路に付く。

 ダンジョンの外は既に夕日が指しており、ヴァン達のようにダンジョンからホームに帰る途中なのか、大通りには多くの冒険者達の姿が見受けられた。

 オラリオで生活を始めてもうすぐ一年近く経つにも関わらず、田舎でののんびりとした生活を知っている所為か、未だに人混みにまみれるのを嫌うヴァンは何も言わずに速足になり、シャラスはヴァンのことをずっと観察していたのか、少しも慌てた様子を見せず、笑顔を浮かべたまま付いていく。

 

 徐々に増えていく人の波をかき分けて、前に進んでいたヴァンは、ふと、なんとなしに後ろから付いてくるシャラスのことを考えた。

 

 彼女は思想や過程はどうであれ、文句も言わずにヴァンとのダンジョン探索以外にも割り振られた仕事をこなしているし、夜這いやデートの誘いをしに来たりと積極的なアプローチは続けているものの、ヴァンが拒絶すれば潔く諦めるようにもなり、初期の頃よりも落ち着いているようにみえる。

 しかし、現状は彼女のあり方を変えたわけではなく、ただ単に彼女の意思を押さえつけているだけに過ぎず、根本的なことは何も解決できていない。

 言うなれば、いつ爆発するかも分からない爆弾を抱えているようなものだ。

 人間、下手に我慢させれば、程度に違いはあれど取り返しの付かなくなるケースは多い。

 ヴァン自身、嫌々ながらロニーの面倒を見て我慢に我慢を重ね、爆発したクチであるため、このままではいかんと本能的に思った。

 

 シャラスは異常なまでに強い恋愛感情さえ除けば優秀な団員であり、手っ取り早く力を手に入れたいヴァンにとっても都合のいい女だ。

 あれほど優秀な後衛は頑張って探して見つかるものではない。

 かと言って、彼女の要望に答えるわけにもいかないし、どうしたものかとボンヤリと歩きながらヴァンは考える。

 ほけーとした表情を黒い覆面の下に浮かべながら考え続けたヴァンだったが、ちょうどホームがある裏通りに入る頃になって無難な案を思い付き、試しにこの場で実行することにした。

 

「……シャラス。」

 

「はい、どうかしましたか?」

 

 ヴァンのやや後方に控えていたシャラスは名前を呼ばれると、少しだけ困惑する表情を浮かべながらも笑顔を張り付け、その隣まで距離を詰める。

 

「ありがとう。」

 

「へ?……急にどうしたんですか?」

 

「いや、過程はどうであれ、お前は俺のために尽くしてる。それなのに今の今まで不平不満くらいしかお前に言ってなかったからな。たまには礼を言ってもいいかと思っただけだ。」

 

「そ、そうですか。てっきりもう用済みになったのかと思いました。」

 

 なるほど、普段から自分を良く思っていない人間がいきなり礼を言い出すのは確かに不自然だ。

 彼女も恋に盲目とはいえ、そこまで頭の中がお花畑なわけでは無かったらしい。

 

「そんなわけないだろ。お前が来てくれたおかげでだいぶ探索も楽になったし、俺のステイタスもかなり上がってる。ランクアップすればもっとステイタスは上がりにくくなるらしいし、これからもお前のスキルは俺に必要だ。手放す通りはないだろ?」

 

「つまり私はまだ必要とされてるのですね!団長のお心の中に私はいるのですね!?」

 

「心の中にいるかは知らんが、余程のことをさえしなきゃ切り捨てたりせんよ。」

 

 若干引き気味にそう言ったヴァンだったが、シャラスは自分の世界に入り込んでいた。

 ヴァンに必要とされていることを直接言葉にして伝えられたシャラスは大層喜び、その心に灯った熱はしばらく冷めることなく、大体ヴァンの目論見通り続くのであった。

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

「はあ?つまり、アンタはヒヨってまだあのアマゾネスとヤってねーてことか?」

 

「まあ、言い方に悪意はありますが、そういうことですね。」

 

 呆れたと云わんとばかりにライラはジトっとした視線を顔を動かさずに横に向け、その視線の先にいる男はなにやら、カチャカチャと手元で音を立てながら特に腹を立てることなくそう返す。

 

「ま、アタシには関係ねえけど、あーいうのはちゃっちゃっと抱いて満足させるなりしないと暴走するから、早めに手を打っといた方がいいぞ。アマゾネスの嫉妬を舐めたら痛い目見るからな、あ、そこは強めに巻かないと固定出来ないからもっと力入れていいぞ。」

 

「一応、俺なりに頑張ってはいるんですけどねぇ……。あれ?ここにはこれ、使わなくていいんですか?」

 

「ああ、ぶっちゃけそれって行程的には要らないアイテムなんだよ。あっても若干強度が増すくらいで性能はあんま変わらんし。それ書いた奴がわざと客に金を使わせるために入ってるようなもんなのさ。」

 

「えぇー、それ先に言ってくださいよ……。」

 

「へへ、材料集めの段階でアタシを頼らなかったアンタが悪いのさ。いい勉強になったろ?」

 

 無駄に金を使ってしまったのかと、ヴァンは残念そうにわりと値段の張った粉が入った袋を脇にどける。

 想定外のことで手を止めてしまったヴァンだったが、気を取り直して再びライラの監視の下、手を動かし始めた。

 ヴァンとライラの回りには様々なアイテムが雑多に広げられており、ベットやクローゼットなどの家具が無ければアイテム製作専用の部屋と見間違うような有り様である。

 ここは【アストレア・ファミリア】のホームにあるライラの部屋で、ヴァンはそこで部屋の主であるライラからアイテム製作に関する指導を受けていた。

 

 シャラスが入団してから二週間が経った頃、定期報告会でヴァンからアイテム製作のことで質問されたライラは「興味があるなら基本的なことは教えてやってもいいぞ。」と、あっさり言い放ち、ヴァンは自分にとって都合のいい展開に少し疑心暗鬼になりながらも、素直に申し出を受け入れ指導してもらうことになり、現在に至るわけだ。

 どうにもヴァンは少し前からポケットマネーでアイテム製作に関する本を数冊購入し勉強していたらしく、『ゴブリンでも分かる魔石製品製作』から始まったアイテム製作入門シリーズをかなり早いペースで攻略し続けたのだが、徐々にランクが上がっていくアイテムの材料費だけでいっぱいいっぱいで、本を買う余裕がなくなってしまい、独学での限界を感じるようになったというのがヴァンがライラを頼った理由である。

 

 ライラは全体的にステイタスの伸びが遅い小人族(パルゥム)である自分では、同レベル帯の多種族相手に真っ向勝負じゃ絶対に勝てないと自覚しており、それでも格上の相手に対抗すべく""準備""に力を入れていた。

 火力補助の爆弾製作から、撹乱用の煙り玉や閃光弾、相手の動きを鈍らせる毒玉や催眠ガス、そして短時間で設置可能なトラップの器材などなど、幅広いアイテムを自作し、それを本人も上手く活用している。

 その小さな積み重ねが報われたのか、ライラは仕掛けられたトラップを即座に見抜くほどの眼力を取得し、今ではその技能が最大限活かせる斥候として大活躍している。

 

 ライラが使用しているアイテムのほとんどが自作であることを少し前に知ったヴァンは、比較的距離感が近いこともあり、彼女を頼ったのだ。

 

「取り敢えず、ウチを巻き込むのだけはやめろよ。アマゾネスからのヤッカミは【イシュタル・ファミリア】のとこでもう、手一杯だから。」

 

 【イシュタル・ファミリア】とはオラリオの歓楽街を取り仕切るファミリアで、バトルジャンキーが多いアマゾネスが多数所属しているからか、多くの上級冒険者を抱えており、武力でもその名を知らしめている。

 主神のイシュタルがとにかく負けず嫌いな性格らしく、近場で大きな顔をしている目麗しい女神達に喧嘩を売りまくり、天界に送還しまくっているらしい。

 ここ数年でオラリオの女神の数が激減した原因の一端でもあるのだが、そのことについては別の話。

 

 ともかく、【アストレア・ファミリア】の主神、アストレアは、それは大層な美人さんで自由奔放な神々には珍しい神格者だ。

 普段の治安活動も相成って当然、一般市民からの人気は根強いモノがある。

 それに加えて、団員も全員、美女や美少女ぞろい。

 イシュタルは自分が「美」を司る女神であるからか、自分よりも他者の方が注目されるのが許せないようで、派閥間に余程力量差がない限り、__具体的に言うと都市最大派閥のとある美神など、基本的に目についた邪魔者は徹底的に潰しに来る。

 そういう意味で言うと【アストレア・ファミリア】なんかは団員の質は高くとも少数精鋭であり、物量に任せれば彼女でも手を出せる範囲内にあった。

 

 実際に【アストレア・ファミリア】の面々は、外に情報が漏れにくいダンジョンの深部で【イシュタル・ファミリア】の構成員から度々襲撃を受けていたりする。

 一時期はイシュタルと仲の良いとある女神が彼女との間を取り持っていたおかげもあって、互いに干渉せずにしていたのだが、その件の女神が一年ほどまでに闇派閥(イヴィルス)との抗争で天界に送還されてしまい、ブレーキ役がいなくなった今、いつ本格的な抗争に突入するのか分からない状態にあるらしい。

 

「俺もそうならない方がいいんですけど、そうは言ってもアレを抱くには早すぎる気がするんですよ。」

 

 ヴァンはシャラスが夜這いに来た時のことを思い出す。

 夜の闇に浮かんだ獲物の全てを吸いつくそうとする、そう、言うなれば獣のような目。

 ヴァンは性的な興奮をする以前に、一人の男として恐怖を感じた。

 あのままシャラスを抱いていたら、もれなく廃人になっていた可能性まであると、ヴァンは今でも考えている。

 

「なんていうか、駆け出しの冒険者が単身で階層主に挑む感覚?って感じですね。」

 

「あー、つまり、童貞に熟練のアマゾネスは早すぎるってことか?」

 

「まあ、つまりはそう言うことです。」

 

 いくら男女関係がめんどくさそう~、とかカマトトぶってもヴァンも一人の男。

 彼の中にも最低限、理想とする男女関係の在り方はある。

 と言っても、そこまで厳密なモノはなく、本当に単純な、自分の理想像があるだけだ。

 その理想像というのが「自分よりも相手の立場が上でなければいい」という、いたってシンプルなことである。

 ヴァンの理想の将来像は養ってもらうことにあり、実家の父親のように母の尻に敷かれる""かかあ天下""ではその目的に達することは出来ない。

 

 その点シャラスは最初はどうであれ""今は""比較的大人しく、ヴァンの言うことも可能な限り聞いてくれる良きパートナーと言えるだろう。

 しかし、何が切っ掛けで立場が逆転するかも分からない。

 夜の性事情にしろ、何にしろ一度でもヴァンが屈服すれば環境が一変する可能性は十分にあるのだ。

 いつでも始末できると言っても、なるべく危険な橋は渡りたくない。

 そう思い、ヴァンはシャラスに未だに手を付けていないのだ。

 

「それなら歓楽街にでも行ったらどうだ?アタシはあんまり詳しくねーけど、詳しそうな伝手はあるし、良さげな店に顔をつないでもいいぜ。」

 

 「その分、手間賃は取るけどな。」と、右手の親指と人差し指で丸を作りながらライラは笑みを浮かべる。

 女性に性事情の話をしている時点でかなりアレだし、ヴァンとしては安心できる店を紹介してもらえるのであればそれはそれで好都合なので、金を出す分には問題はなかった。

 この話についてはまた今度場所を変えて詳しく話すことになり、話題は今製作中のアイテム関連の話に移る。

 

「そういや、最近変な噂が出てな。闇派閥(イヴィルス)が外から変なアイテムを取り寄せてるって、知ってるか?」

 

「…いえ、直近だとそういう話は聞きませんね。何かヤバいもんなんですか?」

 

「さあ?まだ詳細は判明してないけど、モンスター関連のアイテムを取り扱ってる裏の商会から大量に物を取り寄せたって事くらいしか今は分かってないんだわ。けど、モンスターに関わる何かしらってのは想像できるし、ダンジョンで仕掛ける可能性は十分にあるから、一応注意しておけよ。いくら予測たててもアイツら、どこで動きを見せるか分かんねーから。」

 

 彼女の言う""アイツら""とは十中八九、闇派閥(イヴィルス)のことだ。

 確かに彼らの行動には一貫性はあっても、やらかすことに法則性はあまりない。

 見方によっては手当たり次第に混沌を撒き散らしているようにも見える。

 常習的にカツアゲ行為を上層で行っていることを考えても、警戒するに越したことはないだろう。

 それに、なにも知らずに巻き込まれるよりも、事情を知った上で巻き込まれた方が幾分かマシだ。

 

「分かりました。頭の片隅にでも入れときます。」

 

 そんなこんなで話を続けているうちにアイテム製作は終わりを迎え、既製品よりも若干簡素な『閃光玉』を完成させるのであった。

 

 

 

 

 







ああ、早くメインヒロインを出したい……(衝撃の真実ぅ!?


全く関係のない話ですが、ダンまち二期を見てると段々悲しく思えてしまうのは作者だけなのでしようか?

どの作品にも言えますがアニメ化は嬉しいけど、絵はともかく内容が改悪されてると凄く微妙な面持ちになります。
そのキャラなら絶対にしないであろう行動やら言動とか、戦争遊戯の細かい流れの省略とか、正直それ、いるか?って言いたくなるくらいよく分からんアニメオリジナル展開とかが多すぎて、ぶっちゃけがっかりしてます。
アニメ二期から入った人は是非とも原作小説を手にとって読んでもらいたい(ダイマ
いや、マジでクライマックスでの臨場感とか、話の整合性なんかは断然原作の方がしっかりしてるんでアニメで満足してる人は勿体無いから!

ここで言ってもどうにもなりませんが、一期の時に見せてくれた、作者を虜にしたあの輝きがいつか戻ることを、切に願います。(ここまでが作者の独白


主人公のしゃべり方が安定しないなぁ。
でも、人によって話し方が変わる人もいるし、大丈夫ですかね?

最後にジュリと組んでからの主人公の大まかなステイタスの変化です。

力:D→C 耐久:E→C 器用:C→B
敏捷:D→C 魔力:B→A




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