お気に入り登録、評価、感想ありがとうございます。
ジュリさんの評判が予想以上によくて今後どのくらい出していくか少し悩んでいます。
ぶっちゃけ彼のしゃべり方を考えるのが割と面倒なんですよね。
まあ、あまり期待せずに待ってもらえると幸いです。
今回は少し短めです。
「ヴァンよ。速く荷を運ぶのだ。」
「く、なぜ俺がこんな目に……!!」
アリーゼさんとのデート紛いの散策をしてから二週間が経ち、俺とゲブ様は引っ越しの作業をしていた。
あの日の翌日に【アストレア・ファミリア】へと立ち寄ったゲブ様はアリーゼさんからとある格安物件を紹介され、ローンでも構わないとのことなので今の狭っ苦しいアパートのホームから二階建ての訳アリ物件に引っ越すことにしたのだ。
おのれアリーゼさんめ、要らんことだけ覚えておってからに。
あの日は完全に誤魔化せたと思っていたが、ダメだったか……。
そしてその訳アリ物件なのだが、お値段合計でなんと破格の57万ヴァリス!
大体オラリオで一軒家を買うともなると立地にもよるが最低でも100万ヴァリスは掛かるのだが、その半額近くの値段である。
うちのファミリアでの資産は大体40万ヴァリスであり、初回で17万ヴァリス、それから月々5万ヴァリスを払えば良いと言う契約であるためギリギリ実現可能な支払いプランである。
しかし、幾らなんでもこの価格は安すぎる。
一体そこで何が起きたんだ……。
「ふむ、何でも過去にいくつかのファミリアがそこに住んでいたのだが、どのファミリアも半年もせずに様々なトラブルに見舞われて解散してしまったらしいのだ。」
「……それ、絶対ヤバい物件なんじゃあ。」
「はっはっは、案ずるなヴァンよ。今までがそうだったからと言ってこれからもそうだとは限らんだろう?迷信に振り回されるのもばかばかしいというモノだ」
「この神、能天気すぎる……。」
ゲブ様は何を思ってどうしてこんな物件を選んだんだ。
というか、アリーゼさんめぇ……!!なぜこんな物件をゲブ様に紹介しやがってんですか。
「コラー、ヴァン。くっちゃべってないで手を動かしなさい。」
「……。」
今回の元凶であるアリーゼさんはリオンさんと共に引っ越しの手伝いをしている。
まあ手伝いと言っても元から荷物が少ないため小さめの荷馬車に乗せるだけで済むのだが、その荷馬車を貸してくれるために来てくれたのだ。
丁度いいタイミングで声を掛けてきたアリーゼさんに質問を投げかける。
「アリーゼさん、なんでゲブ様にあんな物件を紹介したんですか。」
「いやー、知り合いの人に紹介してもらいたい場所をリストにしてもらって、それをゲブ様にみせたんだけどまさかあんな物件があるなんて私も知らなくてさ。一応言っておくけど、ちゃんと止めはしたんだよ?」
「……ヴァンさん、アリーゼを責めないでやってくれ。ふざけている様にも見えるが彼女にも悪気があったわけでは無い。」
「まあ、リオンさんがそう言うなら……。」
「二人とも何気に酷くない!?」
リオンさんとは最初にあった時はそれはもう険悪な空気になっていたがアリーゼさんに勝手に組まされた模擬戦以降、普通に話せる仲になっていた。
ちなみにその時の勝敗は全力を出した上で俺のボロ負けである。
てか、リオンさん手加減なんて全然しないから、下手に手なんて抜いたら死んでたね。
いや、本人曰く手加減が苦手なんだったか。
しかし、Lv.2の中でもランクアップ間近の上級冒険者相手によくやったとは思う。
命の危険を感じてちゃんとだらけずに本気で戦ったのが、結果として評価されたのか今のような関係になれたわけだ。
まあ、その後リオンさんに触発された他の脳筋な団員たちとの模擬戦ラッシュは今でもトラウマものなのだが。
脳裏に浮かび始めたあの地獄の様な光景を振り払うように頭を左右に動かすと、作業に戻る。
そのまま十数分とかからず積み荷を詰め込んだ俺達はこの約半年間お世話になったアパートから胡散臭すぎる訳アリ物件へと引っ越しへと移った。
荷物を乗せた荷車は俺が引き、ゲブ様と他2名は横から追随して移動していく。
……いや、文句はないんだけどさ。
ゲブ様はまだしもそこの上級冒険者たちは少しくらい手伝ってほしいとは思う。
まあ、そんなことを言ったらややこしいことになりそうだから何も言わないけど。
取り敢えず反発することなく、荷車を押していた俺は大体三十分もの時を掛けてやっと目的地に到着する。
大通りからかなり離れた、周囲に人の気配がほとんどない地域に新転地である新たなホームはあった。
その外装なのだが……。
「ボロいっすね。」
「そうだな。しかし、今の我々には十分な住みかであろう?」
「ま、そうっすね。最悪雨漏りしてたら自分達で補強すればいい訳ですし。」
レンガ作りの家の壁面には蔦が張り付き、所々ススで汚れており、玄関も一般人の力で容易く蹴破れそうなくらいボロい外見だった。
パッと見だと完全に人が住んでいそうにない廃墟にしか見えなかったが、今の自分達の経済状況ではゲブ様の言う通りこれくらいが丁度いいのだろう。
「まあ、あんまり酷いようだったら私達の方で修繕の依頼を出すよ。もちろん、お代は要らないわ。元はと言えばうちの不手際の所為だとも言えるし。」
「ああ、いざとなったらそうさせてもらおう。何から何まで世話になったな。感謝するぞ、アリーゼくん。」
「いえ、こちらこそ当然の事をしたまでです。」
アリーゼさんからありがたい申し出を受け、ゲブ様が俺の分も感謝の念を伝えた。
言っておくけど、俺もちゃんとゲブ様の横で頷いてたからね?
「では、荷物を中に入れるとしよう。」
ゲブ様の一言で皆、荷台に縛り付けていた荷物を紐解いていった。
しかしその時、先に玄関へと向かっていたゲブ様の方から木製の何かが壊れる音が聞こえ、一同は視線を音の発生源へと移す。
そこには、予想通りと言うべきか外れたドアノブを掴み佇んだゲブ様の姿があった。
「……アリーゼくん。早速で悪いのだが、…戸の修理を依頼して良いか。」
「……はい、了解しました。」
何とも幸先の悪そうなスタートを切った新居生活一日目であった。
◇
あの後、家の中がクモの巣や埃まみれで大掃除が始まったり、名も呼ぶことがはばかれる黒き生命体が乱入して女性陣がご乱心になったりと、色々なハプニングに見舞われたが何とか引っ越しを終えることが出来た。
取り敢えず、掃除は一階だけで済ませ二階は次の日以降自分達ですることにし、俺とゲブ様はそれぞれ割り振った一階の個室でその日は夜を明かした。
それから二週間が経ち、ある程度二階を含めた全ての部屋の修繕を終えた俺達はローンを完済するべく張り切って働いる。
まあ、ダンジョンに潜る頻度は変わらないのだが、時間を少し長めにしたお陰で稼ぎも一万二千ヴァリス前後をキープしていた。
新しいホームの住み心地は悪くなく、ベッドが無いため床で寝ることになっているが安物の家具を少しずつ増やしていき、現在使用している一階に限って言えば生活感はでるようになった。
掃除は俺の部屋以外はゲブ様がやってくれるため前ほど不潔な空間ではなくなり、時折アリーゼさん達が訪問してきても問題ない空間を維持している。
そんな順調な日々を送る中、夕食を共にしていたゲブ様から提案を投げ掛けられる。
「なあ、ヴァンよ。そろそろ新たな団員を確保しても良いのではないか?君の稼ぎであればローンも問題なく完済できるであろうし。」
「……ゲブ様、それはまだ早急だと言っているでしょう。せめて確実にローンを返済してから考えるべきです。」
「しかし、君も共にダンジョン探索をする仲間が欲しいとは思わんのか?」
「はい、要りません。下手に素人を入れても新人教育するだけで手一杯になりますし、稼ぎも確実に減ります。」
「ふむ、そうか……。」
残念そうなゲブ様を見て思うところはあるが、これは仕方がないことなのだ。
俺の実力がまだ全然未熟であるため団員を増やしたくないというのもあるが真面目な話、現状で団員を増やすのは下策だと思う。
俺が予想以上に成果を上げているから勘違いしそうだがダンジョンとは本来恐ろしい場所であり、どんな強者であろうと危険が付きまとう場所なのだ。
例え最弱のモンスターであるゴブリンですら、過去に多くの冒険者達を死に至らしめている事実がそれを現しているとも言える。
まあ、ゴブリンにやられている冒険者の多くは駆け出しなのだが、その多くはソロで活動していたケースが多いらしい。
だからせめて安全策として入団させるのなら二人以上の方が俺としては都合がいいのだが、ゲブ様は納得できないようだ。
ま、大手のファミリアと懇意にしていても所詮団員数がたった一人の零細ファミリアのうちに入りたがる物好きも少ないだろう。
少しでも考えればこんなボロい家に住んでて野郎が二人で成り立っている色んな意味でギリギリファミリアよりも、もっとマシな環境のファミリアを探すに決まっている。
ゲブ様が団員の募集をギルドに頼まなければ何も知らない純粋無垢な田舎者も来ないだろうし、当分の間は心配ないな。
こうして俺は夕食のシチューを堪能しながら、今までのことを学習せずに盛大なフラグを立てるのであった。
◇
「ヴァンよ、大変だろうが彼女の面倒を見てやってくれんか。」
「ねぇねぇ、神様。おなか空いた。」
「これこれ、食事はこれから作るから大人しく待っておれ。」
「わーい!ごはん!ごはん!」
「……なぜこうなった。」
凶報、俺ことヴァンにカワイイ後輩ができました。
事の発端は新居に引っ越してから一カ月が経った頃、うちの主神様がバイト帰りに食材の調達をしていたときに起きた。
いつも通りゲブ様は手慣れた値段交渉術で屋台のマダム達から安めに食材を調達していたのだが、突然近くの屋台から男の怒声が聞こえ、ただならぬ様子に気になりゲブ様はその現場まで確認しに行ったのだという。
俺はダンジョンに潜っていたためその現場にはいなかったのだが、どうやら一人の少女が完全に血が頭に上って顔が真っ赤になったオヤジに捕まっていたらしく、オヤジの余りの興奮具合に行き過ぎた行為をオヤジが少女へとするかもしないと思ったゲブ様はオヤジをなだめるために仲裁に入り、都市を巡回中の冒険者が来るまでの間に大体の事情を聞き出した。
ある程度落ち着いたオヤジの話を聞くと、このオヤジは果物屋を営んでおり今日もいつも通り商売に勤しんでいた所、件の少女が店にやってきてオヤジの制止も聞かずに複数の果物をその場で食い散らかし逃亡したところを捕まえて、今の地面に組み伏した状況になり、捕らえられた少女はオヤジに何を言われても全く反省した様子がなくそれがオヤジの怒りを助長し、危うく暴力沙汰になる前にゲブ様が出てきたということだ。
ゲブ様は何を思ったのか自分があの【アストレア・ファミリア】の知人であることをオヤジに話し、彼女の身柄を預かると名乗り出たのだが果物屋のオヤジはその話が信じられないのかその要求を最初のうちは突っぱねていた。
しかし、ゲブ様が少女が食べた商品の代金を多少色を付けて代わりにオヤジへと支払うと渋々ながら身柄を預けてもらえたらしい。
その後、既知の間柄である【アストレア・ファミリア】のホームまでその少女を連れていき、アストレア様と一緒に彼女の出自についてかなり時間を掛けて聞き出したところ彼女がオラリオの外から来た冒険者志望の子供であったことが判明した。
少女の名前はロニー・ペルダン。今年で12歳になる女の子だ。
種族はかなり体が細かったため気付かなかったがドワーフで、兄のロジー・ペルダンと共にオラリオに来たのだが途中で兄とはぐれてしまい独りぼっちになり、腹が空いて盗みを働いたらしい。
ただ本人の話を聞くとそのロジーなる兄貴は彼女を疎ましく思っていたようで、彼女は意図的に兄から置いて行かれた可能性がかなり高い。
兄の捜索をしても名乗り出ない場合があると考えると、彼女のこれからの身の振り方について考えなければならくなった。
念のため幼いながらもそれなりに考える力があるロニー本人の意向を聞いたところ「ロニー、冒険者になっておいしいモノたくさん食べるの!」としか言わず、二柱の神々はどうすべきかと頭を悩ます。
本当なら孤児院と同じような活動をしているファミリアに預けた方がいいのだろうが、困ったことに本人は明確に冒険者になる意味を知った上で「冒険者になりたい」と言っており、12歳という微妙な年齢であるため本人の意向をないがしろにするのもどうなのかと考えた末、取り敢えず彼女の希望通りの進路で進めることにした。
そして、最終的にゲブ様に懐いてしまったこともあり、【アストレア・ファミリア】の方で少し支援する形でうちのファミリアが彼女を預かることになったのだ。
まあ、本人の意見を尊重するのは分からなくもないが、何故うちが預からなければならないのかについては俺はまだ納得していない。
一応、一度だけでも俺と一緒にダンジョンに潜らせて適性がないと判断した場合、ダンジョン探索以外の活動をしているファミリアに預けることになっている。
しかしだ。もし。そう、もしも問題ない場合はこのままロニーをウチのファミリアで世話をしなければならないのだが、……ぶっちゃけかなり面倒だ。
いくら団長の座を奪えそうにない人材だとしても、俺が子守りをしなければならないのは勘弁である。
ロニーがうまそうに飯を食い散らかしている傍らで、俺はコイツが入団できないことを切に願うのであった。
タイトルからして次回の結末が分かるヤツ(
ロニーの詳細は以下の通りです。
ロニー・ペルダン
あまり食べられていないのか体の線が細いドワーフの少女。
髪は黒髪で肩まで伸びており、若干ぼさついている。
身長は150㎝と少し低め。
言動は幼いが字も読める上にある程度の一般常識も兼ね備えているが、自分の欲求に従順な所為で周りを困らせることが多い。
ステイタスは次回公開します。