その場には強力な竜巻が起こっていた。するとそれと全く同じ威力の竜巻が起こり相殺して消える。
「いいね。一方通行、その調子だよ!」
「へっ、まだまだこんなもんじゃねェぜ!」
超電磁砲と白黒が門限破りの罰でプール掃除をしている最中、私の一方通行は訓練をしていた。現在、私達がいるのは能力者達の訓練場だ。
超能力クラス以上ともなるとその訓練は場所を選ぶ事が多い。下手なところで考え無しに能力を使うと周囲に甚大な被害を与えるというのは珍しくないからだ。だから高位能力者は、日常生活ではその全力を振るうことなく能力を抑えて生活する場合が多いが、ここは予め許可をとって私と一方通行が訓練場として利用している。
えっ、門限? 私はあの二人と違って、予め身代わり人形を寮に配置しておいたので門限破りにはなっていないですよ。後始末はあの二人に押しつけたような形になったけど、知った事じゃない。
「さて風に関してはこれでマスターしたと思うけど?」
一方通行は風のベクトルを操作して、風を操っている。
学園都市の風の流れを一々計算しなければならないので、膨大な計算処理能力が必要となり、そのプロセスの関係上、風使いの能力者よりも処理が面倒になる。だから私が風を操り、それを一方通行に計算させて、それと全く同じ風を起こさせていた。
つまり、自分で一から計算させるのではなく、私の風をカンニングさせる事で風の操り方を修得させようとした。結構地道な作業だが、私は数ヶ月かけて様々な風を一方通行に覚えさせた。
「まあなァ。だがよう昨日のアレはなんだよォ? アレが絶対能力へのカギかよ?」
「そうよ。学園都市には180万人以上の能力者が無意識にAIM拡散力場を放出しているわ。それを束ねて操る事が重要なの」
「つまりAIM拡散力場の数値を“自分だけの現実”に入力する必要があるわけかァ?」
「そういうことね。一方通行、昨日の観戦で何か掴めた?」
「ああ、大まかにはな」
流石に実際に観戦していれば掴めた物もあったのだろう。
「そう、それは良かったわ。骨を折った甲斐がある。ならば私の絶対能力を修得してみなさい!」
そう言い放つと共に私は周囲のAIM拡散力場を集束させてオレンジ色の光翼を展開した。
「いくよ!一方通行」
宣言と共に放たれる無数のオレンジ色の線のような物。令子の背から伸びているそれは幾重にも別れた翼。
「おおッ!」
一方通行はそれを受けるのではなく回避した。一方通行の能力ならば反射という手段があるが、それはあくまで自分が把握しているベクトルにすぎない。故にこれを反射できるとは判断できなかったのだろう。
「ほら、早く出さないと死ぬよ!」
一方通行はこれまで反射に頼ってばかりだった。当麻に破れたのも近接戦闘能力の低さが原因だ。勿論、そのリスクを教えるために、木原のやった反射破りを私が一方通行に実践して、反射が絶対ではなく抜け道があるのを教え込んでいる。
しかし、それが一朝一夕で身に付くわけではない。ましてや近接戦闘能力という分野になると、私に勝てる人間などこの世界には存在しない。
だから一方通行に残された手段は私の光翼を解析して反射可能にするか、私と同じ様にAIM拡散力場を集束して操るかだ。そして、これはあくまで一方通行の”自分だけの現実”にAIM拡散力場の数値を入力させるための物。
「くそッ!なめンじゃねェ!?」
一方通行が叫び声を上げて、その背から勢い良く黒い翼が放出された。
「そう、それでいいわ」
お膳立てをしたとはいえ、まさかこんな短時間で目覚めるとはね。内心の驚きを押し隠して、一方通行の翼と私の光翼をぶつける。
私と一方通行の能力は同質とはいえやはり私の方が勝っていた。
私は実戦経験が半端ではない。マヴラヴの世界の幾つもの並行世界では、合計で億単位にもなる膨大な数のBETAを殺している。伊達に生類憐みの令(しょうるいあわれみのれい)に違反しまくっていたわけではない。
それ故に実戦における能力の使用があまりにも多く、結果的に能力が反則的に強化された。同じ絶対能力者でも能力の力に大きな差が生まれていた。ようするに鍛え方が違ったわけだが、それでも絶対能力に目覚めたのは凄いとしかいえない。
これが原作キャラの補正という物だろうか? 一方通行の翼を弾きながら、私は自問した。
まあ、いいでしょう。私はその考えを捨てて、一方通行と距離を取った。
「ふふふっ、おめでとう一方通行」
笑みを浮かべ、拍手をする。
「……」
「新たなる絶対能力者(ベレル6)の誕生。私は貴方を歓迎するわ。漸く私と同じ領域に到達できる者があらわれたのだからね」
一方通行は他人との争いを避けるために、自分に挑むのもいなくなる他者とは隔絶した絶対的な無敵を求めた。それは他人を傷つけるのを嫌がる彼の優しさが原因だが私は違う。その本性において私は優しくない。
私と一方通行は、表面上では私の方が優しく人格者として見えるが、それは表面上の事にすぎず、本性は私の方が冷酷非情だ。
私は他人などどうでも良い。だから他人を傷つけたくないから無敵になるなどという考えはない。戦いは拒まず、むしろ楽しむ。それが私だ。
私は能力者としては、転生特典の恩恵でスタートラインからしてチートだった。だから学園都市で、いやこの世界で、私と対等に競い合える能力者などいなかった。
そのことには内心不満があった。サイヤ人ではないけど、好戦的な部分があるからね。
当麻を仲間に引き込んだのも、彼ならば将来的に私の能力に対抗可能になるだろうと考えてのことだ。残念ながら、私が戦闘力を上げすぎたので実力差が隔絶してしまったが。
その数日後。学園都市に新たなる絶対能力者(レベル6)の誕生がニュースとして流れた。それは学園都市に新たなる波紋となって伝っていく。