まさに未来都市という印象を与える建物群。そんな都市の道路を多くの電気自動車が走っていた。
ここはブリタニア帝国の帝都ヒルデガルド。彼のブリタニア帝国発祥の地であり、ブリタニア文明の起源ともいえるシドゥリ教から見れば神聖なる惑星。
この世界の古代ベルカはドイツ語に近い言語が使われているので現実世界のドイツに相当し、ミッドチルダは英語とイギリスに相当していた。
対してブリタニアは、一応古代ベルカ王族の一人であったシドゥリは古代ベルカ語を採用して貴族の称号をフォンにしてドイツ系の特徴を付けていたが、国名の方はイギリス系にしていた。また人名地名などにいたってはごっちゃまぜになっている。
これらはブリタニア帝国がアメリカのような人造国家であるという理由もあるが、シドゥリが適当に取り入れた結果であった。
この世界は『魔法少女リリカルなのは』を具現化した下位世界である。最も原作の数百年前から転生者が干渉してきたので現在ではその原型を止めていないし、そもそも物語が終了して千数百年が過ぎている。その為、原作は参考にもならないだろう。
そんな世界で使われている電気自動車は、バッテリーと無線送電施設から供給される重力波ビームを受信してエネルギーを得るという仕組みになっている。この技術は『機動戦艦ナデシコ』でエステバリスという人型機動兵器に使われていたものであるが、帝国では軍事ではなく民間で広く用いられていた。
ちなみにこの重力波ビームは自動車だけでなく電車やリニアモーターカーにも用いられている。
元々ブリタニア帝国では自動車は電気自動車が主流で、これは古代ベルカが当時ガソリン式自動車を使っていなかった為だ。
しかし、電気自動車は充電が面倒であった。一応、家庭でも充電でき、都市の各地にガソリンスタンドならぬバッテリー充電所があったが、不便であったのは確かであったので、監察軍が重力波ビームによる無線エネルギー送信技術を手に入れるとそれがあっという間に普及したのだ。その為、利便性が大きく向上していた。
そんな帝国ご自慢の高性能電気自動車を佐天令子が操縦していた。いや操縦というよりも操縦席に座っているだけで後は自動操縦がやっていただけだった。
ブリタニアではわざわざ自分で操縦しなくてもカーナビのような機械に行き先を入力しておくだけで後は自動で操縦してくれる。この自動操縦は人間が自分で操縦するよりも圧倒的に事故の確率が低くなるので重宝されていた。
ついでに飲酒運転もこの機能のおかげでなくなった。酒を飲んでもオートで運転させればいいのだ。これは『銀河英雄伝説』の交通システムを採用したものらしい。
「学園都市が目じゃないほどの文明だね」
元から高い文明を誇るのに様々な下位世界の知識と技術を貪欲に取り入れていった結果、ブリタニアは下位世界でも類をみない超大国となっている。そして目的地についた。
ブリタニア帝国皇帝シドゥリの拠点にして、帝国の政治拠点レーゲンブルク宮殿。ここにくるのは流石に初めてだ。
厳しいチェックを受けて宮殿に入り応接室にて待ち人が来るまで待った。
今回は帝国の要人に会うことではない。監察軍副司令官トレーズ・クシュリナーダと話すためだ。
「やあ、久しぶりだね佐天令子」
「そうですねトレーズ」
実は私はトレーズが苦手だ。彼はレディ・アンと違って私と同じトリッパーの筈なのにどうも私達とは違うのだ。
ちなみに今生の私は女だし、前世も女なので、よくあるTSトリッパーじゃないよ。そんなわけでトレーズも私をレディとして紳士的に扱ってくれます。
彼曰く「TSして女性化したトリッパーは扱いに困る」だそうです。なんでも一々その人物の性格を調べて対応しているらしいから確かに面倒ですね。
「まずは無事でなりよりだよ」
「そのことだけど、同志達にかなりの被害が出ているようですね」
ちなみに同志というのはトリッパーのことです。彼等と私は下位世界の安定という目的の元に協力している仲間ですから。まあ、こういう言い方だと共産主義者みたいだけど。
私達は大っぴらにトリッパーだの上位世界人だと言えないので、同志などの様々な隠語を使うわけです。
「ああ監察軍本部にいた者は全滅しているし、各地の世界に送り込まれた刺客に多くの者が討たれている。大半の者は死んでいるよ」
「そうですか。痛ましいことですね」
「そうだな。シリウス、暁美ほむら、エリザベート、ジュラ、皆忘れ得ぬ人達だ」
トレーズは戦禍で犠牲になった仲間たちを思い沈痛な表情だった。
「それで現在生存が確認できている者は?」
「ああ、私と君を除くとシドゥリ陛下、ナジマ、ミズナ、姫神みこ、カリン・エレメント、ザビーネ・クライバー、アズライト・ジュエル、テレサ、ランカ・リー、涼宮ハルヒ、ホシノ・ルリだ。残りはまだ確認が取れていない。確認には時間が掛かる」
「……予想以上に深刻ですね」
生き残ったトリッパーの数が少なすぎる。どうやら生き残った私は運が良い方みたいだ。確かにフリーザクラスの強者が刺客だったらあっさり殺されていただろう。私の所に来た刺客がBETAごときであったのが幸運といえる。
「とりあえず現在は各世界のトリッパーと連絡を取り合っているが、なかなか連絡が取れていない」
「そうですか、それと監察軍の再建に関しては?」
「ああ、それは私が中心となってやることになるだろう」
確かにトレーズしか人がいないのでそうなるだろう。
「帝国上層部はそれを支持しているのですか?」
「ああシドゥリ陛下が根回しをして下さっている」
「そうですか陛下が…」
シドゥリは私達と同じトリッパーであるが、形式上監察軍の直属の上司という形ですし、ブリタニア帝国の皇帝という立場なので呼び捨てなどしているとマズイ。どこに目や耳があるかわからないのだ。
その点は私もトレーズも心得ていた。要は前世の天皇陛下の様な感覚で接していた。とにかく公式上は敬っているのだ。
「状況が落ち着いたら、君にも情報を送るとしよう」
「ええ、よろしくお願いします」
後書き
ADONISのイメージとしては、ミッドチルダがイギリスで、古代ベルカがドイツ、ブリタニアがアメリカというものです。ブリタニアは良くも悪くもごっちゃまぜで、様々な下位世界からいろいろなものを取り入れています。
後、重力波ビームってひも付きになって行動範囲が狭いから、兵器としてはどうしてもいまいちなんですよね。そもそも守るべき母艦を敵の射程距離におかないといけないというのは困りもの(笑)。機動兵器は遠距離から敵を叩くのは望ましいですから。
でも民生品に使うと意外に利便性は良さそうだったので、ブリタニアで活用してみました。
ちなみに帝国の電気の発電方法は、宇宙空間ではスペースコロニーや民間宇宙船では相転移機関と常温対消滅機関を、有人惑星では魔力炉と常温核融合炉が使われています。