佐天令子、小学五年生。幼稚園の時に超能力者(レベル5)に到着したという少女は化け物じみた強さを発揮していた。
システムスキャンで、ミノフスキー粒子を発生して学園都市の電波を大規模にかく乱したり、メガ粒子砲を再現してド派手な砲撃をカマしたりした。また下位世界においても空間歪曲場を発生してレーザー級の攻撃を無効化したり、斥力場を発生させて突撃級の突撃を防いだ。監察軍の超科学技術を学習した佐天の成長は留まる所を知らない。
そんな彼女も行き詰まっていることがあった。
「A.T.フィールド(Absolute Terror FIELD)が使えないね」
『新世紀エヴァンゲリオン』で登場した排他的精神領域。防御としては最高級じゃないのかな? 『機動戦艦ナデシコ』のディストーション・フィールドや『フルメタル・パニック』のラムダ・ドライバは似たような物が能力で再現できたが、ATフィールドだけはダメだった。
以前その世界の神になったシンジくんに色々と効いたけどS2機関がないとできないらしい。まあ原作では大容量の電力で何とかしていたらしいけど、そんなの無理だし。となると何か別の物で補えないかと考えていたら学園都市に豊富にある物に気がついた。そうAIM拡散力場これを利用すること。
それでアカシックレコードを使って色々と試行錯誤した。
自分だけの現実を塗り替え、卵の殻を破るかのような感覚。最初に感じたそれはそんな感じだった。私の背中から展開されたオレンジ色に光輝く翼。
AIM拡散力場の集合体にして天使の力(テレズマ)。新しい自分だけの現実、私の新しい力。
この力の副産物として強力なAIMジャマーが使えるようになり、自分以外の能力や魔術を無効化できるようになった。これで最大の懸念である一方通行にも余裕で勝てるようになった。でもこの技術って他人が使うと私の能力までジャミングされかねないから秘匿しておく。
結果としてA.T.フィールドを再現できた。AIM拡散力場って凄いね。いや180万人以上の能力者がいるからこそでしょうね。現時点では異世界どころか学園都市から離れすぎると使えないけどね。
これを応用して次元や空間を切り裂いたり、他人の心に干渉したりできるようになり、元の能力と会わせて他者を自分の望むように再構成することすら可能だ。その副作用で魔力に対して拒絶反応を起こすようになったけどね。
私の絶対能力の見た目や能力がA.T.フィールドに似ているのはやはり能力者である私のイメージが問題なのでしょう。
ここまでは良かったけど、この事がアレイスターにバレてしまった。まあ能力の特性上学園都市でやらないといけないから隠蔽は無理だったけどね。
その時には既にシステムスキャンの時に地球規模で大気に干渉したりできていたので、絶対能力者(レベル6)に認定されることになった。
まあ確かにA.T.フィールドは異世界とはいえ天使の持つ能力だし、この世界では十分絶対能力者(レベル6)だよね。
更に上条をスカウトした辺りで、私達の事までアレイスターに気付かれてしまった。
アカシックレコードの情報によると、テレポートドライバーでの移動が観測されて超能力とは違う空間移動の方法を使っていることは掴まれている。上条と接触したのは失敗だったかな?
滞空回線(アンダーライン)を初めとして学園都市には目と耳が多いから仕方ない。
う~ん、どうしようかな? 下手にイレギラー認定されて暗殺者を送り込まれるといけない。何しろ上条と違い私はアレイスターの計画に必要というわけではないのだし。
まっ、いいか。最悪アカシックレコードにアクセスすればアレイスターの行動も丸分かりだし、いざとなればこの世界から去ればいいだけのこと。元々大学を卒業したらそのつもりだ。
私はファティマの能力を得た為に不老長寿になっているから、時間が経てばいつまでも老いない私は周囲に不審に思われるだろう。とはいえ折角とある魔術の禁書目録の世界にトリップしたのに、原作に関わらずにいるのも勿体ない。チートオリ主ですから、色々とやってみたいです。
私はそんな悩み事を監察軍の仲間に話してみる。
ちなみに監察軍にはトリッパー以外にも少数だが宇宙人も参加している。ドラゴンボールのナメック星人や他の下位世界の宇宙人など。私の師匠のナメック星人も戦士型で監察軍に派遣されている方です。
ブリタニアの特別地区ナメック星は、『魔法少女リリカルなのは』の広大な次元世界の一つブリタニアの辺境星系に存在する惑星で、ブリタニア帝国領ではないと定義されている。まあ、それは監察軍の本部もそうだけどね。
帝国領と定義してしまうと宗教問題が発生して、シドゥリ教に帰化しないといけないから、そうした地区は帝国領にあらずとしているわけです。
「確かにそれは面倒ね」
仲間の一人、ミズナさんはそう答えた。ミズナさんは私と同じように不老長寿を受けているのですが、『ドラゴンボール』のサイヤ人として転生しています。文句なしに監察軍最強で、私がどんなに長生きしてもとてもかなわない強者です。
実はドラゴンボールにも魔法や超能力があります。しかし餃子がナッパに対して超能力を使おうとしても効かなかったように戦闘力に一定以上の差があるとうち消されてしまう。
実際、高い戦闘力の持ち主は無意識の内にそうした物を防いでしまうのか、強化サイバイマン(戦闘力5000)相手にも私の超能力が効かなかった。
私の超能力がBETAに効いていたのは、彼等が総じて戦闘力が低かったからだ。小型のBETAは戦闘力が一桁ばかりだし、大型でも二桁を超える物はいない。
ドラゴンボールって凄いチートだよね。というかドラゴンボールは気の強さによって世界の法則すらねじ曲げる事ができる。
魔人ブウが精神と時の部屋で次元に穴を空けたように、強いヤツは無茶苦茶です。フリーザ辺りになると私のA.T.フィールドでも紙同然。……なんか泣けてくる。な、泣いてなんかないよ。これは心の汗なんだから。
学園都市第一位の能力者が形無しだよ。でも逆をいえば私の力は学園都市という井戸の中でのことでしかない。数多の下位世界を見ればそれこそ様々なタイプの強者がいる。
『井戸の中の蛙(かわず)大海を知らず』とはよく言ったものです。
一応、ナメック星人の方に武術を教わっているけど、まああまり無茶はできない。
戦闘民族サイヤ人ならばともかく最弱に近い地球人という種族で、過剰なトレーニングをするのは身体の成長に悪い。
地球人といえば、へたれのヤムチャが思い浮かべますが、あれでも地球人というカテゴリーでは最高級で、禁書世界の聖人が束になっても軽く蹴散らせるほど強い。たぶん私が身体を鍛えてもヤムチャにも届かないでしょうね。
話しを戻すけど、「せっかく創作物の世界にトリップしたのに行動し支障が出るというのも問題ですから、何らかの方法でアレイスターを押さえておきたい」
こういう要望はトリッパーの間では珍しくない。オリ主らしく行動したいと思うのはトリッパーにとっては当たり前の事です。まあ、中には平凡でも良いから楽に生きたいと思うトリッパーもいるけどね。
私? 私の前世は病弱でいろいろと不便だったから、鬱憤がたまっているのです。だから自重はしないよ。
「う~ん、じゃあ力ずくでやってみれば? 貴女はあの世界ではかなりの力を持っているでしょ?」
力押しですか? ミズナさんは次元違いの力を持つだけに正面からの力押しになりがちだよね。サイヤ人だからか? 待てよ。力押しか、それなら…。ふむ、そうと決まれば釘を刺すのは早いほうがいいでしょうね。
数日後。アレイスターは頭を悩ませていた。彼が予想すらしなかったとんでもないイレギュラーが発生したのだ。
異世界勢力との接触。かつては最高の魔術師で、現在では最高の科学者の彼をしても異世界というのはあるかどうか理論すら構築されていないトンデモな話しだった。
「さて、どうしたものか」
先程突然訪れた少女の事が悩ましかった。少女がいっていた異世界の巨大組織『監察軍』の概要。この世界は科学サイドと魔術サイドが半々で勢力が拮抗しているが彼等はその均衡を崩しかねない。
「手出しは控えるべきか…」
彼女とそのバックにいる監察軍は将来起こるであろう魔術サイドと科学サイドの戦いには興味がないらしい。ならば下手に刺激して規格外の組織を敵に回すべきではない。
あのような存在に介入されるのは拙い。下手をすると魔術サイドに協力して科学サイドを潰しに掛かるかも知れないのだ。
アレイスターは知らない事だが、監察軍は『とある魔術の禁書目録』の世界では魔術サイドとは極力接触しないことが決定していた。それはこの世界は魔術が宗教に密着し過ぎている事が理由だ。
監察軍のスポンサーにして母体は『魔法少女リリカルなのは』の並行世界にある広大な次元世界の一つ、ブリタニアを領地とするブリタニア帝国だ。この世界は異教徒に関しては住み分けを徹底している。つまりブリタニア帝国ではシドゥリ教以外は認めず異教は排除しているが、国外では布教活動をしないので、帝国内では宗教対立が起きないし、国外でもそれは同様。
勿論、監察軍がいる星系はブリタニアでも特別地区に分類され、監察軍と関わりがあればシドゥリ教徒でなくても居住が認められている。特別地区というのは領地だけでなく宗教でもブリタニア帝国とは切り離された地域です。
まあ、監察軍はブリタニア帝国に配慮して、あからさまに他宗教と友好的に接触するのは避けている。つまり監察軍が魔術サイドの者達特にイギリス清教、ローマ正教、ロシア成教などに協力はするつもりはない。
佐天はそこまで説明していない。あくまで監察軍がどれ程優れた技術力を持ち、どれ程の戦力を持つのか大雑把に説明して牽制しただけだった。
アレイスターは伝えられた情報があまりにも大雑把なので対応できないでいた。
解説
監察軍はトリッパー除く者達には下位世界が上位世界の住民によって作られた世界である事を極秘にしている。だからトリッパー以外の者は、世界の呼び名も下位世界ではなく三千世界と一般的に呼ばれている。この様に三千世界というのは下位世界の秘密を隠すための隠語として用いられている。