とある少女の支配領域   作:ADONIS+

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※ここでは第一巻の内容に戻ります。


1-1

 俺、上条当麻は不幸に愛されている。何をやっても物事が上手くいった試しがない。

 

 監察軍の仲間には、俺の幻想殺し(イマジンブレイカー)が空気に触れているだけで異能だけでなく、俺自身の幸運までうち消しているようだと言われた。非科学的としかいえないが、こちとら三千世界でオカルト万歳な連中と散々やりやった実績があるだけに否定できない。というかこの能力の所為で俺の仕事は超能力とオカルト対策ばかりですよ。

 

 俺を対超能力兼対魔術最終兵器『上条』などと言う者までいる。

 七月二十日。折角の夏休みの初日だというのに、財布を捜してクレジットカードを踏み潰した上に担任から『上条ちゃんお馬鹿だから補修ですよ』とラブコールがくる始末。

 

 こういう長期休みは、いつもは身代わり人形に任せて俺は監察軍の方に行く事が多いのだが、この夏休みはこの世界で過ごすようにと佐天を含めた監察軍の人達から言われている。何でも重要な出来事があるのでそれをちゃんとこなせといわれたが、その内容自体は俺の行動に変化が出るといけないので教えられないといわれた。

 

 まあ佐天もこの夏休みはこの世界に残って俺のサポートをしてくれるらしいので、何か困った事があったら助けて貰おう。

 そんなことを思いながら取り敢えず布団を干そうとベランダに出たのだが、そこに白い物体が干されていた。

 

「はあ!」

 

 なんだ。これは? 俺はまだベランダに何も干していないぞ! 大体この部屋は一人部屋だから俺以外が布団を干せる筈がない。って、よく見ると白い服を着た少女のようだ。年の頃は14歳ほどの銀色の髪のよく見ると美少女だ。

「お……、おなか減った」

 

 俺が呆然としているとその少女はそういっている。そんな少女にどう反応したらいいのかとしばし考えてみる。

 

「おなか減った」

「……」

「おなか減った」

「……」

「お腹がすいた、っていっているんだよ?」

「はあ、とりあえず飯でも食うか?」

 

 しょうがないので取り敢えず部屋に入れて何か食わせてやろう。

 俺は軽く調理して食事を少女に出すと物凄い勢いで食べ出した。それは知人の某サイヤ人に迫るほどの勢いだ。まあ、彼女の前では口が裂けても言えないけどね。というか彼女は俺みたいに幻想殺しを持っているわけでもないのに、佐天の超能力を無効化しているんだよね。

 

 監察軍の調査では戦闘力に差がありすぎると相手の超能力をうち消してしまうらしい。

「うん、おいしい」

 

 少女の反応にそりゃそうだと思う。俺も伊達に長く一人暮らしをしているわけではない。それに監察軍で料理技能を学習装置で仕入れているからな。

「俺は上条当麻だ。あんたは?」

 

 俺は食事を終えた少女に話しかけた。

 

「わたしはインデックス。見ての通りシスターだよ」

 

 インデックスって目次のことだよな。あからさまな偽名だ。

 

「そのインデックスさんは、なんであんな所にいたんだよ?」

 

 俺の部屋は八階、どう考えても普通は外からベランダに行けるような高さではない。

 

「追われているんだよ」

「追われている?」

 

 穏やかでない言葉だな。

 

「うん、魔術結社にね」

 

 少女の口から出た魔術結社という言葉に眉を顰める。

 前もって佐天からこの世界に魔術が存在していることは聞いていた。魔術や魔法といっても世界によって原理や術式が違うのは当たり前で、実際そういった世界にもいったがやはり結構違うものだった。

 

 この世界の魔術は術者の生命力を燃料に術式をエンジンとして発動するらしい。まあこの世界で魔術師という物にあったことがないので人聞きでしかないが。

 

 これで問題なのが、この世界では科学サイドと魔術サイドは丁度勢力が拮抗しており、裏では色々と火種があるらしい。当然、今や科学サイドの象徴といっても過言ではないこの学園都市を快く思わない魔術師も多く、彼等が何らかの敵対行動を取る可能性も否定できない情勢であるらしい。

 ひしひしと厄介事の予感がします。とんでもない不幸がやってくるのを肌で感じるような感覚。なまじ不幸慣れしているだけに上条さんの不幸センサーは敏感です。

「そうか、それは大変だな。で何でそんな連中に追われているわけだ?」というと、インデックスがキョトンとして顔をして俺を見て、「貴方一般人なのに魔術を信じるの?」と意外そうに言われた。

 

 しまった! 魔術が一般には秘匿された世界では、一般人の反応は魔術などを信じないと言うのが普通で、俺のようにあっさりと受け入れるのはおかしい。うっかり監察軍での常識で行動してしまった自分の迂闊さに苛立つ。

 

「インデックスは嘘を言っていたのか?」

「ううん、本当だよ」

「ならいいよ。取り敢えず信じることにするからそれで良いだろ」と論点をズラして誤魔化しておいた。

 さてと、どうした物かと考えていると『ピンポーン』と呼び鈴が鳴った。

 

「はい、どなた様でしょうか?」とドアを開けると、そこには常盤台中学の制服を着た佐天がいた。

 

「上条さんお邪魔しますね」

「おっ、佐天か。どうしたんだ?」

 

 佐天が俺の寮にまでくるのは珍しい。何しろここは男子寮だ。仮にも常盤台のお嬢様である佐天があまり気軽に来るべき場所ではない。

「上条さん何か変わったことがないかしら?」

 

 唐突な質問だが、あまりにタイミングが良すぎる。恐らく知っていたのだろう。

 

「ああ、変わったシスターさんがいるぞ」

「そう、部屋に上がって良いかな?」

「ああ」

「はじめまして私は佐天令子と申しますわ。必要悪の教会の禁書目録さん」

 

 佐天の言葉にギョッとするインデックス。明らかに警戒している。

 

「ご心配なさらずとも私はこの学園の能力者の一人にすぎないので、魔術結社とは関係ありません」

「……本当?」

「ええ、ですからお話を聞きたいのです」

 佐天はインデックスから一通り話しを聞く。

 

 それによるとインデックスの持つ10万3000冊の魔導書を狙って魔術結社が彼女を襲っているらしい。そのためイギリス清教の教会に逃げ込もうとしている。というか10万3000冊って、どこにそんな物があるんだ。

 

 ホイポイカプセル(ドラゴンボール)か? 四次元ポケット(ドラえもん)か? この世界にはそんなもんないはずだぞ! どう考えても物理的に無理だろ!  何か突っ込み所満載(爆)。

「成る程ね、事情は分かりました。ですがこの学園都市はおろか日本国にもイギリス式の教会はありません」

「何とかならないのか?」

 

 佐天はかなりの物知りだから一応聞いてみる。

 

「当麻それ以前に問題があるの。インデックス貴女は一年以上前の記憶がないでしょう? おかしいとは思わない? 貴女は完全記憶能力を持っている筈なのに」

「…うん、そうだよ」

 インデックスが頷く。というか完全記憶能力?

「そういえば当麻には説明していなかったね。完全記憶能力というのは簡単に言うとあらゆる事を完璧に覚えて決して忘れない能力の事ね」

「決して忘れないって本当かよ?」

 

 暗記とか完璧って事か? なんてチートだよ。学生なら欲しがりそうだな。

「でも、それはあまり良い物でもないわよ。例えば一々どうでもいい事まで覚えて忘れられないから、ゴミ記憶ばっかりになってしまうのよ」

 

 確かにどうでも良いことまで覚えてしまうのは邪魔だな。

「まあ、必要悪の教会はインデックスのその能力に目を付けて10万3000冊もの魔導書を読ませて脳に暗記されたわけね」

「というか魔導書を10万冊以上読んでよく生きていられたな」

 

 俺は感心する。確かアーカムシティがある世界では魔導書を一冊読むだけでも命がけだ。下手すれば廃人になる。

「こっちの魔導書もけっこうヤバイから普通の人間が不用意に見ていいものじゃないわ。それを10万3000冊だからインデックスもかなりの規格外ね。最もだからこそ教会も彼女に細工もしているわけだけど」

「細工ってどういうこと?」

 

 インデックスが聞き捨てならないと佐天に聞いてきた。

 

「それはね……」

 

 佐天は必要悪の教会がインデックスに仕掛けた首輪の説明をする。

 必要悪に教会はインデックスを逃さない為に、一年に一度記憶を削除しなければならない魔術的な仕掛けをしているが、表向きは完全記憶能力によって脳が圧迫されて死んでしまうので一年に一度記憶を削除しているということにしている。今、インデックスを追いかけている魔術師は元々インデックスの友人であったのだが、その偽情報を真に受けてインデックスを追跡している。

 私の裏事情の説明(暴露)にインデックスは愕然となった。

 

「それじゃ私を追いかけているのは…」

「そう、貴女と同じ必要悪の教会に所属する魔術師よ。彼等は貴女を助けるつもりのようね。実際には踊らされているのだけど」

「何とか方法はないのか?」

「それはあるけ……、んっ!?」

「どうしたんだ?」

 

 いきなり言葉を切った佐天を不審に思い聞く。

「魔術師がこちらに来ているわ。このまま部屋にいるのはマズイわね。当麻外に出るわよ」

「もうバレたのか?」

「インデックスが身につけている修道服はかなり強力な霊装みたいだからね。彼等からみればかなり目立つわ。とにかく部屋に乗り込まれる前に外に出た方が良いわ」

「でもよう、さっきの話しだと学園都市に乗り込んできている魔術師ってインデックスの友人だったヤツなんだろ。だったら話し合いで何とかならないのか?」

「それが出来るならそうしているけど、戦闘になる可能性が高いわ」

「なんか佐天、妙に機嫌が良くないか?」

 

 心無しか俺には佐天が浮かれている様に見えた。まるで心待ちにしていた楽しみが始まったかの様な印象すらある。

「そうね、心ときめかせているかしら? これで始まりだから…」

 

 佐天は意味不明な事を言いつつ部屋を出ていった。

 

「はあ、しょうがねえな」

 

 俺は溜息を付きながら佐天の後を追って、インデックスと部屋を出た。

 これが俺『上条当麻』がこの世界の魔術世界との関わりの始まりだった。




後書き

 漸く『とある魔術の禁書目録』一巻の内容に入りました。令子は禁書目録のイベントを優先して超電磁砲に関しては必要以上に関わらないつもりです。とはいえ絶対能力者進化計画を潰した事で既に話しが変わってきていますけど。
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