とある少女の支配領域   作:ADONIS+

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 寮の外に出てすぐに当麻とインデックスが来た。さてと、標的が出てきたことからそろそろ現れる筈だ。佐天がそう考えていると一人の男が姿を現した。

「人払いの結界ですか、割と手際がいいですね魔術師」

「へえ、分かるのかい」

 

 紅い髪を伸ばした長身の神父という出で立ちの男。

 

「ええ、そうですよ。必要悪の教会のステイル・マグヌスさん」

 

 軽くジョブ。暗にお前の正体は知っていると牽制する。

 

「なっ!?」

 

 まさか所属だけでなく名前まで知られているとは思わなかったのだろう。ステイルが驚愕している。

「ふふっ、貴方達の事はある程度知っているだけですよ。それより貴方はインデックスの記憶を消すつもりのようだね。でもその方法ではインデックスは救われない」

「ぐっ、君に何がわかるというんだい!」

 

 ステイルが怒りを込めて言う。

「その事を含めて君や神裂さんと話しておきたい事があるのだけど、どうも話し合いが出来る状況ではないようですね」

 

 ステイルが殺気をバシバシ出している。

 

「仕方ないですね。当麻さん少し相手をして」

「って、俺かよ」

「魔術師が相手なら当麻さんが適任でしょ?」

「……分かったよ」

「消えろっ!」

 

 ステイルが強力な炎を放出した。圧倒的に火力を誇るそれは当麻を包み込みこみ焼き払うかに思われたが、当麻が前に突き出した右手によって容易くうち消される。

「なんだと!?」

 

 自慢の炎の魔術を容易くうち消されたステイルは驚愕する。

 

「寝てろ」

「グハッ!」

 

 当麻の当て身をくらい意識を失うステイル。大した怪我もさせずに気絶させており、見事な手加減だ。まあ、あれだけ武術をやっているのだから当然だね。

「それで、どうするんだ?」

「それなんだけどね。インデックスを助けるには彼女にかけられた細工を何とかしないといけないわ。それは魔術的な物だから当麻さんの右手でうち消せる筈」

 

 私は当麻の右手に視線を向ける。これまで数多の異能をうち消してきた幻想殺し。今回もこれがカギとなる。いえ『とある魔術の禁書目録』では『幻想殺し』は物語を構成する重要な要素だ。決して無視できる物ではないだろう。

「でももう一人の相手をしないとね」

 

 私はいつの間にかその場にいた神裂を見つめた。

 

「そこをどいて下さい」

 

 神烈が威圧感を放つ。

 

「残念ですが、私達はこれからインデックスを助けるつもりなので、それに同意できません」

「なにを!?」

 

 神烈が苛立ちまじりに言う。ふむ、感情が高ぶっているみたいだね。

 

「ハッキリ言いますが、貴女がインデックスにやろうとしている方法は時間稼ぎの対処療法にすぎず、根本的な問題解決になっていません」

「なっ!貴女は何を知っているのですか」

「色々とね。でも貴方達は魔術師だから科学には疎いようですね。少し脳医学の知識がある者なら真っ先に気付くデタラメな話なのに」

 

 溜息を零す。私は基本的な記憶に関する脳医学の知識を説明して、必要悪の教会がインデックスに仕掛けた首輪の内容の説明をする。

「というわけだからインデックスには仕掛けがしてあるわ。疑うならインデックスの体を調べてみる事ね」

「そんな、馬鹿な……!」

 

 半信半疑の神裂にインデックスを調べるように言う。ちなみにここは外であるが人払いの結界があるので人気はまるでない。

 

 私は神裂にインデックスを調べさせた。原作知識もあり簡単にインデックスの喉に仕掛けられた魔術を発見する。

「それでは私のしてきたことは……」

 

 神裂が打ちひしがれている。インデックスを死なせない為に心を痛めてもやっていたことが全部教会の仕掛けた事だったからショックなのも無理もない。

 

「それで貴女はどうします?」

「どういうことですか」

「私はインデックスを助けるために首輪を破壊します。貴女は?」

「できるのですか?」

 

 神裂が驚く。インデックスに仕掛けられている首輪はやたら強力な物だったので神裂達でもどうにもならない代物だったのだ。

 

 しかし、そんな物は関係ない。如何に強力な魔術だろうが、その幻想をぶち壊すだけだ。

 

「そこの当麻の右手は触れただけであらゆる異能をうち消すことができる。それは魔術だろうと呪いだろうと関係ないわ。そうでしょ当麻さん?」

 

 事実、この世界でも魔術師闇咲の知人の女性にかけられていた呪いもあっさりうち消せた。

 

 幻想殺しってデタラメだよね。下位世界で揉まれた分やけにパワーアップしているから原作より強力だし。

「ああ、インデックスを苦しめるなんて、そんな巫山戯た幻想は俺がぶち殺す!」

 

 おお、名台詞出た~。いいね、それでこそ上条当麻だよ。

「というわけで神裂さん、ステイルを起こして下さい」

「えっ、ええ」

 

 神裂がステイルを叩き起こす。ステイルは状況が分からず戸惑っていたが、神裂の説明で動揺していた。

「……それで君たちはどうしたいんだい?」

 

 ステイルが不審そうに言う。

 

「インデックスを救う。だから手を貸して貰いたいの」

「君たちを信じろっていうのかい?」

「でも今が最大のチャンスだよ。この学園都市ならば必要悪の教会の影響力がないし、切り札の幻想殺しもいるからね」

「……駄目だ!そんな不確実な方法が当てになるか!」

「おい、おめえ等はインデックスのダチなんだろ!だったら諦めたりしないで助けろよ!」

「なんだと、僕たちの気持ちが君に分かるっていうのかい!」

 

 ステイルが当麻に掴みかかっている。

 

「でもこのままじゃいつまでたってもインデックスは救われないわ。だから決めて欲しい。ステイル貴方はインデックスを助けたいんじゃないの? 笑って終わることが出来るハッピーエンドを求めていないの?」

「……」

 

 沈黙するステイル。

「インデックス悪いけど、口を大きく開けて頂戴」

「わかったよ」

 

 インデックスが口を開く。

 

「当麻さん」

「分かっている」

 

 当麻の右手がインデックスの喉に接触して、バチッという音で当麻がはじき飛ばされる。

 

「ぐっ!?」

「――警告。禁書目録の『首輪』、第一から第三まで全結界の貫通を確認。一〇万三〇〇〇冊の『書庫』保護のため、侵入者の迎撃を優先します」

 

 私の目の前には、豹変したインデックスの姿があった。

「ちっ!!」

 

 私は学園都市に広がるAIM拡散力場を集束して、オレンジ色の光翼を展開する。それは私『佐天令子』が絶対能力者として力を振るう形態。

 普段のインデックスは10万3000冊もの魔導書を暗記しており、魔神にすらなりうる能力がありながら魔力がないが故に、力を発揮できない少女だった。

 

 しかしこのインデックスは違う。凄まじい魔力を感じる。その上、放たれる魔術は竜王の殺息(ドラゴンブレス)。それは凄まじい勢いで放たせる閃光であった。

 

「A.T.フィールド全開!?」

 

 当麻の正面に展開される私のA.T.フィールド。かなりの負荷が掛かったが、それでも私のフィールドを破るには力不足。

「なっ!竜王の殺息を防ぐだと!?」

 

 ステイルと神裂さんが私のA.T.フィールドの防御力に驚愕している。確かに竜王の殺息は規格外の魔術。防御するなど、そう簡単に出来ることではないだろう。

 

 しかし、この身は絶対能力者(レベル6)。科学サイドでありながら天使の力をも行使できる者。

「絶対能力者(レベル6)を舐めるな~!?」

 

 更に気合いで竜王の殺息を弾き飛ばす。続けて当麻の頭上に白い羽根が複数舞い落ちてくる。だが甘い!

 アカシックレコードに接続。白い羽根の成分分析。分析完了。消去。

 

 私の力で白い羽根を消滅された。これが私の力、如何なる物質でも自分の思うままに操れる。例えそれがこの世に存在しない新しい物質であっても、アカシックレコードに接続して構造を把握して支配する。

 

 支配領域(テリトリー)。自分の領域内に存在するあらゆる物質を把握して操る力。

 

 アカシックレコードと組み合わせる事でこの力はより強力な物となった。それはまさに一定領域における絶対なる支配者。

「当麻、今よ!」

 

 今が最大の好期。当麻がインデックスに飛びかかり、「インデックスを助けるのに邪魔なら、まずはその幻想をブチ殺す!」その右手をインデックスに振り下ろした。

 

 

 結果としてインデックスは原作通りに救われた。原作と異なるのは、当麻が記憶喪失にならなかったこと。私が白い羽根を消したので無事だった。

 

 こうして、上条当麻の記憶喪失イベントは潰れた。それはいいのだが…。

 

「しかし、君のその力、本当に能力なのか?」

 

 ステイルが信じられないという顔付きをしている。まあ、竜王の殺息を防ぐわ、白い羽根を消し去るわ、かなり非常識な事をしでかしたから不審に思われて当然だ。

「いいじゃねえか。みんな無事だったし、インデックスは助かった。問題ねえよ」

 

 私の力の一片を知る当麻はフォーローするかのように言ってくれた。まあ、私の援護ではなくただの本音を言っただけかも知れないが、好都合なので有り難く受け取っておこう。

 

 その後、ステイル達は事後処理が色々とあるということで引き上げていった。とまあ、これでめでたしめでたしと言いたい所だが…。

 

「あああーー!?寮がー!!」

 

 当麻の住んでいた寮が破損していた。A.T.フィールドで防いだとはいえ、竜王の殺息の余波が寮に被害を与えていた。

 

 こうなると当麻は持ち前に不幸スキルを発揮しており、当然ながら当麻の部屋が一番被害を受けていた。

「これが上条特性か…」

 

 などといって現実逃避をする。私がインデックスの魔術を上手く捌けなかった所為でこうなったので、私に責任が全くないとはいえない。

 

 更に言えば寮を出てすぐに首輪を外そうとしていたのも問題だった。派手に暴れても問題ない場所でやるべきでした。

 まあ、ステイルが人払いの結界を張ってくれたおかげで人的被害がゼロだったのが唯一の救いだね。

 

 弁償するのかって? これって形式上は、魔術サイドの人間がこの学園都市で起こした被害何だよね。となると学園都市としては例え私が関わっていると知っていたとしても責任追及はできない。今回の件も原因不明の事故という事で処理される筈だ。

 

 無責任だって? そう言われても、いきなりどうこうする事はできないよ。まあ、当麻にはアフターケアをするけどね。

 意外なことに、それに今回は学園都市の衛星に搭載されている樹形図の設計者を打ち落としたりしていないから、他の世界よりは被害が小さい。

 

 原作でも樹形図の設計者が打ち落とされたのはただの偶然だったから、流れが違うこの世界では破壊されない可能性は十分に考えられていた。

 勿論、アカシックレコードを使えばそういう事象も把握できる。でもそうすると面白くない。だからこそアカシックレコードから情報を仕入れることは限定的な物に止めている。

 

 何もかもが理解できる。全てが予定調和では面白くも何ともない。だから予想外な事というのは人生を楽しむスパイス。

 私は全能なる絶対者ではない。今を楽しむ一人の人間だ。

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