ACfA RAVEN LIFE   作:D-delta

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首輪付き戦。

※これまでのお話の描写部分に修正を加えました(話の内容は変わっておりません)


CHAPTER17

 遥か遠方から近付く者。ストレイド、首輪付きが地獄と共にマザーウィルへと向かって来る。

 彼我の距離は既に50km地点。マザーウィルが首輪付きに気付いたのはその距離であった。

 

≪こ、高速で接近してくる機影を遠方に確認……ネクストです! 接近してきます!≫

 

 新人のオペレーターが緊張で声を強張らせて告げ、高速で近付いてくる首輪付きの存在を知らせた。

 

≪VOB付きのネクスト……各員戦闘配置! 護衛部隊を展開、護衛部隊及び各砲台は接近してくるネクストを迎撃せよ!≫

 

 司令官の指示が各所へと伝わる。直後、計六門の主砲による攻撃が始まった。

 汚れ、廃墟が埋もれた大地に轟音が響く。放たれた砲弾は大地の上を飛び、着弾して大地を抉り、廃墟を木端微塵に吹き飛ばす。

 戦闘の始まり。垂直ミサイルランチャーのハッチが開き、その他砲台も迫ってくるストレイドの方へ向いて戦闘態勢へ。格納庫内では護衛部隊の出撃が進む。

 

≪ネクスト!? 俺たちもネクストと殺し合うってことかよ!≫

≪安心しろ、マザーウィルの超長距離攻撃を突破出来るなんてのはネクストでさえ中々難しい。俺たちの出番はないはずだ≫

 

 ノーマル乗りたちの通信越しの会話。全員がノーマルへの搭乗を急ぐ中、トーマスは「連中はなにも分かってないな」と呟きながらフロウヴェインにいち早く搭乗していた。

 

「ホワイトグリントの前例があるんだ。こっちの攻撃に当たってくれるかよ……また突破されるぞ」

 

 トーマスはホワイトグリントとの戦闘を思い出す。

 こちらの弾幕を突破して迫ってくる真っ白なネクスト。マザーウィルの懐で暴れ、殺戮を行い、地獄を作り出していった化け物。鉄と血肉が散らばる戦場跡の光景とその中で這う上半身しかないエリーゼの姿。

 

「だが今度は、ネクストが味方にいる。そう何度もホワイトグリントの時と同じにさせられるか……!」

 

 トーマスの確かな意志と共にフロウヴェインのメインシステムが起動。そのまま戦闘モードへと移行し、フロウヴェインはマザーウィルのカタパルトに出た。

 カタパルトに出れば、主砲による攻撃の様子がトーマスの目に入ってくる。

 

≪敵ネクスト、尚も接近! こちらの攻撃の効果がまるでありません!≫

≪司令官、敵ネクストに関するデータを発見しました≫

 

 報告が次々と来る。恐怖の混ざる声、落ち着いた声、様々な声色の報告が耳に飛び込んでくる。

 

≪もはや残弾は気にしなくて良い、主砲による攻撃は続行だ! 敵ネクストのデータはこちらに共有を頼む≫

 

 入った報告を元に、悪手を避けて最善を尽くせるように司令官は判断を下す。

 無駄弾になるとしても司令官の判断のままに主砲の発射は続いた。

 

「突破されるぞ」

 

 トーマスは通信に自分の声を入れる。

 音速を超えて接近してくるストレイドに、主砲の攻撃は一発も当たらない。突破されるのは目に見える状況だ。

 

≪突破されるだって? オペレーターは騒ぎ立ててるけどよ、さっきの通信聞いてなかったのか? ネクストだろうとマザーウィルの超長距離攻撃を突破するのは難しいんだよ。そんなあっさり突破される訳ないだろう≫

 

 各カタパルトへと展開を始めた護衛部隊。その中でも出撃の遅れているノーマル乗りが、希望的観測でトーマスの言うことを否定する。

 だが現実は希望的観測よりもトーマスの予見の方へと傾て行っている。今まさに地獄が迫ってきているのだ。

 

≪主砲による攻撃、効果確認出来ず! 敵ネクストに損害はありません!≫

≪敵ネクストは速度を保ったまま尚も接近中……このままでは懐に入られます!≫

 

 オペレーターの通信から現実に起きていることが告げられる。もはや希望的観測が現実になることはない。

 

≪と、とにかくだ。俺はこのままのんびりやらせてもらう≫

 

 マザーウィルに迫る残酷な現実、そこから始まるのは希望的観測に身を任せた現実逃避。

 

「好きにしろ」

 

 トーマスはそれだけ言う。ノーマル乗りは出撃を遅らせているままだが、誰の都合にもお構いなく状況は進んでいく。

 当たることのない主砲の攻撃。もはや目視で確認出来るほどに、首輪付きが音速を超えて迫り来ている。

 そして――

 

≪敵ネクストのVOB解除を確認!≫

≪直接懐に入って来るつもりはないか……全砲台、護衛部隊は敵ネクストを迎撃せよ! これよりマザーウィルは全火力をもって敵ネクスト――ストレイドを撃墜する!≫

 

 VOBを解除したストレイド。機体速度は遅くなるものの、それでも超音速を維持してマザーウィルに接近し続ける。

 しかし司令官の言葉が示すようにマザーウィルは黙って接近を許す訳ではない。今まさに発射音の重なりは増え、騒がしさは一層強くなり、集中する火力は絶大に、そして絶大な火力は弾幕の形を成してストレイドへと飛んでいく。

 

「敵ネクストが主砲の攻撃を突破してきた。こっちも攻撃を仕掛ける」

 

 トーマスが搭乗するフロウヴェインも迎撃を開始。ロックオンなしのグレネードキャノンによる狙撃を響かせた。そのフロウヴェインの狙撃に続いて『044AC』全機はスナイパーキャノンを用いた狙撃を開始。弾幕の中に精確な狙いの射撃が紛れる。

 

≪キルドーザーァァァァッ!≫

 

 そうしてストレイドへの攻撃が激しくなる中、チャンピオン・チャンプスの雄叫びと共にキルドーザーが格納庫から飛び出した。

 首輪付きの乗るストレイドを一気に押し潰すチャンス。弾幕と一緒になって突撃を繰り出す。

 

≪どぉうりゃぁぁぁっ!≫

 

 チャンピオン・チャンプスのうるさい声が通信を埋めるその時、ストレイドへ向けられた攻撃は着弾を迎える。巻き起こる爆発。着弾によって大地は抉れ、廃墟は吹き飛び、大量の破片と砂が宙を舞った。

 そこにあるのは容赦を微塵も感じさせない圧倒的な死だ。

 

≪頼むから死んでくれよ≫

 

 首輪付きの死を願うノーマル乗りの声。

 だがそんな願いは叶わず、死の中からストレイドが超音速で抜け出してきた。まるで死を司る者の如く、己に降りかかる死を無視している。

 

≪敵が……敵ネクストは健在です!≫

≪接近され過ぎてる! 主砲が有効射程外になっちまったぞ!≫

 

 全ての攻撃は無意味になる。攻撃を当てることも足を止めることも出来ず、ストレイドはマザーウィルの足元へとやって来た。

 再びの地獄。その始まりが近付く。

 

≪敵ネクストがマザーウィルの足に!≫

≪マザーウィル移動開始! 敵ネクストを踏み潰せ!≫

 

 司令官の指示でマザーウィルの足が動き出す。首輪付きを踏み潰そうとする、悪あがきのような攻撃。もちろんそう簡単に踏み潰れてくれることはない。まだレーダーの赤い光点が恐ろしく速く動いている。

 

≪出られるのかよ。な、敵が――≫

 

 ノーマル乗りの通信が途切れると共に格納庫から爆発が発生した。まさにそれは出撃の遅れていたノーマルが撃墜された事実を物語っている。

 格納庫内から立ち上る黒煙、そこからストレイドが黒煙を晴らしながら出てくる。

 

≪格納庫に被害発生! 被害は甚大です!≫

≪引火すれば被害が広がる。消火作業を急がせろ≫

 

 死はそこにいる。ストレイドの中にいる首輪付き。ありとあらゆる攻撃を回避して今まさに空中を漂い、マザーウィルを見下ろしている。

 

≪くっ……次々とアームズフォートを撃墜している新顔。実質的に廃棄処分を言い渡された我々も、撃墜された者たちと同じになるという訳か≫

 

 死そのものが形を成した存在の確信。司令官は怯まざるを得ない。

 逆光の姿。太陽を背にしたストレイドは、マザーウィルに影を落として死を向ける。

 地獄は再び、ここに始まった。




肉塊と鉄塊が再び転がる。それはまさしく地獄の序章。
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