ACfA RAVEN LIFE   作:D-delta

27 / 38
ようやく更新。


※このお話を読む前に、CHAPTER0の冒頭を読むのを推奨


EX CHAPTER REMEMBER

 ネクストの最適化が始まってからほんの数日が経つ。

 ホワイトグリントが墜ちたことによるラインアークの弱体化。それによって世界の最適化が進んでいる中で、ネクストの最適化はほぼ機体の完成と言っても差し支えないレベルにまで来ていた。

 

「完成間近だな」

 

 後少しで最適化を迎えるネクストを見上げ、トーマスは告げる。

 

「あぁ、後は内装の調整と各チューンってところだ」

 

 片手に持ったラジオから音楽を流しながら、ヴェインもトーマス同様にネクストを見上げた。

 二人が見上げた先にあるネクスト。それは初期の『GAN02-NEW-SUNSHINE』をベースに自社製の武器腕のバズーカ『GAN01-SS-AW』を取り付けた異様な人型の機体であり、背部にはBFF社製の指令機用レーダー『061ANR』と有澤重工製のグレネードキャノン『OGOTO』を搭載した極端な機体であった。

 

「にしても、見れば見るほど人型の面影がある異形って感じだな」

「瞬間火力向上とAMSの負担を減らした結果だ。異形になるのも仕方ない」

 

 ヴェインが完全な人型を捨てるのを惜しく思う一方で、トーマスは望む性能とAMS負荷の軽減を最優先として機体の姿を気にしている余裕はなかった。

 

「機体のエンブレムとカラーの方はどうする?」

「気が早いよ、ヴェイン」

 

 そんなヴェインとトーマスの話し声の響き。そこにラジオからの曲や周りの人の声も混ざる。発砲音も爆発音もない、物騒な話が混ざろうとも、命の奪い合いのない表面的な平和のひと時。

 

「機体カラーとか、そういうのは後だ。今は機体を――」

 

 しかし平和は終わる。

 身体に振動を感じ取るほどの連続した爆発が突如として起こり、彼らが今いるこの格納庫の天井が一部崩れ落ちていく。

 施設内に警報が鳴り響く。ラジオから流れる曲は掻き消され、人の慌てた声が飛び始めた。

 

「なんだ!? 誰か事故でも起こしたのか!?」

「事故……いや、敵か?」

 

 連続した爆発。事故にしてはあまりにも不自然な連続した爆発であり、施設の天井または屋上で起きること自体がおかしい。

 トーマスにとってはもはや疑いしかなく、敵の襲来を感じ取っていた。

 

「不明機からの攻撃だ!」

 

 一人が叫んだ。その途端、叫んだ人間が崩れた天井の破片に巻き込まれて死に至る。

 あっという間の死。それが示すのは、死の危険がここに来ているということ。

 

「クソ、ネクストで出撃する」

「待て! 未完成で出るのか!?」

「やるしかない! マザーウィルの時と同じだ!」

 

 敵の襲来が現実に表れた。このままなにもしなければ死に至るのは確実。それを分かっているトーマスはヴェインの制止を振り切って、ネクストのコックピットへ急ぐ。

 

「仕方ない。オペレーターは俺がやる!」

「頼む!」

 

 トーマスがネクストに乗り込むと同時にヴェインはオペレーターへ回る。

 マザーウィルの時と変わらない。突然訪れる死に対応し、乗り越える。出来なければ死があるのみ。

 

「やるぞ。最適化されていくお前の力、見せてみろ!」

 

 トーマスはAMSの接続を開始。AMSを通してやってくる負担を脳に受け入れながら、ネクストの起動を始める。

 各システムの立ち上がりと共にコックピットモニターにはいつもの仮想空間ではない、現実の世界が映った。

 

≪トーマス、機体はどうだ? やれそうか?≫

「大丈夫だ。AMSの負担も前ほど酷くない。十分にやれそうだ」

 

 起動完了と同時に入ってきたヴェインからの通信に応じ、トーマスの搭乗するネクストは問題なく前へ一歩を踏み出す。

 

「出撃はどうすれば良い? 格納庫のハッチを開けてもらうにはリスクがありそうだが……」

≪天井だ。敵の攻撃で脆くなった天井を破壊して出撃してくれ!≫

「了解、崩れた天井に巻き込まれるなよ!」

 

 ヴェインの指示通りに天井へ向けて武器腕バズーカを放つ。二発同時の砲声が響き、脆くなった天井が破壊されて大穴が出来上がる。

 そうして見えてくるのは汚れた空。トーマス機は大穴の空いた天井を抜けて、汚れた空へと飛んだ。

 

「さぁ不明機とやらはどんなもんだ」

 

 黒煙の上がる施設上空。トーマスはレーダーの赤い光点を確認し、モニターに目を向ける。

 赤い光点が示す場所に目を凝らし、見えてくるのは黒とオレンジの中量二脚型の機体。そしてその周りを漂うコジマ粒子。

 

「機数は一機、人型の機体と周りのコジマ粒子ってことはネクストか」

 

 コジマ粒子を漂わせるたった一機の敵をモニター越しに目視して、トーマスはすぐさま敵をネクストだと認識する。

 

「初の実戦がネクスト相手になるとは……それでもやってみせるさ!」

 

 施設から離れたところに佇む敵ネクスト。

 トーマス機はOBを起動し、一瞬にして音速を超えて敵ネクストへと距離を詰めていく。

 ハイエンドノーマルとは比較にならない速度。空中を駆け抜けては数秒と経たずに敵ネクストを捉える。

 

「まずは反応を見る」

 

 敵ネクストへのロックが赤くなって射程内に入った瞬間、トーマス機から二つの砲声と一つの轟きが鳴り響く。

 両腕部の武器腕バズーカとグレネードキャノンによる合計三つの一斉射撃。当たれば大ダメージだが、弾速の遅さと正面からの攻撃からか、敵ネクストは攻撃をしっかりと認識してからQBによって回避していく。

 

「流石に腐った反応はしていない」

 

 敵ネクストの反応を見つつ、トーマスは告げる。

 トーマス機と敵ネクストの距離は既に詰められた。お互いに武装を向け合い、QBによる超音速機動を繰り返す近距離戦となる。

 

「くっ、速いな!」

 

 二つの砲声。二つの轟き。トーマス機からは武器腕バズーカの攻撃が、敵ネクストからは右腕部と左背部のグレネードキャノンの攻撃が飛んだ。

 

「様子見は、終わりだ……!」

≪……っ!≫

 

 お互いの攻撃が飛び交っては、QBによる絶え間ない超音速機動によって重い一発一発を回避し合う。

 連続する着弾音と爆発音。それを背に、お互いの僅かな息遣いが通信に混ざり込むほど戦いは激しさを増していく。

 

「一気に終わらせる」

 

 様子見は既に終わりを告げられた。

 トーマスは思考を攻撃に切り替えて敵ネクストへ執拗に食いつき始める。直後に二発同時にグレネードキャノンの被弾をもらおうとも、トーマス機の猛追は止まらない。

 

「止まるかよ!」

 

 QBによる超音速機動にOBを合わせて更に加速。一瞬で敵ネクストに接近し、武器腕バズーカとグレネードキャノンによる一斉射撃を浴びせる。

 

≪うっ!?≫

 

 一斉射撃が敵ネクストに直撃。鳴り響く爆発音を背にして、子供の声が通信に入り込む。

 

「な、子供!?」

 

 通信から聞こえてきた声は幼い少年のもの、つまり敵ネクストには子供が搭乗している。

 トーマスはその現実に驚くしかなかった。

 

≪ママ……!≫

 

 通信越しに幼い少年の声が母を呼ぶ。直後、敵ネクストはその場から撤退していった。

 

「まさか……!」

 

 敵ネクストから発せられた母を呼ぶ声。トーマスには聞き覚えがあった。

 マザーウィル配属前に通った街。汚染され、砂漠化していた街の風景。砂の中を這いつくばって母を探す子供の姿。助かる見込みもなく、助ける余裕もなく、自らがその場に見捨ててしまった子供。

 

「あの時の子供か」

 

 全てを思い出す。モニター越しに見つめて、せめて天国に行けるよう祈ったことも。

 

「生きていたんだな」

 

 見捨てた罪悪感と少年が生きていたことに、トーマスの感情は複雑になっていく。

 もはや追撃は頭から抜けて、撤退していく少年のネクストの背中を見つめるだけであった。

 

「でも、次の敵はきっと……」

 

 次なる戦いと敵。その予感をトーマスは感じ取り、少年が次の敵であることを察する。

 しかし次なる戦いは既に来ている。不明機による襲撃という形で、最適化された世界を覆す黒い旗は立てられているのだから。

 




ちなみにこのお話の冒頭のラジオからはRememberが流れているイメージです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。