ACfA RAVEN LIFE   作:D-delta

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EX CHAPTER 濁り

 全てを思い出した戦い。複雑になっていく感情。

 ともあれ最適化されたネクストの初の実戦は終わった。機体やNSSの施設の損害は最小限に抑えられており、トーマス本人の感情とは逆に状況は悪くない。

 

「こちらトーマス。敵不明機は撤退、これより帰還する」

 

 トーマスは通信を一つ入れて、ネクスト共々無事にNSSの施設へと帰還していく。

 

≪了解だ。お疲れさん、みんなが――≫

≪トーマス、許可もなしに出撃したな! 白昼堂々とここで戦闘をして! せっかくの隠匿もこれで水の泡だぞ!≫

≪正規のオペレーターもなしに初の実戦とは……無茶しますね≫

 

 ヴェインから労いの通信が入った直後、多数の声がヴェインの声を掻き消すように通信に入ってきた。

 話される内容は様々。しかし敵襲という緊急時において、しっかり対処したにもかかわらず、労いの一つもないのは共通である。

 

「好き勝手に言いやがって。こういうところはここもマザーウィルと変わらないな、全く」

 

 トーマスはそれらのうるさい声に対して耳を塞ぐように通信を切り、愚痴を溢しながら施設へと着く。

 それから手順を踏んで機体の収容が行われ、搭乗者のトーマスには検査に次ぐ検査が行われていくのであった。

 

 

  ※

 

 

 不明機の襲撃から数日が経つ。

 不明機の襲撃が(おおやけ)となった現在、とある情報がリークされてからNSS計画とGA社は他企業から疑いの目で見られるようになっていた。

 その理由はGA社が隠匿していたネクスト戦力――トーマスの存在がリークされたからである。

 

「トーマス、良いかね? これから画面越しに顔を合わせるのは君の顔を見る者たち、すなわち各企業のリンクスたちだ。今回のお披露目だけで疑いは晴れるだろうが、なるべく粗相はするなよ?」

「はい、ローディー」

 

 不明機の襲撃が相次ぐ今の世界で、GA社お抱えのNSS計画の施設から更に不明機が出たとなれば疑いを持たれても当然である。

 隠匿されていたトーマスの存在は、他企業からしてみればカラードに登録されていない謎の戦力でしかないのだから。

 

「では、出席するとしよう」

 

 そして今、それら疑いを晴らすためにお茶会が始まる。

 ビデオ通話が繋がり、お茶会に出席中のリンクスたちの顔がモニターに映った。いよいよ隠匿を暴かれたトーマスのお披露目である。

 

≪GAの隠し玉がどんな奴かと思えば……お得意の実戦上がりにしては若いな、ローディー≫

「この若さでホワイトグリントと例の新人から生き残っているんだ。それにAMS適性ありともなれば企業は欲しくもなろう、ウィン・D」

 

 ウィン・Dと呼ばれた妙齢の女性。カラードランク3のリンクス、ウィン・D・ファンションが話を切り出す。

 

≪それで、彼の存在をBFFは知っていたのか?≫

≪リークによってその存在が判明するまで、GA傘下のBFF社でも彼の存在は存じ上げておりませんでした≫

 

 ウィン・Dの確認に対して、容姿端麗でトーマスよりも年下と思われるカラードランク2のリンクス、リリウム・ウォルコットが丁寧に答える。

 そんな丁寧で模範的な答えを求めていないウィン・Dは≪王大人も知らないと?≫と言い方を変えて再度確認を行う。

 

≪残念ながら私も知らないことだ。だが、不明機がGAの隠し玉を暴いたとなれば、向こう側にとっても敵ということだろう≫

 

 そう告げるのはカラードランク8のオリジナル、王小龍。ふとトーマスに向けるその目は得体の知れない期待がある。

 

≪なるほど。私たちにとっても、敵にとっても、イレギュラーは避けたいという訳か。存外、知らない内に獅子身中の虫を飼っているかもしれんな≫

 

 ウィン・Dが危惧をその口に出す。

 事実、不明機は本来知ることの出来ない隠匿された戦力を暴いたのだ。内部に不明機の協力者がいる方が自然と言える。

 

≪ともあれだ。そこのGAの隠し玉が味方なのは確定した。これ以上の議論は憶測でしかない。次の議題へ移ろう≫

 

 王小龍の言葉を最後にして、トーマスに関する疑いは晴れた。

 もはやこれ以上の議論はなく、次の議題へと堅苦しいお茶会は進んでいくのであった。

 

 

  ※

 

 

 お茶会が終わってから数日。

 隠匿を暴かれたトーマスはGAのリンクス数誇示のため、カラードへと名を連ねることになった。

 カラードランクは最底辺。新人のランクである。

 

「完成したみたいだが、知らないパーツが付いているな」

 

 そして新人としてのランクを得た今、呟くと共に完成したネクストを見上げる。

 乗機となるネクストの機体フレームと基本的な武装構成に変わっているところはない。しかしエクステンションと機体の各部に見慣れないパーツが付いていた。

 

「お、来たな」

「ん? ヴェインか」

 

 トーマスに気付く声に反応するとヴェインの姿が視界に映る。

 リンクスとアーキテクトである二人が揃い、二人揃って完成したネクストを見上げた。

 

「エクステンションとあのパーツはどういうパーツなんだ?」

 

 トーマスの指がエクステンションと機体各部のパーツを差す。

 ヴェインは「あー」と気付いてくれたことに笑みを浮かべ、端末を取り出して機体の設計図をトーマスに見せた。

 

「ふーん『051ANAM』か、フレアもスタビライザーもBFF社製」

「そういうこと。トーマスがカラードに入ったことでBFF社からも支援が来たからさ、機体の完成度を上げるのに付けさせてもらったんだ」

 

 機体の設計図を見たトーマスが何のパーツかを理解している横で、ヴェインは詳しく説明する。

 その説明を聞き込んでいる内にトーマスの目は機体フレームを構成するパーツの方へ流れていった。

 

「ん? アクアビット……?」

 

 ふとトーマスの目に映る見慣れない企業の文字。

 GA製のパーツとその傘下のパーツが設計図内に名を連ねている中に、ジェネレーター『LINSTANT/G』とFCS『INBLUE』という見慣れない企業のパーツが混ざっていた。

 

「ヴェイン、これは?」

 

 ネクストのことはアーキテクトのヴェインに任せているとはいえ、乗るのはトーマスだ。すぐに確認が入る。

 

「それは俺が持ち込んだものだよ。ネクストの最適化には何でも使わないとな」

「それはそうだが、大丈夫なのか?」

「大丈夫。安全性は確保出来ているし、なによりこの前の襲撃で破損しなかったのが安全である証拠だ」

「なるほど。あの時から既に搭載済みって訳か」

 

 確認は納得と共に終わった。しかし納得は出来てもトーマスの中に嫌な予感と疑いが生まれる。

 誰からアクアビット社製のパーツを受け取ったのか、どうやって施設に持ち込んだのか。

 嫌な予感と疑いは尽きない。

 

「なぁ、ヴェイン……お前は獅子身中の虫じゃないよな?」

「なにを改めて言うかと思えば失礼だな。裏切りなんてしないよ」

 

 お茶会で発していたウィン・Dの危惧をここで思い出す。

 それ故にヴェインの言葉を頼りに、今ある予感と疑いを頭から掻き消す。

 

「だよな、そうだよな」

 

 そうしてトーマスは自分に言い聞かせる。

 信頼出来るアーキテクトで、マザーウィルからの戦友であるヴェインが裏切り者のはずがないと。裏切り者は別にいると。

 

 それら否定が呼び寄せるのは黒い旗から流れ出る濁り水。それぞれの思惑がトーマスにぶつかるまであと少し。

 最適化された世界と共に運命は加速する。

 

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