ACfA RAVEN LIFE   作:D-delta

31 / 38
今回は短め、オリキャラの絡みオンリー


EX CHAPTER 黒い旗の下で

 七月の出来事。世界は変容を迎えた。

 正体不明機による各地のアルテリア施設の同時襲撃。それは大規模アルテリア施設であるアルテリア・カーパルスにまで及び、遂には世界の奥底に潜むものが自ら姿を晒す。

 

 ORCA旅団。

 

 黒い旗の下に集った者たちは、ORCA旅団と旅団長であるマクシミリアン・テルミドールの名でごく短い声明を世界へ発信した。

 

 To Nobles.

 Welcome to the Earth.

 

 その声明は人類のゆりかごに揺られる人々、ひいては企業への明確な宣戦布告であった。

 

 罪を抱えた翼に住まう罪なき人々をも殺す、ORCA旅団の狂気は企業たちにこれまでの戦争を捨てさせ、企業連とORCA旅団の二極化した新たな対立を作り出していく。

 企業が生み出した秩序ある世界。最適化はリセットされた。世界は争いの中で今一度行き着く先の答えを待っている。

 

 

 ※

 

 

 トーマスがORCA旅団の一人となってから数日が経つ。

 ORCA旅団に加わったことでGA社とカラードから離脱した今、トーマスはNSS計画の施設を離れ、世界の辺境に隠されたORCA旅団の拠点の一つへと身を移していた。

 

「GAとはまた違うな」

 

 トーマスの視界に映る光景、格納庫の様子はまさに地下の秘密基地。長らく放置されていた場所を使っているのか、どこか寂れている。

 

「それはそうだ。ORCA旅団は反動勢力、言わばテロ組織だからね」

 

 そこにヴェインがやって来る。

 トーマスは「ヴェインか」と視線を移し、まだ知らないことを問うのに口を開く。

 

「お前はいつからORCA旅団に?」

「マザーウィルの人員入れ替えの時だな。あの時にGAグループに潜んでいたORCA旅団の人間にさ、アーキテクトにならないかって誘われたんだ。元々俺はアーキテクトを希望していたから即答でOKを出したよ」

 

 ヴェインの口から語られる簡単な経緯。その噓偽りのない口振りに、トーマスは「なるほど」と納得を示しながら経緯を知る。

 

「まぁそんな身の上話はともかくとして。旅団の後ろ盾から技術供与をしてもらっているし、お前のネクストを新調しようと思う」

 

 用があって来た理由、ヴェインは会話を本題へと移す。

 

「NSSの施設に置きっぱなしの機体は放置するのか?」

「もちろん。あの機体だとせっかく供与してもらった技術が不向きになるからな。とりあえずはこっちに来てくれ、あの子もいるからさ」

 

 まだ名の知らない、あの子供もいる。その誘いと次のネクスト。

 トーマスは言われるままにヴェインに付いていく。そうして少しの移動の後、目的の場所で目に映る光景は自動作業アームが動くネクスト専用のガレージに、組み上げ途中の細身のネクストであった。

 あの子供はいつもの薄い表情で、組み上げ中のネクストを傍観しながら座っている。

 

「まだ完成はしていないようだな」

「そりゃあね。このネクストはレイレナード製自律ネクストの『002‐B』と同じくレイレナード製有人ネクストの『03‐AALIYAH』のハイブリッド機体だから、少し手間が掛かってるんだ」

 

 組み上げ途中のネクストを一瞥(いちべつ)するトーマスに、ヴェインはすぐに今やっていることの説明を入れた。

 しかし新たなネクストの説明の一方で、トーマスの視線と関心はあの子供の方へ向いている。それに気付いたヴェインは「あっちの方が気になるかい?」と告げる。

 

「あぁ……あの子は母親を求めていた。産まれた時から母親のいない俺とは違うが、それでも親がいなくなると寂しくなることくらいは分かる」

 

 トーマスの記憶の片隅にある思い出。父親を亡くした時のこと。その時の涙とその後の寂しさ。思い返すだけでも虚しい自らの境遇をあの子供に重ねて、同じ親のいない人間として共感を表す。

 根底にあるトーマスの心にとって今はネクストのことなど二の次であった。

 

「仕方ない、先にあの子のところへ行って来な。ネクストのことはその後だ」

「悪いな」

 

 ヴェインの気遣いに背中を押してもらい、トーマスはあの子供のところへ歩み寄る。

 あの子供の目が歩み寄るトーマスを見る。トーマスの目も子供を見て、お互いの視線はお互いを見る。

 

「……?」

 

 そうして用件を尋ねるが如く子供は首を傾げた。

 一見して年相応に可愛らしい行動から、用件を尋ねられていることを察したトーマスは「自己紹介がまだだったな。俺はトーマス=フェイス、君の名前は?」と話を始める。

 

「クオレ」

 

 薄い表情のまま子供は己の名を告げる。

 それ以上はなにも言わない。

 

「クオレか、覚えた。隣に座っても?」

「うん」

 

 言葉数の少ない子供――クオレの隣にトーマスは腰を下ろす。

 隣に座り合って出来上がる身長差。トーマスは成人していても比較的背は低い方だが、まだ幼いクオレはそれよりも身長が低い。

 

「アルテリア・ウルナの時、覚えているか?」

「うん」

「あの時はごめんな。本気で殺しに掛かったりして……」

 

 そんなトーマスの謝罪に対してクオレは首を横に振り、大人しい声で「お互い様だから」と言う。子供ながらに血生臭い戦場に慣れている言葉であった。

 その言葉に、トーマスの目には尚更クオレの姿が己の幼少期に重なる。

 

「ママだっけ? 会えた?」

 

 再びクオレは首を横に振った。まだ母親には会えていないということを態度で示している。

 

「じゃあ、ママの場所は分かる?」

 

 次の質問に対してもクオレは首を横に振った。しかし付け加えるように「上の人が知ってる」と告げた。

 

「それで戦っているのか?」

「うん」

 

 母親の居場所を知るために戦う。

 トーマスはクオレの戦う動機を知る。

 

「そっか……実はさ、俺は親がいないんだ。母親は俺を産んですぐ死んで、父親は俺を戦場に連れ出して戦死しちゃってさ。良かったら、似た者同士で友達にならないか? ママを探すの手伝うよ」

 

 心配と助けたい気持ちのままに手を差し伸べる。

 クオレはトーマスが似た境遇であることを知り、少しばかりの間を置いて差し伸べられた手を取った。

 

「よし、これで俺たちは友達だな。頼ってくれよ、な?」

「……うん」

 

 二人は友となり、クオレの表情に少しの変化が表れる。

 いつもの薄い表情ではない。少しの笑み。口角が少なからず上がっている。

 

「仲は良くなったかい、お二人さん」

 

 トーマスとクオレが友となったのを見計らって、ヴェインが声を掛ける。そのまま続けて「次の作戦もあるんだ。そろそろネクストのお時間だよ」と機体の新調について促した。

 

「行こうか、クオレ」

「うん、お兄ちゃん」

 

 トーマスとクオレ。二人は手を繋ぎ、ヴェインのところへ行く。

 次なる機体への新調と新しい友情の始まり。彼らの〝答え〟はここより始まる。

 




次回は新調する前のオリジナルネクストの資料でも投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。