ACfA RAVEN LIFE   作:D-delta

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お久しぶりの更新。
更新頻度を上げたい今日この頃。


EX CHAPTER スピリット・オブ・マザーウィル迎撃

 新たな一歩を踏み出した翌日。

 架空の景色、仮想空間の空の下で戦闘が繰り広げられていた。

 重なる発射音。爆発に次ぐ爆発。それと共に仮想敵として設定された、ノーマルとMTの大部隊が次々撃破されていく。

 対するはトーマスとクオレの新たな機体――ヴァーチュースとフリストス。

 トーマスのヴァーチュースが敵陣に突入してレーザーブレードで仮想敵を次々と溶かし裂き、クオレのフリストスが後方からコジマオービットを用いて複数の仮想敵を一撃で木端微塵にしていく。

 

「これで最後だ」

 

 戦闘シミュレーターが始まってから三十秒と経たずに仮想敵は全滅し、それをトーマスが口に出して告げる。

 三十秒足らずで出来上がった大量の仮想敵の残骸は、二人の力と二機の新たなネクストの力を示していた。

 

≪敵の殲滅を確認、機体共々リンクスも調子は良好だな。終わったらクオレのところへ来てくれ≫

「はいよ」

 

 ヴェインの声にトーマスの声が返すと共に戦闘シミュレーターは終了。コックピットモニターに映し出された仮想敵や仮想空間は消えていき、機体の各システムを終了させていく。

 

「クオレの方を見に行ってみるか」

 

 クオレの様子も気になるトーマスはヴァーチュースを降りて、すぐさまクオレのところへ向かう。

 少しの移動を要した先に、トーマスの足はクオレの機体が格納されている場所へ来た。

 

「トーマス、こっちだ! 旅団長からミッションが来ているぞ!」

 

 来て早々、クオレと一緒に情報端末を見ているヴェインに呼ばれる。

 ミッションのブリーフィングである。それに遅れまいとトーマスは「今行く!」と急ぎ、情報端末の画面を見た。

 

≪マクシミリアン・テルミドールだ≫

 

 ORCA旅団の旗と共に現れる、テルミドールの声。

 そこからブリーフィングの本題は始まる。

 

≪衛星軌道掃射砲に侵攻中の敵戦力の排除を頼みたい≫

 

 映し出される作戦区域の画像。

 その中の防衛目標、天の向こう側を射る砲である『エーレンベルク』と侵攻中の敵戦力が簡易的に表示される。

 

≪敵戦力はアームズフォート、スピリット・オブ・マザーウィルを主軸としている。おそらくは超長距離からの掃射砲の破壊を目論んでいるのだろう≫

 

 テルミドールの言葉と共にマザーウィルの画像が画面上に現れる。

 トーマスがかつて所属していたアームズフォートの同型機。因縁は浅くない。

 

≪同時に掃射砲では敵の最精鋭戦力との戦闘が予想される。マザーウィルの射程に掃射砲が捉えられてしまえば、現場の防衛部隊だけでは阻止することが出来ないだろう≫

 

 マザーウィルの射程距離は最大200kmだ。そんな超長距離から砲撃されれば『エーレンベルク』防衛に出ている戦力がマザーウィル撃墜に駆け付けても、防衛は間に合わないだろう。

 

≪衛星軌道掃射砲はクローズプランの要となる。掃射砲がマザーウィルの射程内に入る前に、君たち二人の手で敵戦力を排除してくれ≫

 

 画面に表示されたものは消えて、ミッションのブリーフィングは終わりへと向かう。

 

≪今これを頼めるのは君たちだけだ。人類のためにも、ここで成し遂げてくれることを祈っている≫

 

 テルミドールはブリーフィングの終わりにそう告げる。ORCA旅団の黒い旗と共に。

 

「善は急げだな。早速出撃に取り掛かろう」

「そうしよう」

 

 新調された機体での初出撃、トーマスにとってORCA旅団としての初出撃がいよいよ近付く。

 ヴェインはクオレに付き添って出撃準備を進めていき、トーマスは自分の機体へと戻っていく。その途中、一人の怪しい男がトーマスとすれ違った。

 

「オールドキング?」

 

 一見しても分かる、狂気が染み込んだ表情の男――オールドキング。トーマスの目はORCA旅団のメンバーリストでしか姿を見たことのない男を追って、出撃準備のために進めていた足を止めた。

 オールドキングの歩む先はクオレの方だ。ヴェインが機体の出撃に急いでいる時に近寄り、なにやら耳打ちする。そして数秒の間に用件を終えたのか、すぐにオールドキングは離れていった。

 怪しい男の短いこそこそ話。クオレの反応はいつもの薄い表情を崩して動揺を見せていた。

 

「後で聞こう、今は出撃を急がないと」

 

 クオレになにかあったのは一目瞭然であった。だが、クオレを気にして与えられたミッションを疎かにすることは出来ない。

 トーマスは出撃準備を急ぐ。

 

 

  ※

 

 

 太陽の輝きに焼けた空。

 その焼けた輝きに照らされる中で、二つのカタパルトに居座るヴァーチュースとフリストスへVOBの取り付け作業が進められていく。

 

「マザーウィルか。防衛する側だった俺が、壊す側になるとはな」

≪因縁だな、トーマス。俺の分の決別も含めて引導を渡してきてくれ。俺の作った自慢の機体でな!≫

「分かった。そうしてくるよ」

 

 トーマスとヴェインの会話。その間に、ヴァーチュースとフリストスの大きな背部パーツへの干渉を避けていきながら上手くVOBが取り付けられる。

 出撃は近付き、カタパルトで二機のネクストを飛ばす準備が整えられていく。

 

「クオレ、行けるか?」

 

 トーマスは問う。オールドキングの耳打ちで動揺していたクオレを心配してのことだ。

 そうして返ってくる答えは≪うん……!≫の一言。そこにいつもの幼い大人しさはなく、どこか急いでいた。

 

「無茶するなよ?」

 

 クオレはまだ幼い。どこか急ぐ様子がそのまま戦闘に影響して死に繋がることもあり、トーマスは心配さを含んでクオレへ告げた。

 

≪よーし、良いぞ! 出撃してくれ!≫

 

 トーマスとクオレの話しを遮るように、ヴェインは準備が整えられたことを告げる。

 

「了解! クオレ、俺の後ろをしっかり付いて来いよ。そうすりゃ俺が盾になれるからな」

≪分かった≫

 

 出撃の時。二機のネクストはカタパルトの上を滑り、飛んだ。

 カタパルトとブースターによる推力を以て飛行を安定させると、途端にVOBの点火が始まる。

 ヴァーチュースとフリストス、二機は音の壁を超えて飛び出していく。ホワイトグリントと首輪付きがVOBでそうしたように。

 

≪既にマザーウィルとの距離は250kmだ。マザーウィルの射程圏内にこの発射場も入るだろうから、こっちはすぐに撤収する。後は頼んだぜ≫

 

 ヴェインから撤収及び退避の通信が来る。

 これで、いつものオペレーターはいなくなった。傭兵らしく個々の判断で戦いを任せられる。

 

「クオレ、今回は俺がオペレーター代わりだ。ヴェインの時のように聞いてくれよ」

≪うん≫

 

 しかしまだ幼いクオレに個々の判断で戦わせるのは厳しい。それを加味して、トーマスはオペレーター役を買って出る。

 

「マザーウィルとの距離、200kmだ。こっから先は敵の砲撃が来る。しっかり俺の後ろを付いて来い!」

 

 トーマスがマザーウィルの砲撃が来ることを言った矢先、三つの轟音が遥か向こう側から響くと共に三発の砲撃が迫ってきた。ネクスト並の巨大な砲弾が横切っていく。PAで防いだとしても相当な被弾を覚悟しなくてはならない。

 

「くっ、これがホワイトグリントの見ていた視点って訳かよ! 割と怖いな!」

≪……っ!≫

 

 それでもホワイトグリントなどの時と同じで、高速で移動する目標に対して命中精度は高くない。下手に回避をするよりも真っ直ぐ進んでいる方が当たらないが、短い間隔で三連射される巨大な砲撃は恐怖でしかない。

 まさに恐れから回避を誘発させ、事故当たりを誘う巨大さである。

 

「彼我の距離、150km! 敵の有効射程内まで残り50kmだ!」

 

 ヴァーチュースとフリストスはVOBの超音速に乗ったまま空を駆け続ける。マザーウィルの放つ巨大な砲撃がどれだけ通り過ぎていくとも、二機が止まることはない。

 

「距離は100km! ここからは敵の有効射程内だ、耐え抜くぞ!」

≪うっ……ん!≫

 

 トーマスの声がクオレを引っ張る。迫り来る巨大な死の恐れを忘れさせるように。

 いよいよマザーウィルの有効射程内。流石に命中精度は徐々に良くなり、砲弾が二機のすぐ上やすぐ横を通り過ぎて大地を抉っていく。

 

「たらたら進んでいたら当てられるな。クオレ、加速!」

≪分かった≫

 

 二機のVOBの出力が上がる。ヴァーチュースとフリストスは更に速度を増して、彼我の距離をすぐさま50km内へと詰めた。

 もはやコックピットモニターに映る遥か遠方に、マザーウィルの巨大な姿が見えるほどだ。

 

「後少し、後少し……!」

 

 距離が近付けば砲撃の発射間隔は更に短くなり、命中精度はより良くなる。

 しかしVOBにより圧倒的な速度を誇る、ヴァーチュースとフリストスを捉えても当てるまではいかない。

 

「このままマザーウィルの懐に切り込む!」

 

 トーマスがそう告げた時、距離は10kmを下回った。

 大地を抉る砲撃。機関砲とミサイルの嵐が吹き荒れる。ヴァーチュースとフリストスはその中を駆け抜けて、懐へと来た。

 

「クオレ、VOBを強制パージ!」

≪うん≫

 

 まだ燃料の有り余るVOBを強制的に切り離す。二機はそのまま慣性に乗って、行き過ぎないようにマザーウィルのカタパルトに乗る。

 ホワイトグリントや首輪付きがしてきたことをトーマスとクオレもやってみせた。

 

≪取り付いたよ≫

「よし、狙うはマザーウィルの砲台だ。派手に食い荒らせ」

 

 マザーウィルの懐に入ってすぐに、トーマスはクオレに指示を与える。その直後、通信に≪来たわね≫と女性の声が割り込んできた。

 

≪裏切り者のGAの隠し玉、トーマス≫

 

 ブースターを用いて地面からマザーウィルのカタパルトへと乗り込む緑色のネクスト。緑のスマイルのエンブレムが特徴的なGA社の重量二脚型の混成機が、ヴァーチュースとフリストスの前に現れる。

 

≪敵であるなら正面から相手してあげるわ、このメリーゲートでね≫

 

 そして女性――メイ・グリンフィールドは自らの機体の名を告げ、敵として立ちはだかる。

 

「そっちもGAか。なら元GAの俺が相手をしよう、このヴァーチュースで」

 

 メイとトーマス、お互いに名乗りを上げて武器を向け合う。

 戦いはマザーウィルの懐で、吹き荒れる弾幕の嵐の中で始まる。

 

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