ACfA RAVEN LIFE   作:D-delta

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EX CHAPTER 決別

 焼けたように太陽に照らされる大地。その上でいくつもの爆発が鳴り響き、大地は実際に焼かれていく。

 二つの標的へ迫るミサイルの嵐。上へと降り注ぐ弾丸の雨。

 マザーウィルの懐で戦いは始まった。

 

「クオレ、砲台の方を頼む! こっちのネクストは任せろ!」

≪うん……っ!≫

 

 ヴァーチュースとフリストス。メリーゲートとマザーウィルの嵐とも呼べる量の弾幕の中を駆けて、マザーウィル撃破のためにそれぞれの役割で二機は動き始める。

 

≪やらせないわ!≫

 

 それぞれの役割で動く二機のあからさまな行動。メイはそこからトーマスの思惑を悟り、マザーウィルの砲台の破壊に動くフリストスの背へ、バズーカと垂直ミサイルの照準を向けた。

 

「それはこっちのセリフだ」

 

 フリストスを狙うメリーゲートの射線に、ヴァーチュースが邪魔となって割り込む。ヴァーチュースはメリーゲートへと、メリーゲートは射線にいるヴァーチュースへと照準が向けられる。

 

≪それなら、あなたから先に潰すわ≫

「望むところだ」

 

 お互いに照準を向ける状態。マザーウィルのカタパルト上でネクスト二機の撃ち合いが始まる。

 カタパルトを滑りながらメリーゲートから放たれるライフルと垂直ミサイル、そこに連動ミサイルが加わった弾幕。前からのライフルとミサイル、マザーウィルから降り注ぐミサイル。

 爆発と爆音の連続。百発以上の弾幕が撃ち付けられるカタパルトを滑り、空へ飛び出したヴァーチュースは二つの一閃を放った。

 

≪AP30%減少! 敵の二機は新型です、気を付けてください!≫

≪ふざけた火力……!≫

 

 ヴァーチュースのハイレーザーライフル。その一射がメリーゲートに直撃しただけで、敵側のオペレーターはダメージの警告を告げた。

 エネルギー兵器に弱いGAの重量二脚型なのもあり、それほどにヴァーチュースの『パルヴァライザー・ユニット』の火力は危険だ。

 

≪主砲大破! 二基ともダメです!≫

≪ダメージコントロールだ!≫

 

 メリーゲートとヴァーチュースが撃ち合う最中、マザーウィルからの通信も混ざる。その様子は如何にも被弾に対して慌てふためいていた。

 

≪大きいの、二つ壊したよ≫

 

 破壊されている主砲を囲う、八基のコジマオービット。

 クオレはマザーウィルの主砲を二基とも破壊したことを告げる。通信に混ざる慌てふためき様が示すように、砲台の破壊はコジマオービットによって順調に進んでいた。

 

「よし、次は垂直ミサイルランチャーだ。六つのカタパルトにそれぞれミサイル砲台のハッチがあるから、それを目印に――」

≪やらせないと言ったわよ≫

 

 メイの声がトーマスの指示を遮り、数発のライフルと連動を含めたミサイルの何発かがヴァーチュースのPAへ当たった。被弾は極少ない。しかし下手な被弾は避けるに越したことはない。

 

「クソッ!」

 

 判断と指示の前に追ってくる弾幕の回避が頭を巡る。そして身体が動く、機体が動く。

 サイドブースターによるQBと背部の大型ブースター『セラフ・ユニット』のOB以上の推力を以て、正面から被弾も無しに弾幕の中を突っ切っていく。

 

「抜いたぁぁぁっ!」

 

 武器腕である『パルヴァライザー・ユニット』の簡易変形。一瞬の内にハイレーザーライフルからレーザーブレードとなって、光と熱の刃がすれ違いざまにメリーゲートを襲う。

 

≪正面を抜けてきた!?≫

 

 光が迸る一瞬の斬撃。装甲の溶断と共にヴァーチュースはメリーゲートを行き過ぎる。

 

≪メリーゲートのAP70%減少!≫

 

 そして即座に来る、ダメージの警告。攻撃を逃れようとしたメリーゲートの動きも相まってレーザーブレードは浅い切り込みとなった。

 しかし浅い切り込みだけでメリーゲートのAPを40%持って行ったのだ。もっと深く切り込めれば、戦闘不能になるほどの致命は確実である。

 

「今のは浅いが隙は出来たな。クオレ、カタパルトにあるミサイル砲台を破壊しろ! それで終わりだ」

≪うんっ……!≫

 

 メリーゲートが大ダメージに怯んでいる間に、すぐさまトーマスはクオレに指示を出す。

 マザーウィルのミサイルをひたすら回避し続け、指示を待っていたクオレはトーマスの指示の下、急ぐように再び砲台の破壊に動き始める。

 

≪……っ!≫

 

 AMSから『ダヴ・ユニット』を介して『アイビス・ユニット』のコジマオービットに、クオレの攻撃の意思が伝わる。途端に主砲を囲っていたコジマオービットの動きは変わり、各カタパルトのミサイル砲台を探っていった。

 

≪コジマミサイルの装填完了!≫

 

 クオレがミサイル砲台を探る一方で、不穏な通信が一つ紛れ込む。直後に≪今すぐに一斉発射、あの二機を黙らせろ!≫と発射を促す通信が来た瞬間、各カタパルトのミサイル砲台から緑色に輝いて尾を引くミサイルが一斉に放たれた。

 

「コジマミサイル? クオレ、とにかく回避を!」

 

 不穏な通信は聞き逃さず、マザーウィルのコジマミサイル発射を目視すると、即座にトーマスは回避を促す通信を入れる。トーマス自身コジマ兵装をよく知らないが、戦場で培ってきた勘が危険を告げていた。

 

≪来たわね、コジマミサイル。派手にやらせてもらうわ≫

 

 ヴァーチュースとフリストスに襲い来る何十発ものコジマミサイル。そのコジマミサイル群の中にメリーゲートの放つバズーカとライフルが入り混じる。

 

「当てられるかよ!」

 

 低速でどこまでも追ってくるコジマミサイルに、死角から来るバズーカとライフル。トーマスの乗るヴァーチュースは必死に致命となる攻撃を避けながらコジマミサイルを振り切っていく。

 しかしトーマスが出来てもクオレはそうとも行かない。

 

≪うっ……!?≫

 

 クオレの焦る僅かな声。

 マザーウィルの速い撃破のためにミサイル砲台への攻撃を集中していたのが仇となって、コジマミサイルの爆発に巻き込まれる。

 

「クオレ? 大丈夫か!?」

≪……っ≫

 

 コックピットモニターに共有されている、フリストスの機体耐久値が一気に四桁にまで下がっている。つまりAPの七割が先ほどのコジマミサイルで持っていかれたということ。

 これ以上のフリストスの被弾はクオレの死に直結する。もちろん死なせる訳にはいかず、トーマスはフリストスへ近付くコジマミサイルを迎撃していく。

 

「大丈夫そうじゃないな」

≪うん……≫

「それなら隠れていろ。俺が囮になるから、その間に一気にミサイル砲台を破壊してくれ」

≪了解≫

 

 コジマミサイルの見せる破格の威力。それを見た上では、クオレにこれ以上被弾させる訳にはいかない。トーマスは全て避け切る覚悟でクオレのフリストスをマザーウィルの死角に潜り込ませ、たった一機でマザーウィルのカタパルトに乗った。

 

「さぁ来い、全部俺に撃ってきな!」

≪お望み通りにしてあげる≫

≪被弾していない方の一機だ、奴にも思い知らせてやれ!≫

 

 ミサイル砲台から一斉発射されるコジマミサイル、メリーゲートから上下に来る大量のミサイル。緑色に輝く尾と白煙の尾が混ざり、様々な角度や方向からヴァーチュースへと百発近くのミサイルが迫る。

 

「まずは迎撃」

 

『パルヴァライザー・ユニット』の簡易変形、レーザーブレードからハイレーザーライフルへと。そのままコジマミサイルをピンポイントで狙い、迎撃。コジマミサイルが緑色の閃光を散らして爆発する。

 その爆発は他のミサイルの誘爆を引き起こし、ヴァーチュースの上空は緑色の閃光と共に爆発で染まった。

 

「そして避け切る!」

 

 誘爆に巻き込まれなかったミサイルは尚も接近。迎撃のための次射までは少し長く、ヴァーチュースは大型ブースター『セラフ・ユニット』の推力で迫り来るミサイルの中を一気に抜けていった。

 

≪なんて回避だ、これがORCA旅団の新型ネクスト……!≫

 

 通信に入り込む一つの驚愕とカタパルトの上で巻き起こる爆発の連続。ヴァーチュースに振り切られたミサイルが次々と推力を失って、カタパルトへと落ちる。

 

≪ミサイルランチャーがやられています、このままではマザーウィルの負荷限界が!≫

≪なにっ!?≫

 

 再び敵の通信。垂直ミサイルランチャーの砲台が破壊されていることを示し、連続してカタパルトのミサイル砲台が緑色の閃光を放ちながら爆発していった。

 その爆発するミサイル砲台の近くから離れていく、コジマオービット。クオレがやったのである。

 

≪見つけた分は壊したよ≫

「よし、そのままマザーウィルが吹き飛ぶまで残りのミサイル砲台も破壊していけ」

 

 マザーウィル撃破まであと少し。ミサイル砲台の破壊は継続となり、フリストスの『アイビス・ユニット』から補給を終えた分のコジマオービットを攻撃に駆り出す。

 

≪次の、二つ≫

 

 トーマスが上で敵の目を引いている間に、クオレは次のミサイル砲台を見つける。そうして繰り出されるのはコジマオービットからの射撃。ミサイル砲台にコジマそのものである弾を直撃させる。

 

≪各ブロックで火災が広がっています! 被害は甚大です!≫

≪対ネクスト戦用に更新も完璧だというのに、一機や二機のネクストも撃墜出来ずに終わりか。この役立たずが……情けない≫

 

 コジマオービットの攻撃を受けたミサイル砲台が爆発。装填されていたコジマミサイルが一気に誘爆して、緑色の閃光と共に周辺を吹き飛ばしていく。

 

「このまま派手に吹き飛ばしてやるか」

 

 クオレがミサイル砲台を破壊した今、弾幕の密度は目に見えて少ない。トーマスは徹底した囮から攻撃性のある囮へと頭を切り替えた。

 ヴァーチュースは再びカタパルトの上へ乗り、残ったミサイル砲台を探す。

 

≪決着のようね≫

 

 そんなヴァーチュースの目の前に、メリーゲートが再び立ちふさがる。その様子に交戦の意思はない。すると、すぐに背を向けて≪撤退するわ≫の言葉の通りに、この戦場を立ち去っていった。

 トーマスは元GAとして、この場を立ち去るメイに「あんたも生き残れよ。GAには世話になったからな」と告げる。

 

≪それ、恩を仇で返す裏切り者が言うセリフ?≫

「お前たちを殺したくてORCA旅団に力を貸している訳じゃないってことだよ」

 

 少しのやり取りを交わして、メイの呆れたような様子を最後に通信は切れた。

 

≪これで全部?≫

 

 連続した二つのミサイル砲台の爆発と共に、クオレは告げる。

 

「こっちで全部だ」

 

 トーマスはそう言い、クオレが撃ち漏らした最後のミサイル砲台を破壊した。これでマザーウィルは負荷限界に達する。各部から爆発が起こり、崩壊へと向かう。

 

≪総員退避。この場から撤退し、味方の救援を待つ≫

 

 敵の慌てふためく通信の中に、敵司令官が退避と撤退を示す。

 これでマザーウィルの迎撃は成功。ヴァーチュースとフリストスはマザーウィルから離れて、その崩壊していく光景を見届ける。

 

「ミッション成功だ。よくやった、クオレ」

≪……帰るね≫

 

 トーマスがミッションの成功を告げると、クオレはいち早く戻っていく。

 いつもと違って急いでいる様子。オールドキングになにか手短に言われてからというもの、いつものクオレではない。

 

「俺も戻るか」

 

 いち早く戻っていくクオレの後を追って、自らも戻っていく。

 

 トーマスはORCA旅団として戦い、GAとの決別を示した。これでもう企業側へは戻れない。戻ることはない。

 なにより、今はクオレを助けてやりたいのだから。

 

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