ACfA RAVEN LIFE   作:D-delta

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CHAPTER3

 朝が訪れた。

 太陽が昇り、大地にいる者たちを明るく照らしていく。

 

「んー?」

 

 コックピットモニターに映る太陽の光が目に焼き付き、トーマスは自身の身体を揺すりながら目を覚ました。

 

「朝か?」

 

 目を開き、すぐ視界に入ってくるのは汚れた空と荒廃した大地。そして地平線から顔を出して輝く太陽だ。

 

「朝だな」

 

 トーマスは今、非常に眠たかった。

 トーマスが請け負っている仕事上、短時間の間に起きては寝てを繰り返さなくてはならない。レーダー上に映らないもの又は動きが早すぎて見えないものがあるかもしれない以上、視覚での警戒をしなくてはならないのだ。

 

「ほわぁ……」

 

 狭苦しいコックピット内で身体を伸ばしてあくびを一つ。眠気の残る表情でモニターに映る景色に目を向ける。

 トーマスの視界に異常は一つもなかった。強いて言うならば太陽の眩しさがトーマスの視界の障害になっているぐらいだ。

 

「今日も一日の始まりか」

 

 首を鳴らし、身体を軽く動かす。眠気が少し飛んだところで操縦桿を握り締める。

 仕事の始まりである。

 トーマスは機体のレーダーと自身の目を使って辺りの警戒をしていく。

 

≪各員に通達。これから増援が到着する。接近してくる輸送ヘリの攻撃を禁止する。繰り返す、接近してくる輸送ヘリの攻撃を禁止する。以上、各員は警戒態勢のまま待機だ≫

 

 マザーウィルからの通達がカタパルト上の各護衛機体に届いた。もちろんその通達はトーマスの耳にも届いている。

 

「増援か、なにが来るんだろうな」

 

 増援がなにか気になりつつも仕事は忘れずにトーマスは再び辺りの警戒を始める。

 

 そうして通達が来てからなにも異常がないまま五時間が経った。

 暇な時間を過ごす内にあっという間に昼時である。

 そんな時である。第四カタパルトの端で警戒を行っているトーマスの機体が遠くから近付いて来るヘリのローター音を拾った。

 

「なんだ?」

 

 トーマスはどの護衛機体よりも早くヘリのローター音の気付き、コックピットモニターで警戒を強くした。

 

「ヘリなのか……どこだ? 敵なのか味方なのか?」

 

 音の出元が分からない今はまさに疑心暗鬼の状態。トーマスはぶつぶつと呟きながら目を凝らし、砂漠の景色に紛れる飛行体を探す。

 音が近付いて来ると共に砂漠の景色の中に動く違和感のある一点が現れる。

 

「あれか!」

 

 トーマスは違和感のある一点を見逃さずに正体が掴めるまで見つめ続ける。見つめ続ける内にハッキリ見えてくるものは下部にハイエンドノーマルを三機も輸送している輸送ヘリだ。

 敵か味方か分からず、トーマスは一人戦闘態勢に入る。戦闘の予感。

 トーマスが通信で警告を促がそうとしていたその時、一つの通信が訪れる。

 

≪こちらGA所属の輸送部隊。スピリット・オブ・マザーウィル、増援を届けに来た。着艦の許可を頂きたい≫

 

 通信は輸送ヘリからのものだ。その味方と察せる通信の内容にトーマスは「通達にあった味方か」と疑心暗鬼を晴らし、戦闘態勢を解除した。

 

≪こちらスピリット・オブ・マザーウィル、第四カタパルトに着艦を許可する。長旅ご苦労だ。燃料の補給はカタパルト上の補給所に頼んでくれ≫

≪了解した。通信終了≫

 

 通信での一通りのやり取りが終わると、第四カタパルトの補給所の人間が輸送ヘリの誘導を開始する。

 輸送ヘリは誘導に従って着実に第四カタパルトに高度を下げていき、下部に輸送しているハイエンドノーマルがカタパルトに足を着けるぐらいに近付く。それを見計らった輸送ヘリのパイロットは三機のハイエンドノーマルとの連結を解除、安全に三機を降ろした。

 

≪機体は補給所へ移動させてください! 機体の点検はこちらの補給所で致しますのでー!≫

 

 補給所の人間が三機のハイエンドノーマルに指示、誘導する。三機は指示と誘導に従うままに補給所へ移動。その後、輸送ヘリが第四カタパルトに着艦する。

 

「あれが増援、たった三機なのか?」

 

 補給所へ移動していく三機のハイエンドノーマル。トーマスはたった三機だけがなぜ増援足り得るのか納得するまで見つめる。

 そして分かってくる。

 真っ先にトーマスの目に映ったのは搭乗者を象徴するエンブレム。そのエンブレムは一位から三位までのトップランカーのものだったのだ。

 

「アリーナのトップランカーが増援なのか、しかも全機最上位クラス……!」

 

 増援としてやってきたのはアリーナを代表すると言っても過言ではない大物だ。そんな大物と一緒に戦場に立てるのである。トーマスとしてはリンクスに並ぶ心強い味方だった。

 

「凄い。これならなにが来ても撃退出来そうだ」

 

 レイヴンであるトーマスは若干興奮気味な様子でトップランカーと判明したハイエンドノーマルを見送り、そのまま元の仕事に戻った。

 

 

  ※

 

 

 マザーウィルに増援が来てからなにも異常がないまま二時間が経つ。

 マザーウィル周辺と本体が兵器で埋め尽くされているだけで平穏そのもののひと時だ。しかしここで異常はなくとも、既に別の場所で異常は始まっていた。

 

≪こちらオーシャンだ、最後のライフルを運んで来た。まだ〝英雄〟を出撃させるなよ?≫

≪分かってる。と言っても、そこまで急がなくて良い状況なんだからライフルを落とさないように慎重に来いよ≫

≪分かってるさ≫

 

 通信と共にネクスト用ライフル『051ANNR』を輸送中の戦闘ヘリは〝英雄〟が待機している滑走路へと向かう。

 そして滑走路では〝白いネクスト〟の出撃準備が行われていた。

 

〝英雄〟と〝白いネクスト〟

 

 その二つから出て来るネクストの正体は、一つだけ。

 そう、ホワイトグリントだ。

 今まさにマザーウィル襲撃に向けて、ホワイトグリントの出撃準備が行われていたのである。

 

≪VOBの組み立てが終わりました。ホワイトグリントに連結させてください≫

≪了解、連結作業に入る。点検中の整備班はホワイトグリントから離れてくれ≫

 

 たった今組み立てが終わったVOBがホワイトグリントのところへ運ばれていく。

 コジマ粒子を推進剤にした外付けの大型ブースター、それがVOB。その性能は敵陣を極短時間で容易に突っ切れるほどだ。

 まさに超音速以上の機動戦闘を行うネクストにピッタリな代物なのである。

 

≪VOB連結開始≫

 

 VOBが吊り下げられ、ホワイトグリントの背部へと運ばれる。ゆっくりと徐々に背部に近付いていき、そして連結音を響かせる。

 連結の完了である。

 

≪こちらオーシャン、到着した。最後のライフルを受け取ってくれ≫

 

 ネクスト用ライフル『051ANNR』を吊り下げた戦闘ヘリが滑走路に到着し、ネクスト用ライフルをホワイトグリントの右手に直接渡す。

 戦闘ヘリはホワイトグリントがネクスト用ライフルを掴んだことを確認してからネクスト用ライフルとの連結を解除。そのまま滑走路近くの着陸地点に着陸する。

 

≪ホワイトグリントの出撃準備完了。作業員は滑走路上から離れてください≫

 

 通信が作業員全員に届き、作業員たちは出撃の邪魔になるものを全て滑走路上から移動させる。

 滑走路上から邪魔なものはなくなり、出撃は万端だ。

 

≪ホワイトグリント出撃≫

 

 出撃時のVOBは速度が出過ぎるため、まずはホワイトグリントが自身のブースターを使って滑走路を飛び立つ。

 ホワイトグリントが滑走路から離れて滑空し始め、飛行形態へと変形する。

 

≪VOB点火開始≫

 

 その通信と共にVOBが点火。点火されたVOBの推進力は爆発的なものとなってホワイトグリントの飛行速度を一気に音速以上へと引き上げる。

 英雄は飛んでいく。

 滑走路から一瞬で離れ、味方の陣地を通り越したところでVOBの第一コジマ粒子タンクを投棄。加速は止まらない。

 

≪ホワイトグリント、作戦領域に接近。加速してターゲットに一気に接敵してください≫

 

 オペレーターが告げる。

 ホワイトグリント――レイヴンは告げられたことに従うようにして、更に機体を加速させる。数秒も経たずにホワイトグリントは作戦領域へと入った。

 既にホワイトグリントはマザーウィルがいる砂漠化した旧ピースシティに入り込み、VOBの第二コジマ粒子タンクを投棄。同時に分裂ミサイル『SALINE05』を発射。

 ミサイルとVOBで加速するホワイトグリントがマザーウィルに向かって空中を駆ける。

 

 レイヴン――死や悪病を予知する不吉な鳥。

 それが今、最強の実力とホワイトグリントという圧倒的な力を持ってマザーウィルへと向かう。

 




ホワイトグリント来たる。
次回はまさに地獄。
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