ACfA RAVEN LIFE   作:D-delta

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やっと更新できた……思いのほか長期連載になりそうです(;一_一)


CHAPTER5

 鳴り響く轟音。幾重にも重なる発射音は人の悲鳴と怒声を掻き消す。

 戦場は旧ピースシティからマザーウィルのカタパルト上へと移っており、ホワイトグリントに懐に入られている状況であった。

 そして懐に入られた今、マザーウィルは主砲、各種大型砲台、ミサイル砲台などの重要なダメージ源となる砲台は使えない。使おうものならカタパルト及び護衛部隊に被害を与えかねないのだ。

 

≪カタパルト上の護衛部隊と機関砲に頼るしかないというのか……こうまで接近されるとマザーウィルが無力になるとは、敵にしてやられた!≫

 

 味方に確実な被害を出してまで敵に避けられるかもしれない攻撃をする訳にはいかない。マザーウィルの司令官はそれをよく理解していた。故にマザーウィル本体は機関砲を撃つことしか出来ず、護衛部隊にほとんどを任せるしかなかった。

 だが、戦場と呼ぶべき場所は既に一方的な殺戮を行う場と化している。その様子はまさに地獄と呼ぶに相応しいだろう。

 

≪第三カタパルト、護衛部隊の損害率70%≫

 

 オペレーターが震えた声ながらも冷静さを辛うじて保って告げる。が、そう告げている間にも護衛部隊は減り続けている。

 

「当たれ、当たれよ!」

 

 トーマスがどれだけ遠くから援護を送ろうとも、護衛部隊がどれだけ弾幕を作りだそうとも、ホワイトグリントはその全ての攻撃を無意味にさせる。PAと装甲、音速を容易に超えた機動、リンクスの圧倒的な技量の前には足さえ止めることが出来ないのだ。

 

≪クソ! 俺たちの攻撃が全く当たら――≫

 

 第三カタパルト最後の護衛機から通信が途切れた。数分と保てず、抵抗虚しく全滅である。

 第三カタパルトの護衛部隊と機関砲はただの鉄塊と化して転がっていた。そしてそれら鉄塊たちの中に、ホワイトグリントは太陽の光に照らされて神々しく佇んでいる。

 

≪このたった数分で全滅!? そんな!≫

≪落ち着け、こっちにはまだ切り札がある。雇ったランカーを今すぐに出撃させろ。アリーナ最上位の連中ならあの化け物をどうにか出来るかもしれない≫

 

 今の不利な状況を打開するためにはアリーナ最上位のレイヴンに頼る他なかった。それがリンクス戦争の英雄が相手だとしても、もしかしたらというほんの少ししかない希望に賭けるしかない。

 

≪ランカー各員は出撃してください≫

 

 オペレーターの指示が飛ぶ。

 その指示に呼応したトップランカーの三機は、出撃を今か今かと待つように開かれるハッチの前に立っていた。

 

≪こちらトップエイト、出撃する。ホワイトグリントはこのトップエイトが頂く≫

≪ホワイトグリントを討ち取るのはこちらである。クレイモア、出撃開始≫

≪競争では勝てん、連携して対処するという頭を持て。我、槍児も馳せ参じる≫

 

 それぞれが出撃に乗り出すと、開かれたハッチからトップランカーたちが飛び出た。ハイエンドノーマルらしくブーストによる高機動で空中を駆け、早々に第三カタパルトの上に乗る。

 そしてトップランカーの三機とホワイトグリントは睨み合う。

 

「トップランカーか、助かる!」

 

 トーマスの視界にトップランカーたちの機体が映り込む。

 バズーカ、ミサイル、レーザーキャノン、高出力ブレードという強化人間らしい武装構成の機体――トップエイト。赤黒い中量二脚機に〝8〟のエンブレムを付けたその機体はどことなくトップのオーラを出している。

 マシンガンと高出力ブレードのみという極端な武装構成の軽量二脚機体――クレイモア。アリーナ二位という実績が軽量でもその後ろ姿をとても頼もしく見させている。

 そしてアリーナ三位の軽量級中量二脚機体――槍児。両腕のパイルバンカーはPAさえ貫く恐ろしい武装であり、アリーナ上位にまで上がってきた強さの証明でもある。

 

≪こちらトップエイト、マザーウィル各員に告ぐ。俺たちの戦いには手を出さず、自衛を優先しろ。以上だ≫

「待て待て、相手はホワイトグリントだぞ。いくらトップランカーでも三機だけじゃ無茶だ!」

 

 明らかに無茶とも思える通信内容にトーマスが割り込む。それもそのはず、ホワイトグリントは被弾をほとんどせず、たったの数分で第三カタパルトの戦力を全滅させたのだ。

 トップランカーの乗るハイエンドノーマル三機が戦力的に大きくても、圧倒的にそれ以上の戦力を誇るホワイトグリントでは比べるまでもなくその差は歴然である。

 

≪これぐらいの無茶を乗り越えられないでアリーナのトップは名乗れん≫

 

 トーマスの制止など聞かず、無茶を承知でトップランカーたちは睨み合った状態から一気に動き出す。同時にホワイトグリントも動き出す。

 残骸だらけの第三カタパルトをトップランカーたちとホワイトグリントがブースターを吹かして駆ける。

 レーザーキャノンの光が瞬き、マシンガンの弾幕がホワイトグリントに迫る。しかしホワイトグリントはQBを巧みに扱い、それらを一瞬で回避、反撃と言わんばかりに雨の如く分裂ミサイルをトップランカーたちの機体に降り注がせる。

 他のカタパルトからでもよく見える大きな爆発。第三カタパルトから黒煙が立ち上る。

 

≪クレイモアの反応ロスト! 通信が途切れました!≫

 

 マザーウィルのオペレーターがクレイモアの撃墜を告げる。その通りにクレイモアはミサイルの雨によって原形をなくすほど粉々になっていた。

 クレイモアが撃墜された中、撃墜を免れたのはトップエイトと槍児。その二機が黒煙の中から出て来る。

 

≪伝説は伊達ではないか≫

≪反撃でさえ殺しに来る。その名前が知れ渡っているだけはある≫

 

 黒煙から出てきた二機の内トップエイトは被弾しなかったが、槍児は左腕を武装諸とも破壊されていた。下手をすれば槍児もクレイモアのように撃墜されていただろう。

 

「クソ、トップランカーだからって無茶苦茶だ。俺たちが自衛したところで切り札のトップランカーが全滅したらそのまま俺たちも全滅なんだぞ……こうなったらトップランカー方のプライドを全部無視して援護するしかないな」

 

 トップランカーたちは自ら作り出した不利な状況の中で戦っている。そんな状況にトーマスの生存本能は警鐘を鳴らしていた。故にトーマスは生き残りたいがためにトップランカーたちのプライドなど全て無視して、ホワイトグリントを狙う。

 

「こちら第四カタパルトのトーマスだ! 援護を開始する!」

≪待て、トーマス! アイツらの戦場に干渉するには危険過ぎる!≫

「だったら誰がトップランカーの背中を守るんだよ! トップランカーっていう切り札がやられたらどの道俺たちは死ぬだけなんだぞ!」

 

 味方の制止を自らの怒鳴り声で振り切り、トーマスはトリガーを引いた。直後、垂直ミサイルが空に向かって放たれる。

 

≪余計なことを≫

≪だが、これで我らの負担は減る≫

 

 通信からの一報とレーダーに現れたミサイルの光点。

 確かに援護が入るのを確認したトップランカー二機はそれに応じた機動を取り始め、誤射されないようにホワイトグリントから離れていく。

 トップランカー二機が離れると、垂直ミサイルは絶好のタイミングで初期機動から追尾機動に移行してホワイトグリントに接触。見事に命中、爆発するが、PAという堅牢な第二の装甲を持つホワイトグリントには目立った損傷を与えられない。

 しかしホワイトグリントの動きは僅かながらに止まった。

 

「よし、ダメージは与えずとも邪魔は出来る」

≪それ以上干渉するな! こちらが狙われる……下手をすれば撃墜されるぞ!≫

 

 自らの援護が利いている。そう確信したトーマスは味方の制止など聞かず、トリガーに指を置いたまま援護のタイミングを見計らう。

 

≪余計な援護が来る以上、その流れに乗るしかない≫

≪この流れは我らにとって好機だ。邪険に扱うなよ、トップエイト≫

 

 時速400kmの高速戦闘の最中にトップランカーたちは頭を柔らかくし、トーマスの援護を戦術の中に組み込む。そして最大限有効活用するためにトップランカー二機は連携して動き始めた。

 

≪奴の援護は足止めになるだろう。俺が囮となる。槍児は敵の止まった瞬間に死角からコアを貫け≫

≪我、了承した≫

 

 通信でのやり取りを終えると、槍児は黒煙の中に身を隠す。もちろんただ身を隠した訳ではない。インサイドからECMメーカーを射出するという更なる保険を繰り出した。これでホワイトグリントのレーダーはしばらく潰れ、味方への捕捉は有視界に限られる。

 チャンスの訪れだ。

 

「そうだ、俺の援護を最大限活用しろ……! この場であの化け物に仕掛けられるのは切り札だけなんだから」

 

 第四カタパルトから見つめて告げ、トーマスはトリガーを押す瞬間を待つ。

 そしてこの訪れたチャンスを活かすためにトップエイトの攻撃が始まった。

 PAを容易く貫通する高出力のレーザーキャノン、PAの減衰には丁度良い低速高誘導のミサイル。その二種類の武装が一斉に放たれる。

 PAを通して装甲に損傷が入る以上、いくらホワイトグリントでもこの攻撃は無視出来ず、QBによる回避とライフルによる迎撃に出た。

 

≪英雄なのだ、これぐらいは避けてもらわねば興が冷める≫

 

 トップエイトの期待通り、予測通りにホワイトグリントは消費を最小限で攻撃を全て避けてみせる。しかもPAにすら被弾を許さない完璧な回避だ。

 だが、回避後の隙は十分にある。

 そこをトーマスは見逃さない。

 

「その隙をもらう!」

 

 武装を垂直ミサイルから腕部グレネードへ移行。トーマスは照準をホワイトグリントへと向けてトリガーを引いた。轟音と共にグレネードが放たれる。

 ホワイトグリントからすれば全く別方向からの攻撃だ。レーダーを潰されている現状での視界外、それも発射音や爆発音が重なっている状況ではトーマスの攻撃に反応など出来るはずがなく、ホワイトグリントは直撃した。

 もちろんPAによって損傷は軽微に抑えられるが、PA越しでも爆発による衝撃は伝わる。その衝撃がホワイトグリントの足を止めさせた。

 

≪多勢に無勢とはまさにこのことよ≫

 

 複数の攻撃でホワイトグリントの動きが止まった今がまさに好機。

 槍児は黒煙に隠れながらブーストで第三カタパルトの下を通り、ホワイトグリントの背後を取った。そのままパイルバンカーの鋭く尖った先端をホワイトグリントのコアに向けて時速400kmの高速機動で迫る。

 

≪これで終わりだ。ホワイトグリント≫

 

 槍児の声の後にパイルバンカーがPAを減衰及び貫通し、そのままホワイトグリントのコア背面に突き刺さる。

 正真正銘の直撃。確かに装甲を突き破っている。

 

≪英雄も老いたか≫

 

 コアに一撃必殺のパイルバンカーが直撃したという事実。撃破出来たという確信が戦場を漂い始める。

 パイルバンカーを引き抜き、槍児はその確信に浸っていた。

 しかし撃破には至れていない。

 

「まだ動く! 離れろ!」

 

 撃破したにはホワイトグリントのカメラの動き、輝きが止まっていない。それら違和感にいち早く気付いたトーマスが告げる。だが、既に遅かった。

 ホワイトグリントはQBを駆使したクイックターンで少しの間も置かずに槍児と向かい合い、両手に持つライフルを発砲した。

 絶え間ない発砲音が鳴り響き、槍児の機体が簡単に貫かれていく。

 

≪まだ動けたとは――≫

 

 槍児の機体が一瞬で蜂の巣にされると、遂には通信が途切れた。

 蜂の巣のまま槍児の機体は力尽きたようにカタパルト上に倒れ込む。

 

≪槍児、反応ロスト……後一機だけです≫

 

 トップランカーがまた一人撃墜された。

 オペレーターがそのことを恐怖に声を震わせながら告げる。

 

「死ねるか、死なせるか!」

≪俺だけでもホワイトグリントを討ち取ってみせる≫

 

 トーマスとトップエイトは再びトリガーを引いた。トーマス機からは腕部グレネードを放たれ、トップエイト機からはバズーカが放たれる。どちらとも精確な狙い。PAが減衰している今のホワイトグリントになら、装甲そのものに直撃させることが出来るだろう。

 しかし直撃させることが出来るチャンスとはいえ、攻撃が当たることはなかった。

 

「ダメだ、避けられた!」

≪なに!?≫

 

 ホワイトグリントはQBによって、トーマスとトップエイトの攻撃を避けた。精確な狙いだからこそ熟練したホワイトグリントにとっては回避しやすかったのだ。

 そして回避だけで終わるホワイトグリントではない。左手の突撃ライフルの先をトップエイトに向けている。

 

≪死ぬのか、トップランカーの俺が!≫

 

 ホワイトグリントの反撃が飛んでくる。連射性の高い突撃ライフルがトップエイトの機体に風穴を作っていく。

 

≪これが力の差だとでも――≫

 

 トップエイトからの通信が途切れた。機体は蜂の巣となっていき、各部パーツを破壊し尽され、最期には動くことのない屍と化す。見るからにそれは死んだ姿だ。

 

≪トップエイト……反応ロスト。トップランカー、全機撃墜。全滅しました≫

 

 状況を告げるオペレーターが声を震わせる。それを耳にする兵たちは自らの死を意識し始める。

 切り札を全滅させられた今、勝てる希望を抱き続けた司令官はホワイトグリントの恐怖に追いやられていた。

 

「臆したら確実に死ぬ! 殺す勢いで、生き残ることを最優先に……!」

 

 周りが士気を落としている中、トーマスは眉間にしわを寄せて強く心を持った。

 復讐心の怒りを心の燃料へと変え、子供の頃から変わらない生存本能に従い、生き残るために思考を動かす。

 

「俺は、死なないからな!」

 

 ホワイトグリントがここからいなくなるか、マザーウィルの部隊が全滅するか。そのどちらかになるまでこの戦場の地獄は続く。

 




一日1000文字くらい書ければなぁ…
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