唯我独尊な提督が着任しました。   作:きらりんぱ三上

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横須賀鎮守府に降り立った天災

「ここが・・・新しい俺の居場所か」

 

横須賀鎮守府目の前の並木道で佇み一言呟く男。

陸軍特殊歩兵科出身の自分がまさか海軍に移動とは笑えてしまう。

愛国心皆無、英雄的自死もできない性格故、軍の上司からは嫌われ部下からは除け者扱いされた末路がここか。

そして、ここも元提督とやらに見捨てられてしまった場所・・・という説明は聞いたが、一体どういう事なのかは教えてもらわなかった。

 

「むっ」

 

鎮守府の入口である扉の目の前にセーラー服を着た少女が此方を見ていた。

どこか儚げで、幸薄そうな彼女の近くに歩み寄ると彼女は笑顔で男に脇を閉めて肘を突き出し掌を見せぬ敬礼をした。

海軍式敬礼なのだろう、と思いつつも男も陸軍出身だからか陸軍式敬礼を見せる。

少し物怖じしながら口を開く。

 

「初めまして、陸型四番艦電です。よろしくお願いしますです。」

「・・・」

 

無言で体の隅々まで舐めるように見る男に不安を抱く。

敬礼は崩さないが少しおどおどしてきている様子を見続ける男は突然、意味が不明な行動を取る。

 

「はわっ!?」

「ちぃっ白か、俺の予想では淡いピンクだとグホォ!?」

 

ピラリとスカートを捲り残念がる男の顔に動揺し膝蹴りを電は繰り出した。

 

「はわわわわ!?突然何をするのです!?」

「ッーー中々良い蹴りだな褒めてやろう」

「何様なのです!?」

 

 

 

 

執務室へ案内され、周りを見渡すと備品と思わしき物が無造作にダンボールへ詰め込まれ部屋の端へと追いやられていた。

 

「ふむ。建物が大きい割になぜこうも物が少ない?」

「前の司令官さんも着任してからすぐにどっかに行ってしまったので資材も備品も殆ど何もないのです。戦果を上げると色々支給される様なのです。」

 

ですますなのです口調が多い少女を横目に色々と備品を確認するがほぼ、何も無い。

そして何をすればいいのかが分からない。

 

「そういえばお前以外は誰も居ないのか?」

「なのです、建造も出撃もしていないので私以外は誰も居ないのですよ」

 

建造・・・出撃・・・さっぱり分からない。

とりあえず本部から受け取った極秘機密書を執務椅子に腰掛け机に足を乗せながら読む。

 

「司令官さん・・・お行儀悪いですよ・・・」

「お前も寛げ、規律など知ったことか。守らねばならん時だけしゃんとすればな。」

「はぁ・・・」

 

そう言うと電はちょこんと床に座り物憂げな顔をする。

 

「ふむ、艦娘・・・とやらがお前らの正体か。不思議な物だな」

「なのです、前の司令官さんは私の事を怖がっていたのです」

 

ふむ。外見は少女とはいえ艤装なる物を装備するとその名の艦程の力を得られると。

出撃や遠征を繰り返すとそれが経験となり力となる故、艦以上の力を得られる場合もあるのか。

チラリと電を見ると不思議そうに電も此方を見てくる。

 

「・・・ただの少女にしか見えんが、これに書いてあると言う事はそうなのだろうな」

「?」

 

まったく面白い物が開発されたもんだ。

深海棲艦に対抗する手段という事か、とどのつまり兵器。

最近では人間の扱う武器が意味のない事を示している故艦娘の出番ってわけだな。

 

「・・・」

 

ペラリと次の項目を見ると、建造と開発に付いて書いてある。

建造とはその名の通り、資材を消費し新しい艦娘を得ることが出来ると。

資材の大小によって駆逐艦や戦艦や空母その他の偏りがある為に良く考えてから建造せよ・・・か。

そして次に開発。

艦娘に装着させる装備を作成する事により、艦娘が強くなる事もある、か。

こちらも資材投入大小によって偏りが見られるため同上。

 

「よーし分かった。とりあえず電よ」

「はい?」

「建造するに当たってお前は最初に何を建造すればいいと思う?戦艦か?駆逐艦か?空母か?」

 

電はうーんと口元に手を当て考えると少し難しい顔を覗かせる。

 

「最初は資材も少ないので駆逐艦を建造したほうがいいかもです。」

「了解、んで建造するにはどうすればいいんだ?」

「妖精さんに資材の数を指定してお願いするのです、」

「妖精?何を言ってるんだお前は」

「むぅ、信じてませんね?妖精さん!!出てきてくださいなのです!」

「ぬう・・・」

 

するとひょこりとどこからか手のひらに乗るんじゃないかと思わしき女の子がどこからか現れしたり顔で敬礼を此方に向ける。

余りの驚きに言葉を亡くし、動揺を隠せずにいる。

 

「不思議な物だな。夢を見ているようだ」

 

妖精を摘みまじまじと見る。

女子を極限に小さくした様な容姿で可愛らしい、愛玩動物の様だ。

摘まれた妖精は少し困った顔をしているが。

 

「ふ~む、どれ。ほうほう」

「・・・!?・・・!・・・!」

 

下から覗こうとすると必死にスカートの中を隠そうともがく。非常に可愛らしい。

 

「減るもんじゃないんだから少し位はうっ・・・」

「やめてくださいなのです!!」

 

必死に隠そうとする中身を見ようと指でスカートを摘むと真横からまたも電の膝蹴りが顔に炸裂する。

的確に顎を狙い脳を揺らし一時的に戦闘不能に貶める蹴りは非常に痛烈な物だ。

 

「くっ・・・男ならば誰だって人形のパンツを覗く物だ、さらにそれが愛らしい生き物だったらな。誰だってそうする、俺だってそうする」

「何を言ってるのです!?少しは自重してくださいなのです!!」

 

 

 

 

顔を腫らし、少しむくれた顔をしながらこれからどうしていくかを決める。

 

「とりあえず建造だな建造。資材全部投入でもしてみるか」

「私の話聞いてました!?資材少ないから駆逐艦にしましょうって言いませんでしたっけ!?」

「資材が多い程強い艦娘が建造されるんだろ?電も楽が出来てこの鎮守府にも楽が出来て一石二鳥じゃないか」

「資材が無くなると出撃できなくなるのですよ!?補給もままならないと何もできないのです!」

「ふむ・・・」

 

しばし考え電の言う通りにしてみるかと思いつつ妖精さんとやらに一度聞いてみたほうがいいかもしれない。

しかし妖精さんは言葉を発せない様で此方としては何かしらの会話補助が必要な訳で、白い紙とマジックペンを手渡す事にする。

 

「いいか電、誰が言おうと最初の建造は妖精さんに任せることにしよう。いいな?文句は言うなよ?」

「・・・嫌な予感がしますがいいでしょう、司令官さんよりもよっぽど信頼できるのです」

 

非常に遺憾である、だがしかし。着任してからまだ初日だ。

電からしてみればどちらが信用できるかなんて言うのは明白である。

 

「妖精さんや妖精さん、新しく建造される資材投入の数値を教えてくれ」

「妖精さん!ここは駆逐艦を作るべきです!お願いします!」

 

これには文句はない。

全てを決めるのは妖精さんであり電の言うことはただの願いである。

 

「・・・!」

 

親指をグッと立て力強くマジックペンを振るいに振るい、描かれた資材の数値。

電に至っては神頼みをするかの如く両手を合わせ目を力強く瞑る。

 

そして書き終えた妖精は満足したかのように見せつける。

 

400 100 600 30

 

左から燃料弾薬銅材ボーキサイトの順である。

 

「はわぁあ!?」

「ふむ、では早速その資材での建造を宜しく頼むぞ」

「ちょっと待ってくださいなのです!!」

「なんだ?不服か?」

「不服以外の何物でもないのです!!」

「何が不服だ?言ってみろ」

「いいですか!?資材を多く投入したからと言って協力な艦が建造されるとは限らないのですよ!?下手すれば駆逐艦なのです!ここは慎重に資材に余裕がある時に多く回すのが一番だと思うのです!!」

「ふむ、一理あるな。さすがは我が第一秘書艦。だが・・・断る」

 

妖精に行けと指を指し敬礼すると妖精もまた敬礼した後スタコラとどこかへ走っていった。

隣で電があわあわおどおどと何やら慌てている。

 

「よっこらしょっと、そうだ電。茶淹れてくおわぁ」

「何様なのです!?」

 

椅子に腰を掛け足を机の上に乗せ、電に茶を淹れるよう指示すると両手で強く自分の体を押し出したせいで床に倒れてしまった。

 

「俺は提督だ、文句があるならかかってこい」

 

ゆっくりと立ち上がり服に付いた埃を叩き払う。

そして戦闘態勢を取り電に拳を向ける。

 

「やってやるです!」

 

電も戦闘態勢を取り此方と同様拳を向かせ互いに間合いを取る。

たかが小娘に本気を出す訳もないが乗ってしまった以上やるしかない。

 

「さぁどこからでもこい」

「なのです!!」

 

調子に乗って腕を大きく広げ挑発すると一瞬の隙を狙って内側に潜られ鳩尾を拳で的確な位置で当ててくる。

 

「なのです!!なのです!!」

「ちょっお前どこからそんな力がうおっ」

 

マウントを取られ顔面に連打する電。

何とかマウント状態を回避しようと本気の力を込め退かせようとするがビクともしない。

 

「やめっまじでっこれ危ない。危なっ」

「降参するのです!!電の本気を見るのです!!」

 

ガツンガツンと少女の力とは思えない程の力で顔面を殴打され少しずつ意識が遠くなっていく。

大の男が中学生にも見えぬ少女にグズグズにされる様はさぞ滑稽だろう。

意識が遠くなっていく中そんな事を思いながら気絶しそうになる瞬間、電が誰かの手によって制止された。

 

「何をやっているんですか!?落ち着いてください!!」

「離すのです!この男はいずれこの鎮守府を破滅に追いやるのです!今の内に出る杭は打っておくのです!!」

「・・・?」

 

完全に気を落とす。

そして目覚をめるは救護室の中、目を開き横を向くと見慣れぬ女性が椅子に座って横に置いてあるテレビを眺めていた。

 

「・・・誰だ?」

「あっ初めまして提督!巡洋戦艦榛名と申します!よろしくお願いします!!」

 

自分に気が付いた後、驚いた顔をする。

そして椅子から立ち上がり敬礼をこちらに向ける。

 

「・・・俺の上着は何処にある?俺が電にのされた時に着ていただろう?」

「少々お待ちください!」

 

スタコラと出ていき数分後、小走りで戻って来る榛名。

腕には自分の上着が掛けられ少し息切れをしている。

 

「わざわざすまないな」

「いえ、榛名は大丈夫です!」

 

上着を受け取り、胸ポケットをまさぐりお目当ての物を見つける。

嗜好品の一つ煙草である。

 

「久々に飲むか。榛名、電と一緒に外に行く準備をしておけ」

「え?でも・・・それだと鎮守府がもぬけの殻になりますよ?」

「いいんだよ、最初から居ないようなモンだしな。一日くらいどうとなる」

 

ライターと煙草を手に取り火を付けて一服。

上着を着用し財布の中身を確認して、立ち上がる。

 

「俺は先に鎮守府の前に居るから、艦娘と気づかれないように着替えておくように」

「分かりました」

 

さて、自分の着任祝いと電と榛名の歓迎会でもしてやろう。自分の金だがそれなりに蓄えはある。

転属手当もこれだけあれば子娘二人くらいどうとでもなる。余裕があれば帰りに風俗でも行こう。

 

 

 

 

 

 

 

「提督さん♪おかわりよろしいですか?」

「あ、あぁ・・・まだ食べるのか?そろそろ限界だろう?」

「いいえ!榛名はこれしきの事、まだまだいけます!!すいませーん!!」

 

自分も店員も驚いている。

何せたった三人なのに大人数の宴会の如しの食べ終わった飯の皿。

 

「それではえーっと小龍包とほうれん草のお浸し、あとポテトフライ大盛り!それと若鶏のからあげ十人前と・・・もつ鍋も!ついでに手羽先唐揚げとお造り全種を5人前ずつ!あっ!梅クラゲとたこわさびとやみつききゅうりも5人前ずつ!最後に生ビールもピッチャーでおかわりください!!電ちゃんもそれでいいよね??」

「なのです!!」

 

おい誰だこの胃袋ブラックホールを二人連れてきた馬鹿は。

そろそろ財布の中身の限界が来るのではないだろうか。

 

「榛名!気合いれて食べます!!」

 

ふざけるなこんちくしょう。

と言いたいところだがもりもりパクパクと幸せそうに食べる榛名を見ていると怒りが消えてくる。

自分は少し高めの焼酎をぬるめでお猪口を使い飲んでいるのだが電と榛名はすでに生ビールピッチャーを5杯消費している。

 

「提督も太っ腹なのです、全部奢りだなんて凄くかっこいいのです!」

「お、おう」

「凄く素敵です!」

「あぁ・・・」

 

誰か助けてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お会計22万5千6百円になります」

「まじか」

「ごちそうさまです提督♪」

「ごちそうさまなのです」

 

財布を確認すると当然22万なんて入りきらないわけで。

泣く泣くポケットからくしゃくしゃになった転属手当の袋を取り出し支払う。

 

「転属手当が1000円しか残らなかったか・・・まぁいいか」

 

腕時計を見ると時間はまだ10時、てっぺんまではまだまだである。

 

「お前らは先に帰っておけ。俺は少し稼いでくる」

「どこへいくのです?」

「雀荘だ」

「やめたほうがいいんじゃないんですかぁ?」

 

糞、この小学生ニヤニヤと笑いおって。

 

「・・・そのニヤケ顔。俺が帰ってきてからも出来ると思うなよ」

「はいはーいそれじゃ頑張ってきてくださいね~榛名さん帰りましょ~」

「提督さん、お気をつけて!」

 

二人は少し千鳥足で仲良く帰っていく。

そしてもうひとりは逆の方向へ歩いていく。

 

 

 

少し離れ、お目当ての建物に着いた。

ドアを開けると一斉に客の視線を浴びせられる。

ここは初めてだがどこでもそれは変わらない。

 

「いらっしゃい」

 

無愛想な主人が舐めるように見てくる。

 

「・・・どっか空いてるかい。」

「ああちょうどあそこが空いてるよ」

 

主人が指をさす方向に目をやると獲物を捕らえたかの様な目をした三人が座っていた。

気にする事なく三人組に歩みを進め椅子に手をかける。

 

「それじゃ失礼するよ」

「お兄さんここじゃ見ない顔だね?種はもってるんかい?」

「あぁ、もってるさ。」

 

先ほどの居酒屋の長いレシートをいれパンパンになった財布を見せる。

 

「ほお、じゃあ点10で構わないな??」

「構わない」

「へっへっへ・・・そんじゃ始めようとするかい」

 

長い夜が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

「ふあぁ・・・ちょっと寝坊しちゃったのです」

 

時刻は朝八時半。

何時もの電ならとっくに起きている時間である。

 

「司令官はきっとボロボロになって帰ってきてるんでしょう?見ものなのです」

 

口を抑えるが抑えきれなくすこし笑っている電。

執務室のドアを開けるのが楽しみで仕方がなくすこし早足になっていく。

 

「いけないいけない、笑ってしまっては司令官さんに失礼なのです」

 

執務室のドアの前でコホンと咳払いし態勢を整える。

そしてドアノブに手を掛け開くとそこにはボロボロになった提督、ではなく満足気な顔をした提督が机に足を乗せてすわっていた。

 

「・・・あれ?」

「遅いぞ電、起床時刻は8時だ。とっくに時間は過ぎているぞ」

「おかしいのです、司令官さんが生きているのです。どういうことですか」

「俺が生きてちゃいけないのか、まぁいい。電、小遣いをやろう」

 

パンパンになった財布をを取り出しそこから投げ出されるは一万円札。

ハラリと電の足元に落ちた。

 

「・・・」

「なに、気にするな。分け与えるのは提督の義務だ。感謝しろうぉおっ」

 

正面からの電の膝蹴りが提督の顔面を抉る。

一方その頃提督が赴いた雀荘は死屍累々、手持ちが無くなったになった男達がそこにいた。

 

「上がった役が全部役満って・・・・嘘だろ畜生・・・・」

「5回も上がられたせいですっからかんだ・・・・」

 

伝説の始まり・・・なのか??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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