僕と、君と、歩く道   作:小麦 こな

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第21話

僕からしたら大昔に憲法が公布された日で特に何もありがたみを得ることが無かった11月3日(月)。

だけど、僕は三日前にこの日が文化の日よりも大事な日であることを知った。

それは、僕の中学校のクラスメイトである大和さんの誕生日。

 

女の子にどんなプレゼントを送れば喜んでくれるかなんてノウハウを全く持っていない僕は、ずっと悩みの種に水を撒いていたけど、結局芽が出ることは無かった。

 

もちろんネットでも調べた。「女の子 誕生日 プレゼント」と打ち込んで色々見てみたが、どこのサイトもネックレスやらピアスが上位に入っていた。

あまり大和さんがネックレスとかピアスをつけるイメージが湧かない。と言うか大和さんがネックレスやピアスをつけるような性格ではないような気がする。

 

 

「……と言う訳なんだ。桃谷」

「知るか!朝早くに惚気電話してくんな!」

 

なので当日になって最終手段に出ることしか出来なかった。

ただ、桃谷に電話して良かったかもしれない。

 

「例えばだけどよ。お前が大和からプレゼントを貰ったらどう思うよ」

「そりゃ、嬉しいよ。僕の為に考えてくれたって気持ちだけでも嬉しいもん」

「もう答え、出てんじゃねーか」

 

肥料を入れてみると、すぐに種からぴょこっと芽が出たんだ。

 

 

 

 

その日の夕方、僕はグレーのパーカーにジーンズと言う女の子にプレゼントをあげるような服装ではないラフな格好で大和さんの家に向かった。

グレーのパーカーには「go ahead」って書いてあるけど、中学生の僕には読めないし辞書で調べようとも思わない。だけど何故かお気に入りだったりする。

 

僕はお昼には楽器店に行っていて、目的の物を貰って来た。これを僕は大和さんに渡したいなって思ったんだ。誕生日にプレゼントするようなものではないけど、僕のまっすぐな気持ちが届くと思ったから。

 

 

ピンポーンと無機質な音が僕の手から振動として伝わってくる。振動は手から身体へと伝わり背筋がピンとなる。

いつ鳴らしても大和さんの家のインターホンは緊張する。

 

「はーい……あら!聡士君!やっぱり来たのね、待ってたわよ」

「お、お邪魔します。いつもすみません」

「麻弥は部屋にいるから襲っても良いわよ!」

「部屋にはお邪魔しますけど、襲いませんから……」

 

毎回のこんなくだり。本当にこの人が大和さんの母親なのだろうかって疑問に思うようになってもう半年ぐらい経つ。

でも、髪質から髪形、それに目元に鼻の形がそっくりなんだよな。大和さんのお父さんはプロのアーティスト専属スタッフらしく、日々全国を回っているらしいので普段家にいないらしい。

 

「うわあ!?どうして山手君がいるんですか~」

「あ、こんにちは。大和さん」

 

運悪く廊下でばったりと大和さんに遭遇した。せっかくサプライズで驚かせようと思ったのに。大和さんは緑色のワンピースに水色のカーディガンを羽織っていて、家に居るのにおしゃれだなって思った。

 

 

「まずはお誕生日おめでとう、大和さん」

「え、ええ!どうして今日がジブンの誕生日だって知っているんですか?」

「僕の情報網は広いんだ」

「そ、そうなんですか?あ、はは……」

 

大和さんの部屋にお邪魔して来た理由を単刀直入に言った。情報ソースをばらすわけにはいかないから適当に誤魔化す。何か大和さんのセリフが棒読みっぽいけど本題はここから。

 

「プレゼントっぽくないけど、大和さんに渡したいものがあるんだ」

「ジブンに……ですか?」

 

女の子座りをしている大和さんが頬を赤らめ、目をうるうるさせながら見てくる。何だかすごく色っぽくて、どうにかなりそうだ。

かばんからA4のクリアファイルを出し、そこに挟まっていた紙を大和さんに渡した。

 

僕はこの時、大和さんの表情を見ていなかったから気づかなかったんだ。

大和さんの表情が一変したことに。

 

「これを見てよ大和さん!12月の上旬にスタジオミュージシャンの募集を複数の事務所がするんだって。デモテープを送るんだけどね」

「……てください

「ハロウィン祭でも成功したし、いけるよ大和さん!それともう一つ渡したいものが……大和さん?」

「もうやめてください!!」

「え、ど、どうしたの?大和さん」

「もしかしてハロウィン祭で一緒に演奏しようってジブンを誘ってくれたのも、募集を促すためだったんですか……?」

「う、うん……。大和さんのドラムをみんなに聞かせてあげたくて。そして成功したら大和さんの自信にもなるって思って」

「余計なお世話ですよっ!もうあんな体験したくないんです!」

「あんな体験って……」

「もうっ!早く出て行ってください!」

 

ぱちん、と平手打ちをされて僕は大和さんを怒らせてしまったと言う事実を突きつけられた。頭の中が訳が分からなくなってしまい僕の目からは一筋の涙が伝った。

僕はかばんを持って階段を降りる。降りると大和さんのお母さんが心配そうに僕を見つめていた。

 

「ごめんなさい。大和さんを怒らせてしまいました」

「……何かあったのね。話を聞かせてくれる?」

 

 

 

 

大和さんのお母さんに連れられて、近所のカフェチェーン店に入った。「好きなの、頼んでも良いから」って言われたが、今の僕は何も喉が通らない気がしたから店には悪いけど水を貰った。

 

「……そっか。確か聡士君がお盆の時期、お土産を持って来てくれた時に私が話した事、覚えてる?」

「……あ!ある出来事がきっかけで大和さんが元気なかったって」

「そうなの。その出来事って聡士君が持ってきてくれた募集要項なの。去年、麻弥は同じ時期にデモテープを送ったの」

 

そんな事実、初めて聞いた。僕が意気揚々と出した募集要項を去年チャレンジしているなんて。

 

「そ、それで……結果は?」

「ダメだったの。すべて一次審査で落ちちゃったみたい。まだそれだけなら来年も頑張ろう、って思ったと思うけど」

「何かあったんですか?」

「麻弥はアドバイスが欲しくて担当者に電話したのよ。けど『惹きつけられる音が無かった。率直に言えば下手だ』って言われたみたいなの」

 

僕の持っていたコップが震える。ひどすぎるよ。

アドバイスが欲しいって聞いているのに何も改善点を言ってくれないなんて。

 

だけど、大和さんの過去も知らずに嬉しそうな顔で募集要項の紙を渡した僕も、その担当者と同じくらいひどい事をしたのだ。

僕が下を向いて唇を噛んでいると、「ねぇ」と声がしたから顔を上げる。

 

「聡士君。日進月歩って言う言葉、知ってる?」

「言葉ぐらいしか知らなくて。意味までは分かりません」

「毎日進むことを続ければ一か月後には月まで届く!って覚えたわ。一日一日の進歩が大きな成果を生むって言う意味ね」

「はぁ」

「今の麻弥は歩くのを辞めてしまっているの。夢は諦めきれてないけど歩けないの。だから聡士君が支えてあげて欲しいなっておばさんは思ってるよ」

「僕にそんな事、出来ませんよ」

「いや、出来るわ。だって日進月歩を体現している聡士君なら、ね?」

 

 

僕は砂に埋もれきっていて見えなくなっていた宝石を拾い上げたような気持ちになった。

 

僕と大和さんは歩く道が違う。僕は一般人で大和さんはアーティスト。

だけど、今なら寄り添って歩ける。そしたら手伝えることもある。

 

「聞きたいことがあるんですけど、良いですか?」

「もちろん!何かしら?」

「今日、僕が大和さんに誕生日を祝いに来るって大和さんに伝えましたよね?」

「あら?お見通し?」

「今日の大和さん、家に居たわりにはおしゃれでしたから。今日は本当にすみませんでした」

 

今日は最低な一日だけど、明日は今日より良い日にする。

そのために僕は日記を書いているんだろう?

 

罪悪感で見えなくなっていたキラキラと輝いた自分の意思(宝石)を拾い上げた。

 

 




@komugikonana

次話は1月9日(水)の22:00に投稿予定です。

新しくこの小説をお気に入りに登録してくれた方々、ありがとうございます!
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麻弥ちゃんの誕生日回をまさかの展開に持って行ってしまいましたね……。
次話、聡士君はある行動に移します。果たして麻弥ちゃんの心に響くのか!?
お楽しみに!

感想も随時募集しております。どんどん書き込んでくださいね。

では、次話までまったり待ってあげてください。
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