「久しぶり、だね。大和さん」
僕は君に伝えたいことなんて、いっぱいある。
一次選考に受かったんだね。やっぱり大和さんは凄いね
僕の作ったお守り、まだ中身は見てないかな
野菜スティックパーティは僕の家でやる?それとも大和さんの家でやる?
本当にケガしてない?きつく押しちゃってごめんね
……ずっとそばにいれなくて、一人にしてごめんね
さっと思い浮かべただけでこんなにも伝えたいことがあるのに、どうしてこんな抽象的すぎる言葉を選んだんだろうか。
君は一瞬信じられない事が起きたような顔になって、その後は顔がくしゃくしゃになってぽろぽろと涙を流していた。
「ここにいたら私邪魔よね?先に家に帰っておくから聡士君、麻弥の事よろしくね?」
沙弥さんはすっと立って病室を出て行った。
ぐすっ、ぐすっ、ひっく、ひっく、と感情を抑えきれない君の嗚咽だけが病室に響く。
……また、君を悲しませてしまったね。
お祭りの時にもう悲しませないって決めたのに。
「山手君っ!」
「え!?大和さん!?ちょ、ちょっと待って!いたたたた!」
やっぱり親子って似るのかもしれない。抱き着いてくるのも、僕が痛める箇所も一緒なんだから。
違う点と言えば、僕も優しく大和さんの背中に手を回したことと、泣きながら抱き着いて来たことぐらい。
「山手君ですよね!生きてるんですよね!」
「うん。僕は生きてるよ」
「心配したんですよ!二週間もずっと目を覚まさないでいたんですよ!」
「うん」
「山手君がずっと目覚めなくて……。眠っている君にそばにいて欲しいとか、一歩踏み出してくださいだとか言ってしまって、ジブン……」
「ごめんね、大和さん。僕も君との約束を守れなくて。大事な時に一人にしちゃって」
「怖かったんですよ!君がいなくなって、もう会えなくなっちゃうんじゃないかって……山手君が死んじゃうんじゃないかって!ううぅ」
こんなに心配させてしまって男としてダメだなって思う反面、僕の好きな人がこんなにも僕の存在を肯定してくれてて嬉しかった。
だからかな。僕もいつからか分からないけど、涙が溢れてこぼれているんだ。
「ですが、山手君はずっとそばにいてくれました」
「え?僕、何も出来なかったよ?」
「そんな事ないです。だってほら、見てくださいよ」
大和さんは僕から離れて左ポケットからあれを取り出した。
それは、僕が作った緑色の拙いお守り。ずっとそばに置いてくれてたんだ。
「このお守りをぎゅっと握っていると山手君と手を繋いでいるような、そんな感じがするんです。不思議ですよね?」
「お守りの中身、大和さんはもう見た?」
「はい。泣いている時に助けてもらえました!ですが、山手君が目覚めない時に『たとえ僕が星になったとしても、ずっと大和さんのそばにいるよ』と言う言葉は心に刺さりました」
「本当だね。シャレにならないや」
「本当ですよ。……ですが」
大和さんは涙で目を赤くさせていたけど、僕の目を見て嬉しそうな顔をした。
僕はやっぱり今の大和さんが好き。メガネを外している時のギャップも良いけど、照れくさそうに笑う君の顔が世界で一番好きなんだ。
「いつもすぐ近くで山手君を感じられました。それに今日、芸能事務所の面接に受かったんです!これでスタジオミュージシャンになれるんですよ!」
「え……大和さん、それって……」
僕の耳には大和さんがスタジオミュージシャンになれるっていう風に聞こえた。それって大和さんの夢が叶ったという事だよね!?
僕は痛む体を無視してもう一度大和さんを抱きしめる。
「やったぁあ!おめでとう!大和さん!」
「はい!ありがとうございます!」
他人の事なのに自分の事のように喜べるのは、僕たち人間に与えられた最高の功名なんだと思う。
だって、人間は支え合って生きていくんだ。歩く道は人それぞれ違うけど、専用車両なんかじゃない。誰でも介入できるんだ。一緒に並走できるんだ。
「あ、じゃあこれはもういらないかな?」
僕は布団の中に隠していたものを取り出す。さっきクラスのみんなにわざわざ来てもらって書いてもらったもの。
大和さんは「えっ?な、何かあるんですか?」ってあたふたしていた。
「これを見て頑張ってもらおうって思って事故にあったあの日、コンビニで買ったんだ」
「これって……」
僕が用意していたのは寄せ書き。寄せ書きの色紙でオシャレな物がFriendlyマートに置いてあるって報道番組のエンタメでやっていたんだ。
本当は大和さんの最終面接前日に渡そうって思っていたけど、寝坊してしまったからその計画は息でふっと吹いたほこりのように消えてしまったけどね。
「山手君って他人の事を考えすぎですよ?もっと自分の事もやらないといけませんよ?」
「大丈夫、大和さん。ちゃんと僕の夢も叶ってるから」
「そうなんですか?ですが、ありがとうございます!ジブン、こんな寄せ書きをいただくのは人生初なので嬉しいですっ!」
僕の夢……。それはもう歩き出しているよ。大和さんにも伝える機会があったら伝えたいな。びっくりするかな?君に出会って見つけた道なんだよ?
「クリスマスは明日なのに、ジブンは今日たくさんのプレゼントを貰いました」
「事務所の合格と僕の渡した寄せ書きの事?」
「それもありますけど」
他に今日は何か良いことが大和さんにはあったのかな。と言うか今日はクリスマスイブなんだ。正直今まで意識していなかったから忘れてた。
でも、すぐ後に意識し始める僕がいたんだ。
「今日、山手君が意識を取り戻したこと。それが何より大きなクリスマスプレゼントなんです」
「大和さん……」
心臓が喉元にあるんじゃないかって思えるくらいにドキッとした。だけどその衝撃はとても心地よくて、程よく柔らかいものに触れるような感じで気持ちが良い。
「……今まで寂しかったんですよ?山手君」
大和さんは少し体重を僕の肩に預けてきた。僕はどうすれば正解なのか分からなくてちょっとぎこちなくなってしまった。
多分大和さんにもばれた。だってその証拠に大和さんがじーっと僕の方を見るんだから。
そ、そんなに近くで見つめられたら。僕の目線は大和さんの麗しい唇に目が行ってしまう。
「本当はダメですよ?ですが……や、山手君なら……良い、ですから」
「えっ!?」
大和さんは僕の方を向いて、それからゆっくりと目を閉じた。僕の心臓にちくっと刺した針は全身に降りかかって来た。
恋の針は、ちくっとするけどその痛みが人を恋しくさせるもの。
「ん……」
大和さんの唇にそっと触れた時、全身がそわっとしたけどつながった一部分は温かく心地がいい。多分このそわっとするけど一部分だけは心地が良い、離したくないと言うギャップが、キスしたいと言う欲求を生み出すんだろう。
「ぅんん……」
粘っこい、だけどしつこくない熱いキスをして僕たちは離れた。時間にして10秒も経ってないと思うけど、1秒1秒を噛みしめたから長く感じた。
お互いとっても赤い顔だけど、クリスマスイブなんだから赤の方が似合うよね。
「メリークリスマス、大和さん」
「メリークリスマス、ですね。山手君」
@komugikonana
次話は1月30日(水)の22:00に投稿予定です。
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~次回予告~
新学期初登校。冒頭は1話と対比に!?
今まで大事にしていた物、僕は捨てるよ。だってそれが正解だから。
~お知らせ~
「僕と、君と、歩く道」が残すところあと3話となりました。最後に大きな仕掛けを入れておいたので最後の最後に、「まじか~」となってくれると作者としては嬉しいです。
では、次話までまったり待ってあげてください。