僕と、君と、歩く道   作:小麦 こな

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第5話

 

テレビの天気予報で梅雨前線が停滞して今週も天気は優れないと毎日毎日同じような内容を繰り返す6月9日(月)。

天気予報が言うには晴れ間は今日までと言う早速の矛盾発言にうんざりしながらイチゴジャムを塗った食パンを咀嚼する。今日は念のため折り畳みの傘をカバンに入れておこうと思いながらニュースを見る。

 

僕ははっきりとニュースなんて聞いていないけど、今日の地方枠トップニュースは車のドライバーのミスによる物損事故だった。

まだ僕は車を乗ったことが無いからアクセルとブレーキの踏み間違いなんてするものなのか分からないが、いきなり車がトップスピードでぶつかってきたらたまらないと他人事のように考えていたんだ。だって僕たちの街は高齢者が少ないから。

 

僕はその後服を着替えに二階へと上がったから知らないけど、そのニュースで若年層もよくアクセルとブレーキを踏み間違える傾向にあるってどこかの大学の偉い教授が言っていたらしい。

 

 

僕は登校する準備を終えて家のドアを開けると、玄関付近の電柱に背中を預けている大和さんがいた。

僕たちは朝の八時に集合して一緒に登校するようになったんだ。たしか、楽器店やファミレスで食事した日に僕と大和さんは連絡先を交換して、その日辺りに。

 

ちなみに集合を決めた最初の方に、母親が大和さんを見つけて僕にどういう関係かを朝っぱらからしつこく聞いて来た時もあった。最近はニタニタしながら僕の方を見るだけなんだけど、なんだか腹が立つ。

 

 

僕は大和さんに「おまたせ」と一言断りを入れて一緒に登校を始める。夏服になって薄着な大和さんと歩く僕は、胸をドキドキさせながら歩いていた。

まるで、レアなカードを手に入れたかのような高揚感。

 

 

 

僕たちは他愛もない会話をしながら学校に着いて、少し桃谷と雑談していると担任の先生がやって来て配布物を配る。

 

どうやらこの前行われた中間テストの結果が書かれた紙らしく、右下にはしっかりハンコを押す場所がある。この紙を「成績ノート」って言う訳の分からないノートに貼って親の一言メッセージとハンコを押して提出しなくちゃいけない。

 

僕は先生から成績の書いてある紙を受け取った。

そこには、前の試験から一つだけ順位を上げた僕の成績がこじんまりと書いてあった。

 

 

 

一時間目から移動教室の僕たちはみんな理科の教科書とノートを持ってぞろぞろと出て行く中、僕と大和さんはみんなが出て行くのを待っている。

理由としては、今日僕たちは日直なんだ。教室の鍵を閉めたり学級日誌を書いたりするあの日直。まだ大和さんとペアで良かったと思う。

 

「では、ジブンたちも行きましょうか」

「うん、そうだね」

 

教室の鍵を閉めて僕たちは理科室に向かった。

途中の渡り廊下に差し掛かった時、僕はまるで、北半球から南半球へ一気に跳んだかのような勢いで急に視界が反転したんだ。

 

「うわっ!?」

 

僕はダイナミックにこけてしまった。なぜだか僕の通った箇所だけ水で濡れていて滑ってしまったらしい。教科書と筆箱を手に持っていた僕は受け身が取れず頭からがっつりとぶつけてしまったんだ。

 

「大丈夫ですか!?山手君」

「う……ちょっと頭が痛むかも……僕は保健室に行ってみるから大和さんは先に」

「ですが……」

「ちょっと遅れるって先生に伝えておいて」

「わ、分かりました」

 

大和さんは小走りで理科室の方に向かったのを見届けて僕は鈍痛のする頭部を抱えながら保健室の方に行った。

 

 

保健室に着いたのだけど、保健の先生が不在だった。

僕は保健室に先生がいないのってギャルゲーの世界だけだと思っていたから正直びっくりしたけど、冷蔵庫にあった氷をポリ袋に入れて、それを痛む部分に当てた。

 

しばらく保健室のベッドで腰掛けていたらぱたぱたと走る音が保健室の方に向かって来たからやっと先生が来たのかなって思って待っていた。

扉が開く。

 

でも扉を開けた人物は、保健の先生では無く生徒だったんだ。

 

「失礼しまーす……。あ、山手君!大丈夫ですか!?」

「えっ!?なんで大和さんがいるの!?」

 

大和さんが保健室の方に来るなんて思ってもいなかった。

今頃理科室で永遠と水を電気分解していると思っていたから。

 

「それは山手君が心配だったからですよっ!」

 

僕はその瞬間、僕の頭から水素が爆発する音が確かに聞こえた。ポンって言う音。呼吸が速くなって、心臓が酸素を欲しているかのようにバクバクさせたんだ。

 

「保険の先生はいないんですか?」

「え!?あ……うん。いないみたい」

「ジブン、職員室に行って呼んできますのでじっとしておいてくださいよ」

 

そう言って大和さんは保健室から出て行ったんだけど、大和さんの香りがかすかに残っていて僕の思考を停止させたんだ。

近くの鏡で見ると、顔が真っ赤になっていて速く元の顔に戻さなきゃって思うけど、意識すればするほど顔が熱くなっていった。

 

その頃、僕は頭の鈍痛を感じなくなっていた事に気づかなかった。

 

 

 

 

保健の先生から「問題は無いけど、今日は安静にしておくこと」と言われ、氷の入ったポリ袋と共に授業を受けて、放課後になる。

 

途中、桃谷が「お前、授業中に保健室で大和と大人の階段を上ったんだろ?」って言って来たから、持っていたポリ袋を全力で投げつけてやった。

 

 

僕は放課後、学級日誌を書いていた。教室の戸締りや、お弁当の時のお茶を運ぶなどの日直の作業を全部大和さんがやってくれたから自分から日誌を書くと申告した。

 

学級日誌なんて今日の授業の時間割を書いて、それから今日あった事を書けば良いから楽だ。

 

僕は日誌に「今日は廊下で転んで頭を打った。廊下の水拭きはきちんとしようと思った」と言う小学生の一行日記のような内容を書きなぐってやった。

 

 

「山手君、書き終えましたか?」

「うん。終わったよ」

「では、職員室の方に向かいましょう」

 

隣を歩く大和さんは明るい表情でこちらをちらっと見ながら歩いている。僕は大和さんにさりげなくだけど、真剣な表情で話しかける。

 

「今日は本当に助かったよ」

「頭はもう大丈夫ですか?」

「うん。もう痛みも無いし大丈夫だよ」

 

後から桃谷から聞いたけど、理科室に入って先生に事情を伝えてすぐに僕のいる保健室に向かったらしい。それもすごく不安そうな雰囲気だったんだって。

 

職員室に入って、担任の先生の机に日誌を置いておく。

 

僕はその話を聞いた時にすごくうれしかったんだ。僕の事をこんなにも心配してくれていたなんて。僕は大和さんに出会えて良かったって本当に思う。

僕たちは下駄箱までやって来た。

 

「僕は、大和さんと知り合えて本当に良かったよ」

「山手君!?急にどうしたんですか~」

 

顔を真っ赤にした大和さんがうろたえている様子を見てついつい笑ってしまう。

でも、今思い返したら僕の言った言葉って相当クサイセリフでキザだなって思った。恥ずかしいからもう二度と言わないと思う。

 

「も、もう今日は帰ります!山手君気を付けてくださいね!」

「え、ちょ、大和さん!」

 

僕は彼女を呼び止めようとした。今、外は雨が降っているから。大和さんは今日、傘を持ってきていないって朝の登校時間に聞いていたので僕の傘を貸してあげようって思っていたから。

 

「僕の傘使って良いよ。結構雨降ってるし……」

「走って帰りますから大丈夫ですよ。傘も山手君が使ってください」

 

そう言って大和さんは顔を赤くしたまま走って帰ってしまった。

女の子をずぶ濡れのまま帰らせてしまうと言う、男として失格のような事をしてしまった。

 

 

 

僕はしばらく逡巡したけど、傘を急いでカバンから出して傘をさしながら、走って大和さんの後を追ったんだ。

途中で大和さんに追いついて相合傘の要領で傘を貸したけど、既に大和さんは雨でぼとぼとだった。

 

それに僕が走って来たから「今日は安静にしておいてください!」って逆に怒られてしまったんだ。

 

 

僕の家に着いて、僕が普段使っている黒色の大きな傘とタオルを大和さんに貸した。返すのはいつでも良いよ、って言った。

 

この時は難なく取れるゴロをエラーしてしまったようなもやもやとした気持ちはあったけど、気にしないでおくことにしたんだ。

 

 




@komugikonana

次話は12月6日(木)の22:00に投稿予定です。
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では、次話までまったり待ってあげてください。
唐突なんですけど、次話辺りからコーヒーを相方にする事をお勧めします(笑)
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