おっちゃんin女子高生 某トリプルフェイスに出会う   作:ルナ子

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おっちゃんin女子高生

国際的テロ組織の終焉――

 

そいつの拠点がこの日本にあると知り、俺ももちろん最終決戦とやらに参加させてもらった。

 

(英理や蘭、ついでにボウズも、が暮らすこの国をそんな奴らにいいようにされてたまるかよ!)

 

他国にもアジトがあるとかで、FBIやMI6、CTC、BND……etc

 

何かもう、幾つあんだよ、って位、来やがって訳わからん。

 

一応、綿密な作戦会議とかあったけどな。

 

俺は面倒なのはいいから、実行部隊な、なんて思ってたら、

 

「毛利先生、あなたまで」

 

なぜか呼んでもないのに、俺の弟子で喫茶『ポアロ』でバイトしている安室透がいた。

 

(いや、もういいか)

 

最初のうちはわからなかったけどよ、これだけの付き合いになるとさすがにわかる。

 

普段はへらへらしているクセに、妙に目ざとい。おまけにしっかり鍛えてやがる。それも、専門の機関で鍛えられた感が半端ない。

 

「はっは!こーゆーときは名探偵毛利小五郎の出番だってな」

 

と、奴の肩を掴み、ぐっと声を潜める。

 

「やっぱ、お前、アンコか」

 

「――っ!」

 

相手が息を飲んだのを確認してから、さっと離れる。

 

「まっ!この毛利小五郎にかかれば、奴らなんざ一網打尽ってやつさ!」

 

わざと大笑いしてその場から離れた。

 

(おーおー、視線が追ってくる追ってくる。まだまだケツの青いガキだせ)

 

アンコ――『公安』を逆さにした隠語だ。元刑事としては、何度も捜査を中断させられたり、やっと掴んだ手がかりを横からかっさらわれたり、と奴らの印象は最悪だが、今日ばかりは仕方ないか。

 

英理に言わないとな。

 

もう一度――

 

 

 

「――っ!――っ!」

 

(うるせーな……)

 

こっちは眠いってのに、すぐそばでがなり立てるのがいる。

 

(寝させろよ)

 

咳き込むと口から鉄の味がした。

 

(くっそ、やっちまったか)

 

作戦そのものは上手く行っていた。だがやはり、実戦となると、幾らか手違いってやつが出てくる。

 

俺は死角から現れた敵にとっさに対応できたが、コンビを組んでいたもう一人が見事に引っ掛かって、そいつを突き飛ばしたんだっけ。

 

(何だかだりぃと思ったら、それか……)

 

滅多やたらと撃たれたもんな。

 

「あー……」

 

「気がつきましたかっ!」

 

「どーなってる?」

 

「順、調です!もうすぐケリがつきます!だから、」

 

(そんなら、いっか)

 

「英理に悪いな、って言っててくれ」

 

「何を言ってるんですか!」

 

叫びながら応急処置をしているようだが、もうこいつは無理だなと分かっていた。

 

「あとな、お前」

 

「はい?」

 

「……ダチ、少なそうだな。早くケッコンして子供作れよ」

 

「なっ!」

 

そしたら、その子供にでも生まれてやっからよ……

 

そんなことを言いながら俺は現世におさらばした。

 

 

 

 

(はずだったんだけどな)

 

平日の夕飯前。

 

にぎわう商店街の一軒のガラスに写るのは――

 

肩までの黒髪の、少々やせ型でセーラー服を来た女子高生。

 

(で、その中身が俺って……)

 

 

『何してくれとんじゃっ!!神――っ!!』

 

 

白目になりながら、持ち物とか住んでるマンション(ひとり暮らしだとよ。親はリコン、ってどっちか引き取れよ)とか調べて何とか分かったのは――

 

(正真正銘、今の俺は女子高生で……)

 

新聞やテレビで確認した日付からして、『あの事件』の二ヶ月、ってところか。

 

(四十九日は……終わったか)

 

俺は米花町の商店街を歩いていた。

 

この体にも何とか慣れてきたし、って登校したら、たぶん思いっきし変わっていたんだろうな。

 

遠巻きにされちまった。

 

(はっ、中身は俺だっつーの!急に変えられっかよ)

 

だがさすがに男言葉はマズいと思い、練習を繰り返し、人前では何とかそれっぽい言葉は使えるようになった。

 

 

 

俺が住んでいる住所からこの米花町までは電車で十分もかからなかった。

 

(って、近(ちけ)ーよ、おい!!)

 

転生だかヒョーイだかしらんが、させんならもっと遠いトコにしてくれよ!

 

さんざん神ってのを罵った後で、今更だが、ホントーに今更だが、やはり残してきた英理や蘭(ついでにボウズも)のことが気になっちまった。

 

(様子、見に行くくらいなら大丈夫だろ)

 

遠目に確認して、下の『ポアロ』でなに食わぬ顔でコーヒーでも飲んで、タバコ……今は吸えないんだよな、ちっ。

 

 

あと少しで『ポアロ』、という時その叫びは聞こえてきた。

 

「だれかー!」

 

「捕まえてー!」

 

(なにっ!!)

 

反射的に声のした方を振り返ると、こっちに全速力で駆けてくる、いかにも怪しい男。

 

(あいつか)

 

見定めて構えをとろうとした瞬間、そいつが走り抜けざまに近くにいた女子高生を突飛ばしやがった。

 

上がる悲鳴。

 

髪が長い女子高生――蘭!

 

「てめえっ!よくもっ!!」

 

本気モード全開になった俺は待ってなんかいられず全力で踏み込んだ。

 

「うおりゃあっ!!」

 

一本背負い。

 

ふっ、いつもながら決まったぜ、と倒れたそいつを放っておいて(気絶してっから大丈夫)軽く、いやあこんなん大したことじゃないですよ、みたいなポーズをしていると、駆け寄ってくる足音がした。

 

「あの、ありがとうございました!」

 

「強いんですね!だってこいつ、ナイフもってたのに!」

 

「今、ケーサツ呼んだからな」

 

(いつもの、蘭を含めた三人娘か)

 

そうっと見た蘭は、少しやせたか、とは思うものの、いつも通りに見えた。

 

(いや、外では分からないか)

 

あの時、蘭にまで言伝て頼む暇、なかったしな。

 

 

(んで、今回、蘭が踏み込まなかったのは、相手がナイフを持って走っていたからか)

 

まあ、走りながらナイフは危険だな。

 

俺?元刑事だからノープロブレムだなっ!

 

「いやいや」

 

といい気分で賛辞を受けていたら、何故か皆、顔を逸らした。

 

「……ん?」

 

「でも、あのう」

 

「やっぱり、あれはねぇ」

 

(おい、何だ、このもじもじは?)

 

流石に居心地悪くなって口を開きかけたとき、

 

「……白」

 

「「「「は?」」」」

 

バッ、と振り返るとそこには、蘭に手ぇ出しやがる探偵ボウズーー工藤新一がいた。

 

 

 

 

事情聴取が終わり(やっぱ警視庁かよ)、ってか俺の場合、『凶器を振り回している人物に、むやみやたらと突っ込むのはやめなさい』とお説教もあったので、結局、蘭達よりずっと遅い時間になってしまった。

 

受付を過ぎた辺りで、入ってくる人波の間に、見知った顔を見つけた。

 

「あれ」

 

思わず上げた声、聞こえちまったらしい。

 

その人物は律儀に立ち止まり、こちらへ身体を向けた。

 

「きみ、どこかで会ったかな」

 

確かこいつは『安室』の部下だったな。

 

そして俺が最後に助けた奴。

 

「いいえ」

 

俺としてはそう答えるしかない。

 

ふたりの距離は五、六歩は軽く空いている。

 

だから、そのまんま人の流れに乗り、ガラス扉を抜けながらつい出た台詞、

 

「無事でよかったな」

 

が丸聞こえだったなんて、誰が思うかよ。

 

 

 

 

(やっと『ポアロ』だぜ)

 

数日後、仕切り直して『ポアロ』の近くまで来ていた。

 

(今度こそ、蘭と話を……)

 

と考えたところで、首の後ろの辺りがちくちくしやがった。

 

(なんだぁ?)

 

刑事の頃から助けられてきた、この『勘』には逆らわないのが一番、と知っている俺は、その場で立ち止まった。

 

遠目に『ポアロ』を視界に入れると更にそいつがひどくなった。

 

(ちっ、今日は『ポアロ』は止めか)

 

『ポアロ』といえば――

 

さっき尾行してきた奴らの姿が思い浮かぶ。

 

(あいつら、俺が気付いてる、と思ったらすぐに消えたな)

 

こういうやり口には心当たりがある。

 

(また、公安かよ)

 

ってことはまだ『ポアロ』にいやがんのかよ、あいつ。

 

ううむ、と唸ってしまった。

 

(まずいな。どうせ閉まってるだろうが、上の事務所へ依頼しに来た、ってことにでもすっか)

 

よし、と大体の方針を決めたところで、かつての我が探偵事務所が見え――

 

 

『工藤探偵事務所』

 

 

『毛利』の二文字が、『工藤』に書き替えられていた。

 

「はああぁぁっっ!?」

 

この、俺の、『探偵事務所』だぞ、それが何であんな若造に――

 

 

 

(あんの探偵ボウズッ!!蘭のみならず、英理までたぶらかしやがったかっ!!)

 

 

 

 

 

 

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