おっちゃんin女子高生 某トリプルフェイスに出会う   作:ルナ子

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キッドにうらみはないですm(_ _)m

(来年の映画、タノシミダナ~~( ´ー`)


if その② 怪盗キッド、パンドラの箱を開ける?

(っとに、一体何なんだよ、あれは)

 

翌朝の朝刊。

 

結果として脱出できたものの、手錠を掛けられてしまい、また、運悪くそこを写真に撮られ、そいつが朝刊の第一面を飾っちまった、とゆー訳だ。

 

『怪盗キッド!ついに逮捕!!……?』

 

『?』の位置が遠いだろーが!!

 

ジィちゃんにまで、『今は亡き盗一様に何とお詫びすればよろしいのか』とか言われちまったし。

 

(このキッド様がやられっ放しで済むと思うなよ!名探偵!!)

 

決意を新たに俺は、早速偵察することにした。

 

 

 

米花町、とある屋敷にて――

 

 

「おまっ、また何やってんだっ!!」

 

スパーン!と思い切りのいいハリセンの音が響き渡る。

 

「いや、だって……」

 

「だって、じゃねぇっ!!何で証拠品、がめてんだ!?」

 

「ちがっ!!ちょっと確かめたいことがっ!!」

 

「何度言ったら分かんだっ!!勝手に持ってかれると、鑑識さんが困んだよっ!!せめて警部殿に一言、断ってから行けっ!!」

 

 

ハリセンを片手に怒鳴る女子高生と、頭を抱えて踞る名探偵。

 

(え、え?何、このカオス)

 

ぼーっ、と見ていると肩をポン、と叩かれる。

 

「あー、お前、この現場、初めてか?」

 

「あ、はい」

 

「あれはな、最近できた米花町の名物だ」

 

「へ!?」

 

ま、気にすんなよ。

 

 

刑事に化けた俺は呆然とするしかなかった。

 

 

 

「いらっしゃいませー!!」

 

きれいなお姉さんの優しい声が響く店内。

 

俺は喫茶『ポアロ』に来ていた。

 

変装?もちろんしてるさ。

 

「おひとりですか?カウンターも空いてますが」

 

どうされます?と聞かれ、

 

「あ、カウンターでお願いします」

 

十代の女の子特有の高い声で答える。

 

「ありがとうございます」

 

ふと見ると、例の『公安のお兄さん』とこのところ俺を悩ませている(先に断っておくがレンアイ関連では断じてない)『あの子』が話をしていた。

 

カウンター席は、その子しか居なかったので、適当に間を取って腰を下ろす。

 

「どうぞ」

 

すぐに『公安のお兄さん』が水とおしぼりを出してくれた。

 

「どうも」

 

(くそっ!無駄に美形だよなあ!!でも俺だって――)

 

何気なく見えるようにメニューに目を通す。

 

(何にすっかな)

 

「こちらは始めてですか?」

 

「ええ、まあ……」

 

(何で話し掛けてくるんだよ!まあ、ほんとは好都合だが)

 

美形のクセに、という反発と偵察しなければ、という思いでちょっと複雑な心境になりながら、

 

「何か、おススメってあります?」

 

「そうですねぇ」

 

すると、注文を取り終えて戻ってきたお姉さんが、

 

「ハムサンドなんか、お薦めですよ」

 

「ハムサンド、ですか」

 

(何か、サンドウィッチってパサパサした印象しかないんだけどなあ。腹にも溜まんねーし)

 

育ち盛りとしてはあまり気は進まないが、今の自分は周りにいる女子高生達と同じなのだ、と言いきかせ、

 

「じゃあ、ハムサンドとコーヒー、お願いします」

 

「かしこまりました」

 

(ん?『公安のお兄さん』が作んのか?)

 

それじゃ、偵察にならない、と思っていると、

 

「こんにちは。ちょっといい?」

 

『あの子』が隣りの席にきた。

 

「え?ええ」

 

(うおっ!こーして見るとこの子、結構美人さんだよな!)

 

肩までのボブカットに切れ長の眼、うーん、ちょっとキツイ感じもするけど、そこもまた……と思っていると、

 

「ここ、何で知ったの?SNS?」

 

(へ!?どーゆー意味だ?)

 

この店ってそんな有名店だったのか、もうちょいリサーチしてくりゃ良かった、と後悔していると、

 

「お待たせしました。ハムサンドです」

 

(早っ!!)

 

「ありがとうございます」

 

取り敢えず、食べてしまえばすぐに答えずに済むな、と俺はハムサンドを口に運んだ。

 

(うまっ!!)

 

意外にハムサンドは旨かった。

 

(ハムサンド、なめてたぜ……でも、もうちぃっと量があればなあ)

 

あっという間にたいらげて、食後のコーヒーを堪能、――って俺、何しにきたんだっけ?

 

「あ、ここへ入ったのは、たまたま見かけただけなんだけど、何か変?」

 

何にも知らないですよ、というふうを装って聞き返すと、

 

「そう。このお店、結構有名なのよ。『イケメン店員』さんがいるってね」

 

と、顎で『公安のお兄さん』の方を示した。

 

「何だか随分な言い方ですね」

 

「でもないでしょう。これだけお店の中、ファンで一杯にして」

 

言われて見ると、確かにこういった喫茶店にしては、女子高生の比率が異様に高い。

 

(変装、違うのにすりゃ良かったか?)

 

しかし、背広姿のサラリーマンが女子高生に声掛ける、つーのも。

 

(そう言えば、この子、正美ちゃんだったか、今日は普通に女の子っぽい喋り方なんだな)

 

名探偵といる時の、きっぷのいい、というより、手練れの、まるで刑事を思わせる口調とは雲泥の差だ。

 

(それって、……何か、面白くねーな)

 

『イケメン店員』さんをニラみ付けそうになって、慌てて俯く。

 

(っと。今、俺は可愛い女子高生っと)

 

「あまり見ない制服ね。どこの学校?」

 

聞かれたので、ここから四駅ほど離れたところにある高校を挙げておく。

 

「ふーん」

 

相槌を打つと、『正美ちゃん』がいきなり肩を掴んできた。

 

(へ!?嬉しいけど、何で?)

 

「まさかお前、その制服、盗んだのか?」

 

耳元で囁かれた台詞に思わず固まると、

 

「おめーが『男』だ、っつーのは、見え見えなんだよ」

 

(うおっ!すげっ!!美人さんのニラみは大迫力ッ!!って俺、そんなに分かり易かったか!?)

 

「何のことだか――」

 

それでも一応、否定すると、

 

「だったらここで剥くかあ?このガキャ」

 

(あ、ちょっとコワいかも)

 

「え、遠慮します、すみませんでした!」

 

小声で平謝りしていると、『イケメン店員』さんが感心したように話に入ってきた。

 

「凄いですね。僕には分かりませんでしたよ」

 

「昔、え……あいつがよ、女装癖のあるストーカーに絡まれたことがあってよ。それ以来、こーゆー手合いを見抜けるように特訓したからな」

 

(ナニソレ、こわい)

 

女装癖のあるストーカーもそうだが、それを見抜くための『特訓』って……。

 

(どーゆースキル、上げてんだよ、この子)

 

こちらに顔を戻した正美ちゃんが、

 

「で?お前のホントの用は何だ?」

 

(ひいぃぃぃっ!!)

 

「ゴチソウサマデシタ。お会計、お願いします」

 

 

 

俺はそう言うしかなかった。

 

 

 

 

 

(だがしかし!これ位で諦めるなんざ、怪盗キッドの名がすたるぜ!!)

 

 

俺は『公安のお兄さん』が住んでいる(多分、セーフハウスの一つ、なんだろうな)アパートの前にいた。

 

正確にはその近くの電柱の上だが。

 

(下に『工事中』の看板も出したし、今度こそっ!!)

 

ついさっき、公安のお兄さんと正美ちゃんが入って行くのを確認し、俺は集音器のスイッチを入れた。

 

ちなみに、当然というか盗聴器は付けられなかった。

 

(やっぱ、公安だけあってその辺は抜かりねえよな)

 

『何だよ、話って』

 

(お、聞こえてきた。……ん?ふたりの時もそんな話し方なのか?)

 

てっきり正美ちゃんは、公安のお兄さんのことが好きなのかと思ったのだが、

 

『それはですね……』

 

そこから急にノイズが入った。

 

(何だよ、急に)

 

集音器を調整しようとした時、ノイズが止み、声が聞こえてきたが、

 

(へ!?おいおい、これって……)

 

『――っ!……!』

 

(嘘だろぉっ!!まっ昼間からっ!!……いや、もう夕方か)

 

耳に入ってくるかなり刺激的な内容に、思わず俺は――

 

「大きな鼠がいますね」

 

「まったくな」

 

(……今の、声)

 

それを聞いた後で下を見るのは、恐怖しかなかったがさすがに無視する訳にもいかず、そう、っと視線を下ろすと、

 

「とっとと降りてきなさいね」

 

笑みを浮かべる公安のお兄さんと、

 

「どうゆうつもりか、聞かせて貰おうか」

 

指をパキパキ鳴らしている正美ちゃんがいた。

 

 

 

 

「……すみませんでした!」

 

アンフィニRX7って俺もいいなあ、と思ってた車なんだけど、この状況(運転――公安のお兄さん、助手席――俺、その後ろからすっげー威圧してくる正美ちゃん)だと全然喜べない。

 

「ったく。高校生が盗聴だとはなあ。世も末だぜ」

 

「まあまあ、……君、毛利先生のファンなんだってね」

 

先ほどよりはトゲのない口調で、公安のお兄さん(勿論、向こうは偽名を名乗ってきたので、俺も乗っかった)が話し掛けてきた。

 

こんなことしでかした理由を『憧れの毛利小五郎の情報が少しでも欲しかったから』とちょっと苦しい言い訳だったが、何とか信じ……そーゆーふりか。

 

「はい!『眠りの小五郎』は俺の憧れの方なんですっ!!」

 

「そうか、そうか」

 

後部座席から、まんざらでもない合いの手が入った。

 

(え!?正美ちゃんってそっち!?)

 

公安のお兄さん、じゃなくてあのオッサンの方だったのか、と驚いていると、

 

「まあ今回は大目に見ますが、気をつけて下さいよ」

 

「すいません」

 

 

平謝りしているうちに車は杯○町へ――

 

 

 

「じゃ、気をつけてな」

 

「さようなら、また明日」

 

「さ、さよなら」

 

(正美ちゃんって、あんな感じでどっかのお嬢様なのか?)

 

オートロックの、いかにも厳重なセキュリティ、ガッチガッチなマンションへ入って行く正美ちゃんを見送りながら、そんなことを考えていると、

 

「さて、と」

 

「あ、俺ん家、そんな遠くないんで、ここで降ろしてもらって――」

 

運転席の方を見た俺はギクリ、とした。

 

なぜなら、滑らかに車を発進させた公安のお兄さんは、とてもいい笑みを浮かべていたからだ。

 

「まだそんなに遅い時間ではありませんし。少しドライブに付き合って貰えませんか?――怪盗キッド」

 

付け加えられたその単語に、俺は背筋が凍りそうになりながら、

 

「何のことですか?俺はそんな大層な――」

 

「高杉邸にいた刑事、『ポアロ』に来た女子高生。そして先ほどの作業員。これだけ多彩な『変装』をこなしておきながら、キッドではないと?」

 

氷のような、という比喩表現があるが、まさにそれにぴったりの眼差しが、俺を捕らえようとしていた。

 

「いや、俺はさっきの作業員――」

 

「あの集音器も見事ですね。お手製ですか?あれ程、小型で性能の高いものは久しぶりに見ましたよ」

 

「……機械いじりは好きなんで」

 

(あ、何か詰みそう……)

 

「でも、それって単なる状況証拠、ってやつじゃ」

 

公安のお兄さんは安定したドライブテクをかませながら、

 

「――声紋」

 

「は?」

 

「知りませんか?指紋と同じように個人を特定できるモノですよ」

 

まさか、あれだけのことをした怪盗キッドの声が録音されていない、なんて思ってないですよね?

 

そう続けられ、俺は絶句するしかなかった。

 

幾ら、声色を変えても機械はごまかせない。

 

(どーする?こっから逃げるのはできないことはないが、悪手だ。俺が怪盗キッドだと認めたことになっちまう)

 

「怪盗キッドの声紋が、君――黒羽快斗のものと一致したら、周りの皆さんは驚くでしょうね?」

 

特に中森警部が。

 

それを聞いて俺は返答に詰まった。

 

中森警部の一人娘の青子とは、幼なじみ、ってやつで家も隣り同士だ。

 

俺が怪盗キッドだと世間に知れたら――

 

懲戒免職、いや、本当は知っていたんだろう、って話に成りかねない。

 

怪盗キッドの正体を知っていたから見逃し、それどころか共犯、と疑われてもおかしくない。

 

それほどふたりとは近しい間柄なのだ。

 

(中森警部がそんなことになったら、青子は――)

 

それでなくとも、怪盗キッドが活躍する度、父親である中森警部がマスコミに叩かれるものだから、キッドのことを良く思うはずもなく。

 

(俺に会う度に愚痴ってるものな)

 

「どうします?それともこれらの『情報』が入ったUSBメモリ、警視庁捜査二課の中森警部のデスクに、誰かが『うっかり』落としてしまうまで、待ちますか?」

 

 

「……すみませんでした」

 

 

「随分あっさりと認めるんですね」

 

驚いたような顔をしている公安のお兄さんに、

 

「いや、あのさ、そこまで言っといて、それはないんじゃ」

 

「まあ、いいですよ。素直な子は好きですから」

 

(あんたに気に入られても、嬉しくねーよ!)

 

「何か、言いましたか?」

 

「いえ!何も言ってないですっ!!」

 

ふむ、と公安のお兄さんは何か考え込んでいるようだった。

 

「そうですね。このままあっさり逮捕、となってもアレですね。こちらの管轄外でもありますし。――君、少しバイトする気はありませんか?」

 

実にいい笑顔で言われたが、こちらに選択権がある訳でもないので、

 

「バイトって、何ですか?」

 

「君からしたら、簡単なものですよ。僕らの周りにいる人達から、少しでも『違和感』を感じたら、報告して貰う、というね」

 

「それって」

 

「探したい人がいましてね。か……その人は晩生(おくて)でね。いつも自分ではない『誰か』の姿をしているので。見つけるのに苦労するんですよ」

 

(うわあ。ドーベルマンの眼、してるよこの人)

 

俺がこくこくと頷くと、

 

「助かります。ああ、学業には差し支えない範囲で結構ですから」

 

これで話は終わり、と思った俺は緊張が弛んだのか、つい余計な一言を言ってしまった。

 

「よかったー、そう言えばさっきの『アレ』ってさ」

 

正美ちゃんの声もちゃんと入ってなかった?

 

ピキッ、と何かが凍るような音が聞こえた。

 

「……そうですね。徹夜しましたから」

 

「へっ!?」

 

(ま、まさか)

 

「ある程度、それっぽく作らないと、コレクションを沢山持っている君みたいな子には、すぐに見抜かれますからね」

 

(え!?コレクション、ってまさか――)

 

すると公安のお兄さんは前を向いたまま、

 

「君くらいの年頃だと、やはり金髪碧眼の美女に目が行くようだが、みどりの黒髪、というのもいいものだよ」

 

と、何故か大和撫子についての講義が、って、おい、ちょっと待て!!

 

「何で、俺のコレク……まさか」

 

「『ポアロ』で変装を見抜かれた君は随分と無防備でしたね。お陰で僕の部下がすぐに報告を上げてくれましたよ」

 

「いやその前に!!人の嗜好にまで、ケチつけんなよ!!」

 

「今の内に目を覚ましておきなさい!!金髪がいいなんて言っていると、将来、絶対に後悔しますよっ!!」

 

「……何か、嫌に力入ってんな。まさか」

 

RX7のスピードが幾分、上がった気がした。

 

「もう少し、ドライブしましょうか?」

 

 

 

にっこりと笑った公安のお兄さんの背中に、黒い羽が見えたような気がした。

 

 

 

 

その後、俺は制限速度をきっちり守っているのに、ロープなしの空中ブランコを連想させる運転、というのをイヤという程味わうハメになった。

 

 

 

 

 

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