剣と少女と世界の旅人   作:ADONIS+

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1.上位世界

 男ならば女の身体に興味を持つことはあるだろう。ボクもオナニーをして性欲処理をした時にふと思った。女のオナニーはどんな感じなのだろうと。

 

 女の方がよく感じるらしいが、当然ながら男のオナニーしかしたことがないボクにはそんな経験はない。ついでにいえばヘタレで女に付き合った事のないボクはセックスの経験もなかった。

 

 まあ、フリーターで収入も少ないから結婚できないという理由もあるが、実際に女性と付き合う事を煩わしいと考えていたのもあった。その為、ネットではTSを取り扱った小説などをみて楽しむこともあった。後から思えば、そんなボクだからこそあの時あんな選択をしたのだろう。

 

 ある時ボクは自殺した。理由は金欠による生活苦だ。まあ、元から安定していない職業だったから首になってそうなっても別におかしなことではないだろう。

 

 

 

 そして、気が付けばボクは謎の空間にいて、ボクの周囲には多くに人たちがいた。恐らく百人は下らないようだ。そんな中で一人の少女がボクたちに説明していた。

 

「……というわけで貴方達は死んだわ。それでトリッパーになって貰うわ。拒否してもかまわないけど、その場合、魂を洗浄されて輪廻転生の輪に乗るから記憶をすべて失う事になります」

「あんた俺達をトリッパーにするって言ったよな?」

「ええ、そうよ」

 

 一人の青年が少女に質問していたが、これってネット小説とかでよくある転生物かな?

 

「それじゃ、あんたは女神なのか?」

「いえ、私は神ではなくトリッパーよ。神々は私の事を『全能なる観察者』と呼ぶけどね」

「それはどういうことだ?」

 

 少女の言葉にボクたちは疑問を持ったが、少女の説明はボクの斜め上をいく物だった。彼女はあらゆる能力を創造できる能力を持ち、おまけに能力を他者に与えることができて、所謂チートオリ主だろうといくらでも作れるらしい。

 

「じゃ、俺には当然チート能力をくれ! 俺達をこんな所にまで連れてきたんだからな」

「俺もだ!」

「俺も、俺も!」

 

 その事を訊いた一人の男は少女にチート能力を要求して、他の男達もそれに便乗していく。

「勘違いしているみたいだね。私はトリップさせるとはいったけど、能力を与えるとは言っていない。そんな面倒なことしないわよ」

「なんだと!」

「だから私は貴方達を適当な世界にトリップさせるだけよ」

「テンプレとは違うのか!」

 

 少女が男たちの要求を蹴ったとたんに周囲が騒がしくなったが、少女に文句を言っていた者たちがいきなりその場から消えてしまい、その場に残されたのは少女を除くとボクを含めて五人の男達だけだった。

「まったく、これで少しは静かになったわね」

「か、彼等はどうしたんですか?」

 一人の男が恐る恐る訪ねた。

 

「あいつ等?あいつ等は相応しい世界にトリップさせただけよ。貴方達は『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』って知ってる?」

 

 少女の原作名を訊いてボクは顔を青ざめた。まさか彼らはあのゾンビが蔓延る世紀末な世界に飛ばされたのか?

 

「あの世界なら、運が良ければ好きなだけ家に引きこもれるわ」

 

 確かにあの世界は学校も仕事も関係ない。というかリアルゾンビな世界だから、下手に外を出歩くとあっさり殺されてされてしまう。運が悪ければそれまでだろう。

 

 つまり少女の機嫌を下手に損ねると、とんでもない世界にトリップさせられると理解させられたボクたちの顔は引きつっていた。

「さてと貴方達はとりあえず『魔法少女リリカルなのは』の世界に転生させようと思うけど、それでいいかしら?」

 

 ボクは『魔法少女リリカルなのは』という原作名に安堵した。あの世界は比較的安全だからね。少なくとも学園黙示録よりかは遥かにマシだ。

 

「その世界ではその内オリ主が現れるから、気が向いたら貴方達はそのオリ主を支援すればいいわ。それと転生先での容姿に関して要望を言いなさい。調整しておくわ」

「えっと、俺はアルピノでイケメンがいいです」

「俺は金髪碧眼の美男子な感じで…」

 

 容姿を決めろと言われてどうしようかと考えていたら、他の男はなんかいろいろと外見を盛っていた。ボクも暫く考えてから少女に要望を伝えた。

 

「それと貴方達にはサービスとして特殊な条件で覚醒する能力を与えておくわ。ほら主人公がピンチになると能力に目覚めるってよくあるじゃない?それよ」

「おおっ!」

 

 少年漫画の主人公にありがちな話にボク以外は喜んでいた。でもボクは漫画じゃあるまいしそんなに都合よくいくのかと盛り上がる彼らを余所に冷淡に考えていた。

「それじゃ貴方達を転生させるわ」

 

 少女が指パッチンするとボクたちの立っている床がいきなり黒い穴に変わってボクたちはその黒い穴に落下した。

 

「「「「「ここだけテンプレかよ~!!」」」」」

 と、絶叫しながら。

 

 

 

みこside

 

 天然能力者という者がいる。それは転生特典や人工的に開発された物ではなく、自然に特殊な能力に目覚めた者を意味する言葉だ。

 

 数多の下位世界では普通の人間には持ち得ない特殊な能力を持つ者がいて、それは自然と能力を獲得していく者と、人工的に能力を開発している者に分けられる。『機動戦士ガンダム』では【ニュータイプ】と【強化人間】と呼ばれて、『とある魔術の禁書目録』では【原石】と【人工ダイヤ】に例えられている。

 

 そして上位世界においても自然に能力を得る者が極稀に存在していた。後に”全能なる観察者”と呼称される最高にして唯一の訪問型トリッパー”姫神みこ(ひめがみみこ)”はそんな上位世界の天然能力者の一人である。

 みこの天然能力は『あらゆる能力を創造できる能力』であった。魔法、超能力、霊能力など下位世界に存在するありとあらゆる能力だけでなく、自分のオリジナルの能力であろうと無制限に造る事ができる。更にその能力を後天的に他人の与えることも可能で、自分でチート能力者を作れるというトンデモ能力だ。

 これは冗談抜きで神様クラスの実力がある。死神は転生型トリッパーに転生特典としていろいろと能力を付与させるが、それは受精卵の段階でないと出来ない。だから例え赤ん坊に憑依したとしても憑依型では能力が付与されないのだ。

 

 これは下手に後天的に能力を与えると、バランスを崩してトリッパーが死んでしまうからだ。だから先天的ではなく後天的に能力を与えるのは死神でも不可能の領域であるが、それ以上の上位の神々ならば可能らしい。

 

 みこはその上位の神々に並ぶもしくは凌駕する能力を持っている。彼女は聡明で、その力を無闇に行使しなかった。むしろあまりにも強すぎる力故に隠蔽していた。その為、一般人はみこの能力を知ることはなかったが、死神を初めとする神々はそれを知り驚愕した。その能力は神々も放置できず、死神が接触して状況を説明するに至った。

 

 その結果、みこは主に上位世界と下位世界を行き来するようになり、監察軍に所属して後にパートナーとなったカリン・エレメント(絶望~青い果実の散花~)と共に他のトリッパーの支援に回ることになる。

 しかし、あるトリッパーが彼女の能力に目を付けて精神を支配して利用した挙げ句、さんざん陵辱した。その後、正気を取り戻したみことカリンはそのトリッパーを抹殺したが、これを切欠にみことカリンは、トリッパー並びに監察軍とは距離を取るようになる。

 

 

「トリッパーを用意して欲しいですか?」

 全能なる観察者と自他共に認められている『最高のトリッパー 姫神みこ』に対して死神が言った言葉がそれだった。

 

「どういうことです?トリッパーの用意は貴方達死神の仕事ではないんですか?」

『いや、私達だけじゃ手が回らないんだよ。通常の仕事もあるし、トリッパーの必要数を満たすのに全然足らないからな』

 

 死神が困り顔だ。わざわざ私に頼むとは、それだけトリッパー不足が深刻なんだろう。私という例外はあるものの通常トリッパーとは下位世界に転生か憑依した者たちだ。

 

 しかし、上位世界人をトリップさせるのはかなり手間がかかる。転生特典を与える転生者の場合なおさら手間が掛かり数をこなすのが面倒になる。しかもトリッパーの大半が転生型で強力な転生能力を求めるから、なおさら手間が掛かる。

「まあ、できないことはないですけどね」

 と、私はぼやきながら言う。

 

 ハッキリ言って、私に不可能という物はない。伊達に全能なるなどと言われている訳でない。確かに、なんでもできるが……。

「一々チート能力を与えてトリップさせるというのは面倒ね」

 わざわざ他人に能力を与えたりして下位世界にトリップされるのはかなり面倒です。

 

『まあ、私たちもそれで苦労しているからな』

 死神が苦笑いしていた。

 

「……まあ、そういうことならこちらも適当な死者を使ってトリッパーを補充しておくわ」

『よろしく頼むよ』

 そういうと死神は姿を消した。

 

 これは気が進まないが、必要な事でもある。最近のトリッパー不足はマジ深刻で、補充が急務なのは確かだしね。そういう事があったので面倒だけどトリッパーを用意しないといけない。

「とはいえ、問題は誰を選ぶかね」

 

 一言に死者といっても沢山いるから悩ましい。絵に描いたような善人にするか。それとも優秀な逸材にするか。どれもいまいちだ。

「そうだ! 世の中にはオタクがいたわ! こいつ等なら下位世界にも精通しているから、原作知識が不足していないと思うし丁度良い」

 善は急げ。取り敢えず下位世界に干渉しやすい特殊な空間に移動する。次に日本国にいる生前オタクだった死者の魂を百ほどここに呼びだして下位世界にトリップさせた。

「どれだけ残るかな?」

 私はこれの結果を想像した。




おまけ

「そういえば『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』に送った連中はどうなったかしら?」

 あの世界に送った連中は原作開始の一週間前に未登場キャラに憑依するようにしておいた。彼等は原作開始の初日に9割方死亡して、残りも一ヶ月と保たずに全滅したようだ。一人ぐらいは生き残るかと思っていただけに期待はずれだったが、能力も渡していなかったから全滅してもおかしくない。

「元々見込みのない連中だからね。別にいいか」
 元々大した事ではないので、私はその件を頭から消した。



解説

■姫神みこ(全能なる観察者)
 上位世界人としての肉体と魂を併せ持って、上位世界と各地の下位世界を行き来することが出来る唯一の訪問型トリッパー。あらゆる能力を創造する能力を持ち、反則的な能力を千だろうが万だろうが無限に作り使うことができるため事実上不可能な事はない。これは死神から与えられた転生能力ではなく自然に手に入れた天然能力であり、彼女は上位世界人の天然能力者である。その能力から”最高のトリッパー”や”全能なる観察者”という二つ名で神々や監察軍では呼ばれている。
無制限に反則的な能力を創造することができるので、大量に能力を保有している。元々は、心優しい純粋な美少女であったが、あるトリッパーに酷い目に遭わされてからは人間不信に陥る(トリッパー列伝 カリン・エレメント)。その後、他のトリッパーに不信感を抱き、あまり関わらないようになった。現在は独自の美学を持ち、それに反する気に入らない者には残酷な振る舞いをするようになった。その振る舞いから彼女のことを恐ろしい魔女として見る者も多い。
 外見イメージは神山みこ(下級生)。外見年齢:17歳 / 身長:156cm / スリーサイズ:83/60/87(cm) / 血液型:A

■学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD
 ゾンビ漫画で、ある日世界中でゾンビが現れて彼らに噛まれた人間もゾンビになるという非常でデンジャラスでホラーな世界である。
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