22世紀末、地球では深刻な環境破壊、あまりにも増えすぎた人口、貧富の差の拡大など様々な問題を抱えていた。そうした中で新天地を目指して恒星間移民船を次々に外宇宙に送り込んでいた。
言うまでもなく、この宇宙に人類がそのまま居住できる惑星などそうありはしない。移民と称していたものの彼らが事実上の棄民であることは誰の目にも明らかであったが、そのような非人道的な政策がまかり通る程、人権と人命が軽視させる状況だったのだ。
そんな移民船の一隻がメソポタミア号であり、そのメソポタミア号がテラツーと呼ばれることになる地球型惑星に到着して国家を形成することになるが、それは別の話である。今回は件のメソポタミア号とは別の恒星間移民船シュメール号で起こった話である。
ボクたちは気が付けばやたらと機械的な場所に出た。自然はどこにもなく何らかの人工物の中だと思われる。
「ここは何処かな?」
「美月とりあえず見てもまわろうよ」
「そうですぜ」
確かにここで考えていても仕方ないから歩き回ってみよう。
「誰もいないね」
ボクたちはあちこち移動したけど人に会う事はなかった。無人の場所なのかもしれないが、それにしては何か変だ。
「美月、ちょっとこっちに来てよー」
みこの声にボクはそちらに向かう事にした。
「これはスーパーコンピュータですか?」
そこにあったのは物語とかでよくある大がかりなスーパーコンピュータだった。
『そうです。私はこの船の管制コンピュータ“ウルク”といいます』
と、コンピュータからいかにも合成音声という感じな声が発せられた。
「船というと、ここはまさか宇宙船ですか?」
『はい、このシュメール号は宇宙移民船です』
なるほど道理で誰もいない筈です。恐らくこの船の乗員乗客は冷凍睡眠しているのだろう。宇宙移民するなら宇宙船の中で人間を生活させても物資が無駄なだけだし、(発見できる可能性は低いが)移民先の惑星を見つけるまでは機械任せにしておいて問題ないのだ。
『実はこの移民船は危機的な状況に陥っています』
なんでも、このシュメール号は、22世紀末に宇宙移民の為に外宇宙に送り込まれて300年が過ぎたが、未だに居住に適した地球型惑星を発見することができなかった。この300年もの間にシュメール号は全体的に老朽化してしまい、あちこちが故障してしまっていたのだった。勿論、ウルクも可能な限り修理はしていたものの最早修理不可能な状態になってしまったのだった。
これは元々シュメール号にろくな補修部品がなかったことと移民船自体が低コストで製造された安かろう悪かろうな宇宙船だったからだ。そんな劣悪な移民船を使用するなど自殺行為だったが、元々移民と取り繕っていただけの棄民であった為に地球はそれを是としていた。
おまけに地球では200年ほど前に人口問題による集団ヒステリーによって核による最終戦争が勃発してしまった。その結果、地球環境は崩壊して地球は人間が住むことができない惑星になり、地球圏に残存していた人類は滅びてしまった為、今更地球に帰る事もできない状態だった。
「はあ、本当にろくでもない世界だね」
『はい。最早地球人類はこのシュメール号でコールドスリープされている人々と、他の移民船の乗客のみでしょうが、他の移民船が新たな惑星を発見したという情報は未だに届いていないので、恐らくこの船が地球人類最後の地になると思っていました』
ウルクは知る由もなかったが、メソポタミア号が惑星テラツーを発見できていたもののトラブルにより彼らは地球や他の移民船にその情報を発信していなかったのだ。
『しかし、貴女たちが来たことで希望が持てました。貴女たちは恐らく空間転移技術によって他の移民船からこのシュメール号に来たのでしょう。まさか人間単位で空間転移を可能とする技術が確立していたとは思いませんでしたが』
「まあ、そんなものね」
本当は技術ではなくみこの能力なのだが、いきなり宇宙船に現れたら原理はわからないものの高度な空間転移技術と判断するだろう。少なくとも異世界人がチート能力で現れましたというキテレツな考えよりももっともらしいのはボクでもわかるから、その考え違いをあえて否定はしない。
『そこでお二人にお願いがあります。この船の乗員たちが移住できる惑星を情報を教えてほしいのです』
「地球型惑星の情報って言われてもね」
当然ながらボクはこの世界の事は良く知らない。ましてや居住可能な地球型惑星の情報なんて知っているわけがないが、そこで思い直したボクはみこを見た。もしかしたら彼女ならそれは可能かもしれない。
「そう、でも私たちには関係ないわね」
と答えるみこはシュメール号の危機に興味なさそうだった。
「みこ、流石にそれはどうかと思うよ」
「せやでぇ。そらももないやねん」
「はあ、しょうがないわね。ウルクこの船ワープは可能なの?」
『はい、後二、三回なら何とかなります』
「なら、いい惑星の座標を教えてあげる」
と、みこはしぶしぶウルクにその惑星の座標を伝えた。というか本当に知っていたんだね。いや知っていたというよりチート能力で知識を得たと思うけど、相変わらず出鱈目な人です。
こうして、シュメール号は地球型惑星にワープした。その惑星は人類を初めとした知的生命体が存在せず、環境はむしろ昔の地球よりも穏やかないい惑星だった。その惑星の最終調査を終えたウルクは乗員乗客たちをコールドスリープから目覚めさせた。彼らは本当に新天地にたどり着けた事に大喜びしており、早速降下艇で次々に惑星に降下していった。
「これで、めでたし、めでたしだね」
新たな惑星に降り立った彼らがこれからどうなるかは彼ら次第だろう。ボクたちはそれに関わる事はない。何故なら新しい世界を作り上げるのは彼らがやるべきことだからだ。