オーゼンの拾いモノ   作:ぽぽりんご

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第13話_おなかすいたよ

 

 

 その日の最後は、展望台で締めくくることにした。

 展望台は、オースの町を覆う山の上にある。登るのは流石の私も疲れたが、登った価値はあった。

 島の内側を見ると、日が落ちてきて、夕日に照らされたオースの町を一望できる。時間と共に影が伸び、徐々に闇へと覆われていく。島の外側を見れば、見渡す限りの海、海、海。奈落はまさに、絶海の孤島というのが相応しい場所にある。

 そんな絶景を同時に臨めるというのに、ここは随分と寂れている。少し勿体ないのでは?

 

 視線を上げると、水平線に沈みつつある太陽が目に入った。

 海の上で、陽炎のようにゆらめく光。あと数分で見えなくなってしまうのは、少々名残惜しい。

 海の上には、ぽつぽつと船が見える。町の規模と比べると、奈落を訪れる者は多すぎるため、ああいった宿や補給源が必要となるのだ。たしか、そう教わった……はず。

 

 

 日が沈むにつれて、空の色に変化が見えた。

 青から赤へ。太陽と逆方向の空に目を向けると、青と黒のグラデーションが広がっている。

 そして、一つ、また一つと明かりが灯り始める。

 星だ。もうすぐ、この空は星で満たされる事だろう。

 

 視線を下げると、オースの町並みが様変わりしていた。

 まるで、眼下にも星空が現れたかのようだ。

 星に見えるのは、家々が付けた明かりだ。

 この町は山に覆われているため、すでに暗闇に包まれている。だから、空が星で覆われるより、地上が光で満たされる方が早い。

 

 風が冷たい。

 太陽が姿を消すと、とたんに肌寒くなる。

 すこし体を丸めて耐えつつ、私は風景の移り変わりを楽しんだ。

 

 空には、満天の星。

 眼下に広がるは、町の灯火。

 そんな中、唯一奈落だけが、ぽっかり暗闇になっている。

 

 

「……ん? ジルオ、寝てるのか?」

 

 やけに静かだと思ったら、壁を背に座り込み、眠ってしまっている。

 まぁ、あれだけ連れ回したら疲れもするか? 普通の子供なら、この展望台に来るだけで一苦労だろう。一日中歩き回ったあとで山登りは、さすがに酷だったか。

 

「むしろ、よくついてきたというべき? 私の基準は、自分とオーゼンだし」

 

 私はともかく、オーゼンを基準に置くのはおかしいことぐらいは分かる。

 ここまでついてこれたジルオって、なにげに凄いのでは。この年で赤笛らしいし、将来的にオーゼン並のゴリラ系霊長類に至る存在なのかもしれない。

 

 私は、ジルオの寝顔をじっと見つめた。

 灰色の髪が目立つ、イケメンである。よくよく見ると、細い体の割に筋肉量は多い。二の腕をつまんでみると、ガチガチである。子供っぽくない。ぱっと見は普通なのに。

 次に、ほっぺたを両側からひっぱってみた。

 

「馬鹿な……めっちゃ伸びる! この触り心地は神秘だ」

 

 顎は鍛えていないのだろうか。こんなんじゃ、深層の生き物を補食するのは難しい。なんでも食えないと、オーゼンのようなゴリラにはなれまい。

 や、なる必要ないけど。

 

 けっこう強く引っ張っているが、目を覚ます気配はない。熟睡していらっしゃる。そこまで疲れたのか。悪いことをしたな。

 

 

「……ん? なんだろ」

 

 ジルオで遊んでいると、視界がぐにゃりと歪んだ。

 

 目が回る。

 

 気持ち悪い。

 

 ジルオから手を離して、少し離れる。特に問題は無い。めまいは一瞬だけ。

 地上に上がってからたまに起きるが、なんだ。上昇負荷だろうか。この展望台、けっこう高い位置にあるし。

 

 

 考えてもわからん。こんな時は、おいしいご飯を食べるに限るな!

 懐から携帯食を取り出す。

 昼のあいだに買っていたのだ。私にぬかりはない。

 平べったいアレを干して作る……アレって何だっけ。名前はどうでもいいが、これは美味しいのだ。たしか、そうだったはず。

 

 口に入れて、噛む。

 

 

 

 痛い。

 手を噛んでしまった。

 落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちて落ちてるよ

 はて?

 私は、何をしようとしていたんだっけ。

 なぜ、自分の手を噛まねばならんのだ。

上を見て上を見て上を見て上を見て上を見て 上を見て上を見て上を見て上を見て上を見て 上を見て上を見て上を見て上を見て上を見て 上を見て上を見て上を見て上を見て上を見て上を見て上を見て $/ピョ#

 ああ、そuだった。

 腹が減ったから、飯を食お%としていたのだった。

 腹が減り過ぎて、人の真似をしている余裕がない。つらい。

 さっき∃で手に#&か持っていたはずな否だが、見てない。落と数しまった戸のではと思う?

帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきた帰ってきたもう一度

 まぁいい。もう一つ取りだそう。懐にまだあったはず……うん、どこにあるのだったか? たぶんこの、&Gいパサパサした手の触る……ああ、そうだ。この中に食べ物を入れておいたのだった。どうやって開けるんだったっけ? この丸いものをどうにかしたら開いたような……む、丸いのが取れてしまった。なんだこれ。ボタン? ボタンって何? 押せばいイイ? よくわからないが、開いたので良しトししシよう。

後ろにいる後ろにいる後ろにいる後ろにいる後ろにいる後ろにいる後ろにいるよ ←

 中に人のものを頬張る。不味い。固い。なだんこれ。かみ潰していてみたが、これは口にたるべ食でわないきすがる。

 吐きしだて、べつの口のを中にいれる。こ%どはもんだイなすうだ。いいイたくないし、眩しくもないし。

 つぎに無くしたものは、おしいかった。あじすがる。こいうのうは、なんいとうだのったか。あまい? それとも、あいつだっけ。どっちもでいいや。

 

 

「……お?」

 

 気づくと、視界が光る点々で埋め尽くされていた。

 なにこれ。なんで光ってるの。意味わかんない。お星さまっていうんだっけ。

 手を伸ばしてみるが、星には届かない。どうすれば届くだろうか。

 

 どうにもならなそうなので、諦めた私は力を抜いた。降ろした手が、固くて平べったいものに触れる。冷たい。手だけではなく、背中全体にひんやりとした感触。前方に手を伸ばしても何もないが、後ろは逆にごつごつとした何かがあるので、手を伸ばせない。地面? じゃまでは? こんなもの、なくていいのに。

 

 首を回して周囲に目をやると、すぐちかくに何かいた。

 たちあがって、そばまで行ってみる。

 しろっぽい頭。ほそいからだ。みじかい手足。ふれてみるが、動かない。うごきそうな見た目をしているが、これはうごかないのだろうか。

 手でふれてみる。うごかない。ひっぱってみる。うごかない。だめっぽい。

 うーん。なんだっけこれ。知ってるような気がするんだけど。こう、手でふれてみょんみょんみょんしているとおもいだせるような。

 

 

 ……ああ、そうだ。思い出した。この子はジルオ。私と一緒に、ここにきた子だ。

 

 

「あれ」

 

 

 周囲を見回すと、見覚えのない場所に私はいた。

 なんでそんな状況になってるんだっけ。覚えていない。どこだ、ここ。

 

 たしか、国のお偉いさんに命令されて嫌々飛行船に乗り、穴の中に突撃していって、どかーんとなって登っていって、ゴリラの化身であるオーゼンと一緒にひたすら不思議空間を歩き回っていたはずでは。

 

 うーん、頭が働かない。働きたくないでござる。眠い。四角く丸まって眠ってしまいたい。今の私は、四角くないけれど。

 

 

 しばらく悶々と考えていたが、やはり答えは出ない。

 開き直るべきか? 覚えていないものは、どうしようもないのでは。

 私は、そう結論づけた。

 

 だから。

 

 

「寝よう。それが一番賢い選択肢だ」

 

 

 それだけ言って。

 私は、その場に倒れた。

 

 

 

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