オーゼンの拾いモノ   作:ぽぽりんご

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第8話_アビスぶらり一人旅

 

■深界二層 一日目

 

よくよく考えてみると、ベニクチナワをあっさり始末するなんて、もしかして私って強いのではないのだろうか。やはり天才なのでは?

いや、確信を持って言える。間違いなく天才だ。

 

勝てる! 相手がどんなヤツであろうとも、負けるはずが無い!

私はいま、究極のパワーを手に入れた!

ふへへ、イメージするのは、常に最強の自分なのだ!

もう何も怖くない。

敗北を知りたい。

 

 

 

 

■深界二層 二日目

 

あかん、腹減った。

 

 

 

 

■深界二層 三日目

 

敗北を知った。

ただの一度の勝利もない。

空腹には、誰も勝てない。

お前こそがナンバーワンだ。

 

 

 

 

■深界二層 三日目 そのに

 

ふっと意識が遠くなったかと思ったら、次の瞬間、周囲の環境が一変していた。

何か鋭利な物で、ズタズタに引き裂かれている。

なんぞこれ。

 

あと、口の中がじゃりじゃりする。

この辺に生えてる植物……ほとんど砂の塊のアレを口にしたのだろうか。

とてもまずい。

 

 

 

 

■深界二層 四日目

 

そもそも、こんな所で食料調達するのが無理筋なのでは?

ここは三層との境目。ほとんど水も無く、ゆえに食料も手に入るはずがなかった。私は馬鹿か。

 

たしか、二層にはシーカーキャンプなるものがあったはず。そこなら食料が手に入る。はぐれた時用にピックアップしていた合流地点としても、オーゼンと話をしていた。

如何にゴリラーマンオーゼンと言えども、数日で大断層を登ってくるなど不可能。

階層の境目もピックアップポイントとして挙げていたので、伝言を残す事はできる。

以上を踏まえると、シーカーキャンプに行くと書いた紙をポイントに埋めるだけして、さっさと向かうが吉であろう。

 

 

 

 

■深界二層 五日目

 

でっかい鳥……ナキカバネが襲いかかってきたので、返り討ちにしてやった。

やった、食料とったどー!

肉っ! 食わずにはいられない!

今夜は丼カツだ!

 

 

 

 

■深界二層 六日目

 

でっかい蜘蛛が襲いかかってきた。

切り裂こうとしたら意外と堅くて焦ったが、衝撃には弱かったようで、ぶちゅっと潰したらミンチになった。

えぐい。こいつは、流石の私も食えない。

 

 

 

 

■深界二層 七日目

 

また鳥が襲いかかってきた。

おいおい、瞬殺だよ。食糧ゲットだぜ!

まじめに相手をするのも疲れるので、今回からは、体の一部を網状に変化させて捕まえる事にした。

鉄と炭素を使えばかなりの強度になるので、鳥が相手であればこれで十分であろう。

ふへへ、敗北を知りたい。

 

 

 

 

■深界二層 七日目 そのに

 

お肉はなぜ、こんなのに美味しいのか。

神が使わしたもうた、天の恵みなのだろうか。

それとも、天よりも偉大な存在である私に、神々が貢物をしているのかもしれない。

 

おお、神よ。

どこにいるのか知らないが、神よ。

今夜は焼肉です。

 

 

 

 

■深界二層 八日目

 

この辺りは鳥が多いようだ。

おまけに私を狙って来るので、簡単に返り討ちにできる。

入れ食いなのでは?

 

おっ、また鳥が私を見ている。

飛んで火にいる夏の虫とはこのことか。

私が美味しく頂いてやる。

 

ふへへ……だ、駄目だ。まだ笑うな……堪えるんだ……し、しかし……

 

 

……あっ、逃げられた。

 

 

 

 

■深界二層 八日目 そのに

 

やばい、塩がなくなりそう。

節約せねば。

しかし節約すると、食事がまずい。

塩とは、究極の調味料じゃったか。

 

 

 

 

■深界二層 八日目 そのさん

 

塩がなければ、作り出せばいいじゃない!

我が力を持ってすれば、体を変化させて塩を抽出することも容易!

 

……いや待て、それはどうなのだ? 自分の体を食べているようなものでは?

よくよく考えてみると、自分の体を食うなんて狂気の沙汰である。

たとえ絶海の孤島で遭難しようとも、自分の体を食う奴などおらぬであろう。

 

 

 

 

■深界二層 九日目

 

ひゃっはー、水だぁ!

魚までいやがる。

私が美味しく食べてやるからな、ふへへ。

 

 

 

 

■深界二層 九日目 そのに

 

魚を食べたら、体がめっちゃかゆくなった。やばい、毒か。

さすがにしんどかったので、大量に水を飲んでから体の水分をしぼりとって、毒気をぬいてみる。

やだ、私の体、雑巾みたい……!

 

 

 

 

■深界二層 九日目 そのさん

 

ナキカバネに変な言葉を覚えさせた奴は誰だぁ!

 

 

 

 

■深界二層 十日目

 

なんか、猿の集団がじっとこっちを見てくる。

しかも、ついてきやがる。

なんだこいつら。

 

 

 

 

■深界二層 十日目 そのに

 

猿ども、ウンコ投げつけてきやがった!

万死に値する。

 

 

 

 

■深界二層 十日目 そのさん

 

こっちもウンコを投げつけてやった。

 

 

 

 

■深界二層 十日目 そのよん

 

こんどは集団でウンコを投げつけてきやがった!

 

ふ……ふふ。まったく、人をイライラさせるのが上手い奴らだ。

 

 

 

 

■深界二層 十日目 そのご

 

絶対に許さんぞ、猿ども!

じわじわとなぶり殺しにしてくれる!

 

 

 

 

■深界二層 十一日目

 

逆さ森に入ったところで、とうとう寝込みを襲ってきやがった。

一匹血祭りにあげたら、あっさり逃げていったけど。

 

しかし猿ども、いまだ遠巻きにこっちの様子を伺ってくる。

邪魔くさいので、奴らの足場としていた木の枝を切り落としてみることにした。

ふはは、体を細く伸ばせば数十メートル程度の距離、私にとって無いも同然よ。

足場を失った奴らは、はるか下まで落ちていった。

もう会うこともないだろう。アディオス!

 

 

 

 

■深界二層 十二日目

 

湖があったので、水浴びができた。

とても素晴らしい。

なんかカバみたいなのに襲われたけれど、当然わたしが美味しく頂きました。げっぷ。

 

 

 

 

■深界二層 十三日目

 

シーカーキャンプに到着した。

こんなに時間が掛ったのは、きっと遠かったからであろう。

断じて、道に迷ったわけでは無い。

 

しかし、どうだろう。このまま入ってもいいのだろうか。

子供が一人で訪ねて来るなんて、ホラー以外の何者でもないのでは?

 

 

 

 

■深界二層 十三日目 そのに

 

どうするか悩んだ私は、姿を変えることにした。

オーゼンの夢に出てきた金髪の馬鹿っぽい奴……なぜか名前を思い出せないが、あいつの姿だ。

これなら怪しまれずにシーカーキャンプに入れるに違いない。

声はまぁ、適当な調整だが。うん。なんとかなるだろう。

 

 

 

 

■深界二層 十三日目 そのさん

 

なんで服のサイズがピッタリなの?

まぁいい。突撃あるのみ。

 

 

 

 

■深界二層 十四日目

 

思いっきり怪しまれた。

が、なぜ四層に向かったはずの白笛(ライザという名前らしい)が一人で戻ってきているのか、また何かやらかしたのでは、という怪しまれ方のようだ。

まさか、別人だとは思うまい。ふふ。ふはは。

 

しかし「また何かやらかした」とは穏やかではない。

ライザはトラブルメーカーなのだろうか。

緻密な計算の上で行動し、すべてを計画通りに完遂する私を見習うと良いぞ、ライザよ。

いや、凡人に天才の真似をしろというのは酷だったかな。はっはっは!

 

 

 

 

■深界二層 十五日目

 

キャンプにいる連中からの、尊敬の目が心地よい。

物理的な尊敬の念(お菓子とか)までくれる。

きちんと調理された食事とは、ここまで美味しいものか。

オーゼンお前……料理、下手だったんだな。

 

 

 

 

■深界二層 十六日目

 

たのしい!

 

 

 

 

■深界二層 十七日目

 

おいしい!

 

 

 

 

■深界二層 十八日目

 

私、ここに住む。

オーゼン? ああ、いたね。そんなやつも。

 

 

 

 

■深界二層 十九日目

 

オーゼン登場。

ドアを開けたら、いきなり目の前にいたのである。

おもわず叫んでしまった。どんなホラーでも、この恐怖を上回ることなど出来やしない。

するとオーゼンは「うるさいよ」の声と共に、わたしを

 

 

 

 

■深界二層 二十日目

 

どうやら私は、丸一日も寝ていたらしい。

なぜそんな事になったのか。理由はまったく分からないのだが、妙に頭がズキズキするのと関わりがあるやもしれぬ。

 

あとオーゼンの野郎、私の擬態を一目で見抜きやがった。

偉大なる私のこと、隠しても隠しきれない威厳のようなものが出てしまっていたのだろう。気をつけなければなるまい。

 

 

 

 

■深界二層 二十日目 そのに

 

オーゼンは、私の姿に興味津々だった。

ここまで人の姿を模擬できることに驚いたらしい。

あと、ライザの姿を知っている事に疑問を抱かれたが「夢で見た」と回答すると、意味ありげな笑みを浮かべた。

 

なんだその笑顔は。怖いぞオーゼン。鏡を見て、自分を見つめ直した方が良いんじゃないかオーゼン。

石化しても、責任は持てないが。

 

 

 

 

■深界二層 二十日目 そのさん

 

オーゼンの「なぜなにレクチャー」を受けた。

ベニクチナワと出会ってしまったシーンだが、あそこは太陽玉を投げると良かったらしい。

 

や、正解と言われても。太陽玉ってなにさ。

いかに完璧超人の私でも、知らないものを活用はできない。

 

太陽玉を知らないと言ったら、不思議な顔をされた。

その後は質問責めである。なぜ。

質問内容は、これまであった出来事を覚えているかどうか、という物だった。

ふ、オーゼンも無駄なことをするものだ……頭脳明晰たる私は、あらゆる事を記憶している。

私のパーフェクトな回答を得たオーゼンは、「ああ、なるほど」と勝手に納得して質問を打ち切った。

 

なんやねん。

勝手に一人で納得するんじゃない。

 

 

 

 

■深界二層 二十一日目

 

明日には出発しなければならないらしい。

なんでも、後続の探窟隊が来るので、変にライザの姿を見せたくないのだとか。

 

とても名残惜しい。

とても、名残惜しい!

 

しかし、地上が私を待っているのだ。

地上のおいしいご飯、そして広大な空が私を待っているのだ。

旅立たねば。

 

 

 

 

■深界二層 二十二日目

 

さらばだ、シーカーキャンプよ!

 

 

 

 

 

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