ルカがボドルザーの説得に失敗していた頃、ワレラ・ナンテス、ロリー・ドセル、コンダ・ブロムコの三人はブリタイ艦隊から他の艦隊に乗り込んでいた。
ゼントラーディ軍は軍規により男と女が同じ艦にいる事が禁じられている。基幹艦隊を構成する分岐艦隊などでさえ、男だけの艦隊と女だけの艦隊で構成されていて男と女が一緒ではない。だから男である三人は女たちの艦隊に乗り込むことはできないし、逆に女が男の艦隊に乗り込むことも出来ない。
しかし、基幹艦隊の制限と言うのは実はこれだけで彼らが男の艦隊に乗り込むだけなら自由だったのだ。これを利用して彼らは水蓮寺ルカのライブ映像を他の艦隊の下級兵士たちに見せていた。
「これが歌と言うものか、何かいい気持ちになるな」
「ああ、そうだな」
「いや、実際に見るともっとすごいぞ」
「そうなのか?」
下級兵士たちにロリーたちがあれこれ教えていた。
「ああ、こんな風に歌に合わせて踊りもしているのがライブっていうらしいが、これが生で見ると本当に気持ちよくなるぞ!」
「そうか、俺も見てみたいよな」
「俺も、俺も」
「それにしても、ルカちゃんかわいいな~」
「そうだな。俺、彼女と会ってみたいよ」
兵士達は映像に映っているルカに魅力されていた。
「ルカちゃんは、ブリタイ艦隊のノプティ・バガニス5631にいるから彼女のライブを見に行こうぜ」
「おお、そうだな。ちょうど暇だしな」
「俺も行くぜ」
彼らゼントラーディは戦闘しかしない。逆を言うと戦闘をしないときは訓練ぐらいしかやることはなかった。だから任務がない時はただ暇を持て余している状態だった。これは文化を一切持たない為に趣味を持つ事もなかったからだ。だから暇な彼らはノプティ・バガニス5631に向かっていった。ロリーたちは水蓮寺ルカのライブ映像のコピーを多くの艦隊に配布していき、それを見た兵士達はルカに魅力されていった。
こうしてボドルザーの知らぬうちにボドル基幹艦隊に文化が広まっていった。
ルカside
「みんなー。今日は私のライブに来てくれてどうもありがとう!」
「うおぉー!」
「ルカちゃん!」
あの三人は上手いことやっているようで、今やブリタイ艦隊だけでなく他の艦隊からも観客が大勢来るようになった。おかげで連日満員御礼状態です。ノプティ・バガニス5631でもかなり広い場所を見繕って臨時のステージを作っているが、客がゼントラーディだけに人が集まるとやたらとスペースが必要になった。
このステージ作りとかはリチャード・ビルラーというゼントラーディがやってくれた。彼はブリタイ艦隊所属巡洋艦の艦長で、例の戦場ライブで私のファンになった人です。彼は地球の文化に興味津々で私に色々と聞いてきますね。
そういえば私が持ち込んだ文化は歌だけですね。文化と一言でいっても実はそれは多彩なんです。地球の文化は色々あるけど、大まかにハイカルチャーとサブカルチャーの二つが主流だと私は考えている。
ハイカルチャーは、学問、文学、美術、音楽、演劇など人類が生んだ文化の中でも、その社会において高い達成度を持つ。かつては貴族やブルジョア階級などの知識や教養がある少数の享受する文化であったが、現代では一般にも広まっている。
サブカルチャーは、特撮、フィギィア、漫画、アニメ、ゲーム、アイドルなどのオタク系趣味を指す場合が多い。この為、私の歌もどちらかというとサブカルチャーの分類なのです。
まあ、私の歌は演歌みたいなジャンルではないから、そういわれても仕方ないですね。それに水蓮寺ルカそのものが漫画の登場人物ですし、私の持ち歌もアニメで水蓮寺ルカが歌っていた物が多いですから。
こうして考えてみると、お菓子とかジュースとかを持ち込むのもありだったかもしれませんね。原作ではロリーたちが持ち込んだお菓子が好評だったし、劇場版でもロリーたちは地球の飲食物に喜々としていたから、ゼントラーディは飲食物もとても貧しいのではないだろうか?
いや、私個人が持ち込める量ではゼントラーディのような巨人の腹を満たすには到底足りないからどの道あまり意味がないかな。
そういえば食文化というように、食事も文化の一種です。それを考えると、いい食べ物を作ろうとか、いい飲み物を作ろうという考えが、ゼントラーディになかったのは無理もないかもしれない。というかゼントラーディは戦争しかしなくて、その戦争に使う兵器でも全自動生産型のプラントで生産されていた物を使っていただけだった。
これなら戦争に直結しない飲食物などは体調を保つ為に必要な栄養補給以外の何物でもなく、カロリーメイトのような味気ないものと水だけという状況なのは容易に想像できる。何というか、昔の英国よりも酷い食事事情を想像してしまいますね。
えっ? じゃあ今のお前の食事はどうしているのかですか? それは事前に栄養剤を持ち込んで、それを水で飲んでいるんですよ。「それじゃゼントラーディと大して変わらないじゃないか」という突っ込みはなしです。私だって好きでそんな食生活やっているわけではありません。ゼントラーディは巨人サイズなのでマイクローン用の食事なんてないんですよ。まあ、あったとしても不味いでしょうから別にいりませんよ。
勿論、ただ単にカルチャーショックを与えたいだけなら、原作でミンメイとカイフンがやったようにキスとかするのもカルチャーショックを与えるのにはちょうどいいですが、あれはアイドルとしては極めて不味い。そもそもスキャンダルでしょう? どの道やる相手もいないしやる気もないからどうでもいいか。
まあ、それはいいでしょう。大体私は歌手ですから、歌で勝負するというやり方が一番です。
それはそうと、こうしてリチャード・ビルラーと文化について色々と話していますが、確かこの人って『マクロスF』の登場人物だったような気がしますね。リチャードがミンメイではなく私の熱烈なファンになってしまったのは原作ブレイクじゃね?と、今更ながら思いますが、良く考えたらどうでもいいか。特に害はないでしょうし、味方は一人でも多いほうがいいですから。