三度目の歌   作:ADONIS+

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12.陥落

ボドルザーside

 

「どういうことだ!」

 

 ボドルザーがあまりの事態に叫んだ。今やボドル基幹艦隊は大混乱に陥っていたのだ。

 

 切欠は彼が管理していたボドル基幹艦隊で急速に歌が広まり、地球に興味を示す者が続出した事だ。

 

 そもそもあの水蓮寺ルカとかいう地球人はブリタイ艦隊で捕虜として扱われている筈なのに今やあちこちの分岐艦隊に自由気ままに赴いてあの歌とやらを兵士達に聞かせていた。兵士達はこの歌にハマってしまい、ルカは一気にボドル基幹艦隊の人気者になってしまった。

 

 ルカは、最初はブリタイ艦隊で活動していたが、他の艦隊の人間がノプティ・バガニス5631におしよせてしまい、元々の乗組員が迷惑することになってしまったので、ルカが直接あちこちの艦隊に赴いてライブをするようになった。

 

 本来ならばこんなことはありえない。軍規を考えればルカは捕虜(ゼントラーディには民間人という概念がないので交戦状態になった地球人は全員軍人扱いになる)として扱われる。つまり監禁しておくのが当たり前なのだ。間違ってもあちこちの艦隊に行き来して好きに行動するなどありえない筈だった。

 

 これはブリタイをはじめとして多くのゼントラーディ人がルカの影響を大いに受けていたのが大きかった。それにルカは別に逃亡を図ったり敵対行動をしたりしていたわけではなかった。もし、ルカがそのような行動に出ていれば彼らもそれ相応の対処をしただろう。しかし、ルカはライブをやって兵士達に歌を聞かせていただけなのだ。これではルカの邪魔をしようとするものがでないのも無理はなかった。

 

 ゼントラーディのボドルザーは文化を知らない。それゆえ文化に対する対処方法などわきまえていなかった。それが祟り、彼が気付いたときにはかなり不味い状況になっていた。

 

 この事態を知ったボドルザーは慌ててルカの抹殺を命令したが、これが兵士達の反発を招きボドル基幹艦隊内部で暴動が起きてしまった。

 

「なんということだ。これがあの娘の本当の力なのか?」

 

 ボドルザーは頭を抱えた。このままでは基幹艦隊が内戦をやる羽目になってしまう。それほどまでに反発する兵士の数が多すぎたのだ。

 

「ボドルザー閣下、大変です!」

 

 そこの兵士が報告に飛び込んできた。また悪い報告か。

 

「全艦隊のすべての軍用回線から水蓮寺ルカの歌が流れています」

 

「なんだと、止めさせろ!」

 

 ボドルザーは慌てる。どう考えてもこの騒ぎはルカの歌とやらが原因としか思えない。そしてそんな歌が基幹艦隊全艦隊に放送されているということは……。

 

 ボドルザーは最悪の状況に顔を青ざめた。

 

 そんな状況でルカの乗るルシファーが、ボドル機動要塞のゲート部分から大型ランチャーを打ち込んだ。

 

「く、奇襲か。被害を報告せよ!」

 

「打ち込まれた大型ランチャーは起爆していません」

 

「何、不発弾か?」

 

 そんなボドルザーの疑問を他所に大型ランチャーからボドル機動要塞の隅々までルカの声が響き渡った。

 

 ルカが打ち込んだ大型ランチャーはガンポットΓ(マクロス7)だ。これは熱気バサラが使った巨大スピーカーを内蔵した対艦装備で、ルカはこれにフォールドスピーカーを内蔵させることで広大なボドル機動要塞に一気に歌を聞こえさせていた。

 

「おおっ!!」

 

「こ、これは…」

 

 ボドルザーはスピーカーから聞こえてくるルカの歌に衝撃を受けた。体の震えが止まらない。

 

「う、ううう、がぁぁーーー!」

 

 ボドルザーは潜在意識が呼び覚まされている感覚に心が震えていた。歌と言うものはこんなにも素晴らしい物なのかと彼は思い知った。

 

「ルカー! デカルチャー!!」

 

 ボドルザーはルカの歌に感激して絶叫した!

 

「うおおおーーー!」

「ルカちゃん!」

 

 ボドルザーの周りの兵士達もルカの歌に激しいカルチャーショックを受けて叫んでいた。

 

 このライブ放送でボドル機動要塞を含めたボドル基幹艦隊全艦隊が一気にルカの歌に魅力されることになった。

 

 

 

ルカside

 

「ルカさん、最高のステージでしたよ」

 

「ええ、リチャードさん、ありがとうございます」

 

 リチャード・ビルラーは、ブリタイ艦隊所属の巡洋艦艦長だ。彼は私の歌をボドル基幹艦隊が使用する全軍用回線でルカの歌を放送してくれたのだ。おかげでボドル基幹艦隊全体に私の歌が広まりカルチャーショックを起していた。

 

 あの三人のおかげでボドル基幹艦隊に私の歌が広まったのは良かったのですが、それに気づいたボドルザーが私を抹殺しようとしたのには慌てましたよ。でも、仲良くなったゼントラーディの方々がそれに反対してくれたおかげで時間稼ぎができました。

 

 しかし、このままでは内戦になりかねないので、ここで一気にやることにしました。諍いなんか起してないで、私の歌を聞けぇー、ってワケです。

 

「僕もみんなに貴女の歌を知ってもらいたかったので協力したのです。お礼には及びません」

 

「そうですか。これで、和平への道が開けますね」

 

 私の歌はボドルザーに届きました。歌で分かり合えるようになったのです。

 

 原作ではミンメイですらボドルザーをミンメイアタックで抹殺する事で戦争終結に導きましたが、私は純粋に歌で戦争を止めてみたかったのです。だからボドルザーを殺すのではなく、歌で彼と分かりあって、彼に地球の文化の素晴らしさと重要性を知って貰いたかった。

 

 どこぞの自由なニートではありませんが、殺さずという奴です。(最も彼は十分殺していたでしょうが)

 

 後は、地球の文化の素晴らしさを説明して和平を結んで地球と交流を持つように説得するだけですね。原作でもゼントラーディと地球人の交流はできていました。原作とは違い大規模な被害が出ていないだけに交流は原作に比べてそれほど難しくないでしょう。

 

 原作では地球人とゼントラーディの確執は、ゼントラーディが統合政府に反発したとか地球の文化に馴染めなかったからと言われていますが、地球人もゼントラーディに反発していたはずです。総人口約100億人を誇っていた地球人が戦後にはたったの約100万人しか生きていなかった訳で、地球が壊滅した挙句に家族、親戚、知人を失った地球人たちがゼントラーディを恨むのは当然です。

 

 原作では描かれていませんでしたが、この辺りの確執は本当に根深かったでしょう。そうでなかったらあれほど長く混乱が続くわけがありませんからね。

 

 それだけに今回は共存共栄のハードルは大きく低下しています。だからこれ以上戦火を広げることなく和平に持ち込まないといけません。

 

 でも、地球統合政府はゼントラーディと戦争状態になったことを隠しています。これでは和平交渉などやりにくいでしょう。

 

 第一マクロスにいる両親も厄介者扱いされている状況は困ります。下手をすれば口封じの為にマクロスの民間人たちは抹殺される恐れすらあります。何しろ今でも死人扱いですからね。

 

 これは計画通りに仲間に手を貸して貰うしかありませんね。ルリに事実を暴露させて世論を和平に傾ける。そうすれば当然ながら地球は混乱するでしょうが、和平を結ぶには仕方がない事です。

 

 まったく地球統合政府が事実を隠蔽なんかするから話がややこしくなるのです。彼らにはその責任はきちんと取ってもらいましょう。

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