ルカは会談の後で監視付きでマクロスを散策していた。グローバル艦長にはマクロスには両親がいるはずなので会いに行きたいと申し出ると快く了承された。
最も案内人と称して軍人を監視に付けているのは当然の事なので、私も同行するのは女性にすることを条件にそれを了承していた。女性を条件につけたのは男性に付きまとわれるアイドルというのはイメージ的によくないからです。
まあ、アイドルというのはイメージが命ですから、身辺を綺麗にしておくように普段から気をつけておくもので、こうした事は一度目の人生でみっちり仕込まれましたよ。
それで監視役になったのが早瀬未沙中尉です。まさか原作キャラが選ばれるとは思わなかったですね。この時期の彼女はどうも軍人として型にはまりすぎて硬いですね。まあ、ロイ・フォッカーみたいに柔らか過ぎるのも困りますけど。
さて、このマクロスは南アタリア島の町をそのまま取り込んでいます。しかも私の介入の結果、一度もトランスフォーメーションをしていないので、町が破壊されることもありませんでしたし、区画整理も行われていません。だから探しやすい筈。
そういえば、アニメを見ていたときにトランスフォーメーションで町が破壊されていくのには呆れたり、一々変形しないと主砲が撃てないなんてそれなんて欠陥品と思ったりしました。
「ルカ!」
こうして自宅にたどり着いた私に駆け寄る中年の女性。彼女はルカの現世での母親だ。その母は私に抱きついた。
「無事だったのね。今までどれだけ心配したことか!」
「お母さん、心配させてごめんなさい」
両親には本当に悪いことをしてしまった。計画上仕方ないとはいえ生き別れになり心配をさせてしまった。いえ、そもそも貴方達の本当の子供と入れ替わりその立場を奪ったことは、貴方達の本当の子供を抹消したという事だ。
所詮、私に出来るのはまやかしの親子ごっこにすぎない。だけどできるだけ娘として演じてみせます。それしか私にはできないから。
「あなた、ルカが、ルカが帰ってきたわ!」
「なっ、何だと!」
母に言われて父が飛び出してきた。
「ルカ! この親不孝者が! 今までどこに行ってた!」
父は動転しているのか、妙にずれた事を言っている。まさか私が今まで家に帰らずにマクロスの中に潜んでいたのかとでも思っているのでしょうか? それともお決まりの家出娘を叱り飛ばす言葉をいったわけかな? でも、ここは地球じゃなくて宇宙戦艦の中にすぎないという異常事態ですからもっと柔軟に対処して欲しいですね。
「落ち着いて父さん。別に私は家出をしたわけではありませんわ。大体父さんたちこそ町ごと宇宙に行っちゃったんじゃない」
「どういうことだ?」
父は私の言葉にわけがわからないという顔だ。
「私は今日このマクロスに乗り込んだわけです」
「なにっ、まだ地球についていないのにか?」
そうか。地球に到着していなかったので、今日乗り込んで来たという可能性を考えなかったわけですか。まあ、別にいいですけどね。
「そのことで、お話があります」と早瀬未沙が話しかけてきた。
さて、どうなることか。両親にはいろいろと話さなければいけませんね。
「そんなことは許さん!」
「そうですよ。あまりに危険すぎます!」
これまでの経緯と、これから私がゼントラーディと地球の和平を行うために活動することを両親に話していたが、やはりというべきか父は反対した。
「でも、彼らとの相互理解を行い、速やかに和平を結ばないと本当に不味いのよ」
「そんな事は政府や軍がすることだ! お前がすることじゃない!」
「そうよ。ルカがそんな事をしなくても政府や軍に人がやってくれるわ!」
政府と軍に任せればいいですか。そんな言葉が出るなんて笑えますね。
「政府と軍はあてになりませんわ」
「それは、どういうことかしら?」
私の統合軍批判と受け取れる発言に早瀬中尉が不機嫌そうだ。なるほど彼女は統合政府と統合軍がやった事を知らないのか。まあ、マクロスの軍人達がそれを知るのは原作でも地球到着後だったから、知らないのも無理はありませんね。
「早瀬中尉、貴女は統合軍の象徴たるマクロスが異星人の艦隊に先制攻撃をしたために異星人との戦争が勃発したのは当然知っていますよね」
「ええ」
そう、これは軍人なら知っていて当たり前の事だ。
「では統合政府と統合軍はそれを隠蔽して、マクロスは試験航海に出ており、南アタリア島は反統合勢力のゲリラ活動により全滅したという偽りの公式発表をしたのはご存知ですか?」
「な、何ですって!」
早瀬中尉が驚愕した。そんな事態になっていたとは想像もしていなかったのだろう。
「そ、それはどういうことなのだ!」
父が顔色を変えています。
「つまり政府や軍によってマクロスの民間人は死人にされたんですよ。今や政府や軍にとってマクロスにいる民間人なんて邪魔者でしかないわ。それなのに、まだ政府や軍に任せればいいなんて言えますか?」
あまりの事態に両親が絶句した。
「だから私は自分のやるべき事をします。親不孝な娘を許してください」
そう言って、私は家を飛び出した。
「ルカ!」
「ルカ待ちなさい!」
両親が引き止めようとするが私は構わずその場を後にした。計画の為にも、これ以上引き止められてはいけない。
本来ならば私はここで両親に会うべきではなかった。両親が私のやろうとしていることに理解してくれるとは到底思えない以上、会わないほうがよかったのだ。
しかし、心配をさせ続けるのも良くないと思って会う事にしたが、結果としては余計悪くなってしまったと思う。本当に世の中はままならないよ。
地球side
地球統合政府。それは異星人の戦艦が落下したことで異星人の存在とその異星人が大規模な戦争をやっている事が確認した地球各国が地球を一つに統合することで異星人に対抗しようとしたことから設立された。
とはいえ、彼らが異星人に無闇に敵対していたわけではない事は、例え異星人と遭遇しても決してこちらから攻撃しないようにと決定した事からもうかがえた。
しかし、開戦後の統合軍は危機感に欠けていた。大規模な星間戦争を行っている異星人と戦争状態になったという事の本当の意味をきちんと理解できていたのかあやしいものであった。
そんな地球では、一週間前からネットワークを介して秘匿していた情報が暴露されていた。
統合軍の象徴であるマクロスが異星人の艦隊に先制攻撃を行い、異星人と交戦状態になった事。南アタリア島にいた民間人は異星人の攻撃で被害を受けているが、多くがマクロスに救助されている事。しかし、統合政府はこの事実を隠蔽してマクロスにいる民間人を不当に死亡者扱いにしている事。
それらが映像付きで地球全土に一気に広まってしまった。
当然ながら、それを知った民衆はパニック状態になり、多くの者が政府に猛抗議をおこなった。政治家たちの支持率は急落して政界も軍部も大騒ぎとなっていた。
そんな混乱の最中にマクロスからとんでもない話が飛び込んできた。
それはゼントラーディと称する異星人が地球と和平を申し込んできたという情報だった。だが、同時に彼らが圧倒的というべき大艦隊を有している事や、彼らの強硬派が地球に小惑星を落とすことを検討している事も知る事となった。
これには誰もが頭を抱えた。直径1000kmの小惑星の迎撃など反応弾はもとよりグランドキャノンでも不可能だ。第一グランドキャノンはまだ完成していない。
例え小惑星が落ちてこなくても、500万隻もの大艦隊が攻め寄せれば地球などあっという間に壊滅してしまうだろう。
最早勝算などありはしない。地球と人類の滅亡という最悪の事態を避ける為に降伏もやむなしという状況だった。
だから、この和平の提案に乗るしかなかった。例えそれが和平とは名ばかりの事実上の降伏であったとしても地球が生き残るにはそれしかないのだ。
解説
■情報の暴露
ホシノ・ルリが地球統合政府が隠蔽していた情報をネットワークを使って盛大に暴露していた。彼女にとってこの程度の工作は朝飯前であった。
■グランドキャノン
異星人との戦争に備えて、広域迎撃兵器として建造された超大口径エネルギー砲。地球各地と月面で建造に着手していて予定の五号機まで完成すれば地球圏全域をカバーでき月軌道内の防衛力は大幅に上昇する予定だったが、建設規模の巨大さと反統合同盟勢力の妨害工作によって原作で完成したのはアラスカ統合軍総司令部に存在する一号機だけであった。ちなみに、このグランドキャノン一号機は2009年11月頃に完成している。