2020年。ルカがアイドルになって10年もの歳月が流れたこの年、ルカは周囲から惜しまれつつもアイドルを引退した。この時にはルカは26歳になっていて、アイドルをやるには年齢的にきつくなっていた。最も外見は15歳の時からまったく変わっておらず、その美貌には一切の衰えは無かったが、実年齢というのはこの世界では重かったし、これ以上不老の体を晒すのは限界だった。
それにエデンでもそれなりにアイドルが育ちつつあり、いつまでもルカがトップアイドルをやり続けてしまうと後進が育たないだろう。
私の代わりとなる人材(アイドル)がいれば、これからも何とかなると思う。その道を私が切り開いたわけですから。
この時期になると、エデンだけでなく地球でも地球人とゼントラーディとの共存共栄は定着していた。最も地球にいるゼントラーディは極少数に過ぎず、大半はエデンや他の植民惑星にいた。
また原作通りに宇宙進出が進んでいて、移住可能な惑星を求めてエデンから移民船団が送り出されていた。これは銀河では未だに巨人族による戦争が続けられており、エデンや地球がそれに巻き込まれて文化が消失してしまう危険があったからだ。
これはメガロード計画と呼ばれて実行されている。
ちなみにこの世界ではマクロスという名が移民船団に使われることはないだろう。
原作ではいろいろあって地球文化の守護像という扱いになっているが、この世界では統合戦争と第一次星間大戦を引き起こした災厄の艦という扱いで忌み嫌われていた。
そうなると、マクロス7とかに出ていた新マクロス級移民船団とかの名前も原作とは違う事になるし、一体どういう名称になるか興味深いですね。
さて、もう用はないので早速撤退しましょう。一応この世界の人々の為にもバロータ惑星第四惑星にはプロトデビルンが封印されているので、決して近寄らないように置手紙に書いておきましょう。
原作では調査隊があの惑星で調査活動をしたがために肉体を乗っ取られて封印が解放されるきっかけになっています。無駄かも知れませんが警告だけはしておきましょう。後はこの世界に人々が解決すべき問題です。
しかし、こんな置手紙を残していると、また疑惑として騒がれそうですね。まぁこの世界から撤回するから構わないでしょう。
こうして私はこの世界から撤退して、三千世界監察軍に帰還した。
「ふむ、ご苦労だったね」
帰還した私にトレーズはそうねぎらいの言葉をかけてくれた。
「いえ、それよりも本当にお世話になりました」
監察軍はトリッパーを支援する組織であるとはいえ、今回の干渉では監察軍からかなりの支援を受けていたので、礼をするのが当然であった。
「何、それほど負担になっていないからかまわないよ。君もそれは弁えてくれたようだからな」
そう、確かにルカは多くの支援を監察軍から受けていたが、それはそれほど多大なものではなかった。あくまで目的を果たすために必要最低限度すれすれの支援だったのだ。それはルカが支援の内容を吟味しておいたからだ。
中には度が過ぎた要請をして注意されるトリッパーもいる中で、ルカはそれなりに上手くやったと言える。
「それで、これからの都合ですが……」
「うむ、君も少し疲れただろうから、まずは休暇を取って十分に休んでからアイドルデビューという形になるだろうな。その辺りは君がその気になってからやっておくとしよう」
「そうですね。私もその方がいいですね。よろしくお願いします」
私はトレーズに頼んでおいた。
「では、ゆっくりと休みたまえ」
「ええ、そうさせていただきます」
私は一礼して司令室から退出した。
「あれルカさん、帰還していたんですね。久しぶりです」
「ランカさん、久しぶりです」
司令室を出て暫く歩いているとランカさんに会った。ここ十年ほど監察軍に戻っていなかったので、本当に久しぶりです。
「ルカさんが戻ってきたということはもう終わったわけですか?」
「ええ、やるべきことは終わりました」
そう、あの世界でやる事は終わりました。思えば大変な日々でしたが、終わってみればかけがえのない日々でしたね。
「そうですか。お疲れ様です。あたしは用事があるから、これで失礼しますね」
「ええ」
そういうとランカが離れていった。その後ろ姿を見ながらルカはこれからに思いをはせた。あの世界でのアイドル生活を終わってしまいましたけど、これからは仲間(トリッパーたち)とブリタニア帝国の大観衆が待っている。
だから、私の三度目の歌はまだまだ終わりません。
解説
■不老の体
ルカは特殊なナノマシンの効果で、十五歳の時から変化しておらず、アイドルを引退する二十六歳の時には周囲を誤魔化すのは限界だった。
あとがき
どうもADONISです。これで、三度目の歌は終わりです。少々変わり者の主人公であったので、ちゃんと書けるのか心配でしたが、何とか最後まで書き上げる事ができました。今回のSSはこれまでの反則的な能力を持つチートオリ主というパターンから外れて、戦いではなく歌で物事を解決しようとする異色のトリッパーだったので、斬新でよかったと思います。(実際、ルカみたいなトリッパーはそういないと思いますし)それでは、また別のお話でお会いしましょう。