三度目の歌   作:ADONIS+

2 / 20
2.一度目と二度目

 そんなわけで私は転生を繰り返すことになりました。転生一度目は望み通り『ハヤテのごとく!』の水蓮寺ルカに転生した。

 

 私の両親は原作通りで、父は一発屋のロック歌手で、母はB級アイドルだった。その両親は夢破れた自分達の代わりに私に夢をかなえて貰おうと芸能事務所『フライ・ドルフィン』を設立して、私が幼少の時から徹底的にアイドルとしての教育を施して、実力を身につけさせていました。

 

 この時期の私は相当苦労しました。休みなどなく、年末年始も歌やダンスのレッスンに励む日々。しかし、いくら私が努力しても中々アイドルになれなかった。

 

 それもその筈です。アイドル志望の人間なんか掃いて捨てるほど存在します。それなのに両親が経営している弱小事務所では芽が出る訳がありません。

 

 実際、私よりも遥かに実力が劣る娘でも大手芸能事務所のバックアップを受ければ容易くアイドルになれたのに、私はいつまでたっても無理でした。ここまで来ると私も嫌でも理解できました。原作のルカの行動は正解だったと。

 

 原作では水蓮寺ルカは両親に秘密で超大手芸能事務所のオーディションを受けて、その圧倒的な実力で合格。そしてアイドルになったわけですが、両親は自分達の手でルカをアイドルに出来なかったことを苦に、クリスマスイブに1億5028万1000円の借金を残して蒸発してしまいます。

 

 この事はルカの心に深い傷を残していましたが、それでもルカは人気アイドルに成れています。

 

 でも、この時に私はある意味で悪い意地を張っていました。今のままでは駄目だと分かっていてもそれでもと、必死にやっていたんです。

 

 これはその時の両親の希望をかなえてあげたいという親孝行の思いもありましたが、私が本当の水蓮寺ルカが送るはずだった人生を奪っている存在である為に、両親に対する後ろめたさを隠したいという気持ちがあったのかもしれません。

 

 結果を言えばその努力は報われませんでした。確かに成功した人の大半は努力しています。でもひたむきに努力すれば必ず報われるという訳でもないのです。一向に芽が出ず借金だけが膨れ上がり月日だけが過ぎていきました。

 

 当然ながらそんな生活がいつまでも続くわけがありません。破綻が来るのは当然でした。私が高校を卒業する頃にはどうにもならなくなり、両親は借金を苦に私を巻き添えにして無理心中を行いました。享年18歳。

 

 こうして一度目の転生は無残な結果になりました。

 

 後から考えてみると、原作よりも酷くなっていました。結論からいえばアイドルとしてデビューしたいなら大手の芸能事務所のような大きな後ろ盾がないとどうしようもないと判明しましたね。

 

 不幸体質の改善という特典のおかげで日常的に無闇に不幸になることはありませんでしたが、それでも不幸がなくなるわけではなかった。まあ、選択を間違えれば運勢が並みの人でも不幸になるので、私がこうなったのは無理もありませんけど。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 二度目の転生は私の良く分からない世界でした。というのも明らかに私の知っている世界ではなかったからです。

 

 その世界は約30年前にユーラシア大陸の中央(当時のソ連、中国、モンゴルを含む一体)がいきなり消失して一億五千万人の死傷者が出た災害が発生しています。(これはユーラシア大空災と呼ばれている)これを切欠に世界各地で小規模ながらも謎の大災害・空間震が発生するようになっています。

 

 世界の舞台そのものは現代日本に似ているのですが世界観が明らかに違いますし、私の知識にない物でした。

 

 確かに転生先はランダムなので私の知らない下位世界に転生する可能性は十分にありましたね。まあ、それでも現代日本に近いので何とかなるでしょう。

 

 ちなみに今回も何故か水蓮寺ルカとして転生しました。といっても両親は全くの別人ですし、たまたま親の苗字が水蓮寺で、名前がルカと名付けられただけなんですが、私の容姿も水蓮寺ルカそのままなので、無限転生の特典で何らかの影響を受けている可能性も否定できません。

 

 私にとって有難いのは今回の両親は芸能界にそこまで興味はないので前回みたいに芸能地味所を設立したりしていないことです。あれは悲惨でしたから、もう勘弁して欲しいです。

 

 それで、前回の反省を踏まえて今回は大手の芸能事務所に入るつもりです。それに備えて自己練習をやりました。こういう自己練習は素人がやるのは効果が今一でしょうが、そこは水蓮寺ルカ。前回散々苦労した努力は無駄ではありません。

 

 こうした努力が実を結び、中学生になる頃には大手の芸能事務所のオーディションに合格して、念願のアイドルになりました。

 

 憧れ続けた舞台に立てるという喜び。自分の歌を大勢の人に聞いてもらえるという喜び。それは私を幸せの絶頂に導いてくれました。

 

 私の実力は並外れており、あっという間にトップアイドルに上り詰め、ライブでもコンサート会場を満員にできるようになった。

 

 勿論、トップアイドルになったために仕事はすごく忙しくなり大変な思いをしたが、私は原作のルカのように漫画を書いたりしていなかったので、何とか問題なくこなせた。つまり仕事も順調で本当に充実した日々でした。

 

 そう、この時が私の絶頂期でした。

 

 でも夢の終わりは唐突に来るもの。あれはデビューして二年ほどが過ぎた時。事務所のマネージャーから某局のプロデューサーが君を気に入っていると、いう話を聞かされた。そして仲良くすればいい仕事がとれるとか、などなど。明確に言われなかったが、要するに枕営業をしろということです。

 

 当然ながら私はそれを丁重に断った。私は人々に歌を聞いてもらうのが好きなのであって、そんな無茶をしてまで仕事を取るつもりはなかった。大体女を抱きたいのなら風俗店にでもいけばいいのです。それに今の私は中学生ですよ。そのプロデューサーはロリコンですか?と内心では思ったものでした。

 

 しかし、その後すぐに根も葉もないスキャンダルが写真週刊誌に掲載された。その内容は私の過去の男性関係とか、堕胎経験とか、ドラックパーティに入り浸っているとか、思わず眉をひそめる内容だった。

 

 後でわかったことだが、これはルカが自分の物にならなかったことに腹を立てたプロデューサーの嫌がらせだった。彼は私が所属する事務所の社長とも懇意だったらしく、私はいとも容易く事務所での居場所を失った。

 

 一番こたえたのがこれまでファンだと思っていた人たちが手の平を返したことだ。握手会などでは心無い言葉を言われ、プログでは誹謗中傷が書き込まれていた。これらの出来事で私は精神的に追い詰められて、結局アイドル引退にまで追い詰められた。

 

 精神を病み何もかもが嫌になった私は衝動的に建物の屋上から飛び降りた。こうして、私の二度目の転生は終わりを告げた。享年15歳。




解説

■無理心中
 ルカの両親は借金を苦に無理やり心中をしてルカと一緒に死亡(自殺)しています。

■二度目の転生先
 ライトノベル『デート・ア・ライブ』の世界です。

■空間震
『デート・ア・ライブ』の世界特有の災害。実際は精霊がこの世界に出現する際に発生する副作用。

■某局のプロデューサー
 気に入ったアイドルに手を出そうとするロリコン。ルカを自分の物にしようとしたが断られたので、陰湿な嫌がらせをしてルカを破滅させており、原作キャラの誘宵 美九(デート・ア・ライブ)も同時期に同じような理由と手段で陥れている。
 これが見せしめになって以後は他のアイドルがプロデューサーのいいなりになり我が世の春を謳歌していたが、後に美九の報復(洗脳)を受けてマスコミに自分がやらかしたことを暴露してしまい盛大に自爆した。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。