三度目の歌   作:ADONIS+

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5.覚醒

「ライブコンサートですか?」

 

「うん、今日は私のライブなんだよね。よかったら見に来てよ」

 

 原作開始の四年前。監察軍に関わるようになって一年が過ぎた頃、私は最近歌手仲間として仲良くしているランカにそう誘われていた。と言っても私は現世ではまだ歌手としてデビューしていませんよ。あくまでその手の自己練習をしているだけです。

 

 まあ、連日エクスギア(可変戦闘機を操縦する為のパワードスーツ兼脱出装置)や可変戦闘機の操縦訓練に明け暮れつつも、その合間に歌やダンスのレッスンをしている現状ですから、歌手として活動する暇がないのです。

 

「そうだね。じゃあ見に行くわ」

 

 これまでは時間に余裕がないためランカのライブを見に行った事はありませんでしたが、誘われた以上は行かないとね。それに一度位はランカのライブを見ておきたかった。何か参考になるかもしれないしね。

 

 そう考えた私はその日、ライブを見に行くことにした。

 

 ちなみに監察軍本部にはコンサート会場もあります。普通に考えれば必要ないと思うのですが、監察軍の場合は、娯楽が物足りないという切実な問題があります。これは監察軍の後ろ盾となっているブリタニア帝国では漫画やアニメなどサブカルチャー発展していないのが原因です。

 

 この娯楽不足はなまじトリッパーたちが現代日本を知っている者ばかりで目が肥えている災いして、トリッパー達が自分達で作った同人誌を見せ合う程度では満足できません。そこで、ランカが監察軍で娯楽の一環として、監察軍のコンサート会場でライブを頻繁にやっているわけです。

 

 総司令官トレーズもトリッパー達のガス抜きとしてランカを積極的にサポートしています。そうでもしないとトリッパーの不満がたまってバカな事をしかねないと懸念しているわけです。これは考えすぎではなく実際バカな行動をしでかしたトリッパーがいて、問題になっているから笑えない話なんですよ。

 

 この為、私もトレーズからそのうち歌手デビューしてライブをやって欲しいといわれています。まあ、余裕がないので今はできませんが、歌手として必要とされているというのは悪い気はしませんし、得点稼ぎにもなるでしょうから検討には値しますね。

 

 余談ですが、ランカはブリタニア帝国でも歌手として活動をしており、ブリタニア人の中にも彼女のファンが大勢います。これを聞いた時は、ブリタニア帝国は外国人にも門を開いていたのかと思ったのですが、これには黒い大人の事情というものがあります。

 

 実はブリタニア帝国は帝政国家なので、臣民が政治に関心を持って政府にあれこれと要求してくるのは甚だ都合が悪い。そもそも民主主義国家とは根本的に違うので、ブリタニアでは政治は選ばれた優秀な人材でやる事なのです。だからファンタジー、恋愛、芸能、スポーツなどに臣民の関心を向けさせるわけです。

 

 その為にマスメディアを使っての宣伝工作は当然しています。ちなみにブリタニアには報道の自由なんて物はありませんから政府の許可も無しにマスコミが政策を批評することはできません。(もし、そんな事をすれば物理的に首が飛びます)

 

 そういうわけで、その手の工作の一環としてランカは外国人歌手としてブリタニアの芸能界で活躍していますよ。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

『みんな抱きしめて! 銀河の果てまで!』

 

 ランカの言葉とともにイントロが流れていく。

 

 監察軍本部に存在するコンサート会場でランカ・リーのライブが開催されていた。今、流れているのはランカの持ち歌の一つ”星間飛行”です。

 

 星間飛行を歌っているランカが全身に緑色の光を纏っている。これは歌エネルギー理論を利用した歌エネルギー変換システム(専用マイク)を使っているからです。

 

 えっ、歌エネルギー変換システムは専用ジャケットではないのかって? 確かに『マクロス7』でバサラ達が使っていたのはそうですよ。でもそれじゃ見た目が良くないじゃないですか。だから監察軍ではそれを改良しています。

 

 ぶっちゃけるとランカがそう要望しただけですけどね。

 

 しかし、これは本当にすごいよ。ライブで目立つという見た目だけではありません。スピーカーから発せられている音がよりリアルで、臨場感が著しく向上しています。

 

 これが歌エネルギー理論ですか。これは使えます。

 

 実は私の転生特典はアニマスピリチアです。つまりバサラと同じ能力がある。

 

 だから私もバサラと同じことができる訳です。サウンドビームとか出してみたいよね。マクロスの醍醐味だよ。

 

 ランカが「キラッ!」と言うと観衆にも受けていますよ。流石はランカです。才能もありますが努力もしてないとここまでできません。

 

 まあ、努力なら私も負けず劣らずやっていますよ。

 

 本当に楽しそうな歌声です。その歌声を聞いていると私も嬉しくなる。なにか心にビンビンと来ます。そう、私が転生前に感じたアイドル達に対する憧れの気持ちを思い出しました。

 

 私は一度目や二度目の不幸で大切な思いを忘れてしまっていたのかもしれませんね。

 

 今までの私はアイドルを諦めてしまったけど、地球の危機を救う為に仕方なく歌手として活動しようとしていました。でも、それじゃ駄目なんです。私の歌を私の心をゼントラーディの人たちに伝えていかなければならない。本当に目から鱗が出る思いです。

 

 考えてみればゼントラーディも哀れなものです。プロトカルチャーに戦闘マシーンとして製造されて思考制御されているから正常な行動が出来ずにただ戦い続けるだけの存在ですから。

 

 そもそも彼らが戦っているのは元を質せばプロトカルチャーの代理戦争の為でしかなく、そのプロトカルチャーが滅びた以上戦う理由も必要もない。それにも関わらず彼らはプロトカルチャーに強化された闘争本能に振り回されて暴走しているだけです。

 

 その様な不毛な生活など終わらせるべきでしょうね。いえ、私の歌で終わらせてあげる。

 

 だから、私の歌を聞けぇぇぇーーー!




解説

■エクスギア
 EX-ギア(マクロスF)を参考に、IS世界の技術を取り入れてISとして魔改造された代物。
 可変戦闘機を操縦するためにインターフェース兼脱出用の飛行パワードスーツであることには違いはないが、性能が桁違いに向上している。

■ランカ・リー
 監察軍に所属するトリッパー。ルカが歌に特化しているのに対してランカはチートな転生特典をいくつも保有していて何気に超人染みたアイドル。

■歌エネルギー理論
 ドクター千葉(マクロス7)が研究していた理論で、大雑把に言うと歌の持つ力を最大限に引き出して活用する理論。洗脳の解除や植物の生長促進などの効果がある。

■専用マイク
 ランカが使っている歌エネルギー変換システムを搭載した特殊マイク。これによって服装の制限がなくなっている。

■アニマスピリチア
 熱気バサラ(マクロス7)が持っている特殊なスピリチア。これの保有者は常人離れした歌エネルギーを持つようになる。
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