西暦2009年2月。とうとうマクロスの進宙式の日が来ました。
長かった。本当に長かったよ。この五年間本当に苦労しました。
今の私は花も恥らう十五歳の美少女です。「三回も転生しているから十分にオバサンだろ」という意見もあるかもしれませんが、少なくともそういうのは私達の間ではタブーですよ。なにしろブリタニア帝国だって、上層部では見た目は美少女でも実は高齢者という人ばかりですし、監察軍のトリッパーたちだって前世の分だけ精神年齢は高い。
だからみんなそういうことは言いません。それがマナーです。
ちなみに私は十五歳の誕生日にゴッド・ブレス(BLACK CAT)という特殊なナノマシンを打ち込んでいます。それの効果によって私は老化しませんし、脳に損傷を受けない限りは致命傷でも即座に修復されます。
これからはまさに命がけですから、怪我ぐらいはなんとかしないといけません。ちょっとした負傷で死亡するなんて事になったら私も困ります。
まあ、ついでにいえば歌手として全盛期の肉体を保ち続けたいという思いはありますよ。いくら無限転生で、不滅の存在になっていても老化するなんて嫌です。老いる事のない永遠の美少女。これはアイドルの偶像にぴったりです。
さて、私は現在最後の仕上げの為に南アタリア島にいます。今日はこの島はお祭り騒ぎで、観光客もたくさん来ています。
そんな島で私は人目を避けつつ人形と接触した。私の目の前にいる人物は、私そっくりです。いうまでもなくこれは私を模倣したコピーロボットです。
「じゃあ、記憶を回収するわ」
「はい」
私の命令にコピーロボットは従い、私はコピーロボットとおでこをくっつけた。それでコピーロボットが取得したこの数ヶ月分の記憶が私に流れ込んできた。
何度やってもこれには違和感がありますね。でもこれをしないと記憶がない事で不備が発生しかねない。だからそれを怠るわけにはいきません。
こうして回収した記憶を確認するが、これといった問題はないようですね。ごくごく平凡な生活をしていただけみたいです。
「これまでご苦労様。じゃ解除するわ」
そういって私がコピーロボットの鼻を押すと、それは小さなのっぺらぼうの人形に戻った。
ちなみにこのコピーロボットは改良が行われており、使用者専用の調整されている。つまり予め設定した人物以外は鼻を押せないようにロックがかかっており、不足の事態に対応していた。また自我はちゃんと存在するものの主人には絶対服従するようになっており、主人に逆らうなどという面倒は発生しないようになっていた。つまり本当の意味で人形だった。
「これでコピーロボットも必要ないね」
私は小さな人形に戻ったコピーロボットを小脇に抱えた。
実はこのコピーロボットには欠点がある。主人の模倣であるから主人の能力をある程度使用できるが、人外な能力は無理で、あくまで一般人の範疇に納まる範囲なのだ。
当然ながら、トリッパーの転生特典などは複製できない。だからこのコピーロボットは歌ではアニマスピリチアの能力を持つ私に劣るわけです。それでも私の素の才能と経験を持っているから、並みの歌手など相手にならないけどね。
私はコピーロボットをこれ以降も使用するか検討しましたが、良く考えるとこれ以上は使えません。
私はこれからゼントラーディ軍、より詳しく言えばボドル基幹艦隊の人たちを説得しなければならない。となると私が地球にいたりマクロスにいたりすると、水蓮寺ルカが二人いると思われてしまいます。
コピーロボットはアリバイ作りのための物ですが、この場合はアリバイがある事自体が不味いです。下手をするとコピーロボットの事がばれるかも知れません。
だから両親にいらぬ心配をさせてしまう事が分かっていてもこうするしかありません。まったく、ままならぬものですね。
そう考えている内にマクロスが勝手に動き出した。エネルギーを蓄積して、宇宙に向けて主砲を発射しました。多分、いえ確実にゼントラーディ艦隊の接近を感知して自動防衛システムが勝手にゼントラーディ艦隊に主砲を発射したわけです。
やはりこうなりましたね。本当は歴史が変わることを期待していたんですが。これで第一次星間大戦が勃発しました。
それにしても統合軍も迂闊ですね。拾い物を安易に使った挙句にこれですから。
そういえば、いくらブービートラップに引っかかったとしても統合軍の軍艦であるマクロスがゼントラーディに先制攻撃を仕掛けて異星人と戦争になったという事態は極めて不味いでしょう。
原作では事実が発覚して地球統合政府や統合軍に対する責任追及がされる前に、政府や軍が文句言う民間人諸共消滅してしまったので、うやむやになったみたいですが、そうならなかったら首が一つ二つ飛んだぐらいではすみませんよ。その場合マクロス艦長ブルーノ・J・グローバル准将は真っ先に槍玉に挙げられていたのは間違いない。
案外、異星人と戦争状態になったことを隠蔽したのはパニックを恐れてではなく、上層部が責任追及されるのを恐れたからじゃないのか?と邪推したほどですね。うむ、ありえそうで怖いね。
もし、その通りならとばっちりで死亡扱いされたマクロス市民は本当に哀れですね。まあ、原作では彼らの大半が生き残っているので生きていられただけマシかもしれませんが。
「では、そろそろ行きますか」
その言葉と共に水蓮寺ルカはその場から転移した。
解説
■水蓮寺ルカ(すいれんじるか)
身長149cm。外見は水色の髪の十五歳の美少女。三度も転生しているが、いずれも水蓮寺ルカとして転生している。これは無限転生という特典の影響でそうなっている。特典や能力は歌に特化しており、アイドル歌手としての能力は超一流。また歌や踊りだけでなく、演技力、作詞作曲、社交術などアイドルとして要求されるであろう事はきわめて高い能力を持っている。これは一度目の転生の際に受けた英才教育とその後の自己練習の積み重ねで得た努力の成果。このように彼女は転生特典を持つ転生者には珍しく、血がにじむような努力を惜しまない人物である。
転生特典
1.アニマスピリチア(マクロス7)
2.不幸体質の改善
3.無限転生
■見た目は美少女でも実は高齢者
ブリタニア帝国の貴族は吸血鬼で、不老長寿なので見た目と実年齢が一致しない。
■ゴッド・ブレス
クリード(BLACK CAT)が使用した不死のナノマシン。宿主の老化を止めるだけでなく明らかに致命傷の傷だろうが手足がなくなろうがすぐに再生するというチートな代物。しかし、脳の再生だけはできないので、脳を破壊されたら死んでしまう。手っ取り早く不老長寿になれるのでルカだけでなく他のトリッパーたちも使用する者が多い。