機動戦士ガンダム 一夏の一年戦争   作:赤バンブル

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途中でシャア戦は次回に持ち越そうと考えていたけど何とか書ききれた。


赤い彗星のシャア

サイド7から少し離れた小惑星地帯。

 

そこから角の生えたヘルメットのような形状となっているのが最大の特徴のジオン公国軍軽巡洋艦「ムサイ」がミサイルを発射していた。

 

「スレンダーのザクは見えるか?」

 

艦橋で白い角突きヘルメット、赤い軍服にマスクという奇妙な男 シャア・アズナブル少佐が副官の男に聞く。

 

「はっ!ジーンを回収してサイド7から脱出した模様です。シャア少佐。」

 

「デニムの方は?」

 

「反応がありません。」

 

「デニムがやられたか。・・・・・・私も運のない男だ。任務の帰りに連邦の軍艦を見つけ、V作戦のしっぽを掴むまではよかったが結果がザクを二機も失うことになるとはな。」

 

シャアは、表情には出さないものの皮肉そうに言う。

 

「スレンダー機、艦に戻ります!」

 

「二人をここに。連邦のMSの情報を報告をしてもらう。」

 

「はっ!」

 

「ドレン、サイド7への攻撃は宇宙港のミサイルハッチと砲台だけ潰せばいい。こちらも弾薬が尽きかけているからな。」

 

「わかりました。」

 

シャアは、再びサイド7の方を見る。ここからでは確認できないがサイド7の外には一夏の乗ったガンダムがコロニーの中へ戻ろうとしているところだった。

 

「連邦のMSを相手にこうも失態を犯すとは・・・・・・・・・認めたくないものだな、自分自身の若さ故に過ちと言うものを。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

一夏はバーニアで何とかサイド7の中に戻ると暗い表情でガンダムパーツの運び出しを行っていた。

 

「何が一体どうなっているんだよ・・・・・・・・」

 

サイド7の外に放り出されたとき、目の前には宇宙が広がっており、地球が小さく見えていた。自分の知っている世界ではこんな人工的なスペースコロニーは愚か、宇宙進出すらままらなかったはずだ。それに自分は気を失うまで地球にいたはずなのだ。何故、あんなところにいたのか検討すらつかない。

 

「・・・・・・・俺、これからどうすればいいんだろう。」

 

これを片付ければ当然自分は用済みになってガンダムから降ろされる。

 

そして、知る者がいない中で一人孤独に生きて行かなくてはならない。

 

そう思うと不安でならない。

 

「こんなことならあのまま死んだ方がマシだったのだろうか?」

 

そう思いながらガンダムで無事なパーツを回収していく。

 

『よし、ガンタンクとガンキャノンのパーツの積み込みはうまくいったな。次は武器庫の方へ向かってくれ。』

 

「わかりました。」

 

そう言うと一夏はガンダムで武器庫の方へと向かう。

 

「・・・・あの・・・・・」

 

『ん?』

 

「まだ、名前を聞いていなかったので・・・・・・」

 

『!あぁ・・・・そう言えばまだだったな。私はテム・レイ。連邦軍の技術士官だ。』

 

「連邦軍?」

 

『なんだ?まさか知らないなんて・・・・・・』

 

一夏は、まずいと感じた。

 

ここで自分がこの世界の人間ではないことが知られたら厄介になる。

 

拘束されて刑務所にぶち込まれるか、精神病院に送られるのかもしれない。

 

それに自分が持っている「白式」も没収されて何かに使われる可能性も否めない。

 

(何とか・・・・・何とか誤魔化さないと・・・・・)

 

『どうした?』

 

「あ、あぁ・・・・いえ。実は・・・・・あの倉庫でザクの攻撃に巻き込まれて頭を強く打ったので・・・・・記憶が曖昧なんです・・・・・・」

 

『頭を打った?』

 

「・・・はい・・・・・・」

 

一夏は取り敢えず記憶喪失を偽ろうと考えた。記憶喪失ということにすればこの世界のことに関して全く知らなくてもある程度は誤魔化せる。白式も束には悪いが後でひっそり処分してしまえば没収される心配もない。今はとにかく自分の正体を隠すのが先決だ。そう考えながら一夏は言う。

 

『頭を打ったか・・・・・・うむ・・・・・』

 

「・・・・・・(頼むから見逃してくれ・・・・・・)」

 

かつて誘拐されたことを思い出す。一夏が心臓をバクバクさせている中、通信先で士官と思わしき人物がテムに慌ただしく報告する。

 

『何!?艦長が!?』

 

テムは焦った表情になり一夏の方を見る。

 

『すまないが運び出しを続けてくれ。』

 

「は、はい・・・・何かあったんですか?」

 

『君が気にする必要はない。また、連絡するからそれまでは頼む。』

 

そう言うとテムは通信を切ってしまう。

 

「切れちゃった。」

 

取り敢えず誤魔化せたかと思い、一夏は再びガンダムを動かし始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ジーン伍長、君はデニムの命令を無視して連邦の施設を攻撃したと言うがそれは本当か?」

 

その頃ムサイでは、シャアが戻ってきたジーン、スレンダーに対して尋問を行っていた。

 

「は・・・はい、事実であります!」

 

「そして、君はそのMSにザクを破壊され、脱出したと。」

 

「曹長殿のおかげであります・・・・・・・・・」

 

そこまで言うとジーンは自分の拳を握り締めながら言う。

 

自分のせいで上官のデニムが死んだ。

 

手柄の欲しさに連邦のMSを破壊しようとした結果、自分は白いMSにザクを破壊され、逃げ帰ってきた。デニムの言うとおりに偵察をしていればこうはならなかった。そう考えると自分の行いがどれほど愚かだったのか身に染みる。

 

「自分の・・・・・・自分のせいであります・・・・・・・」

 

「ふむ・・・・・・君の処遇は戻った後に決めさせてもらう。自室に戻っていい。」

 

「はっ。」

 

ジーンは、後悔を引きつったままブリッジから出て行く。

 

「スレンダー軍曹、君はデニムの命令通りに動いて確かにそのMSがザクを破壊したのを見たのだな?」

 

「はっ!その通りであります!」

 

「連邦軍のMSがそれほどの性能だとは信じがたいが・・・・・・」

 

「あの・・・・・・お言葉ですが自分もジーン伍長も確かに・・・・・」

 

「シャア少佐。いかがなさいますか?」

 

副官のドレン少尉はサイド7の方を見ながら言う。

 

「・・・・・ドレン、レーザー通信回線を開いてくれ。ドズル中将に補給の要請をする。」

 

「はっ。しかし、大丈夫ですかね?」

 

「あぁ・・・・・本来なら早くソロモンに戻る筈だったからな。だが、V作戦のことを言えばどうとなるものさ。」

 

ドレンは早速レーザー通信を実行する。しばらくすると不機嫌そうなドズル・ザビ中将の姿が映し出される。

 

「少佐、ドズル中将との通信が可能になりました。」

 

「よし。」

 

『シャア!俺のところにノコノコ通信を入れてくるとは言い訳の一言でも考えたのか!?』

 

「(相当ご立腹だな・・・・・)その件については大変申し訳ございませんドズル中将。」

 

『申し訳ないだと?俺はな、貴様の作戦終了を祝おうと思って晩餐まで準備させておいたんだ。それが貴様がもたもたしてくれたおかげで無駄になったんだぞ!えぇ!?』

 

「存じております。しかしながら、我々も重大なものを発見したのであります。連邦の『V作戦』をキャッチしたのです。」

 

『何?V作戦だと!?』

 

「はっ!連邦の試作MS及びそれを運搬するための新型戦艦の存在をキャッチしたのであります。」

 

シャアの報告を聞くなりドズルは一変して驚きの表情を浮かべる。

 

『フッフッフフフ・・・・・流石、赤い彗星のシャアだな。例の連邦の重要機密を掴むとはな。っで、用件はなんだ?』

 

「帰還途中でありましたのでミサイル・弾薬がすべて底を尽き・・・・・」

 

『補給が欲しいのだな?よし、分かった。すぐに回すよう手配しておく。』

 

「幸いであります。それとザクの補充も三機。」

 

『ん!?重要な戦力であるMSザクを三機も失ったのか!?』

 

「はっ、中将。そのうちの二機は連邦軍の試作MS一機のためにやられたのです。」

 

『一機にだと・・・・・よしわかった。ザクも送る。シャア、V作戦のデータなら何でもいい。必ず手に入れろ!可能ならそのMSを鹵獲しろ。』

 

「やってみます。」

 

『うむ。』

 

シャアは、ドズルの機嫌を何とか直したことを確認すると通信を切る。

 

「ドレン、突撃部隊を三名招集してくれ。」

 

「はっ?補給艦が来るのを待つのでは?」

 

シャアの言葉にドレンはキョトンとする。

 

「戦いとはいつも二手、三手先のことを考えて行うものだ。スレンダーは現に脱出した。ならば、その逆も可能ではないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パオロ艦長!?」

 

ホワイトベースのブリッジにおいてシステムの調節を急いで行っていたテムは、重傷でありながら移動式のベッドで来たパオロを見て驚く。

 

「大尉、無事だったか。うぅっ!?」

 

「艦長、やはり休まれるべきでは・・・・・・」

 

彼を運んできた若き士官ブライト・ノアは、パオロの険しい表情を見ながら言う。

 

「いや・・・・・今は、一刻も早くサイド7から出向させなければなるまい・・・・・・大尉、動いているガンダムに乗っているパイロットは?」

 

「ハッ、そのことに関してなのですが・・・・・」

 

「テストパイロットのケンプ中尉ではないのですか?レイ大尉。」

 

テムの一瞬の戸惑いにブライトは不振を感じた。

 

「ブライト君、左のパネルを操作したまえ・・・・・・ガンダムのパイロットと連絡が取れる。」

 

「はっ。」

 

「一機だけ動けたのは幸いだ。ホワイトベースをサイド7から出航させるときはガンダムに援護してもらう。」

 

ブライトは早速通信機の操作を行う。

 

「レイ大尉、チャンネルは?」

 

「左のコンソールで調整できる。」

 

ブライトが通信を確認している一方、二人と同行してきた女性 ミライ・ヤシマは、操縦桿を確認する。彼女は、民間人ではあるがスペースグライダーのライセンスを持っていたために、正規軍人の代わりにホワイトベースの操艦の任務を自ら買って出てくれたのだ。

 

「ミライ君、そっちの方は?」

 

「基本操作はわかります。でも、エンジンコントロールが・・・・」

 

「レイ大尉、これは一体どういうことですか!?」

 

ブライトは突然テムに怒鳴る。

 

「どうした?」

 

「こ、子供です!子供がガンダムに乗っているんです!」

 

「何!?」

 

「えっ?」

 

信じられない言葉にパオロは愚か確認をしていたミライさえも唖然としていた。

 

「ご覧になられますか?この少年がガンダムを・・・・・パイロットではありません。」

 

ブライトはモニターでガンダムのコックピットに乗っている一夏の姿を見せる。

 

「どういうわけだ?子供がガンダムを操るとは?」

 

「艦長、申し訳ありません。私が彼を乗せました。」

 

テムは頭を下げながらパオロに事の次第を報告する。

 

テストパイロットはザクの襲撃でほぼ全滅したこと。

 

現場に向かったケンプ中尉に連絡を取ろうとしたところを偶然逃げ込んできた一夏がガンダムを動かしてザクを二機破壊し、現在まで無事なガンダムパーツを回収させていたことを報告した。

 

「・・・・ジオンのザクを倒したのもその少年なんだな?」

 

『テムさんの指示とガンダムのおかげです。』

 

「何故そこにいる?」

 

『戦闘に巻き込まれて逃げた先で乗ったんです。』

 

流石に地球からここまでよくわからない現象で飛ばされたなんて信じてもらえないので中略して一夏は言う。

 

「艦長、すぐに降ろさせましょう。」

 

「パイロットが生き残っておればそうすることもできるが・・・・・・!」

 

その直後、再びサイド7が大きく揺れ出した。

 

外でムサイが攻撃を再開したのだ。

 

「また、攻撃のようです。」

 

「この少年の処分についてはどうされますか?艦長。」

 

「オペレーター、敵は?」

 

「はっ!後方左40度に先ほどのムサイ級一隻、接近中です!」

 

「うぅ・・・・・・」

 

既にジオンがこのサイドを攻撃してくるのは時間の問題と考えたパオロはある決断をする。

 

「大尉、ガンダムのパーツは?」

 

「破損が少ないものを優先的に回収させました。ガンタンク、ガンキャノンに関しても使えるものは積み込み終わっています。ガンダムに関しても予備パーツの無事な物は既に回収済みです。」

 

「そうか。・・・・・残りのガンダムの関連パーツで使えないものはすべて処分させ、ガンダムにはビームライフルを用意させろ。」

 

「はっ?」

 

「君・・・・・名前は?」

 

『は、はい!織斑いち・・・・じゃなくて、イチカ・オリムラです!』

 

パオロの問いに一夏は一瞬舌を噛んだ振りをして言い直す。先ほどのテムの紹介を聞くなり、おそらくこちらではファーストネームが先だと思ったからだ。

 

「ん?」

 

「すみません。彼は逃げている最中に頭打って記憶喪失になったそうなんです。」

 

「なっ!?レイ大尉、そんな少年に・・・・・」

 

「構わんブライト君。初陣にしては少し若すぎるが古来15歳での出陣がなかったわけではない。君たちに期待する・・・・うぅ!?」

 

ブライトは一瞬反論しようとするが先ほどの戦闘を考えても多少下手なものの支障はなかったので敢えて黙ることにした。

 

「了解しました、艦長。イチカ、聞こえるか?サイド7に残ったガンダムパーツを破壊しろ。」

 

『えっ、いいんですか?まだ使えそうなパーツが・・・・・・』

 

「ジオンに機密を渡されてもいいというのか!」

 

一夏の甘い返事にブライトは言い返す。

 

「艦長、妙です。ムサイが下がって行きます。」

 

「下がった?」

 

オペレーターの報告にブライトは不振に感じたが今はそれどころではない。

 

「イチカ、まとめて処分する方法はわかるか?」

 

『確かコンピューターの中に「スーパー・ナパーム」というのがありましたが・・・・・』

 

「艦長。」

 

「うむ・・・・彼の判断がいいだろう。任せなさい・・・」

 

「わかりました。レイ大尉、すぐに準備を。」

 

「あぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、サイド7に潜入したシャアたちはV作戦に関わるMSのデータを入手すべく破壊された工場地帯を含めて調査にあたっていた。

 

「ふむ・・・・・・・あれは間違いなくジーンのザクだな。」

 

シャアは空気漏れが多少収まりつつある危険地帯の近くにまで来ていた。爆発でほとんどが宇宙へ放り出されたがそれでも無事な場所はいくつか残っており、ジーンのザクもそのまま放置されていた。

 

「頭部ユニットのこの破損具合、敵のMSのパワーで破壊されたのか?」

 

シャアはジーンの乗り捨てたザクのコックピットに乗り込み、モニターの記録映像を見る。そこには白いMSが頭部からバルカンを撃った後、拳を顔に向けて放つところまでが映されていた。

 

「・・・・・・これはスレンダーの言っていたことが本当になりそうだな。」

 

記録を取り終わるとシャアは続いてザクによって破壊されたMSの残骸が転がっている場所へと移動する。

 

「別の機体のものか・・・・・だが、我々のザクをベースにしているのなら部品の規格はほとんど同じはずだ。」

 

一つ持ち帰って調べるかと思い重要そうな部品を回収しようとする。

 

「およしなさい!」

 

「ん?」

 

突然の女性の声にシャアは振り向くとそこには銃を構えた女性がいた。

 

「それをお捨てなさい。」

 

「勇敢だな、軍人でもゲリラにも見えんが。」

 

シャアは潔くパーツをその場に捨てる。

 

「動くと撃ちます!近づかないでください!」

 

「!?(あ、アルテイシア?いや、確かに似ているが・・・・・・)」

 

「ヘルメットを取ってください。そして、後ろを向いて!」

 

「・・・・・」

 

シャアは女性が一瞬捨てた身内に似ているように思えたが黙ったままヘルメットを外す。そして、マスクを外すと意外なことに美青年の顔だった。

 

「!?」

 

女性が動揺している隙をついてシャアは女性が持っていた銃を蹴り飛ばす。女性はすぐに距離を取って身構えるがシャアは女性がある身内に似ているのが気になっていた。

 

「しかし・・・・アルテイシアにしては・・・・つ、強すぎる・・・・・ん!」

 

そこへスーパー・ナパームとビームライフルを装備したガンダムが32ゲートから降りてきた。シャアは急いでマスクとヘルメットを付け直すと女性の手から逃れて飛び去って行った。

 

『大丈夫ですか?』

 

「え、えぇ・・・・・(兄さん?どこか似ていたけど・・・・・まさか。)」

 

 

一夏は周囲を警戒しながら近づいていく。

 

『この辺の部品を処分するためにスーパー・ナパームを使用します。手に乗ってください。』

 

「分かったわ。」

 

一夏に言われて女性は手の上に乗る。それを確認すると一夏はビームライフルの出力を調節して発砲する。するとナパームの効果で周囲があっという間に炎に包まれ、パーツが溶解していく。ガンダムがゲートを開けて入ろうと開いた瞬間、シャアはブースターを使って一足先にゲートに潜り込んでしまった。

 

 

 

 

その後、ホワイトベースではシャアを狙撃すべく民間人も加わって銃撃戦となったが結局逃げられてしまった。

 

 

 

 

 

『イチカ君、ジオンの兵士は外に逃げた。ホワイトベースを出すから援護をしてくれ。』

 

『ビームライフルにはスコープが付いているから狙いをつけて撃つんだ。但し、ライフルのエネルギーは15発しか撃てない。それに無重力の中では重力圏の戦闘とは訳が違う。気を付けてくれ。』

 

「わかりました。」

 

ブライトとテムに言われて一夏はシールドを装備してサイド7の外へと出て行く。

 

「・・・・・・・本当に宇宙なんだな。」

 

かつて束が夢見た世界にいるのだなと考えながら一夏は、宇宙空間の中へ駆けていく。浮遊などに関しては白式搭乗時に何度も経験していたが直に宇宙に出たのは新鮮だった。

 

『近くにジオンの戦艦が待ち伏せしている可能性がある。警戒を怠るな。』

 

一夏は反応を確認しながら進んで行く。

 

「ん?反応が二つ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲートセンサー360度、オールラジャー・・・・」

 

ホワイトベースのブリッジでミライは緊張しながら操縦桿を握る。

 

「肩に力が入り過ぎのようだな。大丈夫、コンピューターがやってくれますよ。」

 

「え、えぇ。」

 

「オペレーター、操縦士のことも考えて早めの指示を頼む。」

 

「「はい!」」

 

「やるしかないもんな・・・・・・」

 

ブライトの指示でホワイトベースの各ブロックの確認しながらホワイトベースが宇宙へと出る。

 

『ブライト!コア・ファイター、発進準備OKだ!』

 

そこへ格納庫にいるテストパイロット リュウ・ホセイから通信が来る。

 

「何?プロトタイプは出せんのか?」

 

『Aパーツの調整がまだ終わっていないんです。』

 

整備士が困ったように答える。一足先に回収されたプロトタイプガンダムは、元々一夏が乗っているガンダムの予備パーツとして分解する予定だったため、整備が終わっていなかったのだ。

 

「・・・・・・リュウ、大丈夫なのか?」

 

『俺はパイロット候補生だぜ?』

 

心配するブライトに対してリュウは、和ませるかのように答える。

 

「素人よりは確実だが・・・・経験は?」

 

『シミュレーションは二度経験済みだ。』

 

「イチカと同じという事か。」

 

「こちらに向かってくる反応が二つあります!」

 

考えるのも束の間、オペレーターから、接近してくる反応が二つあるという情報が寄せられる。

 

「ミサイルか?」

 

「いいえ、モビルスーツのようです。」

 

「ザクか。」

 

「でも、ブライトさん。こんなスピードで接近するザクなんてありはしません。」

 

「一機のザクと思われる反応は通常の三倍ほどの速度で接近しています!」

 

「しゃ、シャアだ!あ、赤い彗星だ・・・・・・」

 

その報告を聞いてパオロは、怯えるような口調で言う。

 

「はっ?艦長、今なんと?」

 

「赤い彗星のシャア・・・・・」

 

「赤い彗星のシャア?」

 

「前のルウム戦役の戦いで連邦の戦艦五隻が奴の手にかかって沈められた・・・・・・に、逃げろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パオロの予感は的中し、二機のザクのうち一機は赤く凄まじいスピードで向かって来ていた。

 

「スレンダー、お前は木馬の牽制にあたってくれ。」

 

『はっ!』

 

 

しばらく移動すると例の木馬とMSが見えてきた。

 

「見せてもらおうか、連邦軍のMSの性能とやらを。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきの奴らか!」

 

一夏はスコープを使ってビームライフルを構える。

 

『やめろ、イチカ。君にはまだ・・・・・・』

 

「俺がやらないとホワイトベースがやられるんです!やります!」

 

ブライトの制止を聞かず一夏はシャアのザクに狙いをつける。

 

「喰らえ!」

 

一夏はビームライフルを発砲するがシャアのザクは難なく回避した。

 

「早い!?」

 

「甘いな。」

 

シャアのザクは一気にガンダムの背後に回り込みマシンガンを発砲する。

 

「うわああっ!?」

 

「どうだ・・・・・何!?」

 

シャアは、ガンダムを見て唖然とする。

 

「バカなっ!?直撃のはずだぞ!?」

 

「くそ!」

 

一夏はシャアのザクに向かって再びライフルを発砲するがシャアはバーニアを吹かして反転し、一夏の攻撃を回避した。

 

「くう・・・・・・・これだったら、打鉄で射撃の練習すればよかった・・・・・・」

 

一夏は己の射撃の下手さを痛感する。

 

実際、一夏の専用機であるIS「白式」は近接戦闘しかできなかった。それは単一仕様能力で拡張領域をすべて使ってしまっていたため、後付けのオプションの装備が出来ず、今まで雪片弐型という刀剣のみで戦っていた。

 

使い慣れないビームライフルに苛立ちを感じながら一夏はシャアのザクを狙って撃つ。しかし、そのたびにシャアに避けられマシンガンの弾丸を当てられていく。

 

「装甲の脆そうなところもダメか・・・・・・ならば!」

 

シャアはザクのバーニアを一瞬最高速度にまで上げてガンダムの目の前にまで入り込む。

 

「!?」

 

「マシンガンがダメならヒートホークでどうだ。」

 

シャアはヒートホークを構えてガンダムに振り下ろす。

 

「やられる!?」

 

一夏は咄嗟に開いている左手でビームサーベルを展開してヒートホークを防ぐ。

 

「受け止めただと!?」

 

「うおぉおおおおおおおお!!」

 

一夏はビームライフルを捨て、剣道の切り返しのようにヒートホークを弾くとサーベルでシャアのザクの左腕を切断した。

 

「ちいぃ!」

 

シャアは追撃を逃れるべくガンダムの腹部に蹴りを入れる。

 

「わあああ!?」

 

「まさか、私ともあろうものが左腕を持って逝かれるとは・・・・・・連邦のMS・・・・我々が予想していた以上のものだ!!」

 

シャアは右腕でマシンガンを発砲するが片手での発砲ではやや命中率が落ちる。それを利用して一夏はすぐに捨てたビームライフルを拾い、シャアのザクに向かって撃ち始める。

 

「運動速度も速い・・・・なんということだ・・・・・」

 

そこへ遅れてスレンダーのザクが到着した。

 

「スレンダー、私は左腕を持って逝かれた。お前は後ろから奴をかく乱してくれ。」

 

『しょ、少佐。武器が違います!自分はあのような武器は見ていません!』

 

「当たらなければどうということはない!援護しろ!」

 

シャアに言われるとスレンダーはマシンガンで援護を始める。一夏はシールドで防御するがISの時と違い強い衝撃が襲った。

 

「くう・・・・・・」

 

『コア・ファイターをそちらに向かわせた。あまり無茶をするな!』

 

「言われなくたって・・・・・はっ!?」

 

苛立ちながらシャアのザクを狙おうとするが姿が見えなくなったことに一夏は焦りを感じた。

 

「どこだ?奴は・・・・・・」

 

『上だ!早く避けろ!!』

 

「上!?」

 

通信機からの声に一夏はすぐに反応してガンダムを動かす。確かにシャアのザクはマシンガンを構えて上にいた。

 

「何ッ!?」

 

自分に気づいた白いMSに驚きながらもシャアは、後ろからの戦闘機の攻撃でやむを得ず離れていく。それを見ると一夏はスレンダーのザクに狙いをつける。

 

「コイツめ・・・・・・」

 

一夏は、ライフルを発砲した。ビームはスレンダーのザクの腹部を容易に貫く。

 

『ぐあああああああああ!!』

 

スレンダーは悲鳴を上げながらザクの爆発に呑まれて行く。

 

「す、スレンダー!一撃で・・・・・・一撃で撃破か・・・!」

 

その最期を見てシャアは唖然とする

 

「なんということだ・・・・・・あのMSは戦艦並みのビーム砲を持っているのか!」

 

その爆発には一夏も驚きだった。

 

「い、一撃で・・・・・・・・これが・・・・・本当の闘い・・・・・・」

 

「させるか!うおっ!?」

 

また、ライフルを打たれたら厄介だと考えシャアは破壊された左腕からヒートホークを回収してガンダムに攻撃を仕掛けようとするがリュウのコア・ファイターの攻撃で一瞬距離を取る。

 

「ふん、変哲もない新型戦闘機か・・・はっ!」

 

再び発砲されたビームライフルの攻撃をシャアは危うく回避して撤収していく。一夏は再度狙おうとしたが既にライフルのエネルギー残量は底を尽きかけていた。

 

「し、しまった!無駄弾を撃ち過ぎた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムサイでは左腕を失ったシャアのザクを見てドレンは思わず驚愕の表情を浮かべる。

 

「しゃ、シャア少佐!そ、そのダメージは!?」

 

『ドレンか。すまないが左腕をやられた。回収し次第修理を頼む。』

 

「は、はっ!」

 

 

 

ドレンとの通信を切るとシャアは、あのMSの性能の恐怖を思い出す。

 

「火力が・・・・・火力が違い過ぎる!連邦は・・・・あんなMSを量産しようというのか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガンダム、及びコア・ファイター着艦しました。」

 

「収容作業終了後、イチカとリュウをブリッジに。」

 

「はい。」

 

「ホワイトベースはこのままルナツーへ直行する。各員の配置は現状のまま相互に休息を取れ。」

 

しばらくすると一夏とリュウがブリッジに入ってきた。

 

「ブライト、敵の様子は?」

 

「動いてはいない。しかし、おそらく追いかけてくるだろう。あのシャアならな。」

 

ブライトはそれだけ言うと一夏の方へと行く。

 

「お前がイチカか。」

 

「は、はい・・・・・」

 

怪しまれるのではないかと一夏は心の中で怯える。

 

「・・・・ガンダムの性能を当てにし過ぎだ。戦いはもっと有効に行うべきだ。」

 

「なっ!?じ、自分たちは安全な場所に逃げて指示していただけなのになんだよ!その言い方は!」

 

怯えていたことを忘れて一夏は思わずブライトに反抗する。

 

「甘ったれるな!ガンダムの操縦を任された以上お前はもうパイロットなんだ!ホワイトベースを守る義務がある。」

 

「い、言われなくたって・・・・・・・」

 

「憎んでくれていいよ。だが、こう言わざるを得ないのが今の我々の現状なんだ。」

 

「お、おいブライト。いくら何でもそれは言い過ぎじゃないのか?」

 

リュウは初対面ではあるものの一夏をフォローしようとするがブライトは聞く耳を持たない。

 

「ガンダムの整備をしておけ。レイ大尉がサポートしてくれる。人手を使っても構わん。」

 

「・・・・・はい。」

 

「レイ大尉、彼に整備の仕方も教えてやってください。」

 

「無論だ。彼を乗せたのは私の責任でもあるからね。」

 

そう言うとテムは、一夏を連れてブリッジを後にしていく。

 

「・・・・・・・艦長、彼のことをどう思いですか?」

 

「・・・・何が言いたいのかねブライト君。」

 

「彼の戦闘です。あの戦い方・・・・確かに射撃戦は素人でしたが近接戦闘ではあのシャアのザクの左腕を奪いました。とてもですが教育コンピューターがあるとはいえあんな動きができるのでしょうか?」

 

ブライトの言うのは一夏の技量についてだった。いくら教育型コンピューターが内蔵されたガンダムとはいえ近接戦闘であのシャアにダメージを与えられるのだろうか?

 

「どうだろうな・・・・・私にも彼が民間人にしては戦闘に不慣れにも見えんが・・・・・・・」

 

「単なる偶然なのでしょうか?私にはそれが少し気になります。」

 

ブライトたちがそういう会話をしながらもホワイトベースは地球連邦軍の宇宙拠点 ルナツーへ向けて進路を向ける。

 

 




次回予告(?)

シャアのムサイが補給を受ける。

この隙を突こうとコアファイター、ガンダムが強襲をかけようと計画する。
  
しかし、シャアもやられてばかりではなかった!

一夏は行き場のない戸惑いを抱えながら宇宙を駆ける!
  
次回「機動戦士ガンダム 一夏の一年戦争」

「敵の補給艦を叩け!」

君は生き残ることができるか?
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