家庭教師ヒットマンリボーン[二度目の人生] 作:ツナさん
目が覚めたのは朝の5時だった。10代目を継いでからこの時間に起きるようになったのは記憶に新しい。体が覚えているはずも無いので記憶が覚えているのだろう。隣では、リボーンがまだ寝ていた。起きるには早い時間だが昨日の反省もあり、これからのことを考えると体力作りを始めるのは良いかもしれない。
それに今日は、球技大会に獄寺君が並盛中学に転校してくる日だ。服を着替えて家を出る。超直感でリボーンがいない事を確認して額に炎を灯す。覚悟を炎に。この体でも出来るが炎圧が上がらないので高速移動をしてみるが遅い。現在は柔の炎を出すのがやっとみたいだ。Xグローブが無いからだろうか?炎のコントロールは上手く出来ているので、柔の炎を利用して人気の無い修行の場所に向かう。
XANXUSと戦う前に修行した崖の前に来ていた。これを死ぬ気の状態で登り10分休む。これを毎朝3セット。残りの時間は死ぬ気のゼロ地点突破の修行の時間に当てれば良いだろう。
あの時は、崖の上まで登りきるまでに死ぬ気が解けてしまっていた。それは死ぬ気のコントロールが出来ておらず常に全力を出していたからだ。自分で死ぬ気になれば感情のコントロールも上手くいく。死ぬ気弾の時は後悔している事があるとそれしか見えなくなるので感情のコントロールが出来なくなるが。
兎も角登ってみると一度で登りきることが出来た。死ぬ気を解くと身体中が悲鳴を上げて立てなくなったので死ぬ気になり10分間休憩し、死ぬ気のまま登り始める。最初の一日目なのか3セット終えたところで帰らないと間に合わない時間になっていた。
「こんなに体力無かったなんて..」
筋肉痛により悲鳴を上げてる体に鞭を打ち、家に向かい帰り始める。
「駄目ツナ。朝から何処行ってたんだ?」
家に帰ると起きていたのかリボーンに聞かれる。別に隠す事もないがリボーンに教えると修行の効率が落ちるし何より、ゼロ地点突破の修行が出来なくなってしまっては修行の半分は達成できなくなってしまう。嘘をついたらバレるので本当の中に嘘を紛らせる事にした。
「昨日持田先輩と剣道勝負をしただろ?あの時も思ったんだけどさ、体力無いのは厳しいかなって。少しは走ろうかなってね」
続くかは分からないけどね。と笑いながら誤魔化すとリボーンは追及してこなかった。その代わりなのか、手帳を此方に見せて今日の予定を発表始めた。
「今日は転校生が来るぞ」
「へえ。どんな人なの?」
「それは来てからのお楽しみだぞ。それと球技大会があるからな」
本来球技大会に選ばれていない俺には縁がない事だろう。でもそこはリボーンだ。前回もそうだったが今回もピザで補欠の補欠まで倒れさせたに違いない。倒れた人に申し訳なく思うがリボーンに目をつけられた時点で諦めてくれ、としか沢田綱吉は言えなかった。
「どうせ、何故か出場する選手が出られなくなり俺が出ることになるんだろ?」
「察しが良いじゃねーか。倒れた生徒は皆一様にピザを注文したらしいぞ」
球技大会に出場したくないわけじゃない。球技大会には、山本も参加してるしなんだかんだ言って、山本には仲間になってほしい。
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目の前には自己紹介を終えた銀髪の若かりし頃の獄寺君が俺を睨んでいる。右腕だと自称する彼が俺を睨むことは、高校に上がる頃から全くしなくなった。人当たりが良く、いつも補佐をしてくれる獄寺君は本当に頼りになっていた。
でもこうやって敵意をぶつけられるのも懐かしく、若い故のギラギラしたこの敵意が心地よくもあった。机を蹴りながら移動する獄寺君は不良という言葉がしっくりくる。煙草吸ってる時点でそう見えるけど。机蹴飛ばされても、獄寺君を怖がって席は、とか言ってる先生は他に言うことがあるだろって思ったりするけど、何事も無かったように机を戻して椅子に座る。
「ツナの知り合いか?」
クラスの友達に話しかけられる。どう言えば良いだろうか?ファミリーの仲間とは言えない。でも知らない人とは言いたくなかった。
「うん、まあね」
「ヘえ、あれって不良ってやつだろ?」
「きっとイタリアから日本に来て戸惑ってるんだよ。根は良いやつだと思うよ」
俺の言葉に意外そうな表情をした二人。
「なんかツナ変わったな」
「なんか大人っぽくなったってゆーか」
「そんなことないよ。それに同い年だろ?」
「はは、違いない」
そんな会話も終わり、球技大会の時間になっていた。
「今日は頼んだぜ、ツナ。最近のお前凄いだろ?だから注目してるんだ」
この時からだったな...山本が俺に話しかけてくれるようになったのは何年経っても山本に頼られるのって嬉しいよな。
「うん。練習出来てないけど、精一杯頑張るよ!」
「期待してるぜ」
「ツナくん、球技大会出るの?」
「うん、メンバーが足りなくなったみたいで。本当は練習をしっかりしてた人がでた方が良いんだけどね」
リボーンの仕業だと分かってるから罪悪感も酷いんだよ、前回もそうだったけど俺以外には基本なにもしないリボーンが直接辞退させるのは、初めてだよなー。あんまり関係者以外を巻き込むのはリボーンだって嫌な筈だし。
「でも、あの時のツナくんカッコ良かったよ」
「あれ以来、みんな駄目ツナって呼ばなくなったものね」
「頑張ってね。私応援してるから」
「うん、精一杯頑張るよ」
その後、獄寺君も球技大会に参加することになりバレーの試合が始まる。
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「見せてもらうぞツナ。あの時一瞬だが死ぬ気になったような気がしたのが気のせいなのかどうか」
死ぬ気弾無しで死ぬ気をコントロール出来る人間なんているわけねえ。と言いたいところだが
ブラッド・オブ・ボンゴレを持つツナなら不可能じゃねえ。それに9代目は強すぎるツナの超直感を封じたと言っていた。まだツナが幼いときだが、俺が死ぬ気弾を撃つとき明らかにツナは避けようとした。
それは超直感が働いたからじゃないのか?と思うのが自然か?9代目に確認することが増えちまったな。
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沢田綱吉にとって球技大会はそこまで意味のあるものではない。だが山本と獄寺と協力して出来る安全なスポーツなんて楽しみで仕方がなかった。
相手のアタックから始まりツナに向かって弛い弧を描きながらボールが向かってくる。目を瞑らなければ上に上げることくらい余裕なボールをレシーブして獄寺君が上手くトスして山本のスマッシュでポイント先制。流れるような動きに会場が沸き上がりクラスの応援も盛り上がっている。楽しい。素直にこう思ったのはいつ以来だろう。
失うものがなく単純にスポーツを楽しむなんてもう出来ないと思っていた。
「山本ナイスアタック!獄寺君もアシストありがとう」
「おう。ツナと獄寺が流れるように打たせてくれたおかげだぜ!ドンドン取っていこうぜ!」
「今の感覚は...」
「獄寺君?」
「いえ、何でも...」
獄寺は、まだ気付いていないがリボーンは気付いていた。練習もろくにしていなかった三人が流れるようにスマッシュまで持っていくのは難しいことだ。息が合ってなければ出来ない。獄寺の位置と山本の位置を把握しており信頼しているからこその獄寺にアシストを任せてそれに答えた獄寺。その日の球技大会はツナ達のクラスが優勝を飾った。
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球技大会も終わり教室に戻っていく生徒達の賑やかとはうってかわり、静寂に包まれる校舎の中庭に影が二つ。
「獄寺。本当に試すのか?」
「当たり前です、リポーンさん。10代目候補の沢田綱吉を倒せば俺がボンゴレ10代目になれるという話は本当ですよね?」
「ああ。本当だぞ」
リボーンの目的はツナがどれ程の実力なのか計りかねていたので獄寺をツナと戦わせて計ろうとしていた。だが先程の球技大会で既に獄寺は知らずのうちにツナを認めてしまっていた。それが無意識なのか本人は気付いていないが。
「でもお前、球技大会の途中でツナに敬語使ってたぞ?」
「なっ!そ、それは。ボスとしての資質を認めただけです。ですが実力は認めていません。俺より弱いやつがボンゴレ10代目なんて俺は認めません」
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球技大会も終わり俺は現在獄寺君に呼び出されて校舎裏に来ていた。あの日と違うのは嫌々来ているのではなく、少し楽しみにしているくらいだろうか。獄寺君との真剣勝負なんて、これが最初で最後だ。あの時は、ダイナマイトの消火に死ぬ気になってたけど今は違う。獄寺君と戦いたいわけじゃないけど、死なない程度の全力の戦闘なら敵意を向けられている今しか経験できないことだ。
「来たな。ボンゴレ10代目沢田綱吉」
「どうして獄寺君がその事を知ってるの!?」
わざとらしく驚いて見せるがリボーンを騙せただろうか?獄寺君は騙せてるみたいだけど。
「どうやら何も知らないらしいな。リボーンさん、本当に沢田綱吉を倒せば俺をボンゴレ10代目にしてくれるんですね?」
「ああ。間違いないぞ」
今思えば滅茶苦茶な話だな。獄寺君は小さい頃からマフィアの世界で生きてきて武器であるダイナマイトを持っている。それに比べて最近まで平凡な暮らしをしていた中学生に武器無しで戦えだなんて。
「それなら....果てろ!!」
リボーンに確かめた後、獄寺君は躊躇いもなくダイナマイトに火を着けて投げてくる。リボーンの前で死ぬ気になるわけにも行かず、リボーンなら死ぬ気弾を撃ってくる。そう思って目を閉じる。
「っ!諦めたのか!」
「違うぞ。ツナ、気になることはあるが、望みの死ぬ気弾だ」
その言葉と銃撃の音が木霊し、額を撃ち抜かれる。その瞬間にダイナマイトは爆発し砂埃が舞い上がる。視界が悪くなるが砂埃が晴れていく中に立っている影が一つ。
「リッボーン!!死ぬ気で獄寺隼人を守る!!」
この言葉に驚いたのはリボーンだった。ダイナマイトを投げられて後悔することと考えれば誰しも相手を倒すか、変わり者でもダイナマイトが爆発しないように導火線の火を消すことだろう。だが獄寺は驚きよりも怒りの方が先立っていた。
「守る...だと?舐めんじゃねえ!!2倍ボム!!!」
両手で抱えられたダイナマイトをツナに向かって投げられる。防げなければ命が危なくなる量の爆発がツナに襲いかかる。だがツナが直感で選択した方法は逃げるではなく手套で導火線を全て切ることだった。導火線に火が着いていない爆弾は役に立たない。地面に転がっていく自慢のダイナマイトに一瞬狼狽えるが直ぐに気を取り直し完成していない未完成の技を使う。
「さ、3倍ボ...しまっ」
両手で持ちきれなくなったボムを一つ落とすと両手一杯に抱えられたダイナマイトが次々に落ちていく。短くなった導火線を見て逃げる時間も無いと悟った獄寺は諦めた。
「ジ・エンド・オブ俺...」
呟いたその言葉と共に目を閉じる。今から襲ってくるだろう痛みと爆風を考えたが何時まで経っても爆発しない。それに先程までは感じられなかった謎の冷気すら感じる。
「死ぬ気のゼロ地点突破ファーストエディション」
目を開けた獄寺が見たのは額の炎は消えているが手を地面につけて地面ごとダイナマイトを凍らしている沢田綱吉の姿だった。