家庭教師ヒットマンリボーン[二度目の人生] 作:ツナさん
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目の前に拡がる光景に何も言えなくなる獄寺。獄寺を避けるように凍りついた地面とダイナマイト、その状況を造ったのは紛れもなく目の前の少年だった。同い年の少年がボンゴレ10代目と聞いて、半信半疑のまま日本に来てみればボスの資質を認めさせられ、実力で見ても目の前の少年に勝つことは不可能だ。そればかりか、自分の攻撃で自滅しそうなところを助けてもらっている始末だ。
「これが...ボンゴレ10代目」
額の炎が消えた状態で此方に近付いてくる沢田綱吉は拳を握る。右頬に痛みが走り、自分が殴られたことを理解する。
「何してるんだ!!後少しで死ぬところだったんだぞ!!」
目の前で涙を流す、ボンゴレ10代目。対して強く殴られなかった筈の頬は今までのどんな傷よりも痛いと感じ、そして暖かった。
「10代目...」
「俺が、ボンゴレ10代目になるなら獄寺君。君の力が必要なんだ。だから自分の命を軽く見ないでくれ。自分の命を軽く見る人は、誰も助けることは出来ないんだから」
腰が砕けたように立ち上がれず、言われた意味を理解するまでこの場から立ち去ろうとする沢田綱吉の背中しか見ていることが出来なかった。
「じゅ、10代目!!俺、最初同い年のボスなんて認めないって思ってました!でも貴方は違う!他の誰よりもボンゴレ10代目に相応しい御方です!!」
その言葉に苦笑いで返されて手を振って帰っていく10代目。あのお方の近くで、あのお方の役に立てればどれ程幸せだろうか。殺す気で向かっていった相手を助けるなんて、そんな人見たことがなかった。
でも、足りない。
「今の俺の力じゃ、10代目の邪魔にしかならねえ...お荷物でいるつもりはねえ!自分の命を軽く見る人は、誰も助けることは出来ない....」
獄寺隼人は、綱吉との勝負に負けた。だが決意は固まった。綱吉を守るために今自分に出来ること。
夜のネオン街が拡がる並盛町から少し離れた町。夜になっても建物の灯りや人々の盛り上がりから昼間のように明るい場所になっている。
「君可愛いね~。チューしよー」
「きゃあああ!」
そんなネオン街に変質者が一人。
「....久し振りだな。あんたに頼みがある」
「ああ?なんだ隼人じゃねーか。久し振りだなって!あーあ...逃げられちゃったじゃねーかよ。それでどうしたんだ?遂にビアンキちゃんを紹介してくれる気になったのか?」
この場所にそぐわない少年と変質者。
「...俺にもう一度戦い方を教えてくれ」
「あー?やだよ。お前はなーんにも見えちゃいねーからな。見えてないお前に教えることは何もない。帰りな」
「守りたい人が出来た。でも今の俺じゃその人の邪魔にしかならねえ...強く、強くなりてえんだ!!」
少年の目の奥底に無かった、覚悟を見て変質者は足を止める。
「守りたい人ね。なーんだ隼人、彼女でも出来たのか?」
「んなわけねーだろ!!本来なら俺が守りてえなんて烏滸がましいかもしれねえど...あの期待された目には答えてーんだ」
「ふーん。それじゃ問題を出してやる。俺の納得がいく答えを言えたら教えてやる。その代わり間違えたら一生お前には教えない。お前も教わりに来ない。それでどうだ?」
「...ああ」
「お前には見えてねーもんがある。それはなんだ?」
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獄寺君と戦った後、まさか自滅をしそうになるなんて思わなかったから焦ってリボーンの前で死ぬ気のゼロ地点突破ファーストエディションを使ってしまった。意外だったのは、リボーンから何も聞かれなかった事だ。聞かれた事と言えば、獄寺はボスであるお前を殺そうとしたんだぞ?お前が望むなら獄寺を殺すことだって出来るけど良いのか?という事くらいだった。
リボーンは誤解しているようだけど、獄寺君は既に罰を受けてる。右頬殴っちゃったし...それに獄寺君は自分を犠牲にしてでも解決しようとしちゃうから、あの場で言っておきたかった。
翌日の朝、目が覚めると隣で寝てる筈のリボーンは既にいなかった。書き置きだけが残されていて、2日程留守にすると書かれており隣には教材の山が出来上がっていた。2日までに全て終わらせておけと言うことだろう。10代目になる前にリボーンから受けた知識は未だに残っているので中学生レベルの問題ならケアレスミスさえしなければ間違えることはないだろう。昨日から始めた修行を行うために服を着替えて家を出る。
今日は学校は休みだし、リボーンも家にいないなら長めに修行の時間を取っても問題ないだろう。崖を死ぬ気で登り死ぬ気で休む。一日目と殆ど変わらない時間になっていた。崖の上で深呼吸をして死ぬ気の炎を額に灯らせる。右手の手の平と左手の手の甲を前方に向けて組み合わせ、四角形を作る。
「ふう...死ぬ気のゼロ地点突破・改」
暫く構えていると疲労感が溜まり膝をついてしまう。戦闘で使うなら自由に使えなければ使い物にはならないだろう。現状の修行内容は、体力作りと精神面の強化から始めることが大切。何時もより長く修行した帰り道家の目の前にランボが立っていた。覗こうと中を見ようとしているのか、小さな身長では中は見えないだろう。
「何してるんだ?」
「え?えーと。リボーン君はいますか?」
冷や汗を流しながらリボーンを探してるランボ。そう言えば、今日はランボがイタリアからやって来る日だった事を思い出す。
「リボーンなら2日留守にするって今はいないぞ?」
「リボーンいないのかー...アハハのハー。困ったな~ランボさんは、リボーンに会いに来たんだけどリボーンの奴が逃げたならしかたなぐぴゃっ!」
「あー...リボーン。どうしたんだよ、早かったな」
ランボの頭の上に空から降ってきたリボーンが綺麗に着地した。
「ツナに会いたいって言われてな。こっちにくる事になったんだ」
黒塗りのリムジンがリボーンの隣に止まり一人の老人が降りてくる。杖をつき白い髭を生やした老人は笑顔で微笑んでくる。
「綱吉君、久し振りだね」
「お久し振りです」
頭を下げながら言うと老人に頭を上げてくれと言われ素直に頭をあげる。昔、よくうちに来ていたお爺ちゃんという印象だったが。今は違う。
目の前に立っている老人は只の老人じゃない。ボンゴレというマフィアのボスである9代目だ。
優しそうな笑顔の裏に隠された全てを見通しそうな瞳から反射的に顔をそらしてしまう。
「リボーンから聞いているよ。君の大切な人も守りたい人もね。君と直接会って確かめたいことがあったのだが...その必要も無いようだ。リボーン。私は帰ることにするよ。聞きたいことも分かってしまった」
「そっか。気を付けて帰れよ」
「ああ、綱吉君。急にお邪魔して悪かったね」
微笑むとリムジンに乗り込む9代目。今のやり取りで9代目は分かったのだろう。沢田綱吉の超直感は封印から解かれた。顔をそらしてしまったのは超直感からくる回避行動。それは即ち、自分の立場を理解した上で力を隠そうとしたと言うこと。本来なら死ぬ気のゼロ地点突破を何故使えるのか、9代目は綱吉に聞く筈だった。だが、その問いは今は意味をなさない。昔と変わらない優しく光を放つその瞳に彼なら大丈夫だとある種言葉よりも安心出来たからである。
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「さてツナ。次の問題だぞ」
「えー...まだやるのか?」
9代目が帰った後、ツナはボンゴレ式の勉強をしていた。懐かしくも苦い思い出になっている。正解を間違えると爆発する方法だ。かれこれ3時間ほど勉強をしてるが一問も問題を間違えないからかリボーンのイライラが伝わってくる。
「ツナが間違えないから折角のセットが無駄になるだろ?」
「そんな理不尽な理由があるかよ..。合ってるなら問題ないだろ?」
ツナの成績を調べたリボーンは、ツナが答えられないと思い張り切って準備したらしいボンゴレ式勉強法。だがリボーンの中で誤算だったのは、ツナがすんなりと問題を解いていくからである。ツナが中学から高校にかけてリボーンのこの教え方で身に付いた知識は伊達ではない。現在の綱吉の知識はリボーンのお陰だが、理由を知らないリボーンの機嫌は終始悪かった。
問題が解けてもこのままでは、爆発は免れない。そう直感したツナは話をそらすことにした。勿論問題を解きながらではあるが。
「そう言えば、リボーンに会いに来たって子供いただろ?あいつは放っておいて良いのか?」
「そんな奴いなかったぞ?それよりも次の問題の答えはなんだ?」
「3分の4」
「正解だぞ。次は数学から理科に移るぞ」
ランボに対しての扱いは相変わらずだなぁ...。分からなくもないけど。2階の部屋の窓から必死にリボーンに向かって叫んでいるランボ。髪の毛の中に入れておいたのか手榴弾を投げ込んでくるが超直感がまるで反応を示さない。手榴弾が投げ込まれているなか、笑っているランボに苦笑いを返すことしかツナには出来なかった。
「ぐぴゃっ!」
木の上で高笑いしていたランボにハエタタキに変身したレオンを使ってリボーンが手榴弾を弾き返したことでランボは爆発音と共に木から落ちていく。
チャイムの音が聞こえ暫くするとランボが部屋に入ってきた。
「がははは!リボーン!ボヴィーノファミリーのランボさんが態々会いに来てやったぞ!!」
「ツナ。次の問題だぞ」
不憫にしか思わないが10年後のランボは、少しウザさが残っているけど頼もしい仲間になってくれている。懐かしい5歳児のランボは、普通にリボーンと遊びたいだけなんじゃ、と思うけどリボーンがランボと遊ぶ筈ないし。
「ううう、が・ま・ん。しないもんね!!死ねー!!リボーン!」
ランボを見ないまま片手で壁に吹き飛ばすリボーン。こんな光景も懐かしいと感極まっているとランボが10年バズーカを取り出す。もくもくと、煙が晴れた場所に立っているのは5歳児のランボではなく、10年後の姿のランボだ。
「若きボンゴレ、お久し振りです。リボーンどうだ?子供の時にお前に泣かされていたランボだぞ」
「ツナ。次の問題だぞ」
大人になってもランボの扱いは変わらないリボーンに最初こそ話を聞いてあげたら?と言おうとしたが、リボーンから蹴られる事を直感して止めた。
その後は言わずもながだが、エレクトリックコルナーターをしてきたランボに対してリボーンが脛を蹴りあまりの痛さに泣きながら二階の窓から外に落ちていくランボ。少しスッキリしたのか先程までのイライラは感じられなかった。
「今日はこの辺で終わりだぞ。次の中間テストで1位を取らなかったら今日の3倍ねっちょりやるからな」
中間テストで一位を取るという事は100点を取れってリボーンは言ってるんだろうな....。獄寺君が中学生問題で落とすなんて考えにくいし。
「分かったよ」